簡単な説明
またまた出ました、本解説オリジナル用語『直動式ボルト』!
俗にプロップアップ式などと言われる事もある仕組みの連中をまとめたのが、この直動式ボルト・ガスオペレーションだ。
文字通り前後動しかしないボルトのこと。
といってもピンとこないと思うので、まずは逆に前後動以外もするボルトを考えてみよう。
例えばローテーティングボルト、その名の通り薬室を解放するときにボルトを回転させるので、前後動以外もしていることになる。
別の例ではティルトボルトも、これまた名前の通りボルトを引き抜く前に傾ける動作が挟まる。
一方、直動式ボルトではボルト本体は前後移動しかしない。しかしそのままでは撃発時の圧力に耐えられないので、ボルトが動かないように閂(ロッキングブロック)で固定するわけだ。
- BARの透視図、尺取り虫のようにせり上がっている部分がロッキングブロック
- せり上がったロッキングブロックが、レシーバー上面の窪みに嵌まることで、ボルトが発射の反動に耐えるように踏ん張っている
- ボルトはその右側で薬莢を押し引きしている部分
- ここはただ前後動しかしていないことに着目した分類名が直動式*1となる
ロッキングブロックの形状によって、ウェッジロックとかプロップアップとかフラッパーロックとか色々な呼ばれ方をするが、要はボルト単体では薬室を閉鎖できないものだと思うといいだろう。
- 長所
- パーツ一つひとつの形状が比較的シンプル
- 熟練工に頼らなくても歩留まりの向上を見込める
- 生産設備が簡素で済む
- パーツ一つひとつの形状が比較的シンプル
- 短所
- パーツが増えて構造が複雑になる
- 閂が必要なので最低1つはパーツが多くなる
- 強度が下がる
- ロックする位置がレシーバー後部になりがちで、その分レシーバーに強度が求められる
- レシーバーを肉厚にするとデカく重たくなる
- ロックしたときの力の掛かり方が不均衡*2
- 構造上ボルト上下どちらか一ヶ所でロックすることが大半なので、圧力を真っ直ぐ受け止められない
- パーツが増えて構造が複雑になる
短所の多くはティルトボルトと共通している。
というかロックの仕方がティルトボルト式閉鎖に似ているため、日本語版Wikipediaなんかではティルトボルトと記述されている*3ことすらある。
が、前述のようにティルトボルトとは明確に異なる閉鎖方式なので間違いである。
どっちにせよ、ボルトヘッドとトラニオンが直接強固に噛み合ってロックできるという、ローテーティングボルトの利点に勝てなかったので、新規開発の小火器でお目にかかることはめっきり減ってしまった閉鎖方式である。
ただしショットガン業界では話が別で、レミントン870とモスバーグ500が揃って採用した。
そのためこのどちらかの設計を参考にしたショットガンはみんな直動式ボルトということになる。
1ピース(ウェッジロック)式
一つの閂だけでボルトを固定するタイプの直動式ボルト。
特に劉氏歩槍のようなタイプをウェッジロックと言ったり言わなかったりするらしい。
ローテーティングボルトに比べるとロッキングショルダー*4が小さく、ライフルとしてはあまり流行らなかった。
リューちゃん | ||
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主な弾種 | 7.92x57mm Mauser | |
生産期間 | 1914-1918 | |
備考 | ガストラップ式ブローフォワードオペレーションといういかにも最初期の自動小銃らしいガスオペレーション機構を搭載している。 しかもオペロッドはガスに押される形で前方へ進むので、レシーバー右側のリンク機構を介して後ろ向きの動きに変換するという手の込みよう。 |
Lightweight Medium Machine Gun | ||
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主な弾種 | .338 Norma Magnum | |
生産期間 | 2012- | |
備考 | なんて? ロングストロークガスピストン・ベルト給弾・オープンボルト撃発の汎用(?)機関銃 オペロッドの前進途中に撃発することで、APIブローバックめいて反動を相殺するメカニズムを持っている。 この機構のために、ボルト・オペロッドはバレルエクステンション上に保持され、さらにオペロッドから伸びたバッファーを介して外部のフレームにマウントされている。自分で書いててわけがわからない。 |
なんと特許図として中身が大公開されている。ありがとう米帝。
- が、いかんせん白黒の線画で分かりにくいか
- ボルトとは別パーツでロッキングラグが存在していて、溝カムを介してオペロッドと接続されている
- 基本的にはBAR、FN MAGの機構の延長線上にあると言っていいだろう
- そしてこれらの機構が丸ごと外部フレームからは浮いているらしい。よくわからない
.338ノルママグナムの反動を軽減するという目的で、MG338?も似たようなバッファーシステムを持っている。
ただゼネラル・ダイナミクスの宣伝動画を見る限り、LWMMGの銃身の後座量はMG338のそれよりは遥かに少ないようだ。
再生速度を1/4にすると銃身がレシーバーに対して僅かに後退しているのがわかる。
ばーちゃんち
どいつもこいつもブローニングブローニング!
バーちゃん | ||
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主な弾種 | .30-06 | |
生産期間 | 1917-1945 | |
備考 | ロングストロークガスピストン・マガジン給弾・オープンボルト撃発の軽機関銃・分隊支援火器 リューちゃんに比べるとずいぶんスッキリした自動小銃(?) ボルトはオペロッドと2つのパーツを介して繋がっていて、尺取り虫のように動く。 この尺取り虫の背の部分がレシーバーのロッキングショルダーに収まることで、ボルトをロックするわけである。 |
FM24? | ||
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主な弾種 | 7.5x54mm French | |
生産期間 | 1925-1960s | |
備考 | ティルトボルト閉鎖・ロングストロークガスピストン・マガジン給弾・オープンボルト撃発 フランスがWW1後に開発した軽機関銃。 ティルトボルト式だがBARの影響が伺える構造をしている。 |
- "Culasse"と示されている部品がボルトである。
- 上面がくびれていて、後端(左側)にロッキングラグが飛び出しているのでティルトボルトであることが分かる。
- 赤丸で囲った部分がオペロッドとボルトをつなぐリンク機構である。
- オペロッドが前進するとリンクを介してボルトが押し上げられ、逆にオペロッドが後退するとボルトが引きずり下ろされる。
- このリンク構造はBARの影響と見られる。
- 一方同じティルトボルトの機関銃でも、ZB vz. 26系はリンクではなく切り欠きの組み合わせでこの動きを実現している。
- 大戦中、米軍の運用するBARを間近に見ていたせいか、どうやらフランス軍はBARの信頼性を高く評価していたようである。
- FM24/29の採用に先立ち、国産化したBARそのものが陸軍の次期軽機関銃として提案されていたほどだというのだから相当だろう。
M240L? | ||
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主な弾種 | 7.62x51mm NATO | |
生産期間 | 1977- | |
備考 | ロングストロークガスピストン・ベルト給弾・オープンボルトの汎用機関銃 FN MAGのアメリカ軍向けバージョンになる。 基本的にはBARの動作機構を上下ひっくり返して、そこにMG42のベルトシステムを組み合わせた代物。 FNの機関銃ではMINIMIに、競合の汎用機関銃ではMG3やM60の影に隠れがちな気がする。 |
2ピース(フラッパーロック)式
1ピース式はボルトの上か下にロッキングブロックが突っ張っていたが、2ピース式の場合は左右に突っ張る。
それが上から見たときにペンギンとかのヒレみたいに見えるからフラッパーロック
当然パーツ数は増えるが、左右対称に踏ん張るので1ピースに比べたら安全性は高そうな気がする。
- いつもお馴染みガンジーザスが動画で説明してくれている
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DP28風
わりかしデカめの、2枚の板状のロッキングブロックを備えるタイプ
まさにフラッパーって感じの見た目
DP28 | ||
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主な弾種 | 7.62x54mmR | |
生産期間 | 1928-1950s | |
備考 | ロングストロークガスピストン・オープンボルト・パンマガジン給弾の軽機関銃 デグチャレフ技師が先行して開発していた自動小銃の機構を流用したものらしい。 |
残念! 妹のRPDのボルトアセンブリーでした*5!
- 上がボルトが後退した状態、下がボルトが前進した状態
- 僅かだが、前進した状態でボルト上下のロッキングブロックが開いているのが分かるだろう
- こんな具合にレシーバーの左右内壁に設けられたロッキングショルダーに食い込んで踏ん張るわけだ
RPD | ||
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主な弾種 | 7.62x39mm | |
生産期間 | 1944-1960 | |
備考 | ロングストロークガスピストン・オープンボルト・ベルト給弾の軽機関銃 DP28を近代化するついでに次世代アサルトライフル用の中間弾薬である7.62x39mm弾に対応させたやつ。 |
キェルマン風
なんて?
スウェーデンのフライバーグさんが1870年に特許を取り、20世紀初頭にキェルマンさんが実用化した、フラッパーロックの元祖ともいうべき方式
デグチャレフさんのがかなり大雑把な構造だったのとは対照的に、こちらはボルト側面からロッキングラグがニュッと飛び出ているように見える(のであまりフラッパーっぽくはない)
ワルサーゲヴェーアドライウントフィーアツィヒ | ||
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主な弾種 | 7.92x57mm Mauser | |
生産期間 | 1943-1945 | |
備考 | なんて? キェルマン風フラッパーロックとSVT?のショートストロークガスピストンを組み合わせた、ナチス・ドイツの半自動小銃 でもタイミング的にはDP28の影響もありそう。 |
EM-2 | ||
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主な弾種 | 7x41mm | |
生産期間 | 1950頃 | |
備考 | ロングストロークガスピストン・ストライカーファイア化したブルパップG43。 その他先進的なコンセプトの数々を備えていたんだそう。 |
索引(人形名からページを探す) | ||
人形DNA鑑定 もくじ | ||
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手動操作 | リボルバー|中折式HG | |
反動利用式 | ティルトバレル:ティルトバレル|シグ・ザウエル閉鎖方式|グロックインスパイア | |
それ以外:プロップアップ式|その他の反動利用式 | ||
ブローバック | ワルサーPP系|ブローバック式ハンドガン | |
ベルグマン系 | ベルグマン本家|ベルグマン東分家|ベルグマン西分家 | |
テレスコ | ウージー系|テレスコーピングボルト (UZI以外) | |
その他 | ブローバック式SMG|レバー遅延ブローバック | |
Pre-AK/M16 | 戦後第一世代ティルトボルトAR|ローラー遅延ブローバック | |
カラシ系 | AK一家|戦後第二世代AKインスパイアAR|大陸系AR|AS-Val系 | |
ストーナー系 | M16一家|AR-18系|G36系|SCAR系|ストーナー風味 | |
ボルト アクション | マウザー系:かーちゃんち|M700系|その他ドイツっぽいの:Gew88系 | |
その他:梨園さん風|寸胴ボルト|ルベル系|白旗 | ||
自動ライフル | 平たいボルト族|ハイセンスなボルト|ロングリコイル | |
一応調査完了 | チ○コ機銃|PK系|HIRAKI|直動ボルト式MG|MG30系 | |
一応調査完了 | レミントン870系|直動ボルト式SG|ローテーティングボルト|その他のセミオート|中折式SG | |
銃種混合 | 珍しい閉鎖方式|その他のティルトボルト |