【竜の騎士】

Last-modified: 2021-04-26 (月) 01:35:10

ダイの大冒険

読みは「ドラゴンのきし」。新アニメ23話及び原作単行本第九巻のサブタイトルでもある。
漫画【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】において、人間離れした圧倒的な戦闘力を持つ存在。
主人公【ダイ】がこの資質を秘めており、作中で覚醒していく。
また魔王軍六大団長の【バラン】も竜の騎士であり、実はダイの父であることが明かされる。
 
かつて世界は人、魔族、竜族の三種が覇権を巡って血みどろの争いを繰り広げており、神々はこれを疎ましく思った。そこで人の神、魔族の神、竜族の神は合議の場を設け、人間の体と心、魔族の魔力、竜族の強大な戦闘力を併せ持つ存在を創ることにした。これが竜の騎士である。
珍しい例だが、バーンが「戦いの血が流れる戦神の末裔」、【竜騎衆】のラーハルトが「あの方は戦神の息子なのだから」と、竜の騎士(ダイ)を表現したシーンもある。バランを崇敬していたラーハルトはともかく、魔界の神を自称するバーンですら、神族が作った竜の騎士は神に近い格を持つ存在だと認識していたようだ。

竜の騎士に与えられた使命は、人、魔、竜のいずれかの種族から世界のバランスを崩すものが現れた時にそれを征伐し、世の均衡を保つことにある。
普段は人間と変わらない姿をしているが、その戦闘能力は人間とは比べ物にならない。
額に「竜の紋章」(ドラゴンのもんしょう)と呼ばれる紋章が浮かび上がるとその戦闘力はさらに跳ね上がり、身体能力が大幅に向上して物理攻撃・防御能力が強化され、未発動状態では使えない呪文も使用可能になる。更に全身が「竜闘気(ドラゴニックオーラ)」で覆われる。
竜闘気は物理的にも魔法的にも高い防御力を誇り、生半可な攻撃は全て弾いてしまう他、竜闘気を収束させて「【紋章閃】」としてそのまま放つだけで山に大きな穴を開けるほどの破壊力も持つ。
ただし、その高すぎる破壊力ゆえに、竜の騎士が全力で戦う事に耐えられる武器は殆ど存在せず、並みの武器では技を放つことすら出来ずに燃え尽き、最高クラスの素材で作られた【鎧の魔剣】をして一撃放つのが限界、神々の世界の金属【オリハルコン】で作られた武器だけがそれに耐え得る。そのため、竜の騎士には紋章と共にオリハルコン製の【真魔剛竜剣】が受け継がれている。
また、竜闘気による消耗は暗黒闘気と同様に回復呪文を受け付けず、効果が現れるようになるには影響が切れるまで時間を置くしかない。厳密には、バーン曰く「『魔』に近い闘気で限界を超えた戦いをすると、肉体にそうした反動が出る事がまれにある」ということらしい。
レオナはそこから「竜闘気で受けたダメージもすぐには回復できないはず」と推測しているが、バラン戦では普通に回復呪文が通用しているため真偽は不明。一応、双竜紋クラスの竜闘気量でなければこの現象は起こらないと見れば、バーンの台詞とも矛盾はしない。
初戦でダイから【アバンストラッシュ】を食らったあとのバーンが、【ベホマ】で回復できていることとも矛盾しない。
 
さらに、竜の騎士の真の姿とされる竜・魔族・人間の3つの力を併せ持つ最強戦闘形態(マックスバトルフォーム)「竜魔人」の形態に変身することが可能。
力を司る魔族と竜のパワーバランスが強くなるためか血の色が人間と同じ赤から魔族と同じ蒼へと変化した上に竜の翼やウロコを持つ半竜半人の姿となり、戦闘能力がさらに増強される。
バランは左目につけているアクセサリ「【竜の牙】(ドラゴン・ファング)」を握り締めて血を流し、天高く掲げてから落雷を受けることで変身していたが、竜の騎士としていろいろと規格外の存在であるダイは、普段はセーブされている2つ目の紋章の出力を意図的に全開にすることで竜の牙無しで変身している。
また、竜の牙は儀式用の小刀を持つ伝統の名残と説明されており、古代の竜の騎士は儀式刀で変身していたということになる。
 
この形態になると【ドルオーラ】が使用可能になるが、魔物と竜の心が著しく強化されるため、(たとえ肉親であっても)敵を全て撲滅、あるいは自身が致命的負傷を負わない限りは元の姿には戻れなくなってしまう。
変身しても戦闘に必要な怜悧な思考は全く失われていないため、暴れるしか能のない魔獣と比べてもはるかに恐ろしい存在となる。
あまりに攻撃性が高い為か、この形態にはよほどのことがない限り変身しない。
 
他にも、武器に魔法を纏わせて攻撃する【魔法剣】を唯一可能にするなど、特殊能力は多い。
また、ダイの単行本に明記されているステータスのところに紋章発動時は数倍パワーアップすると書かれている。
ゲーム作品でレベルアップにより数ポイントの成長でも時に強化が実感できるDQシリーズにおいて、「数倍」の強化というのは文字通り桁外れの強さを説明するに十分。
 
彼らは人間、魔族、竜のいずれでもなく、聖母竜(【マザードラゴン】)によって生み出される生命体。
聖母竜は何処かへとその子を産み落とし、その地の人間はそれを神の子として育て上げる。そして成人した竜の騎士はその使命に目覚め生涯をかけて全うする。
その殆どは戦いの中で命を落とすため、歴代の竜の騎士それぞれに血の繋がりなどがあるのかは不明だが、命を落とし生涯を終えた竜の騎士は聖母竜によって紋章と魂を回収され、その力は聖母竜が宿した新たなる生命へと受け継がれ、聖母竜は再び新たな竜の騎士を産み落とす。
こうして竜の紋章に戦闘の経験などが蓄積されていき、その紋章を引き継いで生まれるため、代が進めば進むほど、生まれながらにして最初から戦闘のプロとも言うべき経験値を持つ。
こうした戦闘経験の蓄積は、俗に【闘いの遺伝子】と呼ばれる。
本来竜の騎士は子を成す事がないため、この世に1人しか存在しえないはずが、後述の理由により、物語中には主人公のダイとその実父である魔王軍の竜騎将バランという2人の竜の騎士が同時に存在しているイレギュラーな状態となっている。
 
人間、魔族共に一般的にはあまり知られていない存在らしく、知識の豊富な【ザボエラ】も紋章を見ただけではわからなかった。バランがハドラーに向かって「あの少年、ダイは…竜の騎士なのだろう!!?」と問い質したセリフを聞いて、ザボエラは「ド…竜の騎士とは…まさか…あの…!!」と言っているので、『その存在と名称くらいは知ってはいるが、それ以上のツッコんだ事は何も知らない』くらいの知識水準なのかも知れない
【ネイル村の長老】は「額に紋章を抱く者はあらゆる武術と呪文を使いこなす最強の騎士一族だという噂を耳にしたことがある」と述べている。
【マトリフ】【ポップ】の描いた絵を見て正体に気付き、書物を調べてまわっていた。
【テラン】の地では神の様に崇められており、テラン出身の【ナバラ】【メルル】は、ダイの紋章を一目見て竜の騎士と分かった。
【ハドラー】はダイとの初戦で、ダイの額の紋章を見て、竜の紋章とほぼ確信し、魔王軍で最初にダイの正体を見ぬいていた。

バラン

当代の正当な竜の騎士。
真魔剛竜剣を持ち、竜魔人形態への変身が可能。
年齢のためか竜の騎士としての純度のためか、剣技・魔法の両方においてダイより大きく優れている。
剣士としては魔界含めて最強クラスであり、魔法では上級電撃呪文の【ギガデイン】以外にも小技の【ラリホーマ】まで使いこなし、ダイには不可能な剣による繊細なピンポイント攻撃をも可能にする。
 
能力などは歴代の竜の騎士と変わりがなく、その点では例外足り得る存在ではないが、「子をもうけた」という点は竜の騎士として前代未聞であり彼も十分例外。
またダイがハドラーに致命傷を与えられた時は「父としての怒り」によってハドラーを圧倒するほどの力を引き出した。

ダイ

バランの息子であり、人間と竜の騎士のハーフ。
純粋な竜の騎士ではないために、バランを含めた歴代の竜の騎士とはかなり異なる。
 
マザードラゴンから生まれておらず、先代の竜の騎士の紋章を受け継いでいないが、自分自身の竜の紋章を生まれつきに持つ。この竜の紋章でも竜闘気は扱えるが、歴代の竜の騎士の経験値は無い。
加えて、年齢的に未熟なためか竜の騎士としての力が少ないためかは不明だが、電撃呪文を【ライデイン】しか扱う事ができない。序盤に額に紋章が現れた時はバギクロスやヒャダインなどの高等な呪文を使っており、戦闘時の能力が紋章に伴われる形でバランから遺伝した可能性はあるが真相は不明。
とはいえ、バランは「普通竜の騎士は成人するまで己の意思で紋章の力をコントロール出来ないものだ」と述べているので、ダイの年齢で紋章を発現、戦闘に活用できる時点で十分イレギュラーな存在である。
一度バランに紋章の共鳴を利用して記憶を消去されてしまったが、再び記憶の消去を試みられた時に、それを回避するため額から右手の甲に紋章が移動。
額以外の場所に紋章が出る事は、歴代の竜の騎士では一度も無かったことである。
 
劇中終盤、先代の竜の騎士=父親が死亡した事によって紋章を受け継ぎ、竜の紋章を2つ持つ事になる。
受け継いだ2つ目の紋章は左手の甲に現れ、「双竜紋」となる。
バランの紋章を得たために歴代の竜の騎士の経験値を引き継いだばかりでなく、竜闘気の総量も大きく増し、人間形態のままでの【ドルオーラ】の行使をも可能にした。
同時に、ドルオーラの性質上、これを竜魔人化せず生身で放つダイの姿を見たバーンがそれを根拠に、竜魔人化したバランを超える強さを持っていると確信するに至る。
 
なお、普段は両手の紋章の力を解放して戦っているつもりでも、左手の紋章の力はおよそ3割程度しか出ない。
これは左手の紋章の力を全開にした場合、前述の紋章の共鳴が起こってしまうためである。紋章が手の甲という本来とは違う位置に移動したのもこのためである。
バランがダイの記憶を消そうとして起こした共鳴にダイが抵抗した時は凄まじい頭痛に襲われており、バランは「抵抗すれば気がふれてしまうぞ!」とまで言っているほど。
本来2つ存在するはずのない紋章が共鳴を起こす事は非常に危険なものであり、実際に共鳴を受けたダイは一度記憶喪失となり、共鳴攻撃を仕掛けたバランも戦闘継続が出来なくなるほどに激しく消耗していた。
ダイはこの体験からか、無意識のうちにバランから受けついだ方の紋章の力をセーブしている。無意識ではあるがダイ自身、片方の紋章の力が全開でないことは気づいている。
 
これを意識的に全開にすると、両手の紋章は本来あるべき額に戻って一つになり、半分は人間であるダイも竜魔人に変身する。
ただし竜魔人化と言っても翼が生える訳でもドラゴンの表皮になる訳でもなく、ほとんど人間のままの姿を保つ。
バランの竜魔人形態と共通するのはせいぜい髪が逆立ち、額の紋章が巨大化して髪型と一体化するかのようなデザインになる点くらいである。
見た目は人間のままの部分が多いとは言え、戦闘能力は竜魔人の名にふさわしく跳ね上がり、まともには歯が立たなかった真・バーンを逆に素手のままで圧倒する程になる。
また性格にも変化が見られ、良くも悪くも殺意をむき出しにして戦う事が無かったダイが、真・バーンほどの相手に殺気を感じさせ、戦慄させるまでになる。
その「獣のような殺気」は、大魔王バーン曰く「ダイに無くバランにあったもの」であり、その時点での力としては既に全面的にバランを凌いでいたダイを、心身ともに「完全無欠」にさせるほどのものだった。
それはさしものバーンですら両腕があって【天地魔闘の構え】を取れたとしても勝てぬだろう、と思わせる強さであった。
FC版DQ1の公式ガイドでは、全ての呪文を覚えるほどレベルを上げることで、あらゆる攻撃方法を身につけた「完全無欠」の勇者になれると書かれている。完全無欠という例えが、すなわち魔王を楽勝で倒せる強さのラインに達しているのをうまいこと踏襲している。
 
最初から竜魔人化していれば苦戦しなかったのではないか、という声もあるかもしれないが竜魔人化をすぐに選ばなかったのは、ダイの知る竜魔人は完全なる破壊の化身そのものであり、共に戦う仲間がいたこと、ダイがダイのままでいられる保証がなかったこと、どんな姿になるかやまた記憶を失うかもしれないこと、一度変身したら元の姿に戻れないかもしれないことへの恐怖、最後まで人間界の勇者として戦いたい、という意志あってのことだった。
最後にそれらを踏み越えたのは、自分が魔獣になることよりもみんなの明日を守りたいという決意の姿といえる。
 
ちなみに、戦闘の合間に顔を覗かせた【ヴェルザー】は一度敗れかけていたダイの様子を見て、戦力としてはバランをとうに上回っているにも関わらず、「やはり父(バラン)には遠く及ばぬ」と評した。
バーンからすれば負け惜しみにして不当な評価にも見えるこの一言は、当然「獣のような殺気」が感じられないゆえであり、竜魔人という戦いの獣になることで、技・身体能力・経験だけでは打開できない境地を越えるに至った。
それでも、殺意をむき出しにして戦うことを否と捉える感情は根底にあるらしく、真・バーンを素手で圧倒している時も、涙を浮かべながら「こんなものが正義であってたまるか!」と言って否定しており、すなわちダイは竜魔人となっても破壊を旨とはしてない。人間と竜の騎士のハーフであることの、ある意味最大の特徴とも言える。
ダイの強さなどバランには遠く及ばぬと一度は評したヴェルザーも、バーンが鬼眼の力を解放したことを察知すると、ダイがそこまで相手を追い詰めていることを知り、認識を改めている。
 
「力こそ正義」を掲げる者は多いが、より強い力で抑え込まれた時に納得できなければただの詭弁である。
ダイはバーンに対し、この「力こそ正義の盲点」を、力の権化ともいえるこの姿になった状態で、そして力で圧倒しながら言い放ち、バーンはそれに対して言い訳はせず、ダイと同じく自分を捨てることで「さらなる力」を持ち出して最後の戦いを挑む。

竜の騎士の見た目

ダイもバランも、普段の見た目は人間と全く同じであり、ほぼ区別はつかない。
実際、人間の血が混じっているダイに関しては、彼と直接対峙したことのある【ハドラー】【クロコダイン】【ヒュンケル】【フレイザード】【ザボエラ】【ミストバーン】などの軍団長も、初見ではダイを普通の人間と誤認している。
ダイと接触した人間たちも、誰一人気づくことなく人間として接している。
ただし、【ロン・ベルク】はダイをひと目見て「人間じゃない」ことに気づいているため、気づく者は気づくようだ。
 
また、魔王軍側では、バランが竜の騎士である事実は基本的に伏せられていたようで、上層部のごく一部のみが知っていた。そもそも魔族の間でも、竜の騎士の存在自体がほとんど知られていないようである。
普段は見た目が人間と全く同じであるバランを見て、他の軍団長たちが特に疑問を抱かなかったことについては、そもそもバーンの方針は力さえあれば例外なく受け入れるというものであり、実際に軍団長には純粋な人間であるヒュンケルがいるため、バランも同じ人間かそれに近い種族であると考えられていてもおかしくはないのかもしれない。
ちなみに、正体を知っていたのは直接スカウトした【バーン】と、魔軍司令のハドラー、古参の部下であるミストバーンと【キルバーン】のみ。
物語序盤に、ハドラーがダイの額の紋章を見てダイの正体に気づき、「バカな、ありえん」と否定したのは「竜の騎士が2人存在している」ことについてであり、魔王軍のバランが竜の騎士であることの伏線となっている。
また、ハドラーはこの事実からバランとダイの関係性に最初に気づいた人物であるが、バランがダイを部下に取り込むことで自身の立場を脅かす存在になることを予想し情報を隠蔽、バランをダイから遠ざけ、主君であるバーンにも報告せずにダイを抹殺しようとしていた。
同じくバランの正体を知るミストバーンは、上述の通り、何度かダイと対峙していたものの、目の前で堂々と紋章を開放されることがなかったため、ダイの正体には気づかなかった。
魔王軍の中でダイの正体が竜の騎士であると明らかになったのはかなり時間が経ってからで、ザボエラが竜の紋章をそれと知らずにバランに漏らしたことが切っ掛けとなった。

余談

経緯は様々でも、人間社会や世界を侵略する魔王などに対して正義を旨に奮い立つ「勇者」とは異なり、竜の騎士は「覇権争いをする人間と魔族と竜族が疎ましい」という理由で神々が地上に遣わした断罪の代行者のような存在と明確にされている。
その使命は「世を乱すものが現れたら種族問わずこれを討伐する」ことであり、その力も「人間・魔族・竜族いずれかが平和を乱しても対抗できるように」それぞれの特長を組み合わせている。
つまり人間であっても【アバン】【ヒュンケル】のような特出した力を持った個人、或いは集団が邪悪な野心で平和を乱すようなことがあれば、竜の騎士がその者らを討伐しに現れる可能性は十分あり得るのだ。
それはそれで、相手が何者であれ「竜の騎士=邪悪な者を討った正義の勇者」という構図が出来上がることになるのだが。
 
しかし、バランがハドラーとヴェルザーに優先順位をつけてハドラーの暴虐に喘ぐ地上の人々の救援を後回しにしたり、ヴェルザー討伐後に【ソアラ】との出会いから別れまでの数年間戦いのない休止期間を作ったり、彼女の死によってそれまでの方針を180度変えて「人間こそもっとも邪悪で世を乱すから滅ぼす」と決意してバーンの地上侵略に手を貸したりといったことからわかる通り、「討伐対象の判断」や討伐のやり方は完全に竜の騎士個人に委ねられており、それに対して神々が監視、制御している訳ではない。
つまり竜の騎士として「世を乱す者の討伐」という使命と力は与えられているのに、何を狙うのかに具体的な基準は無いのだ。
乱暴な言い方をすれば、その代の竜の騎士個人の価値観で「世を乱す」と見なされた者が優先して狙われる仕組みであり、個人ではなく種族まるごと滅ぼすという判断さえも妨げられることはない。
竜の騎士に所縁のあるテラン王国の住人も「竜の騎士が人間を悪だと断じ、それで滅ぼすと言うのなら、それが正しいのだ」と認識していた。
 
力のひとつとして「人間の心」を持つ竜の騎士は【マザードラゴン】に産み落とされたあと人間の手で育てられるらしいが、そうした環境や経験、さらに【闘いの遺伝子】からの情報など全てを含めて、その代の竜の騎士の人格や思想次第で「討伐すべき悪」はいくらでも変わることになる。
これだと、原因はどうあれ私情や私怨を目的に動くような性格の竜の騎士が育ってしまった場合、バランのように特定の種族の一部の行動だけを根拠に全体を無差別攻撃したりしかねない側面がある。
逆にダイはかなり人間に偏重した価値観を持っており、人間の身勝手な面も承知の上で、もし人間に敵視されたらとバーンに指摘されても「自分が身を引き地上を去る」と言い切っている。正規の竜の騎士ではないとは言え「世を乱すものを討つ使命」以上の基準を自身の内に持っているのが明白である。
バランもダイもどちらかというと主観を大切にする性格であるため、竜の騎士には使命や力の使い道に関する「公平な視野」は本能や能力としては備わっていないようだ。
三種族の覇権争いを疎んだという神々の目的や遠大な視点からすれば、竜の騎士の不評を買ったなにかしらが滅ぶような結果になったらそれはそれで仕方がないということなのだろうか。
 
作中での竜の騎士の働きであるが、当代のバランについては先に行動していた中で最も力のあったヴェルザーを討伐、代わりに捨て置かれたハドラーは人間の勇者達によって一旦は自己解決されること、ヴェルザーを阻止したあと人間と敵対した経緯も含めて次代の竜の騎士ダイの早期誕生に繋がったこと、人間とのハーフという新たな特徴を持つダイはバランの紋章を継承した末にハドラー、そして恐らくバランでは倒せなかった大魔王バーンも討伐し、物語終了時点で「世の平和を乱す脅威」はひとまず一掃されたため、結果論ではあるが父子二代で竜の騎士の使命が果たされる形になった。
数十年規模で各所に大きな被害は出てはいるが、世界規模で言えばすべて普通の営みで再生可能な範囲であり、神の視点として遠く長い目でみれば上手く機能した、という所だろうか。
 
また、竜の騎士による討伐はいわば力ずくの平定で、その意味では「力ある者が正義を唱える」大魔王バーンの思想と全く同じな上、そのバーンの時のように「竜の騎士より強い者」が現れた場合は機能不全に陥るという、同じような欠点も抱えている。
故に竜の騎士には闘いの遺伝子で知識を伝え、例え敗れたとしても攻略法を見つけるまで何代もかけて再戦し続けるという、それこそゲームシリーズのリセット再戦のような手段が用意されているのだが、そのシステムにさえ見切りをつけさせかけるほどバーンが強かったのは、流石の神々も予想外だっただろう。
結果的に、竜の騎士を造る際に「人の心」を持たせることを選んだのが奏効することになるのだが。

他作品への影響

歴代DQ作品のセルフオマージュの多いDQ11では、『ダイ』を意識したと思われる要素も多数見受けられ、そのうちの一つに【勇者のチカラ】がある。
【主人公(DQ11)】が勇者の特別な力を行使する際には左手の甲に発光するアザが浮かび上がるのだが、このアザは竜の紋章りゅうのもんしょう)と呼ばれている。竜の紋章の話は時期限定のNPC1名が話すだけなので、積極的にNPCに話すプレイヤーでないと見落とすこともあるのだが、これを聞いて右手に紋章がある時期のダイを連想したプレイヤーもいるだろう。
なおクロスブレイドにDQ11キャラが参戦しており、第2弾のスペシャルムービーにおいてダイとDQ11主人公(勇者イレブン)が共演している。この時のダイは右手ではなく額に紋章がある時期なので、二大勇者が手にある竜の紋章を同時発動、という構図は見られなかった。