リトラクタブルヘッドライトはヘッドライト(前照灯)の種類の1つで、通常のヘッドライトが車両の前部に固定して据え付けられているのに対し、消灯時はボンネット内部に埋没しており、点灯時のみ外部に展開される構造となっている。*1
リトラクタブルヘッドライトが生まれた背景には、自動車の法規制が深く関係している。
自動車の車体前部の高さを下げることは空気抵抗の減少による性能向上につながるが、ヘッドライトの最低地上高には安全上の理由から法律による規制があり、あまり低い位置には置けない。*2
またヘッドライトの存在はデザインの自由度に大きな制約をもたらすため、カーデザイナーは古くからヘッドライトの取り扱いに苦慮してきた。これらの課題を両立させるため、「必要な時だけ、法規制を満たす高い位置に露出するヘッドライト」として考え出されたのがリトラクタブルヘッドライトである。*3
消灯時の空気抵抗が減る以外にもスタイリング的な特徴が持たせられることがメリットで、1963年のロータス・エランのヒットによって本格的に流行した。日本車では、トヨタ・2000GTで初めて採用され、1970年代後期以降のスーパーカーブームをきっかけとして一般に広く認知され、マツダ・サバンナRX-7をはじめとするスポーツカーに採用されたため、当時はスポーツカーを象徴する代表的なパーツと見られるようになり、自動車愛好家の羨望の的となった時期もあった。1980年代に入るとホンダ・アコードやホンダ・クイントインテグラ、トヨタ・カローラII(および兄弟車のコルサ、ターセル)、マツダ・ファミリアアスティナなどをはじめとするセダン形やハッチバック形乗用車にまで採用され、一時的なブームともいえる状態となった。
しかし、リトラクタブルヘッドライトは以下の様なデメリットも存在する。
- 点灯時はヘッドライトが進行方向に向かって正対するため、逆に空気抵抗が増大してしまう
- 開閉機構を装備するため、車両重量が増加する。また、開閉機構自体も複雑なため高コストになる
- 突出したライトが対人事故の際、対象に重度の傷害を与える恐れがある
- 事故や寒冷地の凍結などでヘッドライトが展開しなくなる恐れがある
また時代が進むにつれて以下の理由で、実用上の意義も薄れていった。
このような自動車性能向上の観点、安全面などの問題から、日本車では、2002年のマツダ・RX-7(FD3S)の生産終了、海外でも2005年のシボレー・コルベットのフルモデルチェンジを最後にリトラクタブルヘッドライトを装備する車は発売されていない。
しかし、スタイリングの良さなどの理由でリトラクタブルヘッドライトを装備する車は現在でも根強い人気がある。中にはS13型シルビアに180SXのリトラクタブルヘッドライトを移植する*6など、通常のヘッドライト車をリトラクタブルヘッドライトに改造する事例もある。*7
ちなみにストーリーモードでは、リトラクタブルヘッドライト車はリトラクタブルヘッドライトを開かない仕様になっている、もしくは固定式に
なっているなどの改造がされている(ただし5DX+までの雰囲気組のAE86・FDやコウちゃんのFCは開いている)。
・湾岸マキシに登場する車でリトラクタブルヘッドライトを装備する車種
- BMW