混沌の王座
エレリノン城の最も高い場所に位置するここは、
オズマが偽装者軍団と共に城を陥落し、自らの王座を据えて黒い聖戦を指揮した場所だ。
「実体のない富と栄光を追い求める弱さの象徴は、打ち壊すべきではないか?」 ーオズマ
混沌のオズマ
闇の中で囁くような声を聴いた。
それはこの世への怒りを示すわめきであり、怨恨に満ちた嘆きでもあった。
混沌がこの世を蝕むと思うか。
混沌が不浄を招いて善良な者を蝕み、世界を混乱に陥れると思うか。
それが自分の声だったと思うならば、そう思うがいい。
頭の中の不浄を囁くこと、見てはならないものを見せること、それが本当に混沌の仕業だと思うならばそう受け止めるがいい。
それはお前たちの中にとぐろを巻く誤った真実の蛇であり、
否定したい内面のこだまはお前たちが吐き出した断末魔なのだ。
隠したい真実と否定したい声が聞こえて苦しいならば、
そう、私のせいだと言ってもいい。
それで世界が暴かれ、お前たちの愚かさが明らかになるのならば、
私が自ら膿んだ傷の中のそれを取り出し、お前たちに見せてやろう。
私はただその方向の定まらない世界の羅針盤であり、先に放たれた矢であるのみ。
矢を一本打ち返したとしても、その後に降り注ぐ矢の雨を防ぐことはできないだろう。
私をつがえた弓を引いたのは怨恨だったが、私が引き裂くのは裏返った世界の空なのだ。
括りつける鎖よ、混沌はすでに鎖で括りつけるにはあまりにも大きくなりすぎてしまった。
目の眩む光よ、私の両目はすでに光の中の闇を見つけた。
見よ。
私が何もしなくとも混沌の時は訪れ、
とうとう彼らは私の前に辿り着いたのだ…。
これは予見されていたことだと、最初から分かっていた。
その真実のままならばこの殻は壊れるだろうが、殻を壊して芽生えた混沌は永遠だろう。
ただ、残念なのは…
冥界で待っているであろう彼に二度と会えないこと。
だが、後悔はない。
これが私の決めた、私と世界の終幕なのだから…。
行動パターン
悲劇の都市、エレリノン
その昔、ペル・ロス帝国で最も栄えていた都市の城で、混沌の神オズマと偽装者軍団が一番最初に攻撃した地域。
たった一日で陥落し、住民たちは命を落とすか血の呪いで偽装者になったという。
黒い恐怖のアスタロス
出でよ、混沌よ。
あなたの意志通り、聖者の真実を光の奴隷たちに知らせました。
彼らの喪失と分裂をしっかりと見届け、恥部を隠そうとする欺瞞もまた、見届けました。
それにより苦悩し、悪に堕ち、堕落した者たちを導きました。
出でよ、混沌よ。
あなたの意志通り、あなたの教団を用意しました。
人気の少ない路地で死にかけていた少女に生を与え、
少女はあなたを説破する啓示者となりました。
聖者の矛盾に気付き、苦悩に陥っていた光の奴隷はついに光に背を向け、
破滅の選択を受けて使命を果たし、死を迎えました。
絶望の中で暮らしていた少年は、些細な動機を与えただけで黒く染まり、
すぐに絶望の選択を受け入れて誰よりも忠実な犬となりました。
自らを救済者と思い込む傲慢な光の奴隷は自ら堕落の道へと進み、
果てしない欲望でついに破滅を手にしました。
分裂した光の奴隷たち、家族を失って堕ちた者たちに新たな翼を与え、
その翼は多くの光の奴隷を屠りました。
出でよ、混沌よ。
あなたの意志通り、全ての用意が整いました。
世界を再び混沌に染める準備が整っています。
出でよ、混沌よ。
行動パターン
鏡の庭園、アルミス
一時はエレリノンの富の象徴とされていたが、今では都市の没落と共に混沌の気運による幻影で満たされてしまった場所。
その最奥にはオズマが隠したがっている何かがあるとも言われている。
混沌を欲する半夜
"うるさいですね。"
低くつぶやいて四凶獣の気運を引き上げると、頭の中に響いていた声が次第に小さくなっていった。
彼は満足げな表情で周辺の風景を見渡す。
混沌の王座のすぐ横に位置する、鏡の庭園。
「アルミス」と呼ばれるここは、クリスタルで作られた鏡でいっぱいだった。
半夜は歩みを緩めて、鏡に映った自分の姿を凝視した。
殉血者の力を吸収した後に変化した、彼の姿の上に混沌の影が色濃く差していた。
"私は混沌の手下ではなく、極楽浄土の主になるつもりです。"
半夜は吐き出した言葉に力を与えるように、拳を強く握りしめた。
たった一つの目的のために破門も恐れず、世間の非難にも耐えてきた彼だった。
長い忍苦の時間と紆余曲折の末に掴んだチャンスを、彼は徹底的に自分の信念のために利用するつもりだった。
吸収した破滅と絶望の力を全て自分のものとするには
オズマの内面とも言えるそこで、彼の自我を完全に理解する作業が必要だった。
もちろん、その過程で意志を失えば混沌の手下になるしかないが…
"不必要なものは斬り捨て、必要なものだけをもう一度集めればいい。"
半夜は断ち切るように首を振り、否定的な考えを振り払った。
辛いからといって、ここまで来て成し遂げたものを諦めるつもりはない。
そろそろ終幕が見えてきたこの聖戦が終わるころには、彼はこれまでとは次元の異なる存在となる予定だった。
"この身を犠牲にしてでも…"
自分の信条を思い起こしながら、彼はまた混沌の内面へと意識を集中し始めた。