AARパーツ考察/スラスタについての調査/スラスタの重心距離と回転性能について

Last-modified: 2019-03-08 (金) 12:20:33

編集時Ver2.16

注意

この内容は正確ではない可能性があります。
FtDの物理現象および単位は、現実とは異なる可能性があります。
本AARは「FtDにおいて現実の物理の式があてはまる」と仮定しています。
よって、式が当てはまらない場合、または単位が異なる場合、本AARの内容が正しくなくなる可能性があります。

前提

スラスタと重心位置による艦の回転

スラスタークラフトにおいて、スラスタが艦重心の直線上にない場合、艦は回転します。
以下の図では、スラスターが生み出す推力方向(青矢印)の上に重心がありません。そのため、この艦は反時計回りに回転します。
thruster_spin_1.png
この回転は、重心を挟んだ線対称の位置に同じ推力のスラスタをつけることで相殺できます。
以下の図では、推力1と推力2がそれぞれ逆方向を向いています。両推力の大きさは同じで、同じ大きさの回転力を発生させます。
2つの回転力は互いに打ち消し合うため、この艦は回転しません。
thruster_spin_2.png

推力の大きさと回転力の関係

スラスタの推力が小さくなるほど、発生する回転力も小さくなります。
以下の図では、推力1と推力2がそれぞれ重心から同距離で逆方向を向いています。
推力1は回転力1を、推力2は回転力2を発生させています。
推力1より推力2のほうが小さいです。そのため、回転力1より回転力2のほうが小さくなります。
よって、この艦は反時計回りに回転します。
thruster_spin_4.png

スラスタと重心距離による回転力の関係

スラスタが重心から離れるほど、推力が発生させる回転力は強まります。
以下の図では、推力1と推力2は同じ大きさです。推力1は回転力1を、推力2は回転力2を発生させています。
推力2は推力1より遠くにあるため、回転力2は回転力1より強くなります。
thruster_spin_3.png

前提のまとめ

  • スラスタの推力が大きいほど、発生する回転力は大きくなる
  • スラスタが重心から遠いほど、発生する回転力は大きくなる
  • 逆方向の回転力は、互いに相殺し合う

疑問

前提にて、スラスタの位置と推力の関係が分かりました。
つまりうまく調整すれば、「大きい推力のスラスタを重心近くに置いた場合」と「小さい推力のスラスタを重心から遠くにおいた場合」で、同じ回転力が得られるはずです。
実際のビークル作成の場合では、少ないスラスタで十分な艦制御ができるということです。スラスタが少ないということは、それだけエネルギー消費を抑えることができます。
では推力が常に一定の場合、重心からの距離がどれだけ伸びると、どれだけ回転力が大きくなるのでしょうか?

実験

仮説

重心からある位置に、推力100%のスラスタを置きます。このスラスタは艦を反時計回り回転させるように設置します。これを基準スラスタとします。
基準スラスタ以遠の位置に、推力100%以下のスラスタを置きます。このスラスタは艦を時計回りに回転させるように設置します。これを任意スラスタとします。
艦が回転しないように、任意スラスタの距離と推力を調整します。
艦が完全に静止した場合、任意スラスタはその距離において「基準推力/任意推力」倍の回転力を発生させていると言えます。


といってもなんのこっちゃだと思うので、例をあげつつ説明します。
艦重心から10mの位置に、推力100%のスラスタを設置します。このスラスタは、艦が反時計回りに回転するようにします。
ちょうど以下の図の位置です。
test_vehicle_1.png
このスラスタを「基準スラスタ」と呼ぶことにします。
基準スラスタは距離と推力の関係から、大きさ不明の回転力を発生させています。ちなみに単位も何と言って良いのかわからないので不明です。
では次に、重心から任意の距離に推力100%の別のスラスタを置きます。このスラスタは艦を時計回りに回転するように設置します。
ちょうど以下の図のような感じです。
test_vehicle_2.png
このスラスタを「任意スラスタ」と呼ぶことにします。
任意スラスタは基準スラスタと同じく推力100%です。ですが、任意スラスタのほうが重心より遠い位置にあります。
したがって、任意スラスタのほうが強い回転力を生み出します。
今回知りたいことは、「重心からの距離がどれだけ回転力を強めるか」ということです。
ですが、計測機器はないのでどう測ればいいでしょうか? 基準スラスタと任意スラスタを使います。
現在、任意スラスタのほうが回転力が強いため、艦は時計回りに回転します。
艦の回転が停止するように、任意スラスタの推力を調整します。

以下の数値はあくまでも仮の話です。

仮に任意スラスタが20mの時、推力50%程度で完全に釣り合ったとしましょう。
「釣り合う」ということは「回転力が同じ」で打ち消し合っているということです。
つまり、距離10m&推力100%と、距離20m&推力50%は同じ回転力ということです。
推力は基準に比べて半分なので、回転力はその分下がるはずです。しかし釣り合っているということは、距離が回転力を強めて補っているということです。
距離がどれだけ回転力を強めているかは、「基準推力/任意推力」で求められます。今回は「100%/50%」なので2倍です。
つまり、「重心からの距離が2倍の時、回転力は2倍強まる」ということが言えます。
ということで、回転力の釣り合う距離と推力を探すことで「距離が回転力をどの程度強めるか」を調べます。

実験ビークル

yaw_test_vehicle.png
このような艦を作りました。
この艦は

  • 重量・空気抵抗共に、前後対称・左右対称・上下対象です。
  • 高度100mを維持します。
  • 完全な水平を維持します。

この艦の重心から10mの位置に推力100%の基準スラスタを、任意の位置に任意推力の任意スラスタを置きます。

ブループリント

fileyaw_test_vehicle.blueprint

実験方法

実験ビークルを用いて、任意スラスタの距離・推力を調整して艦が静止する点を調べます。これを10mから200mまで調べます。
距離・推力を調整しても釣り合わない場合、境界値を調べます。

結果

おおよそ以下の推力の時、以下の距離で釣り合いに最も近づきます。
「効率性」とは、距離が回転力を何倍強めているかを表しています。これはおおよその値です。
例えば13mにおいて回転力は基準スラスタの1.111…倍になります。

基準推力/任意推力=距離が増大させている回転力
100/90=1.111…
距離推力効率性
101001
13901.111…
16801.25
21701.428…
28601.666…
40502
63402.5
112303.333…
全調査記録 ※長いです

各距離における推力調査の結果です。
「勝つ推力」とは、ある距離において任意スラスタの推力をこの数値以上に設定すると、基準スラスタよりも回転力が強まることを表します。
「負ける推力」とは、ある距離において任意スラスタの推力をこの数値以下に設定すると、基準スラスタよりも回転力が弱まることを表します。
「釣り合う推力」とは、ある距離において任意スラスタの推力をこの数値に設定すると、艦の回転が完全停止することを表します。
「効率性」とは、「100/((勝つ推力+負ける推力)/2)」の値です。距離がどれだけ回転力を増大させているかを表しています。これは基準スラスタのn倍で表されます。

例として距離20mの時、任意スラスタの推力を80%に設定した場合、任意スラスタの回転力のほうが強くなります。艦は時計回りに回転します。
任意スラスタの推力を70%に設定した場合、基準スラスタの回転力のほうが強くなります。艦は反時計回りに回転します。

重心距離勝つ推力釣り合う推力負ける推力効率性
10100901
11100901.052631579
12100901.052631579
1390801.176470588
1490801.176470588
1590801.176470588
1680701.333333333
1780701.333333333
1880701.333333333
1980701.333333333
2080701.333333333
2170601.538461538
2270601.538461538
2370601.538461538
2470601.538461538
2570601.538461538
2670601.538461538
2770601.538461538
2860501.818181818
2960501.818181818
3060501.818181818
3160501.818181818
3260501.818181818
3360501.818181818
3460501.818181818
3560501.818181818
3660501.818181818
3760501.818181818
3860501.818181818
3960501.818181818
406050402
4150402.222222222
4250402.222222222
4350402.222222222
4450402.222222222
4550402.222222222
4650402.222222222
4750402.222222222
4850402.222222222
4950402.222222222
5050402.222222222
5150402.222222222
5250402.222222222
5350402.222222222
5450402.222222222
5550402.222222222
5650402.222222222
5750402.222222222
5850402.222222222
5950402.222222222
6050402.222222222
6150402.222222222
6250402.222222222
6340302.857142857
6440302.857142857
6540302.857142857
6640302.857142857
6740302.857142857
6840302.857142857
6940302.857142857
7040302.857142857
7140302.857142857
7240302.857142857
7340302.857142857
7440302.857142857
7540302.857142857
7640302.857142857
7740302.857142857
7840302.857142857
7940302.857142857
8040302.857142857
8140302.857142857
8240302.857142857
8340302.857142857
8440302.857142857
8540302.857142857
8640302.857142857
8740302.857142857
8840302.857142857
8940302.857142857
9040302.857142857
9140302.857142857
9240302.857142857
9340302.857142857
9440302.857142857
9540302.857142857
9640302.857142857
9740302.857142857
9840302.857142857
9940302.857142857
10040302.857142857
10140302.857142857
10240302.857142857
10340302.857142857
10440302.857142857
10540302.857142857
10640302.857142857
10740302.857142857
10840302.857142857
10940302.857142857
11040302.857142857
11140302.857142857
11230204
11330204
11430204
11530204
11630204
11730204
11830204
11930204
12030204
12130204
12230204
12330204
12430204
12530204
12630204
12730204
12830204
12930204
13030204
13130204
13230204
13330204
13430204
13530204
13630204
13730204
13830204
13930204
14030204
14130204
14230204
14330204
14430204
14530204
14630204
14730204
14830204
14930204
15030204
15130204
15230204
15330204
15430204
15530204
15630204
15730204
15830204
15930204
16030204
16130204
16230204
16330204
16430204
16530204
16630204
16730204
16830204
16930204
17030204
17130204
17230204
17330204
17430204
17530204
17630204
17730204
17830204
17930204
18030204
18130204
18230204
18330204
18430204
18530204
18630204
18730204
18830204
18930204
19030204
19130204
19230204
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19430204
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19630204
19730204
19830204
19930204
20030204

考察

重心距離と推力の関係.png
全調査記録の結果をグラフにしたものです。
距離が遠くなるほど、釣り合うために必要な推力が低下することが分かります。
しかし、距離が伸びるほどグラフの傾きが鈍化してX軸に近づきます。
つまり、推力を10%下げるために必要な距離は、推力が低下するほど増大していくことが分かります。
効率性の点から見ても、回転力を1倍から2倍にするよりも、2倍から3倍にするほうが長い距離が必要になります。
効率性グラフを見る限り、距離と回転力は単純な比例関係にありません。
つまり距離が2倍になったからと言って、生み出す回転力は2倍になりません。

結論

重心からの距離が伸びるほど、スラスタが発生させる回転力は増大します。しかし、距離が伸びるほど発生させる回転力は鈍化していきます。
重心からの距離と回転力の増大は比例しません。距離が2倍になったからと言って、回転力は2倍になりません。

課題とかそういうの

一般式にしたい

重心からの距離と発生する回転力を誰か一般化してほしい。数式にしてほしい。
「距離と推力を入れると、基準のn倍の推力が得られる」っていうのが分かる式。

対数?

glaff.png
Excelに突っ込んで近似曲線を出したら、なんか対数グラフに近い。
傾きは「y=16.5In(x)+107.19」ですって。Inって何だよ。

続き

続きの記事です。
スラスタの重心距離と回転性能について2

コメント

  • 傾きの式はln(自然対数)じゃないかな。 -- 2018-07-02 (月) 19:32:09
  • 自然対数とかってやっかいだよね、自然って書いてるのに自然には理解しがたい -- 2019-03-08 (金) 12:20:33