ブローバック式SMG

Last-modified: 2024-02-29 (木) 22:40:03
人形DNA鑑定:HG|SMG|AR|RF|MG|SG〕

 
普通科の職種徽章は、小銃、桜星及び月桂樹の葉を組み合わせたもの
普通がたいせつ
 

 

簡単な説明

 

タイトルはブローバック式SMGとしているが、実は他のSMG主体のページも全部ブローバック式SMGなのだ。なぜかと言うとショートリコイル式はHGに、ガス圧作動方式はARに嫁いで行ってしまったせいだ。
言い換えれば、ストレートブローバックがSMGでは最も普通な作動方式ということである。

 
続けて。

というのも使用するのは拳銃弾なのでガス圧作動方式のように厳密に薬室を閉鎖する必要は無いし、HGのような大きさの制約もあまりないので、ボルト重量だけで十分薬莢の後退を遅らせることができてしまうのだ。

加えてSMGは戦前から戦後数十年間は歩兵の主要装備の一つであったため、コスト低減の要求が大きかったことも、簡素なストレートブローバックが中心になった理由の一つだろう。逆に軍用拳銃は将校や操縦手といった一部の(しかも育成コストが歩兵に比べてそれなりに高い)人員にしか配られないため、多少凝った構造でも許容されたのだと思われる。

 

ヴィラル・ペローザ一味

 
VP1915?
333 vp1915.png主な弾種9x19mm Parabellum
生産期間1915-1918
備考オープンボルト
パッと見ベルグマンMP18系と変わらないように見えるが、MP18の撃針がボルトに固定されているのに対して、こちらはラグを介して可動し、ボルトが前進し切る (=薬莢が全て薬室に収まる) までボルトフェイスから撃針が飛び出さないようになっている。当然安全性はこちらの方が高い。
MP18はどうやって暴発を防いでいるの?

エキストラクターが薬莢の後端を保持して、ボルトが前進する間雷管と撃針が接触しないように距離を確保している。
詳しくは動画で見たほうが早い。

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M38
031 beretta model 38.png主な弾種9x19mm Parabellum
生産期間1938-1961
備考オープンボルト
ヴィラル・ペローザ独特の撃針の可動構造(ラグではなくテコの原理になったが)は健在。
円筒形のレシーバーもMP18系でありがちなプレス成形ではなく、一体削り出しというイタリアン・クラフトマンシップの精華。
 

ちょっと凝ったことをしている皆様

 
スペクトラM4?
092 spectre m4.png主な弾種9x19mm Parabellum
生産期間1984-2001
備考クローズドボルト
ボルトを二分割して実現したクローズドボルト機構が特徴。
いわゆるリニアハンマー式の一人とである。
 
PP-90
023 pp-90.png主な弾種9x18mm PM
生産期間1991-1993
備考APIブローバック・オープンボルト
ARES FMG風の折りたたみ機構を持つことも独特だが、それ以上にAPIブローバックを採用しているのが特徴的。
APIブローバックってなんぞ?

アドバンスド・プライマー・イグニッション・ブローバック!!!!
逐語訳すると「先行雷管撃発」ブローバックである。なんのこっちゃ。
まず前提として、APIブローバックは基本的にオープンボルト撃発の一種である。オープンボルトではトリガーを引くと、後退状態のボルトの支えが外れて前進を開始、途中でマガジンから実包を拾い上げて薬室に装填、ボルトが前進し切ると同時に撃針が雷管を叩いて撃発、弾丸が発射される。
さて、あるとき誰かが気付いた。ボルトが前進している最中に雷管を叩いてしまえば、発射の反動がボルトの前方への運動エネルギーと相殺されて、全体の反動を少なくできるんじゃないかと。これがAPIブローバックである。
つまりさっきの「先行雷管撃発」というのは、薬室がボルトフェイスで密閉されるより「先」に雷管を爆発させてしまおう、というそういう話だったわけだ。

メリット

  • 反動が小さくなる。これが全て。
    • ボルトが軽量化できる
    • 銃全体も小型軽量化可能

デメリット

  • オープンボルトに輪をかけて精度が下がる
    • ボルトが動いてる最中に撃発するんだから当然。
  • 撃発のタイミングがシビア
    • 早すぎたら暴発だし、遅すぎたらただのストレートブローバック
    • 実包の種類を選ぶ
      • 今流行のマルチキャリバー対応には不利
      • 通常のブローバックより実包の威力とレートが密接に連動する(らしい)

このようにメリットに対してデメリットが多いため、軽量化が至上命題になる一方一発の精度はあまり問題にされない航空機関銃で採用されることが多かった動作方式だ。

 
IDW
093 idw.png主な弾種9x19mm Parabellum
生産期間1999
備考ストレートブローバックで、電源がないとセミオートになるということしか分からない。
 

レートリデューサー搭載SMG

 

遅延ブローバックはボルトが薬莢を引き抜くまでの速度を遅らせることを目的にしているが、レートリデューサーはあくまで発射サイクルを遅くするための機械的な遅延機構である。
特にボルト重量を稼げず、そのままでは発射速度が速くなりすぎる小型サブマシンガンで採用されることがある。
しかし構造が複雑化する割には恩恵が少ない*1のであまり採用例が多いとは言えない。

 
スチェッキン
007 stechkin.png主な弾種9x18mm PM
生産期間1951-1958
備考ストレートブローバックで、分解手順はワルサーPP系を踏襲している。
グリップ内部にはレートリデューサーが組み込まれている。
 
スコーピオン
027 skorpion.png主な弾種.32 ACP
生産期間1961-
備考クローズドボルト
スチェッキンと同様、グリップ内部にレートリデューサーが仕込まれている。
ある意味似たもの同士のハズなのだが、どこで評価が分かれたのか……
 
82式?
391 type 82.png主な弾種9x18mm PM
生産期間1982-?
備考オープンボルト
中越戦争でベトナムから分捕ったPM-63 (1965)を中国がコピーしたSMG
突き出た"アゴ"も特徴的だが、スライド内部にレートリデューサーが仕組まれているという中々に凝った設計となっている。
 
Vector
020 vector.png主な弾種.45 ACP
生産期間2009-
備考クローズドボルト
グリップとマグウェルの間にある錘とボルトをリンクで繋げて、ボルト重量を稼ぎつつ反動を偏向させるという変なことをしている。
レートリデューサーではないが、コンセプトはスチェッキンやスコーピオンに通じるものがあるだろう。
 

何の変哲もないストレートブローバック

 

外装には独自の要素が盛り込まれていたりするが、中身は普通な方々。

 
トンプソン
016 thompson.png主な弾種.45 ACP
生産期間1921-1945
備考オープンボルト
サブマシンガンという語のゴッドファーザーだが、ゲーム中の子孫には恵まれなかったようだ。
一応ブリッシュ・ロックという遅延機構が組み込まれていたのだが、実際には全く遅延機構としての用を為しておらず*2ただ徒に生産コストを押し上げただけだった。
 
P90
245 p90.png主な弾種5.7x28mm
生産期間1991-
備考クローズドボルト
弾薬や操作面は革新的だが、作動方式自体はじつは至ってシンプル。
 
KLIN
177 klin.png主な弾種9x18mm PMM
生産期間1996-2002
備考クローズドボルト・遅延(?)ブローバック
↑ベースとなったPP-91 KEDR (1994) やさらにその試作品であるPP-71 (1972) については特に書くことも無いストレートブローバックな小型SMGである。
ただしこのPP-9 KLINに関しては強装弾を使っていて、その関係なのか薬室に溝を彫って僅かながらボルトの後退速度を遅くする工夫をしている*3
 
SUB-2000?
327 sub-2000.png主な弾種9x19mm Parabellum
生産期間2001-
備考クローズドボルト
ストックチューブにメインスプリングを突っ込む構造はAR-15系の十八番だけど、開発経緯からすると特にAR-15を参照したというわけでは無いだろう。
 
EVO 3
131 evo3.png主な弾種9x19mm Parabellum
生産期間2009-
備考クローズドボルト
ベースになったLaugo M6はUMPじみた外見だが、どちらにせよ中身が特別似ているということはない。
 

SMG? SMG…? 何しに来たんだお前

 
リベロール
171 ribeyrolles.png主な弾種8x35mm
生産期間1918-1920
備考オープンボルト?
第一次大戦中のフランスが世界に先駆けて中間弾薬を採用したARの一角。
中間弾薬を使用した自動小銃というアイデアそのものは、当時アメリカから輸入していたウィンチェスターModel 1907 (1906) のフルオート改造品の運用から得たとも言われているが、見た目はぶっちゃけMP18を圧延機で延ばしたような感じである。多分関係ないけど。
話すと長くなりそうなので折りたたみ
  • まずオープンボルトというところについてですが、ちょっと確たるソースを得られませんでした。一応BF1の描写ではオープンボルトだったので、DICEのリサーチ力を信用することにします。
  • ストレートブローバックという点については各方面で見解が一致しているようなので深く考えなくていいでしょう。ただしだからといってベルグマンMP18の親戚かというと、そういうわけではなさそう。
    • リベロールの開発に携わっていたリベロールさんは、ショーシャ軽機関銃の製造にも関わっていたので、レシーバー形状はおそらくショーシャからの影響と考えるのが妥当でしょう。
    • ショーシャ軽機関銃自体はレミントンModel8譲りの(自動火器としては非常に珍しい)ロングリコイル・ローテーティングボルトを採用していましたが、構造の簡略化のためかオープンボルト撃発に改められていました。この辺りがリベロールに受け継がれたのでしょうか。
    • またロングリコイル方式はガス圧作動方式と違いガスチューブが要らないので、あまりレイアウトをいじらなくてもブローバック化しやすいというのも、リベロールのデザインに影響を与えたのではないでしょうか。
  • つまり円筒形のレシーバーもオープンボルト撃発もストレートブローバックの作動方式も、ベルグマンMP18とは関係なく収斂進化的にたどり着いたものっぽいということです。
    ボルトや内部構造が分からないので断言はできませんが。

ribeyrolles 1918.jpg
Bergmann_MP18.1.jpg
上がリベロール、下がベルグマンMP18。まんまるなレシーバーや作動方式に騙されかけたが、開発時期を考えると片方がもう片一方に影響を与えたとはどうも考えにくい。

  • その他感想めいたもの
    • リベロールが不採用となった理由に一つに過大な重量があるそうですが、さもありなんでしょう。ロクな閉鎖機構も無しにボルト重量だけで中間弾薬をどうにかするのは無理があります。
    • 現代ARにストレートブローバック方式が皆無なのはつまりそういうことなのですな。
  • あと少し名前を出したウィンチェスターModel 1907ですが、コイツのボルト形状は今で言うならL字ボルトと言えるでしょう。
    • 実包は.22 LRめいたやつなので、標準でフルオート可能にかつもう少し小型化の工夫をしていたなら、世界初の実用SMGの名はこっちになっていたのではないかと思ったりしました。

winchester model 1907 bolt.jpg
↑これだけで鈍器として使えそうなウィンチェスターModel 1907のボルト。写真向かって左が銃口側で、黄色く丸で囲った部分がボルトフェイスとなる、いわゆるL字ボルトの形状をしている。

 

 
 

 

コメント

  • 本来はとんぷそんも「ちょっと凝ったことをしている皆様」なんだよな…結局ブリッシュロックの意味なかったけど -- 2022-02-26 (土) 22:33:39

*1 そもそも小型SMGではいくら発射サイクルを下げても制御が難しい、ボルトの後退は速いままなので強装弾などへの適応性は改善しない等
*2 この機構は特許も取得されたものだった。特許という手続きが必ずしも科学的検証を伴うとは限らないことを示す好例だろう。
*3 遅延ブローバックと言うにはやや物足りない感がある。