ご挨拶 
こちらではわたくしが鑑賞したすばらしい名作映画の数々をレビューさせていただきますわ
成子坂製作所の皆様とは親睦を深めるとともにすばらしい作品について知見を共有できたら幸いと存じておりますわ
大怪獣東京に現わる(1998年 日本) 
監督 | 宮坂武志 |
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脚本 | NAKA雅MURA |
主な出演 | 桃井かおり 本田博太郎 角替和枝 |
あらすじ 
ある日突然現れたトカゲの怪獣により、横須賀の米軍もろとも東京は唐突に壊滅。
時を同じくして福岡には空を飛ぶ亀形怪獣が出現し、
2体の怪獣によって日本は壊滅の危機に陥る。
一方、怪獣出現の地から遠く離れた片田舎、
福井県三国町でも静かに日常は崩壊していくのであった。
普段通りに過ごそうとする人
ここぞとばかりに暗い欲求を爆発させる人
妙な神様に出会っちゃう人
自分の生きた証を残そうと自伝を書きだす人 etc・・・
三国町の町の皆さんの運命やいかに?
短評 
「怪獣の出ない怪獣映画」として、好事家には知られた映画ですわ
怪獣出現という非日常にパニックを起こす一般市民にフォーカスを当てた群像劇ですわ
変な人たちがたくさん出てきて、事態はどんどんわけのわからない方向に転がっていくのですわ
登場人物が多い分、個人個人の掘り下げが甘かったり
オチの唐突さなどいささか難点もありますが、
ただの怪獣映画パロディと切って捨てるには惜しい佳作だと存じておりますわ
ちなみに、稀代の傑作怪獣映画「ガメラ 大怪獣空中決戦」を作った金子秀介監督は
怪獣映画の醍醐味として「日常が非日常に侵食される瞬間」を挙げられておりますわ
その観点からこの「大怪獣東京に現わる」を観れば、
なるほど怪獣が出てこなくても怪獣映画は成立するのですねと、納得すること請け合いと存じますわ
サマータイムマシンブルース(2005年 日本) 
監督 | 本広 克行 |
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脚本 | 上田 誠 |
主な出演 | ムロツヨシ 瑛太 上野樹里 |
あらすじ 
青春を模索するバカ高校生達に突然のタイムマシン!
さっそく昨日に飛んで当たり前のようにバカを繰り出すもそれが原因で未来がヤバそうだから帳尻合わせに奔走することになりますわ
果たして泥棒の正体は?
未来の在り方は?
ヴィダルサスーンの行方は?
ところでこのブサイク誰の子?
タイムマシンで始まる夏のブルースですわ
短評 
若き日のムロツヨシの出演する映画ですわ
夏の空気をムンムン感じる舞台が元の作品ですわ
何も考えずにバカ高校生がわやくちゃしていくのを眺める映画としてみてもいいですが、主題にあるはずのSFが低IQの中に埋もれているのでそれを拾いながら見ていくのも面白いですわ
見終わった後もう一度見て発見が得られるのは良い映画の証拠ですわ
後日談や設定等で直接語られないもののふと表示される写真の中に未来の様子と思われるものが紛れ込んでいたり、物語に直接触れてはこないもののどこからかこちらを見ている観測者の存在など、気にかけて見てくださいまし
余談 
2022年9月に、なんとTVアニメ「四畳半神話大系」との悪魔合体リメイク「四畳半タイムマシンブルース」が公開されましたわ
下鴨幽水荘の奇人変人共がタイムマシーンでてんやわんやの大騒ぎを繰り広げますの
「私」、小津、明石さん、おなじみの面々は、果たして宇宙崩壊の危機を回避できるのでしょうか?
生きない(1998年 日本) 
監督 | 清水 浩 |
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脚本 | ダンカン |
主な出演 | ダンカン 小河内奈々子 村野武範 尾美としのり |
あらすじ 
一見何の変哲もない沖縄観光バスツアー。
しかしてその実態は人生に絶望した者たちが集まった、保険金目当ての集団自殺ツアーでした。
そんな中に、本来の参加者の代理として
事情を知らない少女が一人紛れ込んでしまったから、さぁ大変。
仕方なく走り出したバスは、果たしてどこに向かうのか・・・
短評 
北野武監督の下で助監督を長年務めた清水浩の初監督作品ですわ。
撮影は北野武映画で数々の名映像を撮った柳島克己。
北野組の主力が結集したブラックコメディとなっておりましてよ。
脚本はこれまた映画脚本初挑戦のダンカンですの。
ダンカンは主演も務めておりますわ。
「これから死のうとしてる人たちが陵墓の遺跡を見て喜ぶ」と言った、
笑っていいのか悪いのか微妙に判断に困るユーモアが満載で、独特の味わいのある秀作ですわ。
二転三転し先の読めない展開も素晴らしいと存じております。
物語の結末は、是非ともご自身の目で確かめてくださいませ。
名優たちの演技も見どころですわ。
特にダンカンの怪演と大河内奈々子の溌溂さは必見と申し上げてもよいでしょう。
全裸の石田太郎も拝めますわよ。
15時17分、パリ行き(2018年 アメリカ) 
監督 | クリント・イーストウッド |
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脚本 | ドロシー・ブリスカル |
主な出演 | アンソニー・サドラー アレク・スカラトス スペンサー・ストーン |
あらすじ 
2015年8月21日、銃乱射事件が高速鉄道タリス車内で発生する。
たまたま居合わせた3人のアメリカ人の若者により、
奇跡的に死者0で解決したこのテロ未遂事件であったが、
果たして事件の裏側では何があったか?
3人の若者は何故テロリストに立ち向かう事が出来たのか?
短評 
老いてなお意気盛んな巨匠クリント・イーストウッド監督が手掛ける野心作。
タリス銃乱射事件を題材に取ったドキュメンタリー映画ですわ。
事件の当事者本人3人を主演に起用したことで話題になりましたが
実は事件に巻き込まれた乗客や事件現場も、
極力本人を集め、走行中のタリスの車内で撮影したという徹底ぶりには鬼気迫るものがありますわね。
一方、映画の中身なのですが、驚くことにテロ現場そのものはほとんど出てこないのですわ。
特に中盤は完全にただの旅行映像と化しております。
あくまで主役の若者3人の半生と、タリスに乗り込むまでの成り行きを描き、
思想や哲学のようなものは全く語られません。
ではイーストウッド監督は、果たしてこの映画で何を伝えたかったのか・・・
解釈は人それぞれですわ。隊長ご自身の目でご確認くださいませ。
あまりに実験的に過ぎる内容のため、観る人によって評価が真っ二つになってしまうことは否定できませんわ。
ただ、「宣伝文句と内容が違い過ぎる」などとはおっしゃらず、
90歳を間近にしてなおこのような映画を作ってしまう
イーストウッド監督の凄まじさをぜひとも体験してくださいまし。
フォード vs フェラーリ(2019年 アメリカ) 
監督 | ジェームズ・マンゴールド |
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脚本 | ジェズ・バターワースほか |
主な出演 | マット・デイモン クリスチャン・ベイル |
あらすじ 
1960年代半ばのアメリカ。
自動車メーカー、フォードはマーケティング戦略として
数々のレースで優秀な成績を打ち立てているフェラーリの買収計画を立てたが
計画は失敗に終わりフェラーリから屈辱を受ける事になった。
そこでフォードはル・マン24時間耐久レースへの参戦を決定。
自社のマシンでフェラーリに勝つ事で雪辱を晴らしマーケティングを図ろうとしていた。
白羽の矢が立ったのはレーサーを引退しカーデザイナーとして活動していたシェルビー。
そしてシェルビーが声をかけたのは荒々しい凄腕のドライバー、マイルズ。
フォードが、そして2人が挑む66年のル・マンはどのような結末を迎えるのか…。
短評 
「ウルヴァリン:SAMURAI」や「LOGAN/ローガン」を手掛けた
ジェームズ・マンゴールド監督の作品ですわ。
1966年のル・マン24時間耐久レースを題材にして
レースに参加したシェルビーとマイルズの二人の視点を主軸に描いた作品です。
奏が好みそうな映画ですね。
ロケーションを徹底したセットの作り込みとカースタントには感嘆致します。
CG全盛期の今となってはアナログな手法ですが逆に挑戦的でしょう。
主演のうち特にベイルの役作りも徹底しており
現存しているマイルズ本人の写真と印象がブレておらず
粗野なドライバーながら純粋な部分を覗かせた演技は魅力的です。
フォード側の打算やそれに翻弄されながらもル・マンを目指す二人など
人間ドラマの方もそつなく描かれております。
レースシーンはじめテスト走行シーン、日常のドライブなど
とにかく車のエンジン音が多く響くため
映画館の音響を良く生かした作品とも言えるでしょう。
総じて、かなり手堅い造りの作品かと。
題材に惹かれた方であればお勧めできますね。
あえて言うならタイトルに挙げるほどフェラーリとのVS感はありませんが
一部地域では「ル・マン 66」というタイトルに改められており
さもありなんという感じですわ。
トータル・リコール(1990年 アメリカ) 
監督 | ポール・バーホーベン |
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脚本 | ロナルド・シュゼットほか |
主な出演 | アーノルド・シュワルツェネッガー シャロン・ストーン レイチェル・ティコティン |
あらすじ 
火星に植民地が築かれた近未来。地球に暮らす平凡な建設技師ダグラス・クエイドは、結婚8年目の妻、ローリーと二人暮らし。
彼は毎晩見る、行った事もないはずの火星の悪夢に悩まされていた。
たまりかねた彼は解決の為に、人工的に記憶を植え付けるリコール社を訪れる。
そこで「火星で活躍する諜報員」の記憶を買い、移植処置をしている最中に封印されていた記憶が蘇った。
地球での幸福な暮らしこそが、後から植え付けられた記憶だったのだ……
短評 
アメリカの超有名SF作家「フィリップ・K・ディック」が書いた短編「追憶売ります」を映画化したのが本作ですわ。
元々が数十ページ程度の短編だったので、映画化に際しアクションシーンを中心に複数のシーンと
シナリオを追加。原作をご存知の方からすれば、とんだ原作ブレイカーですわ。
しかしながら、『ターミネーター』や『バトルランナー』などに出演し、
SFアクションの常連と言えるシュワルツェネッガーを主演に据えてアクションを魅せ、
原作の深遠で難解なテーマを、ほとんど改変することなく上手くストーリーに盛り込んだ脚本家の手腕は、
驚くべきものがありますわ。
やはりバーホーベン監督らしいエログロは随所に散りばめられており、見る人によっては嫌悪感を感じるかもしれません。
総じて、思考停止してアクションに没頭したい方も、映画に込められた意味を考察するのがお好きな方も、両方楽しめる作品かと。
フィリップ・K・ディック原作の映画として観るなら、少し物足りない部分はありますが、
ただのSFアクション娯楽作としては非常に完成度が高い作品と存じますわ。
ちなみにリメイク版がありますけれど、そちらはお勧めしませんわ。
何故って? アクションに全て振り切っている為、原作の深遠なストーリーが丸潰れですもの。