マウザーアクション

Last-modified: 2024-02-29 (木) 22:40:03
人形DNA鑑定:HG|SMG|AR|RF|MG|SG〕

 
1898年にはまだナチ党はない
 
愚か者、わたくしたちの技術は世界一ですのよ
Kar98k スキル発動時セリフより
 

 

簡単な説明

 

マウザーが作ったからマウザーアクション。
ボルトアクションライフルといえばコレ、という感じのすごいやつ。

 
続けて。

フロント2ラグのローテーティングボルトで、コックオンオープンで作動するのがマウザーアクション共通の特徴だろうか。
また、見た目の上での特徴としてはボルト後部にセーフティ機構をまとめていることが多い。
細かい点だが、ボルトの閉鎖時にラグが垂直向きになるのもマウザーアクションに多い特徴といえる。

Gewehr 98のカットモデルを動かす動画。

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  • ボルトを閉鎖すると、ボルト前方のラグが縦向きに薬室を閉鎖しているのがわかる。
  • 手前側に鎮座まします巨大なクロー・エキストラクターは、古典的なマウザーアクションの特徴でもある。
    • ボルトハンドルを回転させても、エキストラクターは回転しない。
      • このクローエキストラクターは排莢動作が確実になるという長所があるらしい。らしい。
  • 細かいところだが、薬莢を薬室から抜き出しても、すぐには飛んで行かないところも、狭義のマウザーアクションに見られる特徴といえる。
    • プランジャー式のイジェクターではなく、外装式のブレード・イジェクターを使用する。
    • バネ力に依存しないため、ある意味では確実に動作する。
      • しかし動画にあるように、勢いが足りないと飛んで行かないので、ジャムの元にもなりそうな…
      • 静かに排莢させたり、薬莢を回収しやすいように射手のすぐ隣に転がしたりというような応用が効くんだそう。
      • J隊さん、お一ついかがですか?
 

すべてフロント2ラグのローテーティングボルト、コックオンオープンである*1

 

WW2まで

 

第二次世界大戦までの、まだ歩兵の主力武器だった頃のボルトアクションライフルとしてのマウザーアクションな皆さん。

 
春田さん
036 springfield.png主な弾種.30-06スプリングフィールド
生産期間1903-1975
備考基本的な特徴がGew98と共通した、アメリカ合衆国の制式ボルトアクションライフル。
 
ボルトの比較

春田さんのボルト
m1903 bolt.JPG

  • 予備の第3ラグがボルトハンドルと同じ側に突き出している。
 

Gew98のボルト
german-mauser-1898-98-bent-bolt_1.jpg

  • 元祖Gewehr 98では予備ラグはボルト下面に突き出している。
  • それ以外にボルトでは目立った違いが無いような…?
 

明確に春田さんで改良されたと言えるポイントはイジェクターだろう。
左がかーちゃんのイジェクター、右が春田さんの断面図。小さいが上の方に"EJECTOR"の文字が見える。
Mauser-98-Bolt-Stop-Ejector-Box.jpg M903_rifle_mechanism.jpg

  • かーちゃんの方は写真下側の箱の中に板バネが入っていて、その力で写真上側にブレード状のイジェクターが飛び出すようになっている。
  • 一方春田さんのイジェクターは、ラグに押されてテコの原理で飛び出すようになっている。
    • 春田さんは部品点数が減ってシンプルな上に、バネがヘタって排莢不良となる心配もない、合理的な改良である。
 

おまけ

春田さんとかーちゃんの子供…ってコト!?

その名も ~Mausingfield

american-rifle-company-mausingfield-action1.jpg

  • メーカーであるAmerican Rifle Company (すごい名前だ) 曰く、2つの世界大戦を通じて生まれたボルトアクションの現代版とのこと。
    • でもマウザーもスプリングフィールドも第一次大戦前の銃では?
  • 細かいことはいいんだ。ともかく、Gewehr 98とスプリングフィールド1903のいいとこ取りを狙ったアクションなんだそう。
  • 具体的にはエキストラクター周りはマウザーのものを、イジェクターはスプリングフィールドの機構を取り入れている。
    • でもそれってただのスプリングフィールドなのでは?
  • 細かいことはいいんだ。ともかく、銃の精度そのものより、確実な装填・排莢を重視したアクションとして仕上がっているようだ。
  • ちなみにトリガーグループ及びセーフティはレミントン・モデル700のものを流用している模様。
    • それってMausingfieldじゃなくてReminingfieldなのでは?
  • 細かいことはいいんだ。
 
Kar98k
046 kar98k.png主な弾種7.92x57mm Mauser
生産期間1935-1945
備考WW2時のナチス・ドイツの制式ライフルだが、本を正せばGewehr 98 (1898)の短縮版なので、原設計の古さではこの並びで最古参と言えよう。
↑さらに遡るとMauser Model 1895とかMauser Model 1893とかにたどり着くんだそう。
 
かーちゃん成長物語

冒頭で述べた(かもしれない)通り、マウザーアクションの特徴は次の3点にあるだろう。

  • フロント2ラグ・ローテーティングボルト
  • コックオンオープン
  • 大型のクロー・エキストラクター

これらの特徴はGewehr 98で一度に揃った訳ではなく、19世紀後半に徐々に形成されていったようだ。

まずコックオンオープンの機構や、フラグ・セーフティと呼ばれる形状の安全装置レバーはGewehr 71 (1871)で既に備わっている。
original-mauser-model-71-84-bolt.jpg

  • ただしこの頃はまだ単純な1ラグ閉鎖で*2、フロント2ラグにはなっていない。
  • 巨大なクロー・エキストラクターも無い。
    • 写真はチューブマガジンを備えて連発化したGewehr 1971/84だそう。
 

続いてモデル1889 (1889)までには、現在に続くフロント2ラグの形式が登場する。
mauser 1889 bolt head.png

  • ボルトヘッドに2つのラグが付いているのがよく分かる。とてもシンプルな形状。
    • クロー・エキストラクターは未登場で、代わりに慎ましい小さなエキストラクターが付いている。
 

そしてトライアル提出用の試作品であるモデル1892 (1892)では、Gewehr 98のボルトを大きく特徴づけるクロー・エキストラクターが初めて組み込まれた。
spanish mauser bolt.jpg

  • スペイン・マウザー、モデル1893 (1893)にて制式採用される。上の写真はそれ。
  • ここまでで一通りマウザーアクションの諸要素は出揃ったことになるが、細かい改良が続く。
 

スウェーデン・マウザー (1894)やモデル1895 (1895)では、ボルトハンドル基部を予備の3ラグ目とする改良が加わる。
chilean mauser 1895.webp

  • レシーバーのボルトハンドルが収まる部分に、小さな切り欠きがある。
  • 記憶が定かではないが、このタイプの予備ラグは左右方向に弾が散りやすい(?)というデメリットがあった気がする。
    • ボルトハンドル基部を予備ラグとする都合で、右側にもう一つロッキングラグが加わることになる。
    • 一方マウザーアクションの主ラグは前方2つのラグが縦方向に閉鎖する。
    • つまり右側の予備ラグの閉まり加減が、そのままボルトの左右の微妙な傾きに繋がるんだそうな。
      • そのため左右方向の集弾に個体差が出やすい……んだった気がする。
 

そこでGewehr 98では予備ラグをボルトハンドルから独立させ、ボルト下面でレシーバーと噛むように変更した。
Infanteriegewehr_M98_side.jpg

  • トリガーグループと弾倉の間にある切り欠きが、予備ラグの収まる部分になる。
  • 予備ラグをどうしても残したい辺りは、まだまだ無煙火薬のエネルギーへの警戒感があったのだろうか。
  • ともかくここにマウザーアクションは一定の完成を見たと言って良いだろう。
余談

実は……
この項では敢えて"Gewehr xx"と"モデル xxxx"を書き分けていたことを、賢明な読者諸氏はお気付きであっただろう。
そう、マウザー製のドイツ軍制式ライフル(つまり"Gewehr")はGewehr 71からGewehr 98まで大きく間が開いている。
ドイツ帝国のライフルというとマウザー、そういうイメージが大きいが、実のところ上の2つの間にGewehr 88 (1888)、またの名をコミッションライフルが挟まっているのである。
このドイツ陸軍謹製コミッションライフルはしかし、設計が不味かったことで有名で、一方マウザー製の最新ライフルがその性能から世界中で契約を勝ち取ったことから、ドイツ以外の国々がドイツ製の高性能ライフルを次々と装備していくという不条理が発生していたのだった。
流石にこれは不味いと思ったのかどうかは分からないが、ドイツ陸軍は1898年に満を持してマウザーの最新鋭ライフルを調達する。
これがボルトアクションライフルのマスターピースであるGewehr 98だったのだ。

 
81式カービン
174 type 81.png主な弾種7.92x57mm Mauser
生産期間1940s
備考日中戦争中の八路軍で開発・生産されたライフルなのだが、実態としては共産党が現地生産した各国小銃のコピー品という感じのようで、三八式騎銃のレシーバーを持つものや、漢陽88式のレシーバーのものなど、規格化された制式装備というわけではなかったようだ。なんでも開発者の証言ではチェコのvz. 24に基づいて作ったんだとかなんとか。
漢陽88式はさておき、三八式騎銃とvz. 24はどちらもマウザーアクションの小銃なので、81式もマウザーアクションという扱いで問題は無いだろう。
 

カラビネックのお友達

 

意外! それはポーランド!

 
wz.29
182 wz29.png主な弾種7.92x57mm Mauser
生産期間1930-1939
備考ポーランドでコピーされたGew98
 
PTRD?
042 ptrd.png主な弾種14.5x114mm
生産期間1941-1945
備考ショートリコイル動作による自動排莢機構付き、ソ連製ビックリドッキリ対戦車ライフル。
↑ポーランドの単発対戦車ライフルWz.35 (1935)を下敷きに、PzB38 (1939)の自動排莢を取り入れたやつ、ということらしい。
KP-32 (1932)という試作小銃の発展拡大型とのこと。
wz.29の生産性向上を図った改良案
 
PTRDに確かに流れるポーランドの血

まずはwz.35→PTRDのところ。ボルトの比較(←PTRD│wz.35→)
ptrd_wz35_hikaku.png

  • 見ての通りwz.35を拡大コピーするとPTRDになる
    • ご丁寧にエキストラクターの形状までほぼ一致している
  • 分解手順なども基本的にwz.35を踏襲している。詳しくはこの動画をチェック。
 

KP-32については、実銃が残っていないようでなかなか断定的なことは言えないけれど、wz.29とKP-32のパーツを並べたスケッチが残っていて、設計の上で強く意識していたことが感じられる。

  • PTRDではオミットされているが、KP-32とwz.35にはマウザーアクション恒例の予備ラグが備わっている
    kp32_wz29_drawings.png
 

ウィンチェスター・モデル70っぽいの

 

ウィンチェスター・モデル70は、戦前の登場から戦後しばらくの間、アメリカのスポーティングライフルといえばコレ、という人気と信頼を誇っていたすごいやつ。
戦後は色々あってトップの座をレミントン・モデル700に取って代わられたが、それでもスタンダードなマウザーアクションのボルトアクションライフルとして、現代の狙撃銃の設計の参考にされているようだ。

 
ウィンチェスター・モデル70
404 not found.png主な弾種いろいろ
生産期間1936-63 (Pre-64), 1964-2006 (Post-64), 2008-
備考「ライフルマンのライフル」「世紀のボルトアクションライフル」の異名を取るビッグネームで、なぜかドルフロ未実装勢No.5くらい。
ウィンチェスター・モデル54 (1925) に改良を加えたもので、特にトリガーの重さが改善されたんだとか。
Gewehr 98に大いに影響を受けたデザイン。正確には間に限定生産のモデル51"インペリアル"が挟まるんだそう。
 
続けて。

レシーバー周りを並べてみよう。

まずGewehr 98
gew98 action.jpg

次にモデル54
model 54 action.jpg

終わりにモデル70
pre-64 action.jpg

  • 基本的なレイアウトが共通しているのが分かるだろうか
    • 特にGewehr 98とモデル54ではセーフティの形状まで同じで、瓜二つといった感すらある
  • 外見上の特徴としてはやはり、外装式の大型エキストラクターだろう

モデル70のボルト
winchester-figure-2-3.jpg

同ボルトフェイス(ついでにGewehr 98とマウザー・モデル1893)
winchester-figure-2-4.jpg bolt_93-98Faces.JPG

  • こちらを見ても、典型的なマウザーアクションの構成を採っていることが分かる
  • Gewehr 98との違いは、イジェクターが通る切り欠きの位置がズレている程度か
 
C14?
308 c14.png主な弾種.338 Lapua Magnum
生産期間2005-
備考基本的にはウィンチェスター・モデル70の近代化といった雰囲気のスナイパーライフル。
なお、C14として採用されたPGW Timberwolfだが、現行品はレミントン・モデル700系のアクションとなり仕様が異なる。
 
C14のアクションとか

Post-64タイプやね
PGWDTI_Timberwolf_titanium_bolt_action.png

 
SPR A3G
235 spr a3g.png主な弾種.308 Winchester
生産期間2008(?)-
備考色々あってFN社に買われたウィンチェスター・モデル70を、法執行機関向けに改良した狙撃銃。
売りは何と言っても復刻されたPre-64なアクションである。どんだけ好きなんだ。
 
T-5000
184 t5000.png主な弾種.338 Lapua Magnum
生産期間2015-
備考トリガーグループをレミントン・モデル700よろしくモジュール化したという雰囲気のウィンチェスター・モデル70。ロシア製ライフルでメリケンなアクションを使ってるのはなんだか面白い。
 
T-5000のアクションとか

こっちもPost-64タイプ
T5000 action.jpg

 

 
 

 

コメント


*1 ここだけ見ると「ほとんどのボルトアクションライフルが当てはまるじゃないか」と言いたくなってしまうが、その普遍性こそがマウザーアクション成功の証左とも言えるだろう……
*2 腔圧の低い黒色火薬時代なのでこのくらいで大丈夫だった