編集時Ver2.16
注意
この内容は正確ではない可能性があります。
FtDの物理現象および単位は、現実とは異なる可能性があります。
本AARは「FtDにおいて現実の物理の式があてはまる」と仮定しています。
よって、式が当てはまらない場合、または単位が異なる場合、本AARの内容が正しくなくなる可能性があります。
はじめに
この記事は「スラスタの重心距離と回転性能について」の続きです。
前回のAARで行った、前提や実験方法については説明を省きます。
なので、前回のAARを読んでいない方は、先に一読していただけるとありがたいです。
前提
推力設定と実推力
スラスタの推力設定は、実際の推力とイコールではないらしいです。FtD研で教えていただきました。ありがとうございます。
推力設定と実推力は次の関係とのことです。
推力設定^2=実推力
例えばスラスタの推力設定が50%のとき、実際の推力は25%です。
0.5^2=0.25 つまり25%
各推力設定の時、実推力は次の通りです。
推力設定(%) | 実推力(%) |
100 | 100 |
90 | 81 |
80 | 64 |
70 | 49 |
60 | 36 |
50 | 25 |
40 | 16 |
30 | 9 |
20 | 4 |
10 | 1 |
0 | 0 |
また、燃料消費は推力設定に比例するそうです。
そのため推力設定50%の場合、実推力は25%ですが、燃料消費は50%です。
トルク
間違ってたらコメントなりで突っ込んでください。
トルク、つまり物体を回転させる力は次の式で表されます。
N=r*F N…トルクの大きさ r…回転軸から力の加わる点までの距離 F…物体に加わる力
力Fが同じ時、距離rが2倍長い場合、得られるトルクNも2倍になります。
1r*1F=1N 2r*1F=2N
実験
仮説
トルクと推力と距離の関係
FtDにおいてトルクが存在すると仮定した場合、トルクの式がそのまま使えます。
各パラメータをスラスタークラフトに当てはめると次のようになります。
物体に加わる力F … スラスタの実推力 回転軸から力の加わる点までの距離r … 重心からの距離 トルクN … 艦に働く回転力
スラスタの位置と推力を変更しても、トルクの大きさが同じで、向きが逆であれば艦は回転しないはずです。
つまり、スラスタの推力を下げてもトルクが1になるように距離を調整すれば良いはずです。
例えば基準スラスタが重心から10m、推力設定100%である場合、実際に発生するトルクは10です。
10*(100%^2) 10*1^2 10*1 10
この時、推力設定90%のスラスタを釣り合う位置につけたい場合、トルクが10になる位置につければ良いはずです。
r*F=N r*(90%^2)=10 r*(0.9^2)=10 r*(0.81)=10 0.81r=10 r=10/0.81 r=12.3456790123……
重心から約12.3mの位置につけると釣り合うようです。
ということは、同じ要領でトルクが1の時の各推力ごとの距離を求めれば、後は好きな距離を掛け算することで希望の位置が求まるはずです。
トルク1のときの各推力ごとの距離は次の通りです。
推力設定(%) | 実推力(%) | 距離(m) |
100 | 100 | 1 |
90 | 81 | 1.234567901 |
80 | 64 | 1.5625 |
70 | 49 | 2.040816327 |
60 | 36 | 2.777777778 |
50 | 25 | 4 |
40 | 16 | 6.25 |
30 | 9 | 11.11111111 |
20 | 4 | 25 |
10 | 1 | 100 |
0 | 0 | - |
例えば基準スラスタが重心から10m、推力設定100%だとします。
この時任意スラスタの推力設定が50%であれば、基準スラスタの4倍の距離に任意スラスタをつけると釣り合います。
推力設定50%のとき、距離は4mです。 基準スラスタの重心からの距離は10mです。 よって 10*4=40m だと釣り合います。
距離を拡大した場合のトルクの関係
前回は基準スラスタ10mで試験しました。この場合、推力設定50%であれば必要な距離は40mです。
ですが、推力設定40%であれば62.5m必要です。
ブロックは1m単位でしか操作できないので、これは実現できません。
ですが基準スラスタが100mであれば、任意スラスタに必要な距離は625mとなり、実現できます。
そのため、基準スラスタの重心距離を前回の10mから、10倍の100mにします。
これにより、前回より10倍高いトルクが発生します。
しかし、トルクの式が成立するなら、基準スラスタ距離を10倍にしても、任意スラスタの距離も10倍にすれば釣り合うはずです。
基準スラスタのトルク
前回 r*F 10*(100%^2) 10*1 10
今回 r*F 100*(100%^2) 100*1 100
例 推力50%の場合のトルク
前回 r*F 40*(50%^2) 40*0.25 10
今回 r*F 400*(50%^2) 400*0.25 100
前回と今回をそれぞれ比較すると、大きさを10倍しても互いの比率は変わらないはずです。
距離10m・推力100%と距離40m・推力50% … どちらもトルク10対10 つまり1:1の同じ大きさ 距離100m・推力100%と距離400m・推力50% … どちらもトルク100対100 つまり1:1の同じ大きさ
実質的には、前回の距離を10倍したものが、今回の距離と対応しています。
かつ、長さ10倍になったので、長さをより細かく制御できるということです。
前回の10mは今回の100mに対応しています。 前回の11mは今回の110mに対応しています。 前回は10mから11mの間にブロックはありませんでした。 今回は100mから110mの間に、101~109m分の9つのブロックがあります。 よって前回よりも細かい単位で計測できるというわけです。
実験方法
このようなビークルを作りました。実験の要領は前回のAARと同じです。
今回の基準スラスタは100m、推力は100%です。なお、100%時のスラスタ出力は前回の10倍ではなく9倍です。
しかし、どのスラスタも同じ最大出力です。トルクの式「rF=N」でいうところのFは皆同じです。
なので、本実験に影響はないものとして無視します。
実験ビークル
実験結果
トルクの式から予想される境界値にて確認しました。
以下が実測結果です。
「勝つ推力」とは、ある距離において任意スラスタの推力をこの数値以上に設定すると、基準スラスタよりも回転力が強まることを表します。
「負ける推力」とは、ある距離において任意スラスタの推力をこの数値以下に設定すると、基準スラスタよりも回転力が弱まることを表します。
「釣り合う推力」とは、ある距離において任意スラスタの推力をこの数値に設定すると、艦の回転が完全停止することを表します。
重心距離 | 勝つ推力 | 釣り合う推力 | 負ける推力 |
100 | 100 | 90 | |
123 | 100 | 90 | |
124 | 90 | 80 | |
155 | 90 | 80 | |
156 | 90 | 80 | |
157 | 80 | 70 | |
204 | 80 | 70 | |
205 | 70 | 60 | |
277 | 70 | 60 | |
278 | 60 | 50 | |
399 | 60 | 50 | |
400 | 60 | 50 | 40 |
401 | 50 | 40 | |
624 | 50 | 40 | |
625 | 50 | 40 | 30 |
626 | 40 | 30 |
考察
測定していない部分の推力予測
推力を変化させずに距離を変化させた場合、距離が遠くなるほどトルクは強まります。
したがって今回は境界値のみ測定していますが、測定していない部分についても勝つ推力・負ける推力が予測可能です。
例えば距離401m~624mにおいて、推力50%であれば常に勝ち、推力40%であれば常に負けます。
トルクの式と実測結果
トルクの式によれば、任意スラスタの各推力設定が次の距離の時、トルクが釣り合うと予想されています。
rF=N
トルクが釣り合うということは、常に同じトルクということです。
常に同じということなので、仮に常に単位トルク、つまりトルク1が得られるようにします。
トルクN=1とします。
rF=1
物体に加わる力Fは各推力設定から得られる実推力です。
推力設定と実推力は次の関係です。
推力設定^2=実推力
トルクの式に代入すると次のとおりです。
r*実推力=1 r*推力設定^2=1
この式を変形すると、各推力設定においての釣り合う距離を求める式が求まります。
r*推力設定^2=1 r=1/推力設定^2
基準スラスタは距離100m、推力設定100%です。
よって、この時発生するトルクは100であると予想されます。
N=rF N=100*(100%^2) N=100*(1^2) N=100*1 N=100
基準スラスタの発生させるトルクを、先程の釣り合う距離を求める式に当てはめます。
先程の式はトルクN=1だったので、これをN=100にします。
r=N/推力設定^2 r=100/推力設定^2
釣り合う距離を知りたい推力設定を式に代入します。
仮に推力設定50%の時、釣り合う距離は400mであると予想できます。
r=100/推力設定^2 r=100/(50%^2) r=100/(0.5*2) r=100/0.25 r=400
同じ要領で、全推力設定において釣り合う距離を求めます。
以下がその一覧です。これは基準スラスタ100m・推力設定100%の場合です。
推力設定(%) | 釣り合う距離(m) |
100 | 100 |
90 | 123.4567901 |
80 | 156.25 |
70 | 204.0816327 |
60 | 277.7777778 |
50 | 400 |
40 | 625 |
30 | 1111.111111 |
20 | 2500 |
10 | 10000 |
0 | - |
この一覧を実験結果の表と対応させます。
赤く塗った距離は、トルクの式から釣り合うと予想される距離です。
重心距離 | 勝つ推力 | 釣り合う推力 | 負ける推力 |
100 | 100 | 90 | |
123 | 100 | 90 | |
123.4567901 | 90 | ||
124 | 90 | 80 | |
155 | 90 | 80 | |
156 | 90 | 80 | |
156.25 | 80 | ||
157 | 80 | 70 | |
204 | 80 | 70 | |
204.0816327 | 70 | ||
205 | 70 | 60 | |
277 | 70 | 60 | |
277.7777778 | 60 | ||
278 | 60 | 50 | |
399 | 60 | 50 | |
400 | 60 | 50 | 40 |
401 | 50 | 40 | |
624 | 50 | 40 | |
625 | 50 | 40 | 30 |
626 | 40 | 30 |
赤く塗った距離を境に、勝つ推力・負ける推力が切り替わっています。
また、任意スラスタの距離400mと625mは、実験において完全に釣り合っていました。
よって、推力設定と基準の距離さえ分かれば、任意推力のスラスタがどの距離で釣り合うかが求まります。
距離が回転力をどれだけ強めるか?
基準スラスタより任意スラスタの推力が小さく、かつ両スラスタのトルクが釣り合う時、距離がトルクを増大させていると予想できます。
例として、基準スラスタ距離100m・推力100%と任意スラスタ距離400m・推力50%を使います。
それぞれの設定においての実推力は100%と25%です。
推力設定^2=実推力
100%^2 1^2 1 推力設定100%においての実推力は100%
50%^2 0.5^2 0.25 推力設定100%においての実推力は25%
距離が強めている回転力を、仮にXとします。
基準スラスタ実推力=任意スラスタ実推力*距離が強めている回転力 100%=25%*X 1=0.25X 0.25X=1 X=1/0.25 X=4
距離は回転力を4倍強めていることが分かります。
したがって、距離が4倍になると、回転力も4倍になります。
この釣り合う状態を式にすると以下のとおりです。
基準距離を1とすると、その4倍で釣り合うということです。
100%*1=25%*4
これはそのままトルクの式と対応しています。
N=rF N=1*100%
N=rF N=4*25%
結論
考察「トルクの式と実測結果」および「距離が回転力をどれだけ強めるか?」より、FtDにおいてもトルクが成り立ちます。
N=rF トルク=重心からの距離*実推力 トルク=重心からの距離*推力設定^2
この式にスラスタ自身の最大推力を加えると、あるスラスタが発生させるトルクは次の式で求められます。
あるスラスタの発生させるトルク=重心からの距離*推力設定^2*スラスタの最大推力
後記
これってくっそめんどくさい手段でトルクを実証しただけやん!