むかしむかし、雪の降り積もる白いせかいのまんなかに、
アイルーたちがくらしていました。
そこには、彼らの作った立派な、かまくらがありました。
冬の季節のおかげで、アイルーたちはかまくらを失いませんでしたが、
季節はめぐり別れのときが近づいていました。
あるとき、とうとう春がやって来て
彼らのかまくらは消滅してしまいました。
力作を失ったアイルーたちは、悲しみに暮れ、
気落ちしてしまいました。
アイルーたちは、おうちのまんなかへとたどり着き、
感情を溢れさせました。
一匹は、地面に倒れ込んで、陸のようになりました。
一匹は、大きな衝撃に固まり山のようになりました。
一匹は、うずくまって湖のようになり、なみだは雨のようでした。
一匹は、泣き寝入りに就いて、森のようになりました。
そしてさいごの一匹は、お山に登って星のようになり、
その頂上でじぶんの気持ちを叫びました。
アイルーでは、自然の摂理をどうすることもできず、
次の冬を待つしかありませんでした。
やがて、一人の工房の職人が、
悲しむアイルーたちを元気付けようと、
ある物の製作に、とりかかりました。
ついに職人は、工房の技術をたよりに、
一つの完成形へとたどり着きました。
しばらくたってから、職人がもどりました。
アイルーたちはたずねました。
「やあ、なにをしにきたんだニャ」
職人はこたえました。
「ああ、わたしたい物があるんだ」
職人は、とある銃槍をとりだしました。
そして、アイルーたちにその銃槍をわたすと、
どこかにいってしまいました。
アイルーたちが銃槍を受け取ってから、
何回も冬がおとずれ、何回も春が去りました。
アイルーたちは、職人も、銃槍が生まれたわけも知りませんでした。
しかし、工房の職人が作り上げたかまくら型の銃槍は、
彼らのもっともたいせつな宝物のひとつとして、
その後も一度も溶け出すことなく、
かわらぬままでありつづけました。
|