ローズウェル傭兵団

西のミュール山の麓には打ち捨てられた砦がある。

かつてこの地で戦争があった時、壊れたまま放置されているものである。

今はローズウェル商人に雇われた傭兵が砦に住み着いているという。

砦は外壁も破壊されており、砦としての機能は失われている。

しかし、人が住み着く程度には十分に機能する。

そのような場所には野盗や無法者が隠れ住んだりする。

定期的に騎士団が排除に来るが、それもイタチごっこであり根絶には至っていない。

ローズウェル商人に雇われた傭兵たちは、ローズウェル傭兵団と言われている。

その構成員は名を馳せた冒険者や騎士崩れの者、ならず者や異種族の傭兵など様々である。

商人の用心棒から周辺のモンスター退治や権力争い等々、活躍は幅広くその実力は高く評価されている。

ローズウェルの町が自治と帝国内での権限を得ている理由も、この傭兵団の力によるところが大きい。

ローズウェルの商人はその経済力により帝国との関係を作っている。

多少の問題はもみ消せるほどの力があり、その後ろ盾によりローズウェル傭兵は好き放題にしている。

悪評も高く、危険な相手である。

傭兵団はいくつかの部隊に分かれており、それぞれに隊長がいる。

この砦に居る傭兵の規模ならば指揮官が居るはずである。

冒険者たちは広い部屋に飛び込んだ。

そこには円卓を囲むように椅子が並び、壁には大きな地図がある。

かつては砦の作戦会議室であったのだろう。

部屋の中には武装した男たちが居た。

この部屋で待ち構えていたようだ。

部屋の奥にはがっちりとした体格に鋭い目つきをした男が居る。

鎧装備に帯剣しながらのしなやかな動作には洗練された熟練の技術が見て取れる。

傭兵団の指揮官であろうその男の合図と共に、武器を構えた男たちが一斉に襲いかかって来た。

冒険者をやっているより傭兵の方が金になる。

ローズウェル商人は金払いだけは良いからな。

ローズウェル商人は、帝国の宰相と金のつながりがある。

その権力を盾にしてやりたい放題だ。

裏でどんな悪事を働いてるか……

俺が知る限りでも相当なものだ。

最近、帝国は西に広がるダークエルフの大森林へ制圧に乗り出している。

教皇の教えではダークエルフは悪魔の手下なんだとさ。

家畜以下の魔物と同等に扱われ、捕えたダークエルフは処刑される。

商人共がそれは可哀想だと買い取っているが…

奴隷として他国に売りさばいているに過ぎん。

その護衛について行くのもつまらん仕事だ。

帝国は亜人に厳しく排他的になった。

ダークエルフ、吸血鬼、サイキックは存在も許されなく追われている。

かつては狩られるだけであった人間たちは、帝国という大きな国を作って反撃に出ている。

テンプルナイツという強い力を得て、人間が自己主張し始めただけだろう。

冒険者として世界を回って来た俺からすれば、心情は亜人よりなんだがな。

あいつら見た目は違っても付き合ってみれば案外良い奴らだぜ。

伝説のパラディンアーマー