直動式ボルト・ガスオペレーション

Last-modified: 2024-02-29 (木) 22:40:03
人形DNA鑑定:HG|SMG|AR|RF|MG|SG〕

 
BARへようこそ
 
この.30-06はサービスですから、まず飲んで落ち着いてください
 

 

簡単な説明

 

またまた出ました、本解説オリジナル用語『直動式ボルト』!
俗にプロップアップ式などと言われる事もある仕組みの連中をまとめたのが、この直動式ボルト・ガスオペレーションだ。

 
直動式ボルトとは?

文字通り前後動しかしないボルトのこと。
といってもピンとこないと思うので、まずは逆に前後動以外もするボルトを考えてみよう。

例えばローテーティングボルト、その名の通り薬室を解放するときにボルトを回転させるので、前後動以外もしていることになる。
Rotating_bolt 600.gif

 

別の例ではティルトボルトも、これまた名前の通りボルトを引き抜く前に傾ける動作が挟まる。
tilting bolt cycle.gif

 

一方、直動式ボルトではボルト本体は前後移動しかしない。しかしそのままでは撃発時の圧力に耐えられないので、ボルトが動かないように閂(ロッキングブロック)で固定するわけだ。

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  • BARの透視図、尺取り虫のようにせり上がっている部分がロッキングブロック
    • せり上がったロッキングブロックが、レシーバー上面の窪みに嵌まることで、ボルトが発射の反動に耐えるように踏ん張っている
  • ボルトはその右側で薬莢を押し引きしている部分
    • ここはただ前後動しかしていないことに着目した分類名が直動式*1となる

ロッキングブロックの形状によって、ウェッジロックとかプロップアップとかフラッパーロックとか色々な呼ばれ方をするが、要はボルト単体では薬室を閉鎖できないものだと思うといいだろう。

 
長所短所
  • 長所
    • パーツ一つひとつの形状が比較的シンプル
      • 熟練工に頼らなくても歩留まりの向上を見込める
      • 生産設備が簡素で済む
  • 短所
    • パーツが増えて構造が複雑になる
      • 閂が必要なので最低1つはパーツが多くなる
    • 強度が下がる
      • ロックする位置がレシーバー後部になりがちで、その分レシーバーに強度が求められる
      • レシーバーを肉厚にするとデカく重たくなる
    • ロックしたときの力の掛かり方が不均衡*2
      • 構造上ボルト上下どちらか一ヶ所でロックすることが大半なので、圧力を真っ直ぐ受け止められない
 

短所の多くはティルトボルトと共通している。
というかロックの仕方がティルトボルト式閉鎖に似ているため、日本語版Wikipediaなんかではティルトボルトと記述されている*3ことすらある。
が、前述のようにティルトボルトとは明確に異なる閉鎖方式なので間違いである。
どっちにせよ、ボルトヘッドとトラニオンが直接強固に噛み合ってロックできるという、ローテーティングボルトの利点に勝てなかったので、新規開発の小火器でお目にかかることはめっきり減ってしまった閉鎖方式である。

 

ただしショットガン業界では話が別で、レミントン870とモスバーグ500が揃って採用した。
そのためこのどちらかの設計を参考にしたショットガンはみんな直動式ボルトということになる。

 

1ピース(ウェッジロック)式

 

一つの閂だけでボルトを固定するタイプの直動式ボルト。
特に劉氏歩槍のようなタイプをウェッジロックと言ったり言わなかったりするらしい。
ローテーティングボルトに比べるとロッキングショルダー*4が小さく、ライフルとしてはあまり流行らなかった。

 
リューちゃん
316 gneral liu.png主な弾種7.92x57mm Mauser
生産期間1914-1918
備考ガストラップ式ブローフォワードオペレーションといういかにも最初期の自動小銃らしいガスオペレーション機構を搭載している。
しかもオペロッドはガスに押される形で前方へ進むので、レシーバー右側のリンク機構を介して後ろ向きの動きに変換するという手の込みよう。
 
リューちゃんの中身

リューちゃんロッキングブロック
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  • この斜めになっているパーツがレシーバーの溝と噛み合う
  • マンリッヒャーのストレートプル・ボルトアクションライフルであるM1886やM1888に似ているのだそう
 

マンリッヒャーのボルト
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  • 言ってみればこのストレートプル機構を自動で動かせるようにしたということだろう
    • 実際清朝でもマンリッヒャーM1886は使用していたんだそう
 
Lightweight Medium Machine Gun
081 LWMMG.png主な弾種.338 Norma Magnum
生産期間2012-
備考なんて?
ロングストロークガスピストン・ベルト給弾・オープンボルト撃発の汎用(?)機関銃
オペロッドの前進途中に撃発することで、APIブローバックめいて反動を相殺するメカニズムを持っている。
この機構のために、ボルト・オペロッドはバレルエクステンション上に保持され、さらにオペロッドから伸びたバッファーを介して外部のフレームにマウントされている。自分で書いててわけがわからない。
 
るうむむぐちゃんのダサパン

なんと特許図として中身が大公開されている。ありがとう米帝。
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  • が、いかんせん白黒の線画で分かりにくいか
  • ボルトとは別パーツでロッキングラグが存在していて、溝カムを介してオペロッドと接続されている
    • 基本的にはBAR、FN MAGの機構の延長線上にあると言っていいだろう
  • そしてこれらの機構が丸ごと外部フレームからは浮いているらしい。よくわからない
 

.338ノルママグナムの反動を軽減するという目的で、MG338?も似たようなバッファーシステムを持っている。
ただゼネラル・ダイナミクスの宣伝動画を見る限り、LWMMGの銃身の後座量はMG338のそれよりは遥かに少ないようだ。

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再生速度を1/4にすると銃身がレシーバーに対して僅かに後退しているのがわかる。

 

ばーちゃんち

 

どいつもこいつもブローニングブローニング!

 
バーちゃん
075 m1918.png主な弾種.30-06
生産期間1917-1945
備考ロングストロークガスピストン・マガジン給弾・オープンボルト撃発の軽機関銃・分隊支援火器
リューちゃんに比べるとずいぶんスッキリした自動小銃(?)
ボルトはオペロッドと2つのパーツを介して繋がっていて、尺取り虫のように動く。
この尺取り虫のの部分がレシーバーのロッキングショルダーに収まることで、ボルトをロックするわけである。
 
BARの中身

2倍スケールBIG BARの透け透けモデル。1枚目はボルトが前進して閉鎖された状態、2枚目はボルトが後退して開放された状態
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  • ボルト-ロッキングラグ-オペロッドがリンクで結合された独特の構造
  • オペロッドが前進するとリンク部が折れ曲がり、ロッキングラグが迫り上がる
    • 迫り上がった部分がレシーバーの溝に嵌ることで薬室がしっかり閉鎖される
 
FM24?
395 fm24.png主な弾種7.5x54mm French
生産期間1925-1960s
備考ティルトボルト閉鎖・ロングストロークガスピストン・マガジン給弾・オープンボルト撃発
フランスがWW1後に開発した軽機関銃。
ティルトボルト式だがBARの影響が伺える構造をしている。
 
FM24/29の中身

ティルトボルトはティルトボルトでも…
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  • "Culasse"と示されている部品がボルトである。
    • 上面がくびれていて、後端(左側)にロッキングラグが飛び出しているのでティルトボルトであることが分かる。
  • 赤丸で囲った部分がオペロッドとボルトをつなぐリンク機構である。
    • オペロッドが前進するとリンクを介してボルトが押し上げられ、逆にオペロッドが後退するとボルトが引きずり下ろされる。
  • このリンク構造はBARの影響と見られる。
    • 一方同じティルトボルトの機関銃でも、ZB vz. 26系はリンクではなく切り欠きの組み合わせでこの動きを実現している。
    • 大戦中、米軍の運用するBARを間近に見ていたせいか、どうやらフランス軍はBARの信頼性を高く評価していたようである。
      • FM24/29の採用に先立ち、国産化したBARそのものが陸軍の次期軽機関銃として提案されていたほどだというのだから相当だろう。
 
M240L?
374 m240l.png主な弾種7.62x51mm NATO
生産期間1977-
備考ロングストロークガスピストン・ベルト給弾・オープンボルトの汎用機関銃
FN MAGのアメリカ軍向けバージョンになる。
基本的にはBARの動作機構を上下ひっくり返して、そこにMG42のベルトシステムを組み合わせた代物。
FNの機関銃ではMINIMIに、競合の汎用機関銃ではMG3やM60の影に隠れがちな気がする。
 
M240Lちゃんの中身

ボルト周りの模式図(左)と給弾機構(右)
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  • 見ての通り本当にBARをひっくり返しただけという潔いパクリ設計
    • 何を隠そうFN社は戦間期にはBARの改良品であるModel Dを生産していたのだ
  • ちなみにベルト機構はMG42のものを利用している
 

2ピース(フラッパーロック)式

 

1ピース式はボルトの上か下にロッキングブロックが突っ張っていたが、2ピース式の場合は左右に突っ張る。
それが上から見たときにペンギンとかのヒレみたいに見えるからフラッパーロック
当然パーツ数は増えるが、左右対称に踏ん張るので1ピースに比べたら安全性は高そうな気がする。

  • いつもお馴染みガンジーザスが動画で説明してくれている
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DP28風

 

わりかしデカめの、2枚の板状のロッキングブロックを備えるタイプ
まさにフラッパーって感じの見た目

 
DP28
dp28.gif主な弾種7.62x54mmR
生産期間1928-1950s
備考ロングストロークガスピストン・オープンボルト・パンマガジン給弾の軽機関銃
デグチャレフ技師が先行して開発していた自動小銃の機構を流用したものらしい。
 
デグチャレフさんの肉体美

残念! 妹のRPDのボルトアセンブリーでした*5
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  • 上がボルトが後退した状態、下がボルトが前進した状態
  • 僅かだが、前進した状態でボルト上下のロッキングブロックが開いているのが分かるだろう
    • こんな具合にレシーバーの左右内壁に設けられたロッキングショルダーに食い込んで踏ん張るわけだ
 
RPD
084 rpd.png主な弾種7.62x39mm
生産期間1944-1960
備考ロングストロークガスピストン・オープンボルト・ベルト給弾の軽機関銃
DP28を近代化するついでに次世代アサルトライフル用の中間弾薬である7.62x39mm弾に対応させたやつ。
 

キェルマン風

 

なんて?
スウェーデンのフライバーグさんが1870年に特許を取り、20世紀初頭にキェルマンさんが実用化した、フラッパーロックの元祖ともいうべき方式
デグチャレフさんのがかなり大雑把な構造だったのとは対照的に、こちらはボルト側面からロッキングラグがニュッと飛び出ているように見える(のであまりフラッパーっぽくはない)

 
ワルサーゲヴェーアドライウントフィーアツィヒ
047 g43.png主な弾種7.92x57mm Mauser
生産期間1943-1945
備考なんて?
キェルマン風フラッパーロックとSVT?のショートストロークガスピストンを組み合わせた、ナチス・ドイツの半自動小銃
でもタイミング的にはDP28の影響もありそう。
 
G433の中身

上の動画より切り抜き
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  • ボルト側面からニュッとロッキングブロックが生えてきている
  • これがレシーバー内側の溝に引っかかる

ついでにキェルマンさんのライフルのボルト
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  • 円柱状のボルト本体からにょっきりロッキングブロックが出てくるスタイルは確かに似ている
 
EM-2
262 em-2.png主な弾種7x41mm
生産期間1950頃
備考ロングストロークガスピストン・ストライカーファイア化したブルパップG43。
その他先進的なコンセプトの数々を備えていたんだそう。
 
EM-2の中身

ボルト形状はかなりG43さん風だと思う
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コメント


*1 In-line、英語版ウィキペディア『Breechblockより』
*2 後述のフラッパーロックではマシになるが
*3 BARとかFN MAGとか
*4 閂とレシーバーの接触面
*5 しかも鋼鉄の塊から削り出したやつらしい。なんなんだ