魏王宮

滅びの都となった魏王宮。

国の中枢としての機能を失った王宮の住人は、もはや死人しか居ない。

魏王宮に近づいた冒険者たちは異変に気付いた。

死体しか居ないと思われたこの地に、生ある者の姿が見える。

行く先々で冒険者たちは戦闘訓練を受けた者に襲われた。

ゾンビには無い明確な意志をもって冒険者たちを排除しようとしてくる。

その者たちの皆、大陸では見ない服装をしていた。

そしてゾンビは姿を現さず、所々に焼かれた死体が捨てられていた。

魏王宮が見えてきた。

しかし周囲に見えるのは焼き払われた死体の山である。

そこは予想していたような死者の楽園では無かった。

それはまるで広大な火葬場だ。

魏王宮の前に武装した集団がいる。

その出立ちは、東方の国の武者の姿だ。

中心には炎を身にまとう巫女が居る。

冒険者たちが近づくと、炎が鳥となって形を作った。

炎の巫女：
「この日、この時にこの場へ現れる者よ。
　何者にそそのかされたか？
　その繰り人形の糸を焼き切り
　安寧を与えようぞ。」

炎の巫女が手をあげると、炎の鳥が警笛のような甲高い声を上げた。

そして武者たちは一斉に冒険者たちに襲いかかって来た。

炎の巫女は言った。

「文明が悪よ。」


知の神は言った。

「知が悪だ。」

天使は言った。

「性善なる種だけ残ればいい。」


悪魔の司令官は言った。

「共栄を知る支配層が必要。」

四翼の悪魔は言った。

「頂点は少数でいい。」


黒い獣は言った。

「敗者絶滅は自然の摂理。」

戦女神は言った。

「力と勝利こそ単純にして本質。」

巨人は言った。

「愛が勝つ！」

各々が各々の思想を持って戦っている。

そのどれもが理想の未来を描いている。

しかしその手段が争いである必要はないはずだ。

この戦いの意味は何か。

本質は何か。

どれも生存競争ではないか。

生存に価値があるから奪い合いが起こる。

故にその価値が無くなれば良い。

生死に価値が無くなれば、国民に等しくそれが与えられれば、争いは起こらない。


必要なのは研究だ。

戦いではなく、飽くなき探求、知に力を……

故に、我は言う。

「永遠を求めるが生の定め。」

壊れた賢者の石