人格ストーリー
人格/良秀/りょ・ミ・パ厨房長
▌あぁ、起きたか。
子供は淡々とした声でそう言った。
目を開かずに聞けば、まるで熟睡から目覚めた誰かに掛ける、安否を尋ねる挨拶のように聞こえるかもしれないね。
▌時間通りに起きてくれて良かった。心臓の拍動が遅すぎるときにやる作業は、味に影響を及ぼすからな。
子供は小さく笑みを零しながら、床に横たわった誰かを見た。
気の毒なことに自分の状況が受け入れられないのか、全身をもぞもぞさせているね。
▌おい、あんまり動くな。ちっ、あいつには適当に息を弱くしておけって言ったってのに。
バチッ。
子供は非情な口調でその者の頬を叩いた。
▌芸術の素材が勝手に主題感を持つのは我慢ならないんだ。し・へする前にじっとしてろって。
それが四肢をへし切るって意味だってことを、哀れな山羊は知るわけなかっただろうけど…。
静かにしていれば少しだけでも長く生きてられるってことはすぐに悟ったんだ。
▌話・良・聞・賞だ。
ブスッ。
子供はさっきからいじっていた注射器を、横たわってる者に突き刺した。
▌麻酔剤と様々な香味剤を添加した注射だ。お前を裏路地最高の美術品であり、美食··· そして芸術にしてくれる高価な添加剤だ。
子供がしきりに口にする芸術だとか、美術品だとかいう言葉が理解できないかもしれないけど…。
中でも、23区の裏路地はグルメ通りとも呼ばれるところなんだよ。
うん。W社が位置する巣の裏路地のあそこだね。
美食を追求し、それを美しさになぞらえる文化が蔓延している裏路地。
8人のシェフとか、ドシュランガイドとかの発祥の場所でもあるんだ。
この子はその8人のうちの1人になりたがっているんだ。芸術食の華と呼ばれる材料の一つである人間を利用してね。
そのために子供はここにりょ・ミ・パという飲食店を開いた。…言葉を減らす癖は、子供の確固たる好みみたい。
店名の通り子供は肉で作ったパイを売っていて、そのパイは美食家の間でそれなりの口コミが広まっていた。
▌さぁ…段々と感覚が鈍くなっていくだろ?
子供は楽しそうに哀れな山羊を眺めながら、刃を点検した。
▌良い素材でじゃなきゃ駄目だ。グレゴール、あの格下の愚かで経験も少ない助手と一緒にやっていくにも、そろそろ癇癪が抑えきれないからな。
子供は舌打ちと共にグズグズ言い始めた。
のろのろ動くだの、質の悪い素材ばかり持ってくるだの、鈍った包丁で裁断するから素材が傷むだの···。
▌まぁ、いい。8人のシェフに名を連ねた瞬間解雇するから。
子供が不満を漏らしている間、哀れな山羊の目はだんだんと閉じていく。
なぜあんなにイライラしているのか、自分はどうなるのか…何も考えられず、だんだん感覚だけが朦朧としていくんだ。
▌ふん、いったん集中するか。
▌さぁ…笑え。今からお前は芸術の中心になるだろうから。
子供はそんな哀れな山羊の姿を見つめながらナイフを持ち上げる。
子供のナイフに付いた血が笑顔のように見えたのは偶然だろうか。
…その後ろにある表情を見た感じだと、それを気にする必要もないような気がするね。
人格/グレゴール/りょ・ミ・パ助手
(▌=愚かな組織員)
▌はぁ、はっ…捕まえた!この野郎が!
子供は袋小路に追い込まれていた。そして子供を追っている誰かが、向かい側にいた。
長い剣を両手で持ち直してゆっくり呼吸を整えてる様子が、今にも子供を真っ二つに引き裂いてしまいそうな勢いだった。
▌もう…逃げ場もない。はぁ、無駄に力を使わせるな…。
と、相手が何かを話しているとき。
▌おい!どこ―
子供はガタガタ音を立てながら右の方へ消えていった。
追跡者は悪態を吐きながら、ゆっくりと子供のいた路地の終わりへと歩み寄っていく。
赤錆がこびりついた鉄の門。子供はきっとここに隠れ込んだんだろう。
▌クソッ…狭い室内に入れば長い剣じゃ力が出せないとでも思ったのか?
彼はケラケラ笑って剣を腰にしまうと、もっと小さい剣を取り出した。
▌馬鹿なやつ、いつも剣を二つ携帯して回るのには理由があるのに…クックッ。
胡散臭い笑いと共に、扉の中に入る追跡者。
しかし、それ自体が罠だということは知らなかったんだろうね。
▌捕まえ…た。
▌はっ!?
見回したときには確かにいなかった子供が、突然自分の後ろから現れるなんて。
彼は到底信じられなかっただろうね。
▌ど、どうやって…。
▌剣が長くても短くても俺の知ったこっちゃない…。俺の「作業場」まで入ってきて、手の中から逃げ出せた材料はまだいないんだ。
▌ざ、材料…?
▌うん、お前…引っかかったんだ。材料産地直送ってわけだ。
追跡者はやっと悟ったんだ。
追いかけて入った空間が…美食の路地に位置する店の倉庫だったということを。
▌だからどうして普通に歩いている人に喧嘩を売るんだ…。最初からなんとも思ってなくても、新鮮な奴なのか確認したくなってくるだろ。
▌じゃ、じゃあここは…良秀のミート…。
▌ふぅ...そうだ。りょ・ミ・パだ。店の名前は気に入らないが。
追跡者...あるいは強盗と呼ぶべきか。何はともあれ、今や哀れな山羊と同じくらいに墜落した彼は、恐怖混じりの声でつぶやいた。
周辺の地理にまだ疎い新入組織員の彼も一度は聞いたことがあるだろうね。人肉でパイを作る店が、この23区路地のあちこちにあるということを。
▌すぅ…あいつが店をこしらえたから、名前が店の前にぶら下がってはいるんだが...。
▌いくら考えても良秀のミートパイじゃなくてりょ・ミ・パなこと自体理解できないんだよな。
▌俺があとから入ってきたせいで煮え湯を飲まされたり、散々罵られながら料理を習ってはいるけどなぁ...はぁ、我慢はしてるけどその命名センスだけは到底理解できなくて。
▌おい、お前もそう思うだろ?材料の収穫から裁断、手入れまでオレがやってるの*1店の名前くらいは改善してくれても良いんじゃないか?
古びた中華包丁の背でとんとん。
緊張しきった山羊の肩に触れながら、子供が不満を吐露する。
▌も、もちろんじゃないですか!当然コックさんの名前が入らないとですね!
▌はぁ、そう言うな。さっきはあの野郎この野郎って言ってたのに…急にコックさんとか言われると鳥肌が立つよ。
▌ご、ごめんなさい!
▌…申し訳なく思わなくていい。そうしたからって解放してやらないからな。
▌こ、コックさん!そんなに素晴らしい方なら上で名前を売ってるそいつを殺してその座を奪えば良いんですよ!わ、私がお手つ…。
▌ほぉ...それは良いアイデアだな?
▌本当ですか?それなら私さえなんとか...なんとか解放してくださいましたら...!
▌あぁ、ホントうるさいな。
その言葉を最後に、空間に残った音は切って、また切る音だけになった。
▌まぁ…良いように見てくれたのはありがたいけどな、あんさん。だからって俺はまだ良秀厨房長並みの手つき餅のパイが作れるわけじゃないからな。
ビチャビチャと音を立てながら手を動かす子供は呟き続ける。
聞く人がもういないのにね。
▌ずっとイライラさせてくるし、些細なことで解雇するって脅迫してくるのが腹立つけど…料理を習うのには悪くない師匠ではあるからな…今のところは言うことを聞かないと。今のところは。
▌だからそんな寂しがるなよ、あんさん。お前が有名なシェフだったなら、ちょっと悩んだかもしれないけどな。フッ。
「今のところ」が終われば何をするつもりなんだろう。子供の本音が気になりはするけど…。
まあ、そんなものに疑問を抱けるような平和な場面じゃないと思うな。そうだよね?
台詞
人格/良秀/りょ・ミ・パ厨房長
人格獲得 | 来たか?パイでも一つ食べてくか? |
---|---|
朝の挨拶 | あ・や・て・な。えい・じゅん中だ。 |
昼の挨拶 | しばらく客が集まってくる頃だな。材料の在庫がなくならなきゃ良いが…。 |
夕方の挨拶 | すまないな、今日の分のパイは売り切れだ。…まぁ、その片腕を差し出してくれるなら作ってやれないこともないけどな。 |
対話1 | 止まれ。それ以上…入るな。今一番大事な作業中だ。 |
対話2 | 最近取引してた奴らとは切れたから昔みたいな味は出ないが…努力中だ。 |
対話3 | グレゴール…隙あらばシェフの座を狙ってるんだ…。はぁ、片腹痛い。 |
同期化後の対話1 | くだらない食堂とは違うものを追求する。それが…味学。芸術だ。 |
同期化後の対話2 | クソッ、そんな俺の目を奪うなよ。常連をパイにしたくはないんだ…。…ちっ、どうしてこんなに新鮮に見えるんだ? |
放置 | …特に言うことないなら俺は行く。「8人のシェフ」になるためにはこうしてる時間はない。 |
同期化進行 | ついに、8人のうちの1人に…違うって?ちっ、じゃあ興味ないよ。 |
人格編成 | 手作りの味とは何か見せてやろう。 |
入場 | 旨い経験を期待しよう。 |
戦闘中の人格選択 | 予約注文か? |
攻撃開始 | お前はどんな味だ? |
敵混乱時 | 血は確実に抜くのがいい。 |
混乱時 | チッ…。 |
敵討伐 | やっと、使えそうになったな。 |
本人死亡 | 俺が…材料になるとは思わなかったな…。 |
選択肢成功 | うん、良い料理方法だったな。 |
選択肢失敗 | クソッ、焦がした。 |
戦闘勝利 | 材料がいっぱいだな。 |
EX CLEAR戦闘勝利 | これくらいなら…早期完売の心配はしなくても良さそうだな。 |
戦闘敗北 | チェッ…大丈夫だ。材料はまた探せば良い。 |
人格/グレゴール/りょ・ミ・パ助手
人格獲得 | 使えそうな肉はあるか…? |
---|---|
朝の挨拶 | 朝はやってないんだが。…材料を仕入れる時間だからな。 |
昼の挨拶 | 良秀は店の中の方だ。…わざわざ会いに行かない方がいいと思うんだけどな。お前、いつか肉の代わりに切り刻まれるぞ? |
夕方の挨拶 | …この時間に店前をうろうろするなよ。…材料だって勘違いするところだったじゃないか。 |
対話1 | 新鮮なやつらを見つけるのって難しいんだよな…。 |
対話2 | うちの店のパイ、まだ食べてないのか…?手に入らないから食べられないって…はは。 |
対話3 | 煙草を消して料理すべきじゃないかって…?それが最高の香辛料だってのに何言ってんだ…? |
同期化後の対話1 | 手つき餅のパイ…食べたいな。毎回取引してたやつらから手に入れた材料じゃなきゃあの味が出ないんだよ…。 |
同期化後の対話2 | 適当なところで妥協することも必要なんだけどな…美食の芸術とかなんとか言いながら毎回材料のせいにしてるんだ。 |
放置 | うぅん…機械腕が凝ってるなぁ…。どうして腕がこうなったかって?さぁな?俺の新鮮な腕がなくなってどこに行ったんだろうな? |
同期化進行 | 俺を…?はっ、やっぱり本物のシェフが分かるんだな…? |
人格編成 | 新しい取引先を探しに行くのか? |
入場 | 新鮮なのがあると良いな。 |
戦闘中の人格選択 | おぅ、びっくりしたじゃないか!振っちまうとこだったよ。 |
攻撃開始 | 刻むとするか! |
敵混乱時 | ここを切って~あそこを切って~。 |
混乱時 | おっ…。 |
敵討伐 | ふぅ!解体おわり~。 |
本人死亡 | あ…クソッ…。 |
選択肢成功 | これで合ってるよな? |
選択肢失敗 | うむ…痛んだ部位だったか? |
戦闘勝利 | 悪くはない収穫だったな。 |
EX CLEAR戦闘勝利 | ふぅ…やり過ぎたか?どうやって持って帰るか…。 |
戦闘敗北 | うぅ…あれは不味い肉だっただろうな。 |