IJN Musashi

大和型戦艦二番艦「武蔵」は、1942年8月に竣工。当時世界最大・最強の戦艦として、来るべき艦隊決戦の切り札となるべく大きな期待を背負っていた。しかし、その誕生の時点で海戦の主役はすでに航空機へと移り変わっており、武蔵はその圧倒的な性能を存分に発揮する機会に恵まれない「不運の艦」であった。
連合艦隊旗艦として
竣工後、武蔵は1943年2月に姉妹艦の大和から連合艦隊旗艦の任を引き継ぎ、トラック泊地へ進出。しかし、戦局は航空機と潜水艦が中心となり、武蔵のような戦艦が出撃する機会はほとんど訪れなかった。大規模な戦闘もなく、泊地で待機する期間が長かったため、将兵の間では大和が「大和ホテル」と呼ばれたのに対し、より居住性の良かった武蔵は「武蔵御殿」と揶揄されることもあったという。
初陣と最後の戦い
武蔵が初めて本格的な戦闘に参加したのは、1944年6月のマリアナ沖海戦である。この海戦では乙部隊に所属し、対空戦闘で敵機数機を撃墜したと記録されているが、艦隊決戦には至らず、主砲である46cm砲が敵水上艦艇に向けて火を噴くことはなかった。
そして同年10月、武蔵は捷一号作戦（レイテ沖海戦）に参加。栗田健男中将率いる第一遊撃部隊の中核として、レイテ湾を目指した。10月24日、シブヤン海を航行中に米軍機動部隊の艦載機による大規模な空襲に遭遇。圧倒的な防御力と集中配備された対空火器を持つ武蔵は、敵の攻撃を一手に引き受ける盾となり、米軍機の攻撃目標は武蔵一隻に集中した。
ゲーム内でも特徴となっている両舷の15.5cm副砲も三式弾を用いて対空射撃を行い、艦全体でハリネズミのように弾幕を張って奮戦。その防御力は凄まじく、20本以上の魚雷と17発以上の直撃弾を受けながらも、なお数時間にわたって海上に浮かび続けた。しかし、ついに限界を超えた損傷により左舷に大きく傾斜、転覆し、栗田艦隊のレイテ湾突入を見届けることなく、1023名の乗員と共にシブヤン海の底へと沈んでいった。竣工から沈没まで、武蔵の46cm砲が敵艦を撃つことは一度も無かった。