概要
DQ3(HD-2D版除く)・DQ4およびDQ7に登場した【種族】。
起源はJ・R・R・トールキン『指輪物語』(The Lord of the Rings)および前作『ホビットの冒険』(Hobbit)に登場する種族で、おそらく”home”と”rabbit”からの造語と思われる。
TRPGでは一般に、プレイヤーキャラクターの選択できる種族として同種の小人族が登場するのが通例。ただし【エルフ】や 【ドワーフ】と違いトールキンの造語なので、権利関係の事情から、名称や細かい設定は変更されている。(『D&D』のハーフリング、『ソード・ワールドRPG』のグラスランナー等)
その意味ではDQ10の【プクリポ】がこれに相当すると言える。
敵側としては、ホビットのモンスターはDQ6で【ダークホビット】が初登場している。
ドラゴンクエストにおける「ホビット」は冒頭で記された3作品に登場したのみである。
しかも下述の通り、髭があるなど本来のホビットと相容れない要素が多い。実際後述にもあるとおり、本来DQ3の開発段階では『ドワーフ』の予定だったのだ。
加えて、それらのホビットも海外版ではdwarf(ドワーフ)に変更されており、「ホビット」は日本国内限定となっていた。
DQ7を最後に登場しないのはトールキン財団の版権管理によるものだと推測されていたが、2022年、DQタクトにダークホビットと同型の【ダークポックル】が登場。併せて、DQ10オンラインでも実装済のダークホビットがダークポックルに改名(DQ10オフラインでもこの名前で登場)され、ほぼ確定的となった。DQM3やHD-2D版DQ3でも、過去作や従来版でホビットだったものはすべてドワーフという設定に変更となった。
ちなみに同様の例として【ミスリル】と【バルログ】がある。これらは今のところ(HD-2D版DQ3発売時点)は影響はない模様だが、今後の行方が注目される。
本来のホビットとの相違点
トールキン作品のホビットは髭を蓄える習慣がないとされ、家こそ地面に掘った穴だが、基本的に地上で活動する。
ところがDQ3のホビットは、立派な髭をたくわえて地下に住み、普通に見ればドワーフそのものである。
この点、元々DQ3ではドワーフとしてドット絵を描いたが、カタカナの「ワ」が使えなかったので名前だけ同じ小人族のホビットに変更されたからではないかとも言われている。
これは堀井雄二によるDQ3の設定資料で【ノルドの洞窟】が「ドワーフの洞窟」と記載されていること、同作発売前の【ファミコン神拳】では「ドワーフという古い種族の住む、地底の町なんかも、あるらしいぜっ!!」と書かれていたことからも裏付けられる。
もしもコロポックルであれば当時のカタカナ制限にも引っかからないので最初からそうすれば良かったところではあるが、参考になったWizardryには登場しない種族なのだから仕方ないところだろう。なおWizardryでは人間・ドワーフ・エルフ・ホビットに加えてノームという種族があり、こちらでもカタカナ制限の影響を受けなかったはずなのだが、なぜ字数の多いホビットが選ばれたのかは不明。まあ確かに、ノーム(のうむ)だと日本語では同音異義語があって子供が混乱しそうではあるが。
また「ノ」はDQ3から採用されたカタカナでもあるので、開発中の段階ではDQ2のカタカナで記述できる「ホビット」のほうが無難と思われたのかもしれない。なおエルフの「エ」もDQ3からの採用なのだが、DQにおけるエルフは特に女性的なイメージがあるので、エルフについては他の種族で代用できたとは考えにくい。
ちなみに、トールキン作品ではエルフとドワーフはほとんど犬猿の仲の関係であり、仮にDQ3やDQ4に登場する「エルフと仲良しのホビット」が本来はドワーフだったとすると、トールキン作品とは真逆の設定になるところだったと言える。
なお、元々の神話や民話においてはエルフとドワーフが不仲というような設定は特に存在しない(むしろしばしば混同されるほど近い種族である)。
DQ5は全てのカタカナが使えた初の作品だが、ドワーフが登場し、ホビットは登場していない。
DQ6でもホビットは登場しないが、FC版DQ3のホビットや前作のドワーフに類似した角付の兜を身につけたNPCグラフィック(SFC版DQ3のホビットとは微妙に異なる)自体は登場し、【ビルテ】など、一部のおじさんキャラに使用されている。
リメイク版では例によって天空シリーズのNPCグラフィックが流用されており、ビルテなどのグラフィックがDQ4のホビット族と同じになっている。
DQ7ではとんがり帽子の小人風グラフィックでホビットが再登場。後述の通りこのグラフィックがそのままドワーフに流用される例があったりと、扱いが安定しない。
しかしドラゴンクエストが本格的に世界展開されるようになったDQ8以降では、過去作のリメイク以外ではホビットは登場しなくなった。
DQ3(HD-2D版以外)
髭をたくわえ二本角の兜をかぶり、ついでに斧と盾で武装しているという、どこから見てもドワーフの姿(上述)。
FC版では商人のNPCとパレットが同じで、どちらも髭面のオッサンで雰囲気が多少似るため、変身するときは混同しないように。
なおリメイクではとんがり帽子に改まった。
本作の【ノルド】がDQシリーズ初登場のホビット。
【へんげのつえ】でホビットに化けると【エルフの隠れ里】で買い物ができる。
道具屋に限らず、隠れ里のエルフは全員、魔物に化けてもしっかり見破る眼力を持つが、ホビット相手だと油断するのか変化が見破れないらしい。
ただし、エルフの女王だけはホビットに化けても見破っているのか、普段と同じ台詞を言う。
ホビット自身もホビットや動物・魔物に変化した場合に見破ってくるが、「やあ、○○さんじゃないですか」と、急に態度が変わる。
しかし、エルフが見破れる【透明】状態は見破れない。
FC版では【ランシール】にもホビットがいたのだが、リメイク版では何故か【スライム】に置き換えられた。
この他【オルテガ】と一緒に旅をしたというホビットが世界樹の北の小屋に住んでいる。
HD-2D版では上述のとおり【ドワーフ】に変更されている。
見た目は従来のホビットから変化していない。
DQ4
ホビット族の村として【ロザリーヒル】が登場する。
グラフィックは前作から大幅に変更され、武具は持たずピンク色の帽子と服を身に着けている背が低い髭面の男性となっている。
第三章で【トルネコ】が【レイクナバの武器屋】でバイトしているときの客としても登場することがある。
【エルフの里】の防具屋や【天空城】の【ルーシア】と【ドラン】がいる部屋にも共に暮らしているホビットがいる。
ちなみに、【フレノール】の墓守や、山奥の村の近くに住む【木こり】も同じグラフィックが用いられている。
PS版
DQ7のグラフィックを流用して緑の服を着ており、女性や子供のグラフィックも登場するようになった。
また移民のカテゴリとして「ホビットおじさん」が登場。複数導入されたホビット族のうち髭面のグラフィックが該当する。
【グレイトファーム】の作成条件として、【牛】、【馬】、【豚】の家畜3種の代わりを務めることができる。
人語を話せるが【農夫】の代わりにはならない。
また、亜人種だが【ミステリータワー】の条件の特殊種族には該当しない。
【シェドック】、【ヌヌス】、【ノックー】、【バーキン】、【ボンバ】、【ルドスト】、【ン・ゴグス】の7人。
DQ7
洞窟の中に住むことを好む為、【ホビット族の洞窟】にはたくさん住んでいる。DQ3とは違い、子供や老人など種類が多い。
【メルビン】からは「ガンコで元気のいい連中」と評されている。
直前に行く【レブレサック】では見た目が同じ、【ルカス】と【リフ】も登場するが、彼らがホビットかは定かで無い。
過去、現代共に【コスタール王】はホビット族の王妃を迎えていて、現代では子供も2人いる。
【ガボ】は「人間とホビットで結婚出来るんだな」と感想を漏らしている。
ホビットなまりや、ホビット族の言語、ホビットの方言など存在することが判明している。
現代【コスタール】の宿屋になまりのあるホビットがいるが、なまりと言うよりは片言なだけである。
主人公達があまりのまずさに吐いてしまう【ひかりゴケ】の青いしぼり汁を美味しいというなど、味覚も人間とは違うらしい。
アイテム物語
【王者の剣】のエピソードに、ホビットのエドラスが登場。
心正しき人間に課せられた「百日の間に、神々に捧げる武具を造る」という試練を助けるため、【精霊神ルビス】に遣わされてエルフのエアリエルとともに滅亡が近い【ムー】にやってきた。
ホビット族は背丈は人間より小さいがとてつもなく強靭な筋肉を持っているとされ、エドラスは己の強みを存分に発揮して【ブルーメタル】と【オリハルコン】を鍛え上げるのに貢献した。
こうして造られ、祭壇に奉納された武具が、後に王者の剣、【光の鎧】、【勇者の盾】と呼ばれるようになった。
また、ホビットはエルフ(妖精とも呼ばれている)とならんで古い種族であり、人類の起源を遡り天地創造のときから存在していたと伝えられている。
その他のエピソードでも、創世から間もないアレフガルドに住むホビットや、天上界で妖精とともに神々に仕えるホビットに言及されている。