ケビン・カスラナ

前文明

各所の話
ケビンは欧州で生まれ育ち、友達のスウと共に高校へ通う普通の学生だったが、ある時極東へ引っ越すことになった
転校先の千羽学園で成績優秀・眉目秀麗・スポーツ万能の王子様のようなケビンはそれはまあモテた
しかし、言い寄る女子生徒達もケビンの眼中にはなかった
この時に適当に食っておかなかったことがケビンの童貞伝説の始まりである
ケビンには既に一目惚れした相手がいたのだ
その相手こそ瓶底眼鏡のガリ勉根暗女のメイちゃんである
本にしか興味のないメイちゃんを相手にさすがのケビンも攻めあぐねたが、度重なるアプローチの末にケビンはついに彼女の心を掴むことに成功した
しかし、そんなようやく恋仲になったばかりの二人を崩壊が襲う
第三次崩壊に巻き込まれた二人はかねてよりメイちゃんに目を付けていた火を追う蛾という秘密組織に救出された
そして崩壊の脅威を目の当たりにしたメイちゃんはメビウス博士の勧誘に応えて火を追う蛾に参加する決意をした
ケビンもメイちゃんの後を追おうとしたが、火を追う蛾が必要としているのはメイちゃんのような人類を背負う才能のある人間のみ、ケビンのようなただの高校生は求められていない
それでも尚食い下がるケビンにとりあえず末端の一兵士の身分が用意され、階級に天と地の差があるとはいえ二人は火を追う蛾の構成員になった

兵士になったケビンは先輩兵士である痕の指導の下でめきめきと頭角を現し、第四次崩壊では現地で助けたコズマと共に律者討伐に貢献し、そして隊長として第一小隊を率いて第六律者を討伐する大金星を上げた
しかし英雄的な活躍に見える表向きとは違い、人の心を残していた第六律者を前にして躊躇した結果街1つ分の人命が失われてしまったこと、そして人の心を残していた第六律者を手にかけてしまったことがケビンの心を蝕んでいた
そんな中で降臨した第七律者は火を追う蛾の一員で数日前にパーティで会話したばかりの戦友、卑弥呼だった
第七律者討伐のために実行に移された融合戦士計画でケビンは志願して被験者第一号に選ばれ、融合戦士として得たパールバティの氷の力でかつての戦友に引導を渡した
卑弥呼は氷柱に腹を貫かれ息を引き取る寸前にケビンに感謝するように微笑んでおり、その場に居合わせた卑弥呼の部下は殺す以外にも方法があったのではないかと彼を責める言葉を口にした
さらに融合戦士となったケビンは常に冷気を纏い体温が-30度の低温になっており、今まで当たり前にあるものと思っていた日常生活も過ごすことが出来なくなった
恋人と世界のため、数多の勝利を掴み続けてきた英雄の心は限界だった

そんなケビンを見かねたエリシアによってサプライズ誕生日が開催された
皆忙しい中でもメイ博士、エリシア、サクラ、痕、ディストピア、コズマが集まり、参加は叶わなかったもののメビウス博士とアポニアもケビンのためにプレゼントと祝福の言葉を送ってくれた
さらに火を追う蛾にかつての親友である医者のスウが加わり、ケビンは悩みを相談できる相手を得た
皆の支えがあったから、英雄は再び立ち上がることが出来た

融合戦士の専用装備として超兵器・神の鍵の開発計画が始まった
ケビンに与えられたのは天火聖裁、卑弥呼のコアを用いた烈炎の大剣である
この大剣は使用者すらも焼き殺してしまうために冷気を纏うケビンにしか扱えず、さらに定格出力を使う時にはケビンでも崩壊に近づく必要があった
対照的に崩壊は自然現象の化身であったそれまでとは違う形で現れるようになり、その権能は人類の存在に近づきつつあった
降臨した第八律者の持つ脅威は人の意識に対する不可視の攻撃であり、なおかつ火を追う蛾への明確な害意をもって指向された
この変化に対応する前に火を追う蛾は多くの構成員を失ってしまう
火を追う蛾を束ねる元老の1人スパシー第五科学部部長、メビウス博士の弟子にして痕の妻であるブランカ、そして第一小隊の仲間ディストピア……
次いで降臨した第九律者は圧倒的な力でムー大陸を消し去り、ケビンにとって兄貴分とも言える存在だった痕も妻の後を追うようにしてその戦いの中で散った
この強大な律者を倒すために力を求めたケビンは融合戦士としての力を解放して人為的崩落を起こし、その代償として心を凍てつかせた彼はクールだが仲間想いで熱い心を持ったかつての自分を失ってしまう
そんなケビンの有り様を見たコズマもまた絶望のあまり過重超変を起こし、人としての姿を保てなくなり火を追う蛾を離れた
数々の栄光に彩られた第一小隊に残ったのはケビン1人になった

度重なる戦闘で火を追う蛾は半壊し、人類は追い詰められていった
第十律者との決戦では、先の件があって天下聖裁の使用を躊躇したケビンは重傷を負ってしまい、代わりに律者殲滅の役割はメイ博士が天下聖裁を空白の鍵と合わせて用いることで果たした
しかし代償としてメイ博士は高濃度の崩壊エネルギーに蝕まれてしまい、以降の多くの期間を病床で過ごすことになる
第十一律者のもたらした約束の惨劇では多くの仲間を失った
約束の惨劇の後に生き残った13人の融合戦士を中心に結成された火を追う十三英傑では1日で飽きて辞めたエリシアに次いでケビンが英傑のリーダーになった
それでも崩壊は止まず、第十二律者によって火を追う蛾を残して人類は滅亡
火を追う蛾には絶望が蔓延し、人類は崩壊を待たずに人間同士の殺し合いで文明に幕を引くことになりかねない状況にあった
そんな時に降臨した第十三律者に対して英傑達が団結して対応したことで火を追う蛾は再び結束することが出来た
しかしこの一件でエリシアが死に、ケビンは彼女に氷の涙を捧げた

崩壊はなおも止まず、文明の痕跡を消し去ろうと月面に最終律者が降臨
これに対し火を追う蛾は最後の総攻撃に打って出る
月に殴り込みをかけた8人の英傑達が稼いだ時間を使ってムーンライトスローンが全力照射され、それによって生まれた隙に人類の持つ最大の火力、ケビンの天火聖裁の一撃が叩き込まれた
しかしその一撃も最終律者を倒すには至らず、最終律者は強固な虚数障壁に籠もり回復し始めてしまう
もはや人類に打つ手はなかった
敗走し地球に戻ってきたケビンはメイ博士の亡骸と対面し、二人の生物学的な子供と火種計画の指示書、そして最終計画である聖痕計画の記された手紙を受け取り、メイ博士の遺志を引き継ぎコールドスリープに入った
全てを失いながら戦い続けた英雄に残されたのは、戦友達に託された人類勝利の願い、そして恋人が残した使命だけだった

古代

漫画『第10章・伝承編』の話
コールドスリープから目覚めて前文明の遺した計画を実行していた
しかしどの計画も失敗は明白であり、使命に従い最終計画である聖痕計画を実行に移す
これに反発したスウは自分ごとケビンを量子の海に沈めようとしたが、ケビンはスウを助け1人で封印された

第二次崩壊

漫画『第8章・第二次崩壊編』の話
ジークフリートが月の魂鋼からムーンライトスローンの情報を探している時にアクセスした記録情報に登場
そしてその記憶情報をきっかけとしてジークフリートはカスラナ聖痕に宿るケビンの疑似人格と対面を果たした
ケビンの疑似人格との邂逅によってカスラナ細胞の力を目覚めさせたジークフリートはアインシュタインの用意した活性化因子を使い人為的崩落を起こし、第二律者シーリンを倒した

量子の海で

各所の話
量子の海で漂っていたケビンは海淵の目から量子の海の探索に来たヴェルトと出会った
ヴェルトが第一律者だと見抜いたケビンはとりあえずボコした
同じように量子の海に沈んでいたゼーレとも遭遇し、黒ゼーレは威圧感だけで心を折られた

量子の海

本編第12章の話
風の律者コアを探しに量子の海に潜ってきたブロにゃんと遭遇した蛇の正体がケビン
灰蛇が海淵の目を開いたことで1500年ぶりに固有世界への帰還を果たした

ちなみにこのブローニャとの理の律者コア争奪戦の中で、ケビンはヴェルトのことを律者でありながら真に人類のために戦うヒーローと認めており、彼のことを仲間に勧誘している
この申し出が拒絶された後もケビンは固有世界へ脱出する際にヴェルトも一緒に連れ帰っており、その後彼を解放している
ケビンが妙にヴェルトに拘った理由がなんだったのか、それは後々わかる

行動開始

本編第15章の話
現実に帰還したケビンはヨルムンガンドの尊主になっていた
ヨルムンガンドの部下達はそこらをほっつき歩いてたジークフリートを襲撃して天火聖裁を強奪し、力を取り戻したケビンは本格的に動き出した
手始めに邪魔な天命をぶっ潰してこの世界の対崩壊の主導権を握るために襲撃をかけたが、オットーに丸め込まれて同盟を結ぶことになった

may先輩勧誘

本編第17章の話
悩めるmay先輩を勧誘してヨルムンガンドに引き入れた
お前人類に友好的だろうと律者は殺すとか言ってなかったっけ？

崩壊の神って何よ

本編第25章、古の楽園の話
ってmay先輩に聞かれたから楽園に案内した
教えてくれてもよくない？
楽園の中でも前文明のデータのケビンが出てくる
こっちのケビンも今のケビンと同じで大事なことははぐらかして教えてくれない

カロスタン

本編第26～28章の話
一世一代の大勝負に出るオットーに虚空万象を返してあげた
死んだ想い人を追っかけるやつ同士どこか気持ちが通じるところがあるらしい
オットーの計画も聖痕計画には影響ないらしいしね

本人、楽園の記憶体に続いてカスラナ細胞に宿る意思として第三のケビンが出てくる
このケビンはデュランダルさんの質問に対してかなり正直に答えてくれる
知っていることはもちろん、正確に知らないことでもある程度推測出来ることなら個人的見解を教えてくれる
他のケビンもこれくらいフレンドリーになりませんかね？

僕らのクラブのリーダーは

古の楽園、本編第29～31章の話
楽園の記憶体ケビンの話
前述の通り古の楽園のケビンは現実のケビン同様何も教えてくれない
それも現実のケビンは何かと考えがあって教えてくれないわけだが、記憶体ケビンは現実の僕が生きてて教えてくれないなら僕から教えることもないよ、とひたすら無気力で自意識すら危うい
当然may先輩としても楽園探索に役に立たないケビンにわざわざ会いに行くこともない、かなしい
しかしそんな彼も英傑の仲間のことは気になるらしい
楽園のエリシアの領域、永久の楽園が開かれると真っ先に乗り込み、may先輩とデート中のエリシアにそんなことはお構いなしに第十三律者の顛末について訊ねて普通に拒否られたりと、今までにない自主性を見せてくれる
そしてエリシアが殺された時、それを知った英傑の年長組は対策会議を開いた
皆を纏めるのはもちろん英傑第一位、皆の頼れるリーダーであるケビン…のはずだったんだけどね…
ケビンが頑張ってリーダーとして皆の意見を取り持とうとしてたら「メイ博士の腰巾着が偉そうにするな」と🐍さんに中指を立てられ、それでも頑張って話を振ったら「おや？やっとリーダーとしての役目を果たすつもりになったのかい？」とアポニアに煽られ、イタズラで隠れてるだけかもしれないし様子を見ても…と不用意に発言して「あの女がこんなタチの悪いイタズラするわけがないんですけおおおおおお！！？！？」と🐍さんをブチ切れさせ、と何やら雲行きが怪しい
ケビンの奮闘虚しく会議はケンカ別れに終わり、とりあえず各々個別に事件について調べることになった
ケビンはmay先輩の発案で全楽園情報検索出力装置(魔法のタイプライター)を使ってエリシアの死について調べるため、途中グレーシュに絡まれて何やら様子がおかしかったり色々ありつつ、資料室へ向かった
しかし荒らされた資料室には「エリシアは死んだ」と書かれた大量の紙が散乱し、壊されたタイプライターの横には第十二律者の事件の顛末が書かれた紙が1枚残されていた
前文明の事件について知る誰がどう見てもここで何かが起こり、そしてそこにサクラが関与していることは明白だった
may先輩は直接的な表現こそしなかったものの、サクラのことを念頭にケビンに意見を求めたが、しかしケビンは何を聞いても「もう一度確認する」と繰り返すばかりで具体的な方針を示すことはなかった
実のところ、ケビンはエリシアが死んだと聞いてからずっと精神的に限界だったのである
英傑第一位などと言っても英傑を作ったのもエリシア、ケビンを第一位に据えたのもエリシア、皆を纏めたのもエリシア、実質的な英傑のリーダーはエリシアであってケビンはいつも腕を組んで立ってるだけだった
そのエリシアが死に急にリーダーの重圧がのしかかってきた時、ケビンの心はバキバキに折れていた
このことを理解したmay先輩は「あなたには心底ガッカリしたわ」と絶縁状を叩きつけて出て行き、その後会ったスウにケビンがどうしているか訊ねられた時も「わけのわからないことを言いながらわけのわからないことをしに行ったわよ」ととんでもない暴言が飛び出した
し、辛辣すぎる…
その後も「こっちのケビンは役立たずだけど現実のケビンならなんとかしてくれるかも」などと酷い言い草が続く
チクチク言葉のオンパレードに「」長のトラウマが強く刺激されたことは言うまでもない
さてそのわけのわからないことを言いながらわけのわからないことをしに行ったケビンはというと、事件について何か心当たりがあったようで、『青い水晶の花』を信頼するスウに預け、とある人物に会いに行ったらしい
その結果は…

『ケビンは死んだ』
そう書かれた紙が永久の楽園中にばら撒かれたことが示している通り、ケビンのデータは削除されていた
その実行者は……ヴィルヴィ
スウと別れた後、ケビンはヴィルヴィから死を偽装してエリシア殺しの犯人に対する奇兵になってほしいともちかけられた
妙に自信に満ちあふれる今まで会ったことのないヴィルヴィに疑問を持ちながらもこれを了承したケビンはそのまま犯人の手に落ちた

それでもケビンは再現された長空市で初心を忘れず、ヴィルヴィを信じて待ち続けていた
そしてヴィルヴィの導きでスウが現れた
彼から伝えられた最後の任務は、時を待ちこの空間に向けて極大の一撃を放つこと
残された長いようで短い時間を2人はただの親友同士として過ごした
──5万年前、メイ博士は世界とそこに生きる人々の運命というものが予め定められたものだと結論した
自由意志をもって自分の道を進んでいると思っている人間達も、その生まれ持った性格に従って道を選んでいるに過ぎず、結局同じ性格を持つ人は同じ岐路に立たされた時に同じ選択をする、それが運命なのだと
今回の一連の事件がヴィルヴィの計画通りに進行しているのも、あの『第十三律者』が倒された夜に各英傑が取った選択を元にして立案されているからだ
今回もケビンは明かされるまで真相を知らず、最後は戦友を信じて従う、これも運命なのだろう
しかし「たとえ結果が決まっていたとしても、過程が無為になるわけじゃない」、5万年前のあの夜、彼女は身を以てそれを示してくれた
だから自分の選択に悔いはないし、運命を知った今でも英傑達はまた同じ道を選択できる
──時が来た
ケビンとスウは自身のデータをもエネルギーへと変換して天と猫を焼く大炎となり、『侵蝕の律者』の空間をその内部から焼き尽くした

現実のケビンは天火を手にmay先輩の帰還を待っていた
彼は崩壊と戦う戦士として侵蝕に対する最後の保険をかけるため、英傑の生き残りとしてかつての仲間たちの最後を見送るため、そしてヨルムンガンドの尊主として使命を果たすためにそこに立っている
第十二律者は討伐され、終焉の到来までもはや幾何の猶予もない
『聖痕』か『火種』か、人類がその選択を迫られる時が来ていた
ヨルムンガンド──聖痕計画の執行者にその計画に賛同しないものは必要なく、エリシアとの約束が果たされた今、もはやmay先輩をヨルムンガンドに留めておく理由はない
そして彼女の意思の最終確認が取れた
ならば尊主としてやるべきことは決まっている
「レッドサンダードラゴン、ヨルムンガンドを去ることを認めよう」

尊主のお仕事　ザ・幕間

本編第31-EX章の話
聖痕計画の実行者たるケビンは量子の海を出て以来あることを考えてきた
それは聖痕計画を実行すべきか否か
聖痕計画は人類の犠牲の上で文明を存続させる必勝の最終計画
終焉を前にして現文明に勝算があるのであればこの最悪の計画を実行に移す必要はない
天命との同盟で得た虚空万象から現文明の崩壊との戦いの歴史を知った時、この問いに対する答えは決まった
現文明は前文明よりも遥かに上手く崩壊との戦いに勝利してきた
しかしそれ故に現文明は現状を楽観視しており、そして崩壊について何も知らない
現文明が終焉に打ち勝つ可能性はない
それがケビンの結論だった
聖痕計画が実行に移される時が来た
月でその身に終焉の力を宿しつつあるケビン、その虚数側の起点であるケビンの夢の中に招かれざる客が訪れる
ケビンの夢を飲み込み聖痕計画の根底を破壊してしまえるヴィシュヌの力を持つ者、新天命大主教テレサ
カスラナの聖痕を受け継ぐが故にその核心へと迷い込んでしまった危険因子を排除するべくケビンも自身の夢へと入っていった
現文明において、テレサほど律者達の力を目の当たりにし、その恐ろしさを知る者は数えるほどしかいないだろう
しかし終焉の力はそれらと比べても別次元である
故にケビンは言う、「君たちは崩壊について何も知らない」
それを示すためにケビンは終焉の力の一端を開放して劫魔となり、現文明の代表たるテレサを圧倒してみせた
しかしその言葉と共に振り下ろされた天火を遮る者があった
「お前もまた彼らのことを何も知らない」、その言葉の主はカスラナの聖痕空間に宿る意思としてのケビン
彼はカスラナの聖痕を通じて歴代のカスラナの名を継ぐ者たちの足跡を共に感じてきた、それ故に虚空万象から得た歴史情報としてしか現文明を知らぬ現実のケビンとは違う結論に至っていた
ケビン同士の戦いは業魔となったケビンの勝利で終わり、聖痕空間に宿る意思は消散し、テレサもその刃の前に斃れた

残業

chapter32～35の話
聖痕計画が発動され、膨大な犠牲の上で人類は終焉に勝利した
この結末に納得出来ない現文明の戦士達は自分達にもチャンスがほしい、目的は同じなのだから共に終焉に立ち向かおう、とケビンに直談判に来たが、この願いが聞き届けられることはない
たとえ聖痕計画が最悪の標準解答だとしても、この醜い勝利はかつての日々が全力を尽くしてようやく得られたものだ
現文明にそれ以上の解答を模索する権利があるというのなら終焉の力で稼働する聖痕計画を否定し力を証明してみせろ
ケビンはそう突き放すのだった

動き出した聖痕計画は管理者を必要としない
火を追う蛾は滅び、ヨルムンガンドももはやなく、残されたのがケビンだけになったとしてもそれは変わらない
喜び合える仲間がもはやいなかろうと、常に身体を終焉に焼かれ続ける苦痛がこれから何万何億年と続こうと、この勝利は喜ばしいものだ
これ以上の喜びがもたらされるとすれば、それは起源の後継者達が聖痕計画を覆した時だけだろう
孤独な玉座でケビンは静かにその時を待つ

ケビンは夢を見ない
これは第八律者の力に抗う戒律によるものだ
しかし聖痕計画にはケビンの記憶も取り込まれており、それを鑑賞することは出来る
──
数千年前、新しい紀元が始まってようやく赤子のような文明が生まれてきた頃
とある若い哲学者が広場で弁舌を振るっていた
「鳥はなぜ飛ぶのか」
こう問いかけた彼に人々は、「飛べるから飛ぶのだ」、「飛びたいから飛ぶのだ」、と通説を口にした
しかし彼はこれを否定する
「飛ぶことを諦めた鳥はいない、それは何故か！」
彼のこの反問に明確な回答を出せるものはいなかった
しかしこの時の彼もまた、自身の投げかけた問いに対する答えを持ってはいなかった
……前文明の成熟した哲学と比べるとなんとも稚拙極まりない議論である、文明が未熟なら賢者といえどもこの程度のものなのかと思わざるを得ない
しかし彼の言葉を聞いて何か思うところがあったのだろうか、ケビンはそれからしばらくこの哲学者の言葉を聞くために集会に通い続け、そうしてしばらく後のある日、初めて声をかけてみた
あの時の答えは見つかったのか、と
年老いた哲学者は肯いたが、それを教える前にまずケビンの考えを聞きたいと言ってきた
これに対してケビンは自身の火を追った旅を振り返ってこう答える
「飛ばなければならないからだ」
老哲学者はこの解答を肯定した
確かに、鳥たちは生きるために飛ばなければならず、老いて飛べなくなれば落ちて死ぬ
同じような話は神話にもある
イカロスという男は生きるために飛び、そして太陽に近づきすぎたために死ぬ
人々はイカロスの死を傲慢が招いたことだと批判するが、しかし老賢者の考えは違った
鳥もイカロスも自身の限界まで飛んで死ぬ、しかし残された者達は彼らの死から限界を知ることができる
限界を知ることが出来ればそれを乗り越えるために努力することが出来るようになり、やがていつの日か、より長く、より高く飛ぶ者が現れるだろう
「後に続く者達にもっと遠くへ行けるはずだと示すために、鳥は飛ぶ」
これが短い人生の中で老賢者が辿り着いた答えだった

瞬間、かつての友人の言葉が思い返された
──
数千年前に老賢者が語ったことは聖痕計画の本質である
前文明はその全力をもってもこの程度の勝利しか得られなかったが、終焉の力の掌握法を知った現文明はより良い方法を編み出す可能性がある
しかし情で彼らに道を譲ることもない
求めているのは可能性ではなくあくまでも確証なのだ
月では友か敵か選べずにいた華が今超変と業魔に対するトラウマを克服してまで挑みかかってきたということは、彼女はその確証を得ているのだろう
そして最後の律者が降臨する

選択も、存亡も関係なく──
今、万人の理想が大いなる願いとなる──
来るがいい、これが……『救世』の銘！

この時代のヒーローはケビンほどは強くない
しかしその両隣には起源と真理がおり、現文明の人類は彼女に希望を託していた
『業魔』を超え、終焉の力を得て理論上のキマイラの到達点に至った『救世』のケビンはこの5万年で間違いなく最強の存在だったが、結局1人でしかない彼は現文明の総力の前に打倒される
しかしケビンの心は晴れやかだ
何よりも勝利を好み、数多の勝利を人類にもたらしてきた英雄は生涯で二度目の敗北にこれ以上ない喜びを感じていた
最後は崩壊との闘争を始めた5万年前のあの日のように『ヒーロー』のケビンとしてこの時代のヒーローと対峙し、自分を打倒せしめたその相手を正面から受け止めて消滅した
「この世界は君に任せた、キアナ」

帰宅

chapter35の話
ケビンは夢を見ない
それは聖痕計画の要として、終焉の依代として、意思を保ちながら自身の存在を限りなく崩壊獣に近づけた代償だ
だから、最期の瞬間に見るその光景は夢ではない

にゃ～ん！
うわっ！缶ちゃん、それは食べちゃダメ！
ん？頭の上に何かふわふわしたものが……
あっ。缶ちゃん、お父さんの髪を噛んでる。
……
あれ？そういえば、朝起きたら髪が濡れてたとかで、何か余計な発明をしたんじゃないかってメビウスに聞かれたんだけど……
どうやら、これが真相のようじゃな。
わぁ、私も猫ちゃんと遊びたい！
気を付けてよ、その猫ちゃんはすごく凶暴なんだから！
情熱的なディストピアに驚いただけでしょう。
猫はそっけなく接すれば接するほど、こちらに興味を持ってくれるという説がある。
……！
なるほど。缶詰がケビンから離れようとしないのは、それが理由なんだね。
ハズレ！缶詰がケビンのことを気に入ってるのは、ケビンがこっそり餌をあげてるからよ。
ふむ……私も夜中、こっそりキッチンに入っていくケビンを何度か見たことがある……
あ？
どうりで缶詰が重くなったわけですね……
だめだよ、ケビンの旦那！このままだと……缶ちゃんが豚になっちゃう！
ニャ……
ケビンの旦那、聞こえないフリしないで！もう缶ちゃんに餌をあげちゃダメだからねー！
……
みんなあなたのことを話しているみたいよ、ケビン。
僕は何も知らない。
みんなのところに行かなくて……いいの？
こちらのほうが静かだ。それに……
それに？
僕は……もう少しメイと一緒にいたい。
私もよ。
……
……
メイ。空を見上げた時、君は何を考える？
うーん……いい天気、とか？空気が澄んでいて、晴れ渡っているから、夜になれば満天の星が見えるでしょうね。
かつての君は、空にある星は全て敵だと言っていた気がするが。
ええ。輝く星の光は美しく残酷で……気を抜いたら私たちを飲み込んでしまうんじゃないかって、そう思っていたわ。
ああ。かつての僕も、そう信じていた。
じゃあ、今は？今は考えが変わったの？
いや、君は正しい。だが……
今の僕は信じたいんだ。あの光たちは、脅威だけでなく……未来を切り開く希望ももたらしてくれるのだと。
忘れるところだったわ。あなたってロマンチストだったのよね。勇敢で何があっても揺るがないのに、その純真な一面を捨てられない。
すまない。
謝る必要はないわ。私はそういうあなたが好きなんだもの。そういうあなただから、私は……私たちは、全てをあなたに託したの。今まで、お疲れ様。
いいんだ、それが僕のすべきことだったから。だが……ありがとう。
私たちが無理やり押し付けた重荷なのに、あなたって本当に真面目よね。お礼を言いたいなら、直接みんなに伝えればいいと思うけど？
ケビン――お肉が焼けたわよ！
早く来ないと、全部パルドに食べられちゃうよ～
なんで私なの！一番食べてるのはサクラの姉ちゃんなのに！
？
みんなもあなたを呼んでるみたい。そろそろ行きましょう。
ああ……行こう。
心配しないで。今回は私も、みんなも一緒よ。もう……あなたなひとりぼっちにはさせないわ。
…………ははっ。本当に、いい天気だ。

アイドル決勝戦で優勝したワタリガラスがトップアイドルの座を辞退したけど、
それがきっかけで始まった延長戦にて灰蛇と一緒に他の出場者のインタビューを見ながらワタリガラスを勝手に再エントリーした
「誰も……逃げることなど出来はしない。彼女も、他の選択肢はない」

サバイバル！夏の狂想曲・サイドA

黄金の庭園に住む普通のITマン。普通の仕事をして、普通の日常を送ってる普通の人らしい。
しかし劇中では胸元が開けたシャツ、水鉄砲、極めつけには星型サングラスと妙にノリノリな衣装で登場する。
さらに口を開くや否や座り込んだ氷の椅子に体がくっついて離れないなどと言い出して一行をドン引きさせ、フェリスに容赦なく熱湯をぶっかけられなんとか救出された。
それでもなおケビンの放つ異様な冷気は収まるところを知らず、極寒ジョークを連発するケビンにさしものサクラも動揺を隠せずにいた。
その後あまりの異常さに耐えかねた一行の追求によって、この異変の原因が配られたカードによる「黄金の庭園のみんなを笑わせる」課題であると判明。
一刻も早く彼の口を塞ぐため、華とサクラの同情を受けて課題をクリアさせてもらった。
フェリスには冷たい目で見られた。
エリシアだけは普通に大ウケしてくれた。
「違うんだ、エリシア。ジョークは途中で、本当に面白いのは…」
寒いジョークを言うのは課題のせいだったらしいが、イベント中ケビンの祝福の名前はやけにダジャレを擦られてたりセリフでジョークを言ったりなど、本当に課題のせいで面白くないジョークを言っていたのかは不明。
ちなみにギャグのセリフは台本で指定されておらず、全てアドリブ。
ケビンあなた…