リトラクタブルヘッドライト

Last-modified: 2020-02-26 (水) 20:03:21

リトラクタブルヘッドライトはヘッドライト(前照灯)の種類の1つで、通常のヘッドライトが車両の前部に固定して据え付けられているのに対し、消灯時はボンネット内部に埋没しており、点灯時のみ外部に展開される構造となっている。*1*2

 

リトラクタブルヘッドライトが生まれた背景には、自動車の法規制が深く関係している。
自動車の車体前部の高さを下げることは空気抵抗の減少による性能向上につながるが、ヘッドライトの最低地上高には安全上の理由から法律による規制があり、あまり低い位置には置けない。*3
またヘッドライトの存在はデザインの自由度に大きな制約をもたらすため、カーデザイナーは古くからヘッドライトの取り扱いに苦慮してきた。これらの課題を両立させるため、「必要な時だけ、法規制を満たす高い位置に露出するヘッドライト」として考え出されたのがリトラクタブルヘッドライトである。*4

 

消灯時の空気抵抗が減る以外にもスタイリング的な特徴が持たせられることがメリットで、1963年のロータス・エランのヒットによって本格的に流行した。日本車では、トヨタ・2000GTで初めて採用され、1970年代後期以降のスーパーカーブームをきっかけとして一般に広く認知され、マツダ・サバンナRX-7をはじめとするスポーツカーに採用されたため、当時はスポーツカーを象徴する代表的なパーツと見られるようになり、自動車愛好家の羨望の的となった時期もあった。1980年代に入るとホンダ・アコードやホンダ・クイントインテグラ、トヨタ・カローラII(および兄弟車のコルサ、ターセル)、マツダ・ファミリアアスティナなどをはじめとするセダン形やハッチバック形乗用車にまで採用され、一時的なブームともいえる状態となった。

 

しかし、リトラクタブルヘッドライトは以下の様なデメリットも存在する。

  • 点灯時はヘッドライトが進行方向に向かって正対するため、逆に空気抵抗が増大してしまう
  • 開閉機構を装備するため、車両重量が増加する。また、開閉機構自体も複雑なため高コストになる
  • 突出したライトが対人事故の際、対象に重度の傷害を与える恐れがある
  • 事故や寒冷地の凍結などでヘッドライトが展開しなくなる恐れがある
     

また時代が進むにつれて以下の理由で、実用上の意義も薄れていった。

  • 北米におけるライト最低地上高規制が緩和された
  • プロジェクターライトやマルチリフレクター式のライトが実用化された*5
  • 一部の国では、終日走行時のヘッドライト点灯を義務付けている*6
     

このような自動車性能向上の観点、安全面などの問題から、日本車では、2002年のマツダ・RX-7(FD3S)の生産終了、海外でも2005年のシボレー・コルベットのフルモデルチェンジを最後にリトラクタブルヘッドライトを装備する車は発売されていない。

 

しかし、スタイリングの良さなどの理由でリトラクタブルヘッドライトを装備する車は現在でも根強い人気がある。中にはS13型シルビアに180SXのリトラクタブルヘッドライトを移植する*7など、通常のヘッドライト車をリトラクタブルヘッドライトに改造する事例もある。*8

 

ちなみにストーリーモードでは、リトラクタブルヘッドライト車はリトラクタブルヘッドライトを開かない仕様になっている、もしくは固定式に
なっているなどの改造がされている(ただし5DX+までの雰囲気組のAE86・FDやコウちゃんのFCは開いている)。

湾岸マキシに登場する車でリトラクタブルヘッドライトを装備する車種


*1 日本では格納式前照灯とも呼ぶ。また消灯時はボディーに貼りついているかのように上向きに格納され、点灯時は起き上がる構造のポップアップ・ヘッドライトと呼ばれる方式も存在する。
*2 余談だが、日産・フェアレディZ(Z31型)のヘッドライトも区分上ではリトラクタブルヘッドライトになっているものの、日産の公式発表ではパラレルライジング・ヘッドライト(パラレルライズアップ・ヘッドライト)というもので、一般的なリトラクタブルヘッドライトとは異なっている。レンズ部は完全に隠れるわけではなく閉じている(消灯)時でも見えており、展開時には垂直に上がって点灯する。これはS130型までのデザインである「ボディの一部を削ってヘッドライトを装着する」を崩さずに、パッシング用のライトを省略してコストも抑えようとする実利的な意味合いもある。ただし当時の北米の保安基準では、この異形ヘッドライトの採用は認められていなかったため、連邦自動車安全基準規格に適合したヘッドライトにドライビングランプをセットで装着して輸出にこぎつけたというエピソードもある。その後、北米の保安基準が改定されたため、1986年のマイナーチェンジのタイミングで日本仕様と同じ形のヘッドライトシステムのまま輸出することができるようになった。
*3 ちなみに現在の日本では、ヘッドライト(前照灯)の高さはレンズ上部が地面から120cm以下、下部が地面から50cm以上である。
*4 また、過去のアメリカにおいては「規格型」のライトハウジング以外(異形4灯、異形2灯)は使用できなかった。その規格型のライトを使用したままフロントノーズを低くするには「不使用時には格納」するしかなかったという事情もある。このため、日産・240SX(日本のS13型シルビア)やトヨタ・カローラレビン AE80系・AE90系のように北米仕様車では同系のリトラクタブルヘッドライトを採用した車のフロントマスクが流用されたケースもある。
*5 配光をレンズカットにより行う必要がなくなったことなどから、それまで垂直にならざるを得なかった前面レンズが単なるライトカバーとなったため、スラントさせたり任意の曲面とすることが可能となり、空力やライトデザインの制約が大きく減った。
*6 つまり走行中にライトを格納していることがないため、装備する意味がほとんどない。上述のように高価で重い上に空気抵抗が増えるので、動力性能・環境性能・コスト面共にマイナスにしかならない。
*7 これはS13シルビアと180SXが同型番で基本構造がほぼ同一であることを利用したもので、通称、ワンビアと呼ばれる。ちなみに、S13シルビアや180SXの北米仕様にあたる240SXでは、前述の法規制の関係から純正でこのような状態で販売されていた。
*8 他にはS14・S15シルビア、三菱・GTO、ホンダ・NSX後期型などがある。しかしS14・S15シルビアはS13型と違って180SXとの部品の互換性が無いため、大掛かりな板金作業が必要となる。
*9 日本車初のリトラクタブルヘッドライト搭載車
*10 正確にはリトラクタブルヘッドライトではなく、前述のポップアップ・ヘッドライト。
*11 ちなみにシボレー・コルベットは2代目(1963年発売)から5代目(2004年生産終了・2005年販売終了)まで約41年間の長きにわたってリトラクタブルヘッドライトを採用していた。