L28改

Last-modified: 2021-04-19 (月) 12:40:29

L28改は悪魔のZに搭載されているエンジンの通称である。正式名称はとくに無いが、L型28改3.1Lツインターボと呼ばれている。
原作にも主人公のアキオが悪魔のZに初めて遭遇した時に車検証を見る場面が存在するが、そこにもL28カイ(改)と書かれている。

ちなみにL型エンジンは、昔日産自動車が製造していたSOHC直列4気筒・6気筒エンジンの事である。
頑丈な鋳鉄製ブロックベース構造、チェーンによるカムシャフト駆動など耐久性を重視したことから、その構造ゆえに本来は高回転向けでなく決して軽快なエンジンとは言い難い反面、 扱いやすい・堅牢・長寿命といった長所を持っていた。頑丈であることからチューニングベースとしてのポテンシャルも高かったことで一時期は日産の主力エンジンとしてユーザーから大きな支持を得た。
競合メーカーがクロスフロー型シリンダーヘッドを持つエンジンを続々と開発した1970年代以降も、あえてカウンターフロー型を踏襲し生産し続けた。

この時代のS30型フェアレディZにはL20エンジンが搭載されており、北見曰く「国内入手困難なエンジン」なのでかなりのレア物だった…が、S30Zがモデル後期に入っていた1975年にはC130型ローレル(2代目)や330型セドリック(4代目)・グロリア(5代目)にはL28が搭載されたため、作中の年代が不鮮明なので確証は無いが矛盾が生じている。

 

ただし、ターボモデルであるL28ET*1であれば、搭載された車種はS130型フェアレディZの北米仕様のみであるため、「国内では入手困難」という発言は辻褄が合う。
しかし北見が悪魔のZの原型となるS30Zを初めて目撃したときは搭載されているL28エンジンはメカチューン・キャブレター仕様だったため、わざわざインジェクション・ターボ仕様エンジンをパワーが落ちるのを承知でメカチューンして、インジェクションより燃料噴射の精密さで劣るキャブレター仕様に改造したのかという別の疑問が生じる。*2
同様にレア物としては排気方向が違うLY28ヘッドがあるが、これはエンジンの絵を見た段階で否定される、となると「サファリヘッド」と呼ばれる冷却水経路が違うバージョンが有力…となるが、これは国内どころか国外でも入手困難かつ、大森(現NISMO)で一部の人に対して販売された故に国内のほうが入手しやすい可能性が高いのでまた微妙な感じではある。
最後の可能性としては「当時のインジェクションではパワーチューンをするのは難しかった、故に元々乗っていたL28メカチューンエンジンを下ろし、L28ETベースのキャブターボ化した」というもの。例えば1984年に初の国産車300km/hを叩き出したHKSのM300は5M-GEUをキャブターボ化している。
当時は単純にインジェクションの制御が甘かったり、キャブの方が経験値が多いのでアナログでも合わせやすかった、キャブの方が大口径かつ多連のスロットルボディを持てるので、吸入量を多く取れたなどの理由がある。

 

ともかくその悪魔のZの原型となるS30Zを手に入れた北見は、3.1Lへのボアアップ、TD06ツインターボ化を行い、出力600馬力・トルク80kg·mの悪魔のZを完成させた。
 
実車では3.1Lへのボアアップ、ツインターボの装着は非常に簡単な部類だった。これはFJ20用ピストン+LD28用クランクと、純正部品を加工するだけでパーツが揃ったため。
しかし2020年代になるとS30Zに限らず、平成初期の車ですら部品の調達に難儀するようになり、工賃などによる維持費も馬鹿にならない。また、キャブレターは最適なセッティングを出し、それを維持するのが難しいため、よほど資金に余裕がある、こだわりがあるのでなければおすすめはしない。インジェクションキットも存在することだし。


*1 余談だか、型式のEはインジェクション仕様、Tはターボ仕様を指す。
*2 また、HKSからも国内のL28対応のボルトオンターボキットが存在したのでこの点でも疑問が生じる。