ロータリーエンジン

Last-modified: 2024-06-12 (水) 13:28:31

エンジンの一種。

一般的なレシプロエンジンのような往復動機構による容積変化ではなく、回転動機構による容積変化を利用して、熱エネルギーを回転動力に変換して出力する原動機である。
湾岸マキシではマツダ車にのみ搭載されている。

 

ドイツの技術者フェリクス・ヴァンケルの発明による三角形の回転子(ローター・通称おにぎり)を用いるオットーサイクルエンジンが実用化されている。そのためロータリーエンジンは別名ヴァンケルエンジンとも呼ばれている。
ロータリーエンジンの研究自体は原理的には古くから行われてきたが、その中で唯一実用化されたいわゆるヴァンケルエンジンは、1957年に西ドイツのNSU社*1とWankel社との共同研究により開発に成功した。

その後はNSUに続いて東洋工業(現マツダ)がドイツ・NSUヴァンケル社と技術提携を結び、NSU社の開発したロータリーエンジンを導入。
だが、乗用車に使用するエンジンとしてはトラブルも多く脆弱でとても実用的な代物とは言えず、当時の設計部の若手エースであった山本健一をリーダーとした開発チームロータリー47士」はNSU式ロータリーエンジンを基に、実用化に向けての改良に乗り出すコトとなる。
「悪魔の爪痕」と呼ばれたチャターマーク*2や、「カチカチ山のタヌキ」と呼ばれたオイル漏れ、脆弱なアペックスシールといった数々のトラブルや難問に悩まされながらも途中で投げ出すコト無く一つずつというペースながらも解決していき、1967年にコスモスポーツをデビューさせるというカタチでロータリーエンジン「10A」の実用化・量産化を成し遂げた。コスモスポーツが量産車初の2ローターRE車という話は世界的にも有名である。

マツダはその後もコスモやRX-7などのスポーツカーのみならずサバンナRX-3のワゴンやセダン、ロードペーサー*3などの大型セダンから、北米ではピックアップトラックにもロータリーエンジンを搭載した「ロータリーピックアップ」を発売、果ては「パークウェイ」というバスにもロータリーエンジンが搭載されていた。
ただし燃費は・・・

 

マツダ以外にも20社を超える自動車メーカーがNSUから基本特許を導入して開発を進めており、シトロエンなどが生産モデルに搭載しているが、1970年代以降は実用化に向けた開発は周辺特許をマツダが先行して固めたため、既に1974年の段階でマツダの「周辺特許を避けては通れない」状況になっており、自動車用として量産を続けたのは東西冷戦の西側ではマツダのみである。
しかし、東西冷戦の東側では「鉄のカーテン」に遮られたか、ソ連のVAZ(ВАЗ)社にて独自に実用化され、同社のブランドLada(ЛАДА)および同社からの供給でGAZ(ГАЗ)社にてロータリーエンジン車を多数生産していた記録がある。

日産も独自で開発を進めており、2代目シルビアに搭載する計画があった。1972年の東京モーターショーで2代目「サニー」にロータリーを搭載したコンセプトカーが展示されており、かなりの所まで進んでいたがオイルショックにより計画は白紙になり、実現する事は無かった。
また当時乗用車を生産していたいすゞもNSUの特許に抵触しない方式を採用して独自の方式のものを開発して「ベレット」に搭載する予定だったが、テストがうまくいかずに断念してしまった。

先述の通り四輪車ではマツダが量産化・市販化に成功しているが、二輪車ではスズキが市販化に成功している*4
スズキは1973年に「RE-5」を発表、翌年に日本国外への輸出*5を開始。497ccのシングルローターエンジンはスムーズな回転フィールとフラットなトルク特性が高い評価を受けた反面、ロータリーエンジン特有の燃費の悪さとオイルショックが重なってしまい、輸出台数は低迷。
2年間で6,000台程度が生産・輸出されただけにとどまる結果となってしまった。

 

メリットとしてはアクセルレスポンスの良さ、パワーロスの少なさからくる高出力と低振動・低騒音、単純な構造と部品点数の少なさゆえに小型かつ軽量である事が挙げられる。
軽量かつ小型・コンパクトであるがゆえに重心や車高を極限まで切り詰める事ができ、コスモスポーツはそれまでのクルマとは一線を画す流線的なフォルム、FDに至っては前後重量配分50:50というクルマにとってはまさに理想的な重量配分を実現した。
またその独特な甲高いエキゾーストに魅了されるファンも数多く存在し、ロータリーエンジン最終年として787Bを引っさげ優勝した1991年ル・マン24時間レースでは現地のジャーナリストをして「狼の鳴き声」とまで表現せしめた。

デメリットとしては、やはりというか低速域でのトルクの細さ、そこからくる燃費の悪さ*6が挙げられる。これは燃焼室内においてローターが回転しながら位置を変えるため点火プラグと混合気の距離が離れ、ガソリンの点火が上手くいかなくなってしまうため。故に低速走行を多用する街乗りでは非常に相性が悪く、実際問題北見もFDマスター編で「ロータリーエンジンは回してナンボ」と言っている。またレシプロエンジンの約2倍の空気と燃料を吸入しながら出力は1.5倍程度しか得られないため「燃料消費率が3割悪い」という弱点も持っている…。
維持費も槍玉に挙げられる事がある。ロータリーエンジンは部品数こそ少ないがアペックスシールなどそれぞれのパーツにかかる負担も大きく*7、オーバーホールの頻度もレシプロエンジンと比べ高い傾向にある。エンジンオイルもローターを回すための潤滑作用のみならず冷却作用*8の役割までも担うため必然的に劣化も早く、その都度性能の良いオイルを用意する必要に迫られる。

 

当然ではあるがロータリーエンジンはレシプロエンジンとは構造も性能もまるっきり違うため、レシプロエンジンとの平等な排気量換算*9は極めて困難である。特にモータースポーツにおいては燃料タンクの容量や燃料消費に伴う車重変化まで考慮するとなると平等にスペックを揃えるというのは更に困難を極める。
そのため競技の種類(例えばスプリントレースか、耐久レースか…など)によって異なる換算係数が用いられたり、またF1やル・マンなどのようにロータリーエンジンの使用を認めない競技がある。

 

長らくロータリーエンジン搭載車はRX-8が最後と思われてきたが、2023年6月「MX-30 e-SKYACTIV R-EV」にて11年ぶりにロータリーエンジンが復活
1ローター830ccのロータリーエンジンをメインエンジンとしてではなく発電機として使用、17.8kWhのリチウムイオンバッテリーと50Lの燃料タンクを組み合わせることで独自のシリーズ式プラグインハイブリッドシステムを構成。バッテリーEVとしては85km(WLTPモード)の航続距離を実現している。
ただし生産はマツダ広島宇品第1工場ではあるものの、現在のところは欧州市場のみの販売となっている。

 

詳細は以下URLから
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%82%B8%E3%83%B3

 

湾岸マキシに登場しているRE車


*1 現在で言うアウディ
*2 何らかの要因で振動したローターが、ハウジングを引っ掻いて出来た傷痕
*3 1970年代に大型セダンを販売していなかったマツダが当時GM傘下にあったオーストラリアの自動車メーカー「ホールデン」と提携し、同社の「HJプレミア」にロータリーエンジン無理やり詰め込み搭載した3速ATの大型セダン車。追加車種投票イベントにもエントリーされていたが35位(4622票)という惨憺たる結果に終わってしまった。もし実装されていれば湾岸マキシ初の3速車になっていた。
*4 ホンダ・ヤマハ・カワサキなど他の主要二輪車メーカーも次々と試作車を開発しテストを繰り返していたが結局商品化・実用化までには至らなかった。試作車で有名なものではヤマハがヤンマーディーゼルと共同開発し1972年の第19回東京モーターショーで発表された「RZ201」などがある。
*5 ロータリーエンジンの排気量換算(後述)を行うと当時の日本国内市販車の排気量の自主規制値である750ccを超えてしまうため国内市場では販売できないとして、輸出仕様車として日本国外でのみ販売されることとなった。
*6 例えばEUNOS Cosmo TYPE-S (JCESE)を始めとした3ローターエンジン20Bを搭載したクルマの燃費はエンジン出力と構造・車重の重さから街乗りで2~3km/L、条件が悪い場合は1km/L台という凄まじいものであった。
*7 その対策として2ストロークエンジンのオイルをガソリンに混合して乗るオーナーも多い。
*8 このため、ロータリーエンジン車には全車種にオイルクーラーが搭載されている。
*9 例えば日本の自動車税課税時の排気量区分では「単室容積×ローター数×係数1.5」として換算され、RX-7 Type R (FD3S)の場合だと「654cc×2ローター×1.5=1962cc(1.5L以上2.0L以下扱い)」という具合になる。