深淵の海より来たりて

「約束は守って貰うぞ。俺の生徒たちを元いた場所へ戻すと。それを違えたならば……。」
「ああ、必ず約束は守ろうとも。何せ、お前は……私なのだからな。」
異世界オリュンポスに生まれ、秩序を良しとするトリトン。
異世界カナーンから切り離され、異世界オールドワンズへと堕ち、混沌に溺れたダゴン。
彼らは世界を違える別の存在であり、本来であれば交わらぬはずの者たちであった。
しかし、互いの存在を認知し、ひとたび「縁」がその間を繋いだならば。
互いが手を延ばし、何かを受け取り託そうとしたのならば、世界はあらゆる「壁」を超えて広がる。
そして願いは、記憶は継がれていく。
深淵に沈んだ願いはいつか、別の誰かの導きとなるのだろう。
最後に、「深淵に在りて洪水を担う」この両名に深く関わる事物のことを記しておこう。
全ての世界には「禁則（タブー）」を封じた、開けてはならぬ「箱」がある。
そして、箱を開け禁則を知った後に起こるは「世界の記憶すべてを鎮める大洪水」。
そうだ、「大洪水」の目的の１つは「禁則の記憶を洗い流す」こと。
･･････禁則を破ることに悦楽を覚えるダゴンと、禁則に厳しいトリトン。
２人の性格の違いこそ「世界の禁則を知ってしまったか否か」の差、である。
故に、彼らの記憶の結びつきは、世界の常識を覆し「例外」への扉を開く鍵となるのだ。