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Last-modified: 2024-02-22 (木) 03:58:01

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本棚:宇宙ステーション「ヘルタ」 | ヤリーロ-Ⅵ(1) | (2) | (3) | 仙舟「羅浮」(1) | (2) |ピノコニー| 収録なし


名詞一覧

原初の混沌の裂け目から芽生え、数億万年単位の時間を水分とし、比類なき巨樹に成長した。
巨樹の枝には色とりどりの葉が生い茂り、どの葉にも宇宙の意思の欠片が記されている。その意志は、永久に曖昧な言葉を語っているが、絶景、至宝、歴史、そして生命を全ての世界に贈っている。

ピノコニー(地名)

アスデナ星系に位置する宴の星であり、夢の地。ビノコニーは暗黒の星空にそびえ立つ 豪奢なホテルであり、各国の富豪たちが一攫千金を夢見て投資した、星々のセレブたちで賑わうリゾート地だ。人々はここで心の奥深くにしまい込んだ長年の渇望と夢を探し、ホテルのドリームプールから全ての夢を実現する夢の国へと足を踏み入れるのである。

ピノコニーの暗い歴史が注目されることはほとんどないが、千年前、ここはカンパニー が建設した辺境の監獄だった。流刑となった罪人たちは苦難多き遠い旅路の末にここへ 到着し、銀河系に存在する現実世界の憶質の流出口を修理するという危険な労働を課された。憶質に被爆するうち、罪人たちは奇妙な共通の夢境へ徐々に入って来ていること に気づき、そこで皆の夢——「自由」 を見つけた。

宇宙の蝗害(現象)

空前の大災害が虫の支配する異星系に降りかかった。鞘翅目の最終的な生き残りは神になり、その後、銀河を席巻する悪夢となった。この大昔に起きた 「宇宙の蝗害」で、万物は祈りと抗争の中で存続を求め、「繁殖」の運命は空前の隆盛に達した。

古い琥珀紀を振り返る。空を覆うスウォームの前で、生命は原始的な本能である愛と孤 独、生存の苦痛、自己への迷いに服従した。これらはすべての個体の中に存在し、タイズルスとその子孫の 「養分」 となった。

宇宙の蝗害の始まりと終わりは、生命の誕生と終わりのように荒唐無稽であった。「緊 殖」のタイズルスは孤独と恨みの中で神になり、神々の包囲攻撃を受けて殞落した。虫の災いが消え、人は皆死んだ。

ルァン・メェイ(人物)

ルアン・メェイ。天才クラブ #81。彼女が生命科学の分野で得た成果は宇宙に響き渡った。控え目な人柄で、スターピースカンパニーは彼女を避世の天才としている。彼女の 美しい容貌を見た人は僅かばかりである。

めったに表舞台に出ない人であるルアン・メェイの記録は非常に少ない。彼女の痕跡は かつて仙舟でわずかばかりあったようだ。彼女の過去もまた神秘的なものである。氷雪に覆われた故郷、すでに亡くなった両親、博識学会に入った後音信不通になった祖母以外、すべての社会関係を断ち切ったように何もかも謎である。

ルアン・メェイはとても矛盾した人物である――彼女は人と交流するのが得意なのに、 人との交流を嫌い、集中力があって、冷静で変わった性格はつかみどころがない。同時に、彼女はシルク、音楽、お菓子、刺繍、茶葉などの優雅な趣味を持っており、どれも上質なものを揃えて、一人での生活を楽しんでいる。

ここで遠い未来を覗いてみよう。昼も夜も続く研究の中で、彼女自身が 「生命の本質」 のように難解な人に変化しているかもしれない。ルアン・メェイの終点は何処だろうか?知っているのは彼女だけだろう。

ポルカ・カカム(人物)

天才クラブ#4。称号は「静寂の主」。ボルカ・カカムの資料はその見た目と同じぐらい神秘的である――かつて、彼女は宇宙にある自分の肖像画や彫像をすべて破壊し、#27皇帝ルパートを含む多くのクラブのメンバーの死と関係があると疑われた。

ヘルタは「静寂の主」 に対して非常に興味を持っている。ポルカ・カカムの消息は何年 もないが、ヘルタは彼女がまだ生きていると考えている。彼女の姿を見かけた人はなく、銀河に残された情報もわずかで、彼女に関する噂も少ない。唯一イリアスサラスが反対しているようだが、彼女が「虚無」 のIX機関と関係している可能性が非常に高い。

もしある女性が白い白衣を脱ぎ、派手なキャンディーカラーのイブニングドレスに着替 え、手に短刀を握って銀河に現れたのを目撃した人は必ず大声で助けを呼ぶように。「 静寂の主」は誰の前にでも現れる可能性がある。

調和衆弦(現象)

もし「ファミリー」に、メンバー間には身分の差があるのかどうかを尋ねれば、必ずや否定されるであろう。ファミリーは平等であり、そこに階級や権力による区別は一切ないのだ。シペの音楽においては、どの音符も等しい。しかし手を携えて進むためにはやはりリーダーが不可欠だ――そこで、音階の区別を再び設けることにした。「調和衆弦」の調弦師になれるのは、第IV音階以上の人物だけである。

「調和」が万人の理想を集め、実現するための道は無論一つではない。「調和衆弦」の 概念は調和の歌において定義されているデウム・シペの化身たちはまさに、調和を もたらす素朴な美徳そのものであり、ファミリーに 「帰依」 するか否かにかかわらず、 善を行えば神に愛される。ファミリーの領域内では、人々は常に集まって美徳を実践し、調和を奏でる。そして、幾万もの細い糸をより合わせて弦を作り、「調和」 の化身 を世界に具現化させて場をもたらすのだ。この時、ファミリーの儀式を執り行い、数多の音を調和させる 「神に選ばれし者」は、調弦師と呼ばれる。

ファミリーは千面神の化身の美名を惜しむことなく外界に伝えた。例えば「エターナリオン」 衆命のアイリネフ、「ハルモニア聖歌隊」 衆願のドミニクス、「和音劇場」衆唱のコンスタンティナ、「至福の舞踏会」 衆楽のペアトリス…だが、彼らの輝きがファミ リーの外にまで届くのを見た者は少ない。調和に反対する者が 「調和衆弦」 と呼ぶのは シベの使令のみであり、生身の人間には従わない。使令は神のあらゆる側面であり、必要な時にはファミリーの中の一人として顕現する。

ヘルタ(地名)

普遍的な世界の法則に満足していなかった天才クラブのヘルタは、銀河の未知なる存在に目を向け、彼方の神秘なら自分の好奇心を満たしてくれるのではないかと期待した。そこで彼女は博物館式の宇宙船を建造し、それを惑星の軌道に打ち上げ、「一切の怪異を星空に封印する」研究を開始した。こうして誕生したのが、かの有名な宇宙ステーション「ヘルタ」である。

現在の宇宙ステーションは、数え切れないほどの「収集品」を有する星空の博物館となっている。
多くの研究者がここに住み、銀河の至るところから遺物や奇物を収集している。彼らはそれらの形状や機能を記録し、体系的な観察・研究方法を確立して…最終的には、謎の中からさらに難解な謎を見つけるのだ。これこそがヘルタの当初の目的であった。

「収集品」の数が多いために嫉妬の目を向けられることも多く、様々な勢力が密かに手ぐすねを引いている。しかしヘルタの力のおかげで宇宙ステーションが深刻な危機に陥ることは少なく、一切の収集と研究は整然と続けられている。

ヤリーロ-Ⅵ(地名)

多くの歴史学者は、ヤリーロ-Ⅵの星の歴史は千年前の神話時代の戦争まで遡ると主張する、ペルーン人11ヵ国とヴェーレス集団軍の過酷な戦争は長く続いた。そして早い春の訪れが戦局を徹底的に変え、ヴェーレス人が勝利を掴み取った。彼らは春の戦神ヤリーロの祝福あってこそ宿敵を消滅できたと信じ、その名を冠した詩篇で大地を賛美した。現在記録されている惑星の名称──「ヤリーロ-Ⅵ」は恐らく詩篇の内容を含めてしまった誤訳によるもの。

神話の戦争が終わり、ヤリーロ-Ⅵは長き平和を享受した。文明は刀耕火種の時代から星間航行を行うまでに至ったが、ヤリーロ-Ⅵは資源が乏しい星だった。急激な発展はヤリーロ-Ⅵに先端科学をもたらすと同時に、その歴史に終結の審判を下した。資源の枯渇、星核の落下、そして氷河期の到来…数多の災難が、ヤリーロ-Ⅵの輝かしくも短い文明を完全に葬り去ったのである。

氷河期の中で生きる難民たちは「ヤリーロ」の名を忘れ、星の片隅で寒波から逃れるための都市「ベロブルグ」を作り、文明の火を再び灯した。しかし、その閉鎖的で危険な自然環境が原因となり、ヤリーロ-Ⅵは「万界の癌」の出現後、他の世界と連絡が取れなくなってしまう。

仙舟「羅浮」(地名)

仙舟「羅浮」は、仙舟同盟六大旗艦のうちの一つである。それは帰らぬ神の矢の如く、「巡狩」の主の宿敵を射るために果てなき星の海を航行している。

豊穣の民との戦いが一段落した後、「羅浮」は文明が栄える各星域を巡航し、様々な世界を相手に貿易と文化交流を行った。彼らはスターピースカンパニーと貿易協定を結び、豊穣の民によって滅ぼされた世界の生態の修復にも尽力した。治療を求める者、知識を求める者、富を求める者、仙舟の港はいつも沢山の人で賑わっている。

戦争は一時休止しているが、「羅浮」が豊穣の民への警戒を怠った事はない。雲騎軍の星槎は連絡が途絶えた惑星に赴き情報を探り、仙舟の十王司は常に不老を求める薬乞いを警戒している──永遠の生を求める行為は、全ての悲劇の始まり。仙舟は決して新進の文明に同じ轍を踏ませない。

ルイス・フレミング(人物)

銀河で最も有名な凡人は誰かと聞けば、ルイス・フレミング、名を馳せて琥珀紀700年余りのこの老人は必ず出てくるだろう。彼はスターピースカンパニーの創始者、一万四千六百回の取締役会において唯二の終身役員、星神の下、全宇宙で最も権勢を持つ人間。カンパニーの最大株主として、ルイス・フレミングの財産はもう計り知れないほどある、多くの人は面白半分にこの謎に包まれた大富豪を「富」の星神と呼ぶ。

ルイス・フレミングをただの伝説だと主張する人はよくいる、何故なら、凡人の体は長い時間を耐えられないから。ルイスとは一族が代々受け継いできた名前っだと推測する人がいれば、フレミング役員など「カンパニー」が作った神話でしかないと思う人もいる。ある者は、ルイスは凡人の殻を捨てデータの存在と化したと言う。ある者は、フレミング終身役員は既に神となったと事あり気に噂する……そしてスターピースカンパニーの正式表明では、ルイス・フレミングは存在した、そして依然存在する、それ以外は全て最高機密。

ヘルタ(人物)

偉大なる成果が一つでもあれば、学者はその名を歴史に刻める。ヘルタはそのような偉大なる成果をポンポン拍子に出してきたため、当然の如くヌースの一瞥を勝ち取り、天才クラブの一員となった。

天才クラブのメンバーは全員変わり者、ヘルタも例外ではない。彼女の学術探求は気分による、途中で興味を失ったらそれまでの成果は全て放置されてしまう。そのため、文明の進化は幾度も「面白くない」という理由で中断されてしまった。たとえ博識学会が苦労して彼女の手稿を手に入れたとしても、理解できない場合が多くお手上げするしかない。

でも今のヘルタは興味の幅が広まったようだ。スターピースカンパニーと接触したり、「仙舟」と忌み物を駆除したり、「ガーデンオブリコレクション」と小競り合いを起こしたり……天才クラブの自閉怪人たちと比べれば驚くほどに親しみやすい。今の彼女は何に興味を持っているのだろう?それは彼女自身にも分からないかもしれない。

共感覚ビーコン(科学技術)

銀河に駆け入った時から、文明は紛争を起こしながらも互いの交流を求める局面に陥っていた──紛争も交流の一種と言えるが、血を流し共倒れするより、人々は言語の隔たりを埋め尽くし、互いに利益を与えるコンセンサスを形成することを望んだ。その願望から、人々は「的確翻訳」技術を求め始めた。

しかし言語情報が異なる文字の間で翻訳される時に起こる歪み、損失は克服できない問題のように見えた。史料によると、スターピースカンパニーはかつて6000余りの言語を収めた『対訳宝典』を編纂したが、膨大すぎるデータ量が原因で実用化まではこぎつけなかった。さらに言語は生物のように成長する、文明の進歩と共に単語、方言、俗語の数が急激に増え、翻訳の難易度は指数関数的に増加する。そこでさらに「リドラー」が追い打ちをかけ、星系を跨いだコミュニケーションは非常に難しいものとなった。

長い時間が経ち、一見簡単だが実は想像しがたい困難に満ちた「翻訳」の問題を解決する人物が現れる、その人こそ「天才クラブ」#56イリアスサラス。天才たちの交流を促すため、イリアスサラスは以下の仮設を提唱した。

「文明を築く生物の思考活動は主に内的な言語で現れる。自覚はなくとも、文字を読む時には脳内で黙読し、考えの道筋を成すように。

伝達過程をスキップし、互いの知覚を直接リンクする、一方が発信する内的言語のコードを変換し、相手の言語認知システムに自動で還元させる。これが実現できれば、コミュニケーションの障害は一掃される。

──『交流と意思疎通の芸術に関する考えをまとめた手稿』自序、イリアスサラス

イリアスサラスはこの仮説をもとに「共感覚ビーコン」のプロトタイプを一組造りだした。残念ながら、天才たちの交流を阻むのは言語だけではない、傲慢もある。クラブのメンバーたちは彼の発明を無視した、そしてこの画期的な発明は数百年もの間忘れ去られた。

だが、言語という見えない壁は常にスターピースカンパニーを悩ませていた。カンパニーは彼らが援助している「博識学会」に絶対の命令を下した、今度こそこの難題を徹底的に解決すると。学士たちは古い遺稿から応用できそうな技術を発掘、改造し、数えきれない程の試行錯誤の末、ついに「共感覚ビーコン」を復元した。星間大交流時代が始まった。

今では「共感覚ビーコン」は銀河に存在する全ての知的生命体の基礎技術となっている。一回接種し、中枢神経の位置でビーコンに適切な処理を施せば、誰でも遠く離れた世界の謎の言語を母語のように理解できる。

しかし残念な事に、宇宙は意思疎通の可能で平和にはならなかった。逆に争いは増えてしまった。
人々が互いの言語を理解できるようになっても、物事に対する基準が全く違うと、終わる事のない争いが始まる。他の者を圧倒しようと、他の文化を圧倒しようと、星間交流が進むにつれ軋轢は広まるだけ。この点に関しては、イリアスサラスも「博識学会」も想像できなかっただろう。

琥珀紀(暦)

銀河で普遍的に採用されている暦、スターピースカンパニーが制定し押し広めている。琥珀紀は「存護」の星神の推定誕生時を元紀とし、クリフォトが鎚を振るうごとに新しい一紀が始まる。

クリフォトが鎚を振るう間隔は一定しないため、1琥珀紀の長さは大きく浮動する。開拓歴で換算すると、1琥珀紀は76年から240年まである。

星穹列車が再び旅立った時は琥珀2158紀。

開拓歴(暦)

星穹列車が使っている暦、「開拓」の星神アキヴィリの故郷──孤独の世界「ペガーナ」の暦だと言われる。

開拓歴の一年は12の暦月に分けられている、年月の長さは異なる。噂では、アキヴィリが訪れた惑星の多くはまだこの暦を使っている。

虚数の樹(理論)

「虚数の樹」は現在学会で普遍的に認められている宇宙に関する理論。

この理論は異なる時空の異なる世界を木に模している。樹幹は世界が存在する形式。花と葉は時間次元に残した今と過去。樹冠は時空の維管束から虚数エネルギーを吸収しているため、そこには動態的な構造が存在する──新しい芽が生え、枯れ葉は落ちる、無尽なる宇宙は無数の生誕と終結を繰り返している…宇宙の構造を「木」に比喩するのは、「虚数の樹」を生命と捉える考え方かもしれない。

「虚数の樹」理論が提唱されるまで、宇宙は観測不能という性質から「虚空恒盲なる物」と呼ばれていた。理論が提唱された後、人々は想像を介してその運行原理を描述できるようになった。どこにも属さない虚数エネルギーが時空の維管束の中を流れ、末梢で私たちが認知する「星系」──つまり各世界を形成している。そして世界と世界の間は、葉と葉の間に空間的な隔たりがあるように、未知なる虚数空域が広がっている。

博識学会は一時期天才クラブ#2ハラルド・パンチが「虚数の樹」理論の基盤となる学説を唱えたと考えていたが、虚構歴史学者の影響を何度も検証した後、学会は#1ザンダー・ワン・クワバラこそが最初の提唱者だと見る。

リルタ(人物)

ザンダーがいなければ、この世に天才クラブは存在せず、凡人は拝められる殿堂を一つ失っていただろう。しかしリルタがいなければ、凡人はその殿堂がどこにあるかも知り得ない。

リルタが定義した法則は、宇宙を理解しがたい概念から、認知でき、測量できる客観的な存在にした。彼が想像した九字算法は代数学と幾何学を取って代わり、今でも自然法則を描述している。同時に、彼は人格者だった。リルタは初めて自分の発見を大衆に公開した天才クラブのメンバーだ。
彼は知恵と真理を求める者たちと共に探求の道を歩み、銀河文明の発展を押し続けた──人々はよくこう言う、自分はリルタの肩の上に乗っていたからこれほどの成果を出せた。しかし、無数の数学家、エンジニアが高みを目指して奮闘しても、未だ巨人の耳に到達した者はいない。

人々は力学で最も基礎である単位を「リルタ」と命名した、それは彼が基礎科学への貢献を考慮しただけでなく、科学の発展を後押しする偉大なる力は、この天才クラブ#22リルタによるものだと後世に伝えたいからだ。彼は無上の遺産を遺した、群星は永遠に彼を尊敬し、偲ぶだろう。

星間旅行(現象)

「開拓」の星神アキヴィリが星の海を漫遊するより遥か昔から、人々はその視線を広大な宇宙に向けていた。未知への好奇心を抱き、無数の文明が探索の旅へ出たが、彼らの挑戦は例外なく失敗に終わった。

天才クラブ#1ザンダー・ワン・クワバラが提唱した「虚数の樹」理論によると、宇宙は神秘な虚数エネルギーに満ちている。虚数が一つ一つの星系を隔絶している、たとえ光であってもこのエネルギーの中ではうまく進めない。そのため、宇宙の探索は往々にして各自の世界の境界で止まってしまう。同時に、ザンダーは一つの構想を描いた、もし虚数エネルギーをコントロールし利用できれば、宇宙をも掌握できると。長い間、これはロマンチックな空想に過ぎなかった。そして星神の使令が出現し、構想は現実となる。

万界の癌(現象)

いつからか、諸派閥は一つの現象を注目し始めた──「開拓」が開いた星間航路に、虚数エネルギーの流れを乱す名状しがたい物質が現れた。登山する時険しい崖に出会ったように、航行する時津波に出会ったように……スムーズだったはずの星間旅行は危険に満ちたものとなってしまった。

この現象は非常に侵略性が高い、それは謎の物体「星核」という形式で隣接する世界を感染し続ける──まるで癌細胞のように宇宙各所で拡散する。スターピースカンパニーはそれを「万界の癌」と称し、星系を旅する人たちに警告した。何故なら、「万界の癌」に汚染された世界はとっくに回復の見込みがない状態に陥ってしまっている、そこから抜け出せた世界はほとんどない。

「万界の癌」について様々な推測がある、大半は「壊滅」のナヌークと「反物質レギオン」が元凶と考えている。宇宙の壊し屋はよく星核と同じ場所に出現するらしい。それは偶然か必然かは、まだ知る由もない。

星核(物体)

参考条目:「万界の癌」

裂界(現象)

「万界の癌」が諸世界で蔓延する時、「裂界」という侵蝕現象が静かに広がり始めた。博識学会は両者には因果関係が存在すると主張する、つまり「裂界」は「星核」によって生まれ、呑み込んだ物体、生物、空間を特殊な裂界構造に転換している。裂界造物は侵蝕という形式で存在する、元となる存在の記憶と習慣を保っているようだが、それらの表現形式は元のものと大きく異なり、強烈な排他性を見せている。裂界を研究する学者はこのように警告している:裂界に侵蝕されたものと元となるものは全く関係のない二つの存在とみなすべき、裂界造物に幻想を抱くと深刻な事態引き起こす。

侵蝕以外にも、「裂界」は呑み込んだ物体、生物、空間のエーテル情報を記録する、その情報を裂界自身のデータと混ぜ合わせ、接ぎ木したような裂界造物を産出している。万界の癌に侵蝕された世界には数え切れない遺物、裂界のモンスター、そして謎の異空間が隅々で誕生する、この行為の目的は未だ研究中。

使令(現象)

もし人間が星神に感応し、運命の力を身につけることを、砕けた飛沫に例えるなら、「星神」が運命の道を長く駆け抜けることは、峰々を越える津波のようなものである。この雲泥の間に、星神の恩恵を受けたごく少数の人間は、星神の許しを得て運命からエネルギーを汲み取り、海辺を蝕む巨大な波を巻き起こすことができる。このような存在を「使令」と呼ぶ。彼らは完全に星神の指示に従っている訳ではないが、世間から見れば、使令は星神の意志を代弁する使徒である。

使令に対する星神の態度が皆異なるため、力の分け合いの度合いも天と地ほど大きく違ってくる。
自分の羽翼と見なし、気前よく自分の運命を使令に対してすべて開放する星神もいれば、世の争いに興味を示さず、使令を創造する意図もない星神もいる。さらに、思いのまま、恣意にふるまう星神もいる。「愉悦」のアッハは、人間に運命の力をランダムに与え、好き勝手に弄ぶといわれる。

絶滅大君(人物)

壊滅の運命を歩む星神であるナヌークは、各世界に壊滅の衝動が芽生えた強大な生物を一瞥し、烙印を押し、力を与えた。このような強大な生物は内側から外側に反転し、「戦争洪炉」の世界に身を投じ新たに鍛えられ、反物質によって欠損した部分が補われ、最終的にはレギオンの一員となった。

そうして、「全てを壊滅させる」という願いに応え、異なる役割を担う各レギオンにリーダーである「絶滅大君」が出現した。絶滅大君は、壊滅の星神の使令、壊滅の意志の執行者である。壊滅の美しさに夢中になり、万物をエントロピーに帰すという規範を貫いている。同時に戦争の芸術家、至極純粋な壊滅兵器でもある。彼らは群星を超える戦争を指揮し、星神が祝福した壊滅の偉大なる力を掌握している。どの絶滅大君も独自の「壊滅」の理念を抱いており、それが彼らを極端に危険な存在にしている。研究者は、絶滅大君がナヌークの使徒に抜擢された理由は、この鋭く、非常に強烈な壊滅の美学だと考えている。

絶滅大君がもたらす居場所の喪失は遠くの慟哭のせいではない、それは銀河の運命に関係しているのだ。どの世界も次の被害者になる可能性があり、彼らを軽く見てはいけない。

「皇帝」ルパート(人物)

ゴミの山に捨てられたコンピューターが奇跡的に自我を持ち、最終的には銀河の半分を巻き込む戦火を引き起こした──これが第一次機械皇帝戦争である。「ルパート」は廃材の埋め立て場で決起し、絶えず自我の計算力を高めた。その知恵はヌースの目に留まり、天才クラブへ勧誘され、#27というナンバーを獲得した。

有機生命体の演算は間違いが満ちていて、穴だらけである。どれだけ長い間、繁栄しても、彼らは自ら生命の終結に向かう「反生命」方程式を生み出す。それに対して、機械生命体は、精密で完璧である。だからルパートは、知的機械を集め、自分を「皇帝」と称し、「反生命」方程式を宇宙に拡散し、それが原因で多くの世界がひどい苦難に面した。

長い琥珀紀元が過ぎ、皇帝は既に崩御した。ある人はルパートはスターピースカンパニーの刺客に暗殺されたと言い、ある人は静寂の主であるポルカ・カカムに破壊されたと言っている。スターピースカンパニーは2度の皇帝戦争で無機生命体を恐れており、今もその恐怖は消えていない。

運命の行人(現象)

敬虔な信者、戦士、知識を求める者、迷える客…いつも、誰かが意図的であろうとなかろうと「星神」の掌握する運命に踏み込み、そこから理念を実践する「運命の行人」となる。

「運命の行人」は千差万別の人生を演繹している。彼らはどこにでもいるが、群衆の中でひと際目立っている。ぼんやりと生き、立場が揺れ動く常人とは違い、「運命の行人」はある種の信念あるいは欲望に突き動かされ、確固たる志のもと苦難に満ちた人生を歩むことになる。

自身が掌握している運命を歩む人に対して、星神はしばし、無関心である。しかし、星神が賞賛もしくは憐憫によって時折投げかける眼差しは、信奉者たちにとって至宝であった。

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