本棚/ピノコニー

Last-modified: 2024-02-23 (金) 11:45:42

アーカイブ:固有名詞 | 遺物 | キャラクター | 星神 | 敵対種 | 派閥 | 光円錐


本棚:宇宙ステーション「ヘルタ」 | ヤリーロ-Ⅵ(1) | (2) | (3) | 仙舟「羅浮」(1) | (2) |ピノコニー| 収録なし


ようこそ■■■■へ

怪しいカセットテープ。恐ろしい悪夢。

ようこそ■■■■へ

(途切れ途切れの奇妙な録音テープ。語り手の声はまるで金属同士が擦れた時に立てる鋭い音のようで、悪意と嘲笑に満ちている)

…ジジッ…ハハッ…ドカーン!

お客様、ドリームボーダーへようこそ。僕は…ジジッ…ガイドの…クロックボーイだよ!

楽しい旅にするために、観光中は絶対に次のことを守ってね!

まずは…ジ…ジッ…ここの名物――夢境の蜃気楼だ!

…ジジジッ…揺れ動く巨大な建物は風景でもあり、この土地ならではの生態系でもある…ジジッ…知覚生命体は観光客からの接触に反応を示すんだ。だから勝手に触ったり、落書きしたり、悪意を持って壊したりしないでね。

地面や建物が激しく揺れ始めても慌てないで。ほとんどは蜃気楼の周期的な活動か、一部の観光客が接触しちゃったことが原因の現象で、普通はそんなに長く続かないから。

気に入った建物があれば、中を好きに見てもいいよ。別でチケットを購入する必要はないから安心して。でも、最高の観光を楽しむチャンスは一度きりだから、建物は慎重に選んでね。

…ジジッ…キャーッ…クチャクチャ…ゴクッ…ピーッ!……

広場にはスラーダや、キッチンカーのU…ジジッ…バーガー、クロックピザ、ポ…ジッ…コーン…ジジジッ…なんかがたくさんある。どれもユニークな味で栄養満点!食べると健康になって、元気が湧いてくるよ。

今挙げた食べ物や飲み物は全部、観光客に無料で提供されてるから、欲しかったら自分で取りに行ってね。ただし、くれぐれも地元の住人や他の生き物を食べちゃダメだよ!

…ジッ…ジッ…ジッ…ベト…ネチャッ……最高のサービスを提供するよ!次は、今一番人気の観光スポットを紹介するね。

スラーダハッピーショー――「スウィート・ドリーム劇団」と一緒に踊ろう!
頭をカラッポにして、ストレスから解放された状態で君の熱い血潮をふり撒いて!

折り紙の小鳥――働き者の鳥たちは、毎日町を彷徨いながら、自分の体に空いた「埋める術のない穴」を埋めるための心の材料を探している。でも、蜃気楼たちはケチで、地元の人も助けてくれないんだ。じゃあ、親切な観光客ならどうだろう。助けてくれるかな?

自動交響楽団――さあ、この素晴らしい音楽に身も心も捧げよう!弦の上で気ままに揺蕩い、金管のピストンに合わせて上下に身体を動かして、鍵盤やドラムが奏でるリズムを感じながら…ジジッ…永遠の音楽の中で、永遠の喜びを楽しもう!魂が、この世界とひとつになるまで!

…ジジッ…キャハハ…ワァー!…ジッ…ジジッ……

――ゴトンッ!

ジョヴァンナの業務日誌

ホテルの夢路看護スタッフ総責任者ジョヴァンナの業務日誌、ある宿泊客の夢体験中の事故について記録されている。

ジョヴァンナの業務日誌

X月23日
今日は不思議なことがありました。

朝早く、ある客室のドリームマシンに異常が起きたという警報が発されたため、ホテルはすぐに調査人員を派遣。室内からしばらく応答がないことを確認したあと警備員がドアを開けたのですが、中はもぬけの殻で、ただ開け放たれたドリームマシンが稼働しているだけでした。

その後、私たちはホテル内にて緊急捜索を実施。行方不明のお客様の状況を夢境の中で確認するよう手配しました。幸い夢境の中にいるそのお客様に異常はなく、少なくとも彼の肉体は。現時点では無事なままピノコニーの中にあるようです。お客様の精神衛生のため、私たちはしばらくこのことを本人には知らせないことにしました。ホテルは現在も人手を割き、継続して厳しい観察を行っています。

早く彼の体を取り戻せるといいのですが。

X月25日
ここ数日、ホテルで…ある噂が流れています。私も休憩室で雑談中たまたま耳にしたのですが、ある客室係が言うには、夜中に「あの部屋」の前を通りかかった時、ネズミが壁紙をかじるようなガサガサという音が聞こえてきたらしいのです…ピノコニーにネズミなんているのでしょうか?

また、厨房でも同じ話題が上がっていました。別の若い客室係が後日その部屋に忍び込んだところ、中には誰もいなかったそうです。
ただ、それからも例の音はたびたび聞こえていて、さらには…だんだん大きくなっているのだとか。

X月26日
私にもついに聞こえました――彼らの言っていた音が。ドアの前に3時間以上張り付いていたのも無駄ではなかったようですね。私は音が消えないうちに部屋に忍び込みました。最近、同僚たちは「ドリームマシンに呑み込まれたゲストが幽霊になった」という噂で落ち着きをなくしていますが、私は看護スタッフの責任者として、この馬鹿げた妄想を明らかにしなくてはなりません。

それは何かが擦れる音でした。ガサガサとネズミが壁紙をかじっているようにも、怒った幽霊がもがいているようにも聞こえます。振り返ってみると、客室のドアはまだ開いていました。その音は部屋の隅にあるクローゼットの裏から聞こえたので、私は何歩か近づいてみることにしたのですが…足を前に進めた途端、その音はさらに大きくなりました。少し躊躇いましたが、私は「シーリーさん?」と声をかけてみました。
すると、掠れた笑い声が聞こえてくるではありませんか。その声は…少し変というか、笑い声というよりも、調子の外れた弱々しい悲鳴とか、苦痛から漏れる嗚咽のようでした。私は目の前が少し暗くなり、全身が強張っていくのを感じ感じました。しかし、少しするとその声が小さくなっていったので、私は勇気を出して前に出て、再び呼びかけたのです。
その声は突然聞こえなくなりました。その時の私は恐怖より好奇心が勝っていたので、クローゼットに身を乗り出し、その奥の隙間を覗いてみたところ…そこには血走った大きな目と、蠢く白い歯が見えました。それは恐ろしく、醜悪だったのですが…次の瞬間、私は息の荒い弱々しい叫び声を聞いたのです。

「た――助けてくれ!」

X月28日
今朝、ホテルは改訂された客室管理注意事項と夢に入る際のルールを発表しました。シーリー氏の事故は、元のプロセスにおける欠陥を知らせる警鐘を鳴らしてくれたと言えるでしょう。結果として、次のような改善が行われました。

1. 「夢遊病」の既往歴のあるお客様には、睡眠中の事故を防ぐため、夢に入る際に追加で手足を拘束するプロセスを追加すること。
2. ピピシ人などの小柄なお客様が家具の隙間に挟まれる事態を防ぐため、部屋のレイアウトを調整すること。

被害に遭われたシーリー氏については、脱水や飢餓による衰弱よりも、今回の件で受けた心の傷のほうが深刻な問題であるとのこと。
ホテルは彼に最高の療養環境と丁寧なケアを提供することを約束しました。

彼が1日も早く回復することを心から願っています。

夢境の童謡・七人の家

ピノコニーに伝わる奇妙な童謡。

夢境の童謡・七人の家

悪い子供たちを捕らえ、冷たい檻に閉じ込める。
獄卒に情けはなく、飢えと労役は果てしなく続く。
大きな犬が鉄柵を破り、砲火の間に自由が訪れた。
草花は蝶を引き寄せ、大樹の頂上には甘い果実が生っている。
鳥は枝を使って巣を作り、7人は家族になった。

その家族は7人で、貧しい村に住んでいる。
村の外では悪党が道を塞ぎ、一家は飢えと食糧不足に苦しんだ。
枯れ木や枯れ草はその重さに耐え切れず、緑の草は肥料を探し求める。
草木が揺れて果実が落ち、その果汁が白い砂利に飛び散った。
家族は家族を食べ、家には6人しか残らなかった。

その家族は6人で、小さなあばら屋に身を隠している。
大きな犬は疲れて眠り続け、割れた鏡は鳥の羽を傷付けた。
赤い花や緑の草は成長が止まり、枯れ木や枯れ草はまっすぐに立つことができない。
蝶は1匹で家を飛び出し、大きなキリギリスの群れにぶつかった。
大きな虫は小さな虫を食べ、家には5人しか残らなかった。

その家族は5人で、1日中小さなあばら屋で眠っている。
ある夜天使が訪れて、調和のとれた凱歌を歌った。
そのメロディーは美しい夢のよう。夢の中には着るものも食べるものもたくさんあった。
それからすべては思い通りになり、誰もが目を閉じ安らぎを享受する。
みんな決して目を覚まさずに、あの苦しい日々を忘れてしまおう。

『ニッケルシアター特別上映:スリルナイト』

ニッケルシアター「スリルナイト特別上映イベント」のチラシ。注意事項と当日の夜の上映リストが印刷されている。

『ニッケルシアター特別上映:スリルナイト』

グレイディ・シネマズより愛を込めて!
ピノコニー「スリルナイト」特別映画鑑賞イベント

注意事項:
※本イベントはグレイディ・シネマズ傘下のニッケルシアターのみで開催される限定イベントです。観客の皆様は該当の映画館にて現金でチケットをご購入ください。
※本イベントは小規模特別上映で、チケット数には限りがあります。チケットはなくなり次第終了となります。
※本上映はギャングの闘争、家宅捜索、ナイトメア劇団の嫌がらせなどの影響を受ける可能性があります。近くの席に人間ではない観客がいる、映画のキャラクターが現実に飛び出してきたなどの問題に気づかれた方は、お近くのスタッフまでお申し付けのうえ、すぐに避難してください。
※当館は映画鑑賞によって生じるいかなる症状にも責任を負いません。
※それでは、映画の時間をお楽しみください。

「スリルナイト」上映リスト
『燃えろ!ピノコニー!』 ドラマ/アクションホラー/2157紀
監督:ピア・アイゼン
あらすじ:破壊!爆炎!絶叫!若い警察官がピンチを潜り抜け、街を滅ぼそうとする夢境のモンスターに立ち向かう。
しかし、彼とこの街の運命はすでに決まっていた……
「燃えろ!これが爆発の芸術だ!」

『スターロード・パニックナイト』 ドラマ/サスペンス・コメディ/2155紀
監督:ジェリフ・ラファエロ
あらすじ:凶悪な連続犯罪者が映画スターを暗殺しようとピノコニーに潜り込む。しかし、彼の任務は上手くいかなかった――巨万の富を持つお金持ち、家出したお嬢様、何か企んでいるホテルの支配人…彼らがホテルの中でふざけた喜劇を繰り広げる。
「なんでもできると思ってたんだ。スターロードに行くまでは……」

『ビザール劇団』 アニメ/ファンタジースリラー/2153紀
監督:キララ・ミララ
あらすじ:スウィート・ドリーム劇団を引退したポンコツ人形たちが、本当の自分を探す旅に出た。
気を付けろ、このトラブルメーカーたちはピノコニーの街にとんでもないパニックをもたらそうとしている!
「あなたの心はどんな味?スラーダの泡?それとも歯車のオイル?」

『マッドマニヤ』 ドラマ/ポストアポカリプス/2155紀
監督:アリエル・アン
あらすじ:文明崩壊後、ピノコニーの夢は狂砂が渦巻く荒地となり、浮遊車に乗った無法者たちが世界の支配者となっていた。狂った少女マニヤは、そんな暴走族たちの間を渡り歩き、弱者を虐げる罪人どもに残酷な方法で復讐していく…
「ピノコニーに夢を求めようとしないほうがいい。昔からそうだったが、今はなおさらだ」

『十二の刻』 ドラマ/シティクライム/2156紀
監督:匿名のアマチュア監督
あらすじ:宴の星は闇と犯罪を許さない!あるハウンド家のメンバーが十二の刻の夢境で逃亡犯を追跡することになった。
しかし事件が深まるにつれ、自分の秘密に関する暗い真実が明らかになっていく…
「――楽しいピノコニー!幸せなピノコニー!」

『ピノコニーの過去』 ドキュメンタリー/歴史記録/2149紀
監督:■■■■
あらすじ:2149紀、ピノコニーの情勢が混乱する最中、グレイディ社の監査役マッコイ・デナールが銃撃され死亡した。
そして■■■と■■■を始めとする反逆者が抗争のラッパを吹き鳴らした。
「ああ、ピノコニーは連中の名前を覚えておかなきゃならん」

[ドキュメンタリーの紹介文のいくつかの箇所が人為的に黒く塗りつぶされているため、詳しい情報はわからない。下のほうに赤いペンで大きな文字が書かれている]
-この映画はすでに上映リストから削除されました

歌の星から来た絶唱・「純美の歌」コンサート

スターのラローズはピノコニーの街角で丁寧にデザインされたチラシを配り、「純美の星」をテーマにしたコンサートを紹介した。

歌の星から来た絶唱・「純美の歌」コンサート

宇宙各地から来た音楽愛好家の皆さん:

あなたは知っていますか?銀河にはかつてメンダシアという名の「歌の星」があったことを。そこで暮らす人々は「純美」の導きで歌と踊りにふけり、全世界をかけて音楽の美しさを探究していました。しかし残念なことに運命は人を裏切るのが常であり、この芸術の楽園は、世に知られる前に女神と一緒に滅亡してしまいました……
その星の人々は「純美」を失いましたが、寛大な「調和」のデウムが彼らを受け入れました——アイリス家の努力により「歌の星」の残された人々はピノコニーに来て暮らしているのです。メンダシア民謡の継承者であり著名な音楽家の「ラローズ・サリー」が、スウィート・ドリームで幻の「純美の歌」をお届けします。

数多の琥珀紀を超えて今、メンダシアの歌声があなたを、イドリラがまだ光を放っていた頃の宇宙に連れ戻し、美を求める魂に火をつけます。古典音楽愛好家も銀河のポップミュージックファンも、この貴重なコンサートは必聴です。
歌の星より来たる幻の歌・メンダシア民謡コンサート、歌声に永存せし宇宙の美!

曲目
1. 『メンダシアの女王』
2. 『鏡の中の目』
3. 『バラと勲章』
4. 『孤独な陶器の騎士』
5. 『天上の鏡』
6. 『吟遊の日』
7. 『音符は雨のごとく』
8. 『イドリラのキス』
※曲目および順序は変更になる可能性があります。

会場:ピノコニー-黄金の刻-グラークス通り142号-ピロウシアター

持ち込み禁止の物品:
1. 熱、動力、量子エネルギー武器および鋭利な刃物。無機生命体およびサイボーグのお客様は武装パーツを取り外してからご入場いただきます。

2. 花火や爆竹、アルコール、ライター、量子爆弾、携帯式核兵器など引火や爆発の危険のある物品。無機生命体のお客様は機械オイルを持参しないようお願いいたします。

3. パヴェルチーズ、沼ニンニク、一つ目ニシン、ソーダ豆汁、ゴミスラーダなど臭いの強い飲食物。
4. 音の出る器具。楽器、リピート機、自動楽団、伝声鳩など各種の音が出る器具は持ち込み禁止です。

5. 有害な薬剤、伝染病の病原菌などの危険物質。無機生命体の電子ウイルスも含みます。

6. 許可なく撮影器具を持ち込むことはできません。カメラだけでなく、ビデオカメラ、夢の泡カメラおよび各種の記憶保存装置も禁止です。

7. 無人機、UFO、飛行リュック、飛行バイクなどの飛行マシン。翼のあるお客様は会場内で飛ばないでください。

8. 悲しみ、苦しみ、怒り、嫉妬などのネガティブな感情。

9. 夢境で禁止されているその他の物品およびハウンド家がイベントにふさわしくなく、明らかに危険だと判断した物品。

銀河のスターの物語

「銀河のスター」レスリー・ディーンの物語を通して集めた手がかり

ファンの切り抜き

悲報:銀河の巨星、レスリー・ディーン堕つ

イプシロン・エンターテインメント紙によると、信頼できる消息筋からの情報で「エンド・オブ・ネビュラ」号と呼ばれる星系級旅客船がイプシロン-X連合空港から離陸した後、7システム時間後に爆発した。事故原因は明らかになっていない。

イプシロン連合商会はすぐに救援艦隊を送り救援活動を展開したが、現時点では生存者は見つかっていない。「銀河のスター」の美称を持つ演劇界の新星レスリー・ディーンが同号の乗客だったという情報もある。

イプシロン・エンターテインメント紙は事故で亡くなった乗客、乗組員および家族の皆様に心からの追悼の意を表している。

レスリー・ディーン復活計画

レスリー・ディーンの忠実なファンの皆様:

お誘いを快諾くださり、ありがとうございます。今から「レスリー・ディーン復活計画」の詳細と方法についてご説明します。

ステップ一:クラウドファンディングを開始し、まとまった金額を用意してイプシロン商会同盟からレスリー・ディーンの「記憶庫」を買い取る。

ステップ二:レスリー・ディーンの「記憶庫」を徹底的に学ぶ。「レスリー・ディーン復活計画」に参加する全ての人が彼の性格、人柄とその一生を完全に頭に入れられるようにする。

ステップ三:ピノコニーに行き、入夢技術により皆で「共感覚夢境」を作る。「記憶庫」とファンの心の中にあるレスリー・ディーンのイメージを複合させることにより、夢境世界で「銀河のスター」の体、思想と精神を復活させる。

ファンの皆様、私たちは皆レスリー・ディーンの短い、しかし輝きに満ちた演劇人生を見届けました。彼の突然の死を皆が嘆き悲しんでいます。もしあなたも運命が理不尽だと感じるなら、「レスリー・ディーン復活計画」に参加してください——私たちには自ら心の空白を埋め、彼が本来送るはずだった輝かしい人生の続きを作るチャンスがあります。

■号ガチャマシンに関する研究

ピノコニーの夢追い人が記した実験記録。娯楽施設に隠された秘密を暴くことが目的だと言われている。

■号ガチャマシンに関する研究

前書き
周知の通り「黄金の刻」には非常に問題のある娯楽施設が多いが、中でも黄金ガチャマシンはヘビー級選手だ。私と仲間たちはファミリーがガチャ確率に対して行っている陰謀を暴くため、エディオンコインを連続で五十枚投入し、毎回のガチャの結果を記録する。

実験一
実験方法:エディオンコインを一枚普通に投入する。
結果:クロックピザ(一枚)×1
感想:排出率を操作しているんじゃないか?

実験二
実験方法:道端の噴水で手を洗ってからエディオンコインを一枚投入する。
結果:ケーキ「星空を仰ぐ」×1
感想:こんな物、タダでもらっても食べない。
……
実験九
実験方法:エディオンコインを一枚投入し、二人で強くレバーを引く。
結果:信用ポイント×500
感想:悪くない、まだ良心的だろう。
……
実験十四
実験方法:エディオンコインを一枚投入し、踊りながら三周回って逆立ちしながらスラーダを三本飲み、レバーを引く。
結果:ケーキ「星空を仰ぐ」×500
感想:なんてこった!
……
実験二十三
実験方法:エディオンコインを一枚投入し、ファミリーがあがめている「デウム」をののしってからレバーを押す。
結果:■■■■×1
感想:ファミリーはガチャにこんな物を入れていたのか?ち、違う…実験中止だ!

いくつかのニュースリリース

ピノコニーテレビ局のいくつかのニュースリリースは、夢の中の面白い話を記録している。

いくつかのニュースリリース

ピノコニーの旅行者数が過去最多を更新
今日までにピノコニーを訪れた夢追い人の数は百億人に達し、本琥珀紀の最高記録を更新しました。娯楽への情熱がピノコニー経済の発展を牽引しています。また、スラーダ関連製品の売上は前年同期比の10倍以上まで増加しました。
調査によると、約6割の観光客が訪れる前からピノコニーのことを知っており、自ら夢境の甘美さを体験したいという期待を抱いてやって来ています。他の3割は間もなく開催される調和セレモニーのために訪れているそうです。
当然ながら、このような繁栄にはファミリーの賢明な指導者と、各ファミリーが力を合わせることが不可欠です。
そうすれば調和セレモニーは大いに盛り上がることでしょう。

親愛なるサンデー氏、特別講演を行う
最近のピノコニーにおける観光業の盛況について、ファミリーを代表して親愛なるサンデー氏が特別講演を行いました。
サンデー氏は、この成績はピノコニーの各ファミリーが力を合わせて誠実に努力した結果であり、その栄光は夢境全員のものだと述べました。オーク家の統括、ハウンド家の守護、ルーサン家の経営、アイリス家の芸能、カタルス家の技術がなければ、私たちの夢境は今日ほど素晴らしいものではなかったでしょう。
このことは団結こそが宇宙で最も強い力であることを教えてくれました。近い将来、ピノコニーの観光業はさらに革新的になり、より多くの人に調和と美しさを体験してもらえるようになるでしょう。訪問者の皆様、夢境ではどうぞ安心して楽しくお過ごしください。ファミリーがお客様一人一人をしっかりとお守りします。

スラーダ社がシロップに新風
まもなく到来する調和セレモニーを祝して、スラーダ社は新製品を発表しました——スラーダシェアセットです。このセットには友人たちとシェアできるよう12本のスラーダが入っており、デウムの調和のとれた善を感じることができます。
ピノコニーのリーディングカンパニーとして、同社はこれまでに5琥珀紀近くに渡って観光客にサービスを提供し続け、創業者のエディオン氏の物語も夢追い人たちに語り継がれてきました。「スター・オブ・ザ・フェスティバル」は先ほど、ピノコニーの夢境の発展は日進月歩であり、時代のチャンスをつかみ、安定した成功を収めるためこれからも積極的に観光客のニーズに応えていきたいと述べました。
新しい琥珀紀でスラーダ社は投資を続け、絶えず革新し、より豊かで、より健康で、よりおいしい製品を提供することにより美しき夢を形作る力となれるよう努めるとしています。

紙幣ディスペンサーの抜け穴を利用した犯人捕まる
先日、ハウンド家の調査員は紙幣ディスペンサーの盗難事件を解決。被害額は数十万信用ポイントに達したものの、ピノコニーは市場秩序をしっかりと維持しました。
調査によると、このマシンの設計者は、ある一連の操作を特定の順序で行うと大量の高額紙幣が排出される仕掛けを基盤部分に隠していたことが分かりました。そして機に乗じた者たちはこの抜け穴を利用して大量の金を盗んだのです——安全性の観点から犯行の具体的な細は公表されません。
現在、容疑者の不正所得はすべてルーサン銀行に返還されています。皆様には防犯意識を高めていただきますよう、またお金儲けには地道な努力が必要であり、まぐれ当たりはないということを改めてお伝えいたします。

ファミリーの夢境拡張計画
旅行ニーズの高まりを受け、ファミリーは夢境で新エリアを開発すると発表しました。
ファミリーの呼びかけで宇宙の各業界から来た芸術家たちが一堂に会し、夢の饗宴を準備しています。現在、ドリームメーカーたちはファミリーが決定した拡張対象地域に集い、盛んに工事が行われています。
間もなくこのエリアは訪問者全員に開放され、より素晴らしい夢境体験を提供することでしょう。お楽しみに!

『夢境観光ガイド-交通編』

旅行ガイド、観光客向けにピノコニーの夢境の交通手段を紹介している。

『夢境旅行ガイド-交通編』

おすすめ
エファ出版グループの目玉商品『夢境旅行ガイド』!
本書は夢の世界をより深く知り、レジャーを楽しむのをお手伝いします。
全ての悩みを忘れて、今を思い切り楽しみましょう!

おすすめ度No.1:公共鉄道「スフェロイド」
宇宙一の鉄道、独特の球状車両で長距離を移動する最善の選択!
「スフェロイド」はピノコニーの夢境独自の交通システムで、球形の車両と発射式の発車方法が特徴。
それぞれの路線の番号が車両に書かれており、発車が集中している時はまるでピンボールの球が駅から空に向かって発射されているようで、とても面白い。
編集から:
「ピノコニーでぜひ体験したい十大アクティビティの一つ!」

おすすめ度No2:短距離歩行ツール「ウートペン」
素晴らしい小型移動ツールで、景色を見ながら移動できる!
街中を走る一輪車、あるいは道端に止まっている楽器のような飾りを見たことがあるだろうか?
そう、これはルーサン家が発売した新しい移動ツール——「ウートペン」。管楽器からインスピレーションを得た、優美で曲線的なデザイン。半開放型車両のため、走りながらピノコニーの絶景を観賞できる。
現在、街角に止まっている車両をいつでも利用できる「ウートシェア」サービスを実施中。
編集から:
「自動操縦なので、運転したことがなくても大丈夫!」

おすすめ度No3:豪華な旅のチョイス「リムジン浮遊車」
プレミアムな車で豪華な体験を!
贅沢を尽くしたリムジン浮遊車はプライベートな外出に最適。
ほとんどが自家用車だが、ホテルでタクシーの予約もでき、値段もサービスも宇宙一!
ピノコニーカーディーラーで購入することも可能だ。ここには全世界に名をとどろかせる有名ブランドが集まっている。「潘興」「バートン」「スタインウェイ・ファルコン」…この世に買えないものなどないのだ。
編集から:
「四輪の方が一輪より絶対に快適」

編集者おすすめ:徒歩で観光
ピノコニーの街の景色に心ゆくまで浸ろう。
時には喧騒から抜け出し、ピノコニーの大通りや路地を歩いてみよう——ちょっと違った貴重な風景を見つけられるかも。
紙幣を吐き出す特殊なATM、謎めいた穴場の地下バー、あちこちに隠れている小さな生き物…いろいろな考え事をしている通行人たちと会話するのもいい。ピノコニーのあちこちに知られざる秘密が隠されている。
編集から:
「ピノコニーの路地には気を付けて…刺激を求める夢追い人がギャングごっこをしているので、捕まらないように!」

出版社に連絡すると『夢境旅行ガイド』を全冊購入できます。おまけでピノコニー全体の地図が付属。

『夢境観光ガイド-娯楽編』

旅行ガイドの続編その二、観光客向けにピノコニーの特色ある娯楽体験を紹介している。

『夢境観光ガイド-娯楽編』

おすすめ
エファ出版グループの『夢境旅行ガイド』再版、八大レジャースポット!
全ての悩みを忘れて、今を思い切り楽しみましょう!

スウィート・ドリーム劇団:ホテルで繰り広げられる不思議なショウ
「ホテル・レバリーへようこそ、スウィート・ドリーム劇団です」
もしかすると、ホテルで巨大なティーポットとカップが浮かんでいるのを見たことがあるかもしれない——夢の中ではどんなことも可能なのだ!
壁の絵が歌い、ろうそく台が踊る。彼らは楽しい「スウィート・ドリーム劇団」。スウィート・ドリームを形作る、一生懸命に働くかわいい仲間たちが名前の由来だ。
ホテルで彼らと交流すれば喜んでサービスしてくれ、さらには一緒に遊んでくれるだろう。
運が良ければ、あちこちで稽古をしている様子を見ることもできる。その時は真剣な練習を邪魔しないよう、そっと立ち去ろう。
位置:「ホテル・レバリー」

夢の泡:夢境の一風変わった体験
「お刺身のように新鮮で甘い生命の響き」
ピノコニーでは憶質に特殊な加工を施し、安全で穏やかな記憶媒体——夢の泡に変えた。
従来のスクリーン映像とは異なり、夢の泡はかつてない没入体験をもたらしてくれる。思い出の中のキャラクターになってその視点でシーンに立ち、異なる人生の物語を体験できるのだ。
オーダーメイド以外にもランダムな夢の泡を購入することも可能で、一番お得な価格で夢境の特色あるサービスを受けられる。
「ファミリー」からのお知らせ:未加工の新しい夢の泡を使用する前には必ず免責同意書を書いていただきます。一度購入した夢の泡は返品できません。
位置:「夢境ショップ」

クラーク・スタジオ:クロックボーイファンの天国
「クロックボーイと仲間たちが暮らすドリームタウンを完全再現!」
クラーク・スタジオ——ここはまさに全宇宙のアニメ愛好家の天国だと言えよう。
ここでは名作アニメのおなじみの場面を体験でき、クロックボーイと仲間たちの冒険を振り返ることができる。あるいはドリームタウンの住民になってブラザーハヌやハムスターボールの騎士と一緒に毎日行われるパレードに参加することも可能だ。
販売グッズの詳細は『夢境旅行ガイド-ショッピング編』参照。
位置:「クラーク・スタジオ」

黄金ガチャマシン:どこにでもある大きなチャンス
「昔、ある平民がガチャで一夜にして大金持ちになったらしい…これはきっと実話だ!」
それは一日じゅう光輝きながら、明日の大物が賭けに来るのを待っている。こうしたマシンは大通りの脇でたくさん見られ、
あるオムニックの確率学の研究者は「一枚のエディオンコインでピノコニー全てを手に入れることも不可能ではない」と言った。
わずかなコインを入れるだけで一攫千金のチャンスがあり、奇跡の大金持ちになれるかもしれない。
位置:「エディオンパーク」

宴の星コレクションカード

エファ出版グループ傘下のドリームスターエンターテインメント™がデザインしたピノコニー限定スターカード。本シリーズの著作権は当社に帰属します。許可無く、掲載内容の一部およびすべてを複製、転載または配布、印刷など、第三者の利用に供することを禁止します。

宴のスター:ロビン

宴のスター:ロビン
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鳥が殻を破る時、その第一声が星々を魅了した。
彼女のために運命は既にレッドカーペットを敷いており、世界中をあまねく照らす宴の星になることこそが唯一の道であった。
無数の砕け散った宝石でできた舞台の上でロビンは高らかに歌い、この世界に残る美徳や善意、真心、そして活力を賛美した。
色とりどりの光に包まれた舞台の下で、人々は涙を流しながら人生のみじめさ、醜悪さ、嘘、そして寂しさの一切を忘れ去る。

宴のスター:オーディ・アルファルファ

宴のスター:オーディ・アルファルファ
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眠りについた時、辺りは見渡す限り荒れ果てており、ただ、一人の背の低い人物の人影だけが見えた。その人は休まず種をまき続け、乾いた土を信念で潤そうとしている。
種子が芽吹き、ようやくチャンスの新芽が土を破って顔を出した。まばらな緑は多くの庭師を魅了し、庭師たちは理想の甘露でこの苗床を潤す。
最後には緑の野が広がって青々とした葉が茂り、ルーサンがつけた無数の薄紫色の花を求めて、数多くの志ある者たちが草原を奔走した。
富の花園の中心で、この賑やかな景色を夢の中で永遠のものにするために、最初の庭師は今もなお忙しく働き続けている。

宴のスター:エディオンさん

宴のスター:エディオンさん
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見よ、黄金色の美酒が街中を流れている。甘く滋味あふれる小川は夢境の血液であり、気泡ただよう海は富の糖蜜酒だ。
時間の奔流がその風味を薄めることはできない。なぜなら、歴史という長い川でオールを漕ぎ、一生分の情熱を注いでこの芳醇さを守り続けている熱心な船頭がいるからだ。
さあ、眠りについたお客人。瓶の中の夢を心ゆくまで飲み干しなさい…それは快楽をもたらす霊薬であり、悩みを忘れるための秘密のレシピなのだから——夢の主は喜んでそう教えてくれるだろう。

宴のスター:レスリー・ディーン

宴のスター:レスリー・ディーン
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頭上に広がる銀河の中にある世界は数千億にのぼり、何兆年もの間、絶えず光と熱を放出してきた。
だが、この長い浜辺には時折、光り輝く微細な砂粒が現れる。そして、それは微笑み一つで地平線全体を覆い尽くすほどの輝かしい光を放つのだ。
最後には、波が砂の一粒一粒を流してしまう…しかし、その光を覚えている人たちは皆、「その姿に宇宙が嫉妬した」と歌い継ぐ。
限りなく小さいが、それでも——なんと偉大な勝利だろうか。

ルイスの芸術評論

ルイスが書いた一連の定期刊行物。画家シャルロットの作品のために特別に書き下ろした芸術評論である。

『輝く銀河の夜』:夢と自由の始まり

01.『輝く銀河の夜』:夢と自由の始まり

筆者:ルイス・ライス

本評論シリーズの冒頭の章として筆者が選んだ作品は、『輝く銀河の夜』だ。

これは著名な画家シャルロットの初期の代表作であり、本エッセイシリーズのタイトルの由来にもなっている。

この画家の他の初期作品と同様、本作にも後年の夢に迷い込むような独特の作風はまだ見られないことから、今日に至るまで相応しい評価と称賛を得るには至っていない。これについて、私は謹んで遺憾の意を表明する。

まずは絵画そのものを見てみよう。広く輝く星空の下で、人類の文明と秩序を象徴する黒い灯台はこんなにも小さい――まるで木の葉の船が果てしない海に迷い込んだようだ。嵐や大波が押し寄せただけで、その存在の痕跡は跡形もなく消え去ってしまうだろう。

この絵を構成しているのは、極めて誇張された、渦のように永遠に流れる線だ。これらの線は万物を飲み込む荒波のように、回転し、激しく動き、隆起することですべてを構成し、すべてを説明している。

技法だけで言えば、この時点での画家の筆使いはまだ未熟であり、色彩も少々稚拙である。後期の夢や幻のような作品に比べると、その画風は明らかに「保守的で写実的」すぎるものだ。しかし、この絵の中には、すでに画家の「人」と「世界」に対する深慮が垣間見える。

「我々が星空を見上げる時、我々は何を見ているのか?」

深遠で広大な宇宙を見上げるたびに、我々は自身の矮小さを必ず自覚することになる。人間――さらに言えば、すべての知的生命体の文明の結晶――は、神秘的で計り知れない偉大なる自然の前では、ただの弱々しいロウソクの火のように、一瞬で消え去る存在なのだ。

しかし、この絵では不朽の星空も、無限の宇宙も、人類文明を象徴する灯台も、灯台の光が照らす夜の色も、世の中の万象も、虚数の法則が気の向くままに塗りたくった歪んだ線に過ぎない。

我々の起源は天地と同じであり、それは塵芥となんら変わらないものだ。世の中の万象は、結局のところ無意味なのである。

では、この冷たく空虚な根本原理の下で、画家は我々にどんな答えを与えたのだろうか?

神秘的なスミレ色のグラデーションをあしらった濃紺の夜空で、星々が柔らかい乳白色の光を放っている。それらと灯台は互いの光を調和させることで、我々に時間の流れの中で躍動する喜びと、果てしない夜に燃え上がる温もりを感じさせてくれる。

これらの色彩のおかげで、その先の雑然とした不安な線は、もはや自然に忠実だからといって冷淡に見えることはない。それらは依然として流れながら循環を続け、決して止まることはないが、人間の魂の温度に染まって柔らかい光を放ち、静寂に満ちた夜空に一筋の生気をもたらしている。

たとえ現実がただの幻想であっても、宇宙が人間のために創られたものではないとしても、我々は絵の中で、夢の中で――自分だけの空を追い求めるのだ。

『海岸線』:変化と新生

03.『海岸線』:変化と新生

筆者:ルイス・ライス

今回はこの画家の出世作である『海岸線』について簡単に評論しよう。

これは作者を表舞台へと導いた重要な使者だ。この絵で画家の筆致はさらに成熟し、その独特で幻想的な作風も基本的な形を成すようになった。本作の解釈について、すでに多くの評論家や学者によって珠玉の名文が残されていることは万人の知るところ。故にここで詳しく述べることはしない。そのため今回も従来の思考法、すなわち「作品から出発して作者自身を分析する」という形式を踏襲しようと思う。

筆者をよく知る古い友人たちにとって、筆者の分析方法はすでに慣れ親しんだものだろう。この画家の人気に影響を受け、最近は私自身もこのエッセイシリーズによって注目を浴びるようになった。そのため本稿の冒頭では、まず筆者自身の思考ロジックを示したうえで、それを新しい読者たちに共有することにする。

学界では一般的に「作品と作者を同一視してはならない」とされている。こうした考え方は、無数の歴史と文化の検証を経て、すでに不滅の真理と化しているだろう。しかし筆者は、作品というものは結局、創作者の潜在意識の欠片が繋ぎ合わさったものに過ぎないと考えている――それは夢や幻のように、往々にして作品の細部に現れ、創作者自身も意識したことのない、心の奥底にある欲望を映し出している。

作者に対する理解を深め、その成長環境や人生経験を知れば知るほど、この逆推論の過程は正確になっていく。それを念頭に置き、前回と前々回の題材について振り返ってみよう。『輝く銀河の夜』からは、この画家の芸術と美への愛、自由への強い渇望、そして人類に対する反省と配慮が見て取れる。

2枚目の『ロビンの死』では、画家は形骸化した、荘厳だがぞんざいな葬儀を描くことで、退屈な現実生活への倦怠と不満を訴えた。

以上を認識したうえで、再度この名作『海岸線』に目を向けてみよう。絵全体の背景は砂浜、海、空の3つの部分から構成され、それぞれの境界は黄金比に従って左上から右下へ斜めに呼応している。左下から右上、つまり砂浜と空の間には、黒い蛇の抜け殻、空を飛ぶ白い鳥、黄金の雲、赤い太陽といった4つの鮮明なイメージが弧を描いて連なっている。

筆者の解釈では、砂浜、海、空はそれぞれ現実の物質世界、人々の精神世界、芸術と美そのものを表している。そして蛇の抜け殻、鳥、雲、太陽は画家の個人的な理想を形にしたものだ。苦しい現実生活を古い蛇の抜け殻のように脱ぎ捨て、新たな生を得た画家は、大地の束縛から逃れた鳥のように、自由と精神性を象徴する輝く雲に向かって飛んでいく。天頂に高く懸かる太陽は、真なる善美の具象と化身であり、画家が永遠に追い求める目標とその方角なのである。

画家は色や線の使い方にも工夫を凝らしている。砂浜の筆致は凛として色は仄暗く、海は延々と続く起伏に濃色を重ねたもの。いっぽうで空の線は軽やかかつ、色も透明感がある。4つのイメージにおける色使いは黒、白、黄、赤で、それぞれ錬金術における黒化、白化、黄化、赤化の4つの過程に対応しており、三次元的に画家自身の変化と新生を象徴している。

すでに広く知られているように、『海岸線』はこの画家の人生における大きな転換点だった。この様々な色を重ねて描かれた点は、画家がすべてを賭けてピノコニーを訪れたことと解釈されるかもしれない。あるいは、たった1作品で頭角を現すダークホースとなることを暗示していたと解釈されるかもしれない。しかし筆者に言わせれば、それ以前から――この点は――とっくに絵の中に存在していたのである。

『この世の楽園』:夢境から俯瞰する現実

04.『この世の楽園』:夢境から俯瞰する現実

筆者:ルイス・ライス

今回見ていくのは、この画家の代表作『この世の楽園』だ。この絵の登場は、この画家の作風が完全に成熟したことを意味している。また、これによって彼女は純粋還元主義派の中で、他の追随を許さない代表的な人物になった。

しかし、この作品の評論を始める前に、諸氏に朗報を伝えたい――なんと、前回の筆者のコメントを呼んだ画家本人から連絡があり、これまでの一連の分析に対する評価と同意を示してくれたのだ!

筆者が本稿に着手するまでに、我々は何度か手紙のやりとりをしている。画家本人の言葉は素朴だが、その行間には穏やかな優雅さ、そして包容力ある気品が感じられた。いくつかの理念について簡単に話した後、筆者はますます彼女に夢中になってしまい、今回の文章を書き上げたら必ずピノコニーを訪れ、この偉大な画家の驚くべき姿を一目見ようと決意したのだった。

さて、そんな筆者の話はさておき、この不世出の傑作に目を戻そう。この作品を見るたび、私は無意識のうちに画家の精神世界に引き込まれてしまう。しかし、その過程は間違いなく素晴らしいものだ。

この絵が目に飛び込んできた時、人々は絵画の中に霧のようにぼんやりとした光輪を見ることしかできない。そして、その光輪は激しい変化を始め、ルビーと真珠で彩られた唇、黄金に彫られた目、そこから流れる色とりどりの水晶の涙へと変わる。その涙は目頭から落ち、列をなして進む。線を作り、渦を巻き――その目と口と共に――虚空に歪んだ奇妙な人型を形作る。

しかし、そのぼんやりした眩い光輪の中で、これらの凝縮されたイメージは再び轟然と砕け散る。そして我々は黄金が輝きを失い、宝石が血を流し、真珠が悲鳴を上げ、水晶が砕け散るのを見る…これらの華奢な創造物は今や、恐怖の影が満ち目覚めのない残酷な悪夢の中にいるかのごとく、引き裂かれんばかりの苦痛を湛えている。

ここで、画家は我々に荒唐無稽だが真実の悪夢を見せてくれた。彼女は空虚な概念と切実な欲望に――軽薄で鮮やかな色彩によって――目に見える形を与え、無情にもそれらを打ち砕く。

その精神性を意味する朧げな光輪が、贅の極みにある俗物の形をとるとは誰が想像できただろうか?その俗物のどろどろした貪欲な口によって、本来の静謐は噛み砕かれ、宝石の輝きはかえって獰猛になった。かつては澄んでいたはずの瞳も、凡俗に染まって堕落した黄金となってしまった。零れた涙さえも逃れることはできず、乾いて固まり眩い水晶となる。

この疫病のように毒々しい風景は一体どこから来たのだろう?繁栄を極めたピノコニー、永遠の享楽に耽るピノコニー…あなたは人々に夢想と歓喜の歌をもたらすが、その影の中で密かに諸悪を育んでいる。酒池肉林、金、興奮、酒、好色は人々の肉体を満たすが、その魂を引き抜いてしまう。さて、これまで一体どれほどの人間が、その奇怪な夢の中で溺れ、快楽で膨れ上がった死体になったのだろうか?

この目に見えない精神的災難に対して、画家は鋭く全体を捉え、深く再考した――そして彼女は、それらをひとつひとつ打ち砕いていった。遠近法を捨て、論理を捨て、境界を消した画家は、明るく軽薄な色のブロックでそれを精錬して再現した後、この放蕩三昧の悪夢を思い切り叩き起こしたのである。

これは一種の破壊と再構築の激しい対立だ。画家は静謐の中に狂気を秘め、その中で自らの巡礼の旅――純粋なる魂の帰郷の旅――を完成させたのである。

我々がこれらの狂気の表象を通して、画家の繊細にして狂奔、冷厳にして熱烈な魂を覗き見る時、我々も魂も突然の雷鳴を聞いたかのように震えるだろう。

このような驚くべき天才を作り上げた人生経験とは、一体どのようなものなのだろうか?筆者はずっと気になっていた。そして今、私は自らこの偉大な画家の住まいを訪ね、その答えを確かめ――私自身の巡礼の旅に出ようとしている。

『ちびっ子ハヌの大作戦』

クラークフィルムが作った数量限定の漫画本。
「ブラザーハヌ」が体を小さくされた後、ドリームタウンを救う物語が描かれている…本の中には奇妙な会話が挟まれているようだ。

前書き

物語の前書き

これはアニメ『クロックボーイ』に登場するクールなキャラクターの物語である。頭が切れ、はっきりした性格で強く勇敢、危機に瀕しても恐れず、いつも仲間たちを危機から救い、何度となくボス・ストーンの陰謀を打ち砕いてきた……クロックボーイが最も信頼する親友であり悪党たちが最も恐れる相手、ドリームタウンの皆が大好きな——ブラザーハヌ!

いつもおしゃれなコートを着てかっこいい帽子をかぶり、サングラスで鋭い眼光を隠し、一言も発することなくドリームタウンをパトロールしている。博学のフクロウ先生よりも落ち着いていて、人望のあるウッド爺よりも大胆で、派手なノーツガールよりも人気がある。

「今回は二十二匹の『ワニ』がやって来た、全員が重い『尻尾』を抱えて」

前の物語で、ブラザーハヌはドリームタウンをかき乱すハエ一族を打ち負かした。しかし汚くも、ボス・ストーンがどさくさに紛れてフクロウ先生の発明した体を小さくする装置を持ち去ったのだ。ドリームタウンの危機にあって、ブラザーハヌは装置で「ちびっ子ハヌ」に変えられ、屈強な体が使えなくなり、力でボス・ストーンに勝つことはできなくなってしまったのである。

「■■■、自ら戦うのか?」

しかしブラザーハヌの機転を甘く見てはいけない。この寡黙なクールガイは怪力の持ち主だが、今回はそれだけではなかった。親友のクロックボーイと共に知恵と俊敏さでボス・ストーンを打ち負かし、小さな体で皆のドリームタウンをボス・ストーンの手から奪還してくれるだろう。

クールな声で「フン」と言った。
「お前ってやつは、いつもクールだな」

上 第一章

(一)

ハエ一族がドリームタウンを去り、この街にまた活気が戻ってきた。そんな、とあるうららかな日、クロックボーイは広場でいたずらをしていた。

「おい——クロックボーイ、このいたずらっ子!今回こそは許さないチュン!」

怒って膨らんだ赤い小鳥はクロックボーイをつつきながら追いかけている。このとても怒りっぽい折り紙の小鳥を、クロックボーイはうっかり刺激してしまったようだ。

「チクタク!ブラザー・レッド、つつかないでくれよ——僕はフクロウ先生の彫像にちょっとお化粧をしただけだ。お年寄りだし、きっと気にしないさ」

「そんなわけあるかチュン!やつらを絶対に■■■■に入れてはいけないチュン。ここは俺たちが心血を注いで作った故郷だチュン」

クロックボーイの「お化粧」によって、フクロウ先生の彫刻はめちゃくちゃに落書きされていた。特に顔にある文字盤の二本の針がヒゲのように見えて滑稽だった。

「ゴホン、クロックボーイ。フクロウ先生は折り紙の小鳥の師匠であり、わがドリームタウンを建設した功績者だ。こんな風に侮辱してはダメだろう」

街で一番の説教好き、ウッド爺が根っこを引きずりながら歩いてきた。後ろには超「クール」なブラザーハヌもいる。

「ゴホン、ブラザーハヌ。君からも言ってやってくれ」ウッド爺は言った。

「フン」ブラザーハヌは冷たく鼻を鳴らした。相変わらずクールだ。

「敵をこっち側深くに誘い込む計画を放棄するのか?しかし、僕たちの戦力の差は……」

しかし、その「フン」という一声だけで、クロックボーイとブラザー・レッドはすぐにケンカをやめた。

「チクタク、ごめんよ…彫像はきれいに拭いとくよ……」クロックボーイは長針をうなだれさせ、文字盤を下に向けた。

クロックボーイにとってブラザーハヌは最も親しい友人であり、油断ならない相手でもあった。この無表情で寡黙なクールガイを刺激したくなかったのだ。

「分かった、でも絶対に無事で帰ってきてくれよ…■■■■には君が欠かせないんだ」

クロックボーイがおとなしく彫刻につけた針を外すとブラザーハヌはうなずき、身を翻して広場を去って、暗い路地にひとり入っていった。

彼にとって街の争い事を解決するのはたやすいことだった。本当に面倒なのは、街を脅威にさらしている悪党だ——彼らを「フン」の一言で解決することはできない。

だから、ブラザーハヌは日々懸命にドリームタウンを隅々まで調べ、街角に潜んでいる悪行を暴いた。しかしこの真面目さこそがボス・ストーンに付け入る隙を与えてしまったのだった……

自身ありげな声で「フン」。

上 第二章

(二)

ドリームタウンの街角で、ブラザーハヌは奇妙なテレビを見つけた。

ブラザーハヌは疑惑のまなざしでテレビを観察している。彼の直感が、これは折り紙の小鳥とフクロウ先生のものだと告げていた——このような複雑な機械をいじれるのは彼らしかいないし、この街の住民たちはテレビを見るよりも舞台に集まってノーツガールの歌を聴く方が好きだったからだ。

ブラザーハヌは少し考えて、とりあえずこのテレビをフクロウ先生に返すことにした。しかしテレビに触れた瞬間、奇妙な信号が体に入ってきたではないか。まずいと思った時にはもう遅く、邪悪で粗野な笑い声が聞こえ、目の前の景色がゆがんでいく……

「ハハハハハ、ブラザーハヌ、まんまとはまったな!お前なら、これに触らずにはいられないだろうと思っていた」

「■■■!全ての『ワニ』はお前の方へ泳ぐ!」
「これ以上行ってはダメだ、これはわなだ!」

ブラザーハヌの視界が再びはっきりした時、空はすっかり暗くなっていた。出ていたはずの太陽が一瞬で影も形もなくなっている……いや、何かが太陽を遮っている。

ブラザーハヌが顔を上げると、そこには真っ赤な大口を開けた人物がいた――ドリームタウン最大の敵、ボス・ストーンだ!

ボス・ストーンの体は巨大だった。今までこんなに大きくなったことはなく、それはブラザーハヌを片足で踏み潰せるほどだった。大口を開けたまま覆いかぶさろうとした彼を、ブラザーハヌは軽々と転がってかわす。ボス・ストーンは「うわあ」と声を上げて地面に倒れた。

激しい爆発と衝突音

「いまいましいブラザーハヌめ、今に見ていろ!」

ブラザーハヌは振り返りもせず走った。彼の鋭い野生の勘をもってしても、全く状況が分からなかった。なぜボス・ストーンはあんなに巨大化したのか?なぜ周囲には見慣れない景色が広がっていたのか?まさか自分はまだ、ボス・ストーンのわなにはまっているのではないか?
一体何がどうなってしまったのだろう?

苦しそうな声で「フン」。

上 第三章

(三)

彼はすぐに真相に気付いた——ボス・ストーンが大きくなったのではなく、自分が小さくなったのだ!

まずいことになった。今までは自分の強力なパワーでボス・ストーンを打ち負かしてきたが、こんなに小さくなってはハヌミサイルランチャーすら運べない。どうやって立ち向かえばいいのか?

悩んでいると、ボス・ストーンの邪悪な計画が動きはじめた——ドリームタウンの家々は全て珍しい宝石でできており、ボス・ストーンはこれを最も欲しがっていた。彼は子分のワニを連れて大手を振って街に入ると、住民たちの家を壊しはじめた。

ブラザーハヌの助けがない今、丸腰の住民たちは隅に隠れることしかできない。家を建てた折り紙の小鳥たちは紙の木に集まり、ボス・ストーンに向かって「チュンチュン」と抗議の声を上げている。

「この野郎、住宅地から上陸するとは…発砲できない!」

「ハハハ、チュンチュン言っても意味ないぞ!ブラザーハヌはお前たちを助けられない。ドリームタウンの宝石は全部俺のものだ!」

混乱状態のドリームタウンを見てボス・ストーンは狂ったように笑っている。彼がここに目をつけてから攻撃に成功するのは初めてだった。この太ったワニは勝ち戦の将軍のように、大きなおなかを揺らして堂々と街を練り歩き、そして広場を通りがかった時、すぐにフクロウ先生の彫刻に目を留めた。

「お前たち、このバカな鳥、なかなかいい石でできてやがる。丸ごと持って帰って、俺の彫刻に変えてやろう!」

子分たちが彫刻に手を出そうとした時、思いがけない人物が立ちふさがった——

「チクタク、やめろ、悪党ども!僕の『クロックトリック』を見せてやる!」

クロックボーイだ!唯一のいたずらっ子であるべきは彼で、他の誰かが住民を困らせるのは我慢ならないのだった。

クロックボーイは指で自分の長針を動かそうとしている——これは「クロックトリック」といって、街の全てを彼の文字盤で制御し、心を変えることができ、時間まで戻せる。この不思議な能力によって、クロックボーイもブラザーハヌのような救世主になることができた。

しかし、この物語の主役はブラザーハヌだ。

クロックボーイが針を動かすよりもボス・ストーンの手下の方が早かった。奇妙な液体を彼の頭にぶちまけたのだ。

「チク…タク…どうしたんだ…動けない……」クロックボーイは全身ネバネバになり、針も文字盤に貼りついてしまった。

「やっぱり僕は君ほど戦場を指揮するのはうまくないよ。■■■…君には無事でいてほしいんだ」

「ハハハ、クロックボーイよ。これはお前のために準備した強力接着剤だ。ここで新しい彫刻になるがいい!」

「チクタク……」

接着剤が固まり、かわいそうなクロックボーイは広場に固定されてしまった。隠れている住民たちはパニックになっている。今となってはいまだに現れないブラザーハヌに望みを託すしかない。

しかしブラザーハヌはどこに行ったのだろう?

「待って、彼の声が聞こえる……」
低い声で「フン」と。

上 第四章

(四)

ボス・ストーンはドリームタウンを占領し、ウッド爺の屋敷も奪い取った。巻き上げた宝石が部屋いっぱいに積み上げられている。

「ドリームタウンを『ストーン町』に改名するか…いや、ちょっと地味だな。『ストーンキングダム 』にしよう、ハハハ!」

彼の貪欲な大口からよだれが垂れている。頭は未来の妄想でいっぱいで、面倒事がまだ一つ解決していないことを完全に忘れている……

この時ドリームタウンの辺境では、勤勉なフクロウ先生が街の新しい建物の設計に夢中になっていた。過去の作品が今まさにボス・ストーンによって破壊されているとはつゆ知らず、森でのんびりと適当な石材を探している。

「■■■、大丈夫か!?」
「分かっている。こいつがスフェロイドのガラクタと一緒に死ぬはずがないとな」

突然、地面に置いてある石が動いていることに気付き、彼は興味を引かれた。長く生きてきたが、動く石材など見たことがない。すぐに飛んで行って石をくちばしにくわえたところ、それは妙にふにゃふにゃしていた——なんと、ブラザーハヌだったのだ!

フクロウ先生は慌ててブラザーハヌを放し、いぶかしげに尋ねた。「ホーホー、ブラザーハヌ、どうしてこんなに小さくなったんだホ?私の教え子たちよりも小さいじゃないか!」

ブラザーハヌは仕方なさそうに「フン」と言った。

フクロウ先生はすぐに事のいきさつを理解した——自分が発明した体を小さくする装置はハエ一族が侵入した時に奪われた(注:『クロックボーイとハエ』のお話を参照。夢の泡シリーズは各夢境で好評発売中)。おそらくそれが悪人の手に渡り、ブラザーハヌがこのような姿に変えられてしまったのだろう。

「フフ、敵の旗艦に飛び込んでくるなんて、本当に運がいいな。」
「でもその傷では…もう戦えないだろう」
「ホーホー、体を小さくする装置がなければ元には戻れない。ボス・ストーンの手に渡ってしまった今、面倒なことになったホー……」難題に直面し、賢いフクロウ先生でもどうすればいいか分からない。

しかしブラザーハヌにとっては全く問題ではなかった——街を救うために元に戻る必要があるなら、何とか方法を考えよう。そのためにボス・ストーンを倒す必要があるなら、小さな体で何とかして倒すしかない。

サングラスの下にブラザーハヌの強いまなざしを見て、フクロウ先生は彼の決心を感じた。

「待て、『ワニ』のおなかの中で、けが人に計画を実行させるなんて無茶だ!」
「でも彼が言っていた通り、今はもう選択肢がない」

「分かっているホー。君の勇敢さ、さすがはわがドリームタウンの英雄だホー!」

フクロウ先生はブラザーハヌがボス・ストーンを倒すのを手伝うことに決めた。まず折り紙の小鳥に偵察に行かせて居場所を探るとともに、ブラザーハヌを助けるためのからくりを仕掛けさせた。

全ての準備が整ってから、フクロウ先生は再びブラザーハヌの小さな体をくわえた。フクロウ先生と折り紙の小鳥たちは皆、この小さな体が街を丸ごと救ってくれると信じていた。

「行こう、私がボス・ストーンの所まで連れて行ってあげるホー!」

ブラザーハヌはうなずくと、鳥たちと一緒にドリームタウンの方へと飛んでいった。

「分かった…じゃあ君に任せたよ。みんなの夢をもう一度背負ってくれ」
(固い決意の)「フン」

スラーダ小百科

スラーダ工場が印刷した広告パンフレット。消費者に様々な味のスラーダ飲料を紹介している。

スラーダ小百科

ピノコニーを訪れたことがあるかないかにかかわらず、「スラーダ」というブランド名は聞いたことがあるのではないでしょうか。このソーダ水が誕生してからというもの、その瓶の中の激しい波は星間市場で脚光を浴び、あらゆる銀河の舌を虜にしてきました。本書では、特に人気の高いスラーダの味をいくつか紹介すると共に、消費者の皆様に銀河を席巻した本飲料について、理解を深める機会を提供したいと思います。

【クラシックスラーダ】
スラーダブランドからは現在までに百種類以上のフレーバーが発売されていますが、この「クラシック」は常に売上ナンバーワンを維持しています。ねじれた瓶の中で泡立つ黄金の液体を見れば、誰でも飲み干したくなってしまうこと請け合いです。スラーダの瓶にはシロップ飲料だけでなく、「シロップ主義」の楽観的な精神を代表する、宇宙の各地に夢を届けるという思想が詰まっているのです。
Tips:冷やして飲むとさらに口当たり抜群!

【クールスラーダ】
冷やしてもまだ爽快感が足りないという方は、この「クール」を試してみましょう。このスラーダにはタルウィ星系の特産品であるブルーミントエキスが配合されており、クールキャップがスラーダの温度を限りなく氷点に近い状態で保っています。たとえあなたの住む星系が3つの恒星を持つ灼熱地獄であろうと、このスラーダはあなたをその火の海から救ってくれるでしょう!
Tips:飲む前に周囲の環境温度と、ご自身の胃腸が持つ抵抗力を慎重に見極めてください。

【スパークスラーダ】
スラーダの泡が口の中で炸裂する刺激がお好きですか?それならこの「スパーク」は見逃せません!スパークスラーダのボトル詰めには1万トン級の圧縮機と高分子合金ボトルを採用しており、ひと口飲むだけで無数の細かい泡が口の中で踊り狂う感覚を味わうことができます。ちょっとした痛みなんて恐れず、舌先で超新星爆発が起きる快感を楽しみましょう!
Tips:飲む前にキャップを少しだけ緩め、5秒ほどガスを抜いてからゆっくり開けてください。そうしなかった場合の責任は負えません。

【グッドドリーム・ソーダ】
スラーダのファンは銀河各地に散らばっていて、異なる銀河系の消費者の食習慣に合わせるため、これまでに地域の特色を生かした味のスラーダが数多く開発されてきました。「グッドドリーム・ソーダ」は「仙舟同盟」の消費者たちのために作られた製品で、原料に対して入念な調整を行っています。地域の特産品である夢言花と安神草を配合することにより、薬草の芳香を楽しめるのはもちろんのこと、心身を健康に保つ効果、さらには安眠効果まで期待できるのです。
Tips:偽物や粗悪品を入手するリスクを避けるため、「仙舟代購団」などの非公式販路から「グッドドリーム・ソーダ」を購入することはおやめください

【初代スラーダ】
宇宙中どれだけの商品棚を探しても、「初代」スラーダに出会うことはできないでしょう。しかし、それは宇宙で最も美味しい飲み物であり、スラーダの本来あるべき姿でもあります。
まだ監獄だったピノコニーを訪れたスラーダの創始者「スーサ」氏は、不思議な夢見草を見つけ、信じられないくらい美味しいシロップを調合しました。彼は全身全霊でそれを完璧なものにして、宇宙で最も完璧な飲み物「初代」スラーダを作り出したのです!残念なことに夢見草の絶滅によって、その美味も世界から消えてしまったのですが……
Tips:スラーダ工場のたゆまぬ努力により、絶滅した夢見草が夢の世界で蘇り、一度は消えた美味が再び陽の目を見ることになりました!この伝説のスラーダを味わいたい方は、ぜひピノコニーへ来てお試しください!

『銀河の衝撃波』第280期

ピノコニーの著名な映画評論家、シャブローが執筆を担当し、ラディカルな観点と鋭い書きぶりが特徴。

『銀幕の衝撃波』第280期

今月の映画評論速報
映画評論家:シャブロー

1:『ソーダライフ』
ジャンル:青春/恋愛/ミュージカル
個人評価:2.5/10
一言:冗長でつまらないスラーダの広告:
評論:
多くの金をかけて売れっ子俳優をそろえ、苦心して二時間の大衆映画を作ったスラーダ社の誠意には敬服する。しかしその宣伝効果は三十秒のCMにも及ばない——最近のピノコニー経済の成長は確かに目覚ましい。そうでなければルーサン家がこれほど金を無駄にすることはなかっただろう。

この映画に登場する全てのキャラクターは『クロックボーイ』の「ミスター・ソーダ」のように頭の中がスラーダでいっぱいだ。主人公の男がスラーダを拾ったことからロマンスが始まり、夢の中でスラーダによって成功し、最後はスラーダのCMソングを歌って「スター・オブ・ザ・フェスティバル」になり、全ての人がスラーダまみれの会場でスラーダを持ちながらダンスを踊っている……なんとまあ、この映画で出てくるスラーダの量といったら、私が生まれてから今までに見た数よりも多い!

よく考えてみると、これはこれでスラーダの広告という目的をきちんと果たしているのかもしれない——長々と二時間もこんな物を見せられて我慢したら、確かに観客はおいしい飲み物で傷ついた魂を癒やす必要があるからだ。

02:『虫巻風の十六頭虫』
ジャンル:スリラー/ホラー
個人評価:1/10
一言:レベルがより一層下がった
評論:
『虫巻風の三頭虫』が上映された当初は、このような粗悪な映画にあれほど多くの続編が作られるとは夢にも思わなかった。

ゆえにその十三番目の続編が人気映画として宣伝されているのを目にした時、レベルの低い特撮技術とAI生成のシナリオの評論に時間を割きたくないと思った。しかしこの映画の売上に貢献した観客たちには物申したい——あなたたちが買ったチケットの一枚一枚がグレイディ・シネマズの墓の土になるのだと。

映画の面から言えば評価は0点だが、この1点は美術チームに贈りたい——彼らは十六の頭と三十二の羽、六十四の足を持つスウォームの怪物を作り上げた。これはなかなかすごいことだ。もし次の続編でさらに頭を増やせたら、もう0.5点あげてもいい。

03:『ミームクライシス』夢の泡リメイク版
ジャンル:ホラー/冒険/夢の泡
個人評価:2.5/10
一言:こねくり回した二番煎じ
評論:
『ミームクライシス』が上映された時、私は5点をつけた——読者の皆様はお気づきだろうが、この点数は『銀幕の衝撃波』ではかなりの高得点だ。

残念ながら、今のグレイディ・シネマズはスウォームの頭を増やすことばかりに力を注いでいる。最先端の夢の泡技術は原作を再現できないばかりか、オリジナルの良さを台無しにしてしまった。監督は夢境と画面の違いを全く理解しておらず、ひたすらストーリーを一方的に見せ、うんざりするほどの自分と関係ないセリフを見るように強要している——笑止千万だ。もし夢の泡の映画が画面の一切を夢の中に移動させるということなのだとしたら、ソファーに座って原作を見ている方がマシである。

この映画の題材に興味があるなら、原作を買って見ることをおすすめする。そうすればお金と時間をこのゴミみたいな夢の泡に捨てずに済むだろう。

04:『クロックボーイと機械の街』
ジャンル:アニメ/コメディ/冒険
個人評価:4.5/10
一言:新規性に欠ける量産型映画
評論:
周知の通り、『クロックボーイ』は夢境の大人気アニメだ。クラークフィルムの看板作品であり、宇宙で最も価値のあるアニメキャラクターでもある。しかしクラークフィルムは『クロックボーイ』での成功にしがみつき、怠慢の罪を犯している。この『クロックボーイと機械の街』はその最たるものだ。

このアニメ映画のシナリオは去年の『クロックボーイとネットワークの街』と全く同じ構造で、ドリームタウンで危機に遭遇し、クロックボーイと仲間たちが協力を求め、新しい仲間と出会い、友情と団結で街を救う……正直、こんな似たり寄ったりの映画を七十八回も作って、制作者は飽きが来ないのだろうか?

クロックボーイのアニメ映画を初めて見た人は優秀な劇場アニメ作品だと思うだろうが、何度も見たことがあるファンにとっては何の新鮮味もない。

今月のおすすめ映画
推薦人:シャブロー

『ある星雲の凋落』
ジャンル:戦争/ドラマ/サスペンス
個人評価:9/10.0
一言:なかなかまねできない良作
評論:
この映画は銀河で最も著名な監督の一人——レック氏の本質をよく表した作品である。本作でも彼の一貫して突出した能力が発揮されている。

『ある星雲の凋落』では真実とロマン、優しさと残酷さ、そして生命を二百分間で千五百のシーンに収めている。物語の舞台は半琥珀紀前に滅亡したスラトゥガ星雲で、レック氏はその星雲を治めたオムニック元首を主人公として選び、彼の視点から星雲の最後の半年間を描いた。

リック監督の過去の作品と同様に、作り込まれたリアルさで、まるで主人公になって物語をありありと体験しているかのようだ。無名ながらも役にぴったりのキャスト、起伏に富んだ物語と素晴らしい編集…その全てが『ある星雲の凋落』を映画史に刻むに値する。

この作品を振り返る時、過去に追い求めた芸術の理想がとめどなくあふれてくる……筆者の年ではもうこのような優れた作品を生み出せないが、文章によって映画業界と観客たちに呼びかけたい。私たちにはレック氏のように偉大な芸術家がもっと必要だと!

注:本誌記者の情報によると、レック氏はピノコニーの夢の泡技術に関心があり、現在夢の泡映画を制作しているという——これは映画ファンにとって大変な朗報だ。彼の作品は映画市場を覆う暗雲を吹き飛ばし、光明をもたらしてくれると信じている。

『記憶域ミームの被害者リストの一部』

記憶域ミームの被害に遭った人の名前が記された手書きリストの一部、ファミリーが極秘に保持する機密情報の一つ。情報源の人物により暗号が施されている。

暗号版

『記憶行ミー夢乃非外社リ素ト乃一部(暗号版)』
経国:胃化ノ情報ハ
木密度甲

ばーにーず、任弦ノ弾性。「他蘇我礼ノ戸樹」デ游イデイタ都気ニ阿玉ヲ内、休出字ニ冥少譜命ノみーむニ皿割レタ。九女院ノ木奥ハ柵序図ミ。

みや、ぴぴしー仁ノ助成。「耐用ノ戸樹」デ裕仁トカクレンボヲシテイタ都気ニ冥少譜命ノみーむニ皿割レタ。裕仁ノ木奥ハ柵序図ミ。

いざべら、任弦ノ助成。「穂市墓氏ノ戸樹」デ柔翼柱ニ疾走。翼層布巾ニ能古サレテイタ温製れこーだーカラハおむにっくノ貯命ナ恩額化びそうぇん乃『激昂局』ガ菜画レテイタ。

うぃるむ、おむにっく仁ノ弾性。「ぶるーすノ戸樹」デがーるふれんどトきすヲシタ跡、冥少譜命ノみーむニ皿割レタ。がーるふれんどノ木奥ハ柵序図ミ。

非外車ガイタ馬書、酒俗オヨビソノ都気シテイタコトガ御名古都ナルタメ、源氏店デハみーむノ甲堂ニ基礎癖意ハ身イダセナイ。

正式版

『記憶域ミームの被害者リストの一部』
警告:以下の情報は
機密度高

バーニーズ、人間の男性。「黄昏の刻」で泳いでいた時に頭を打ち、救出時に名称不明のミームにさらわれた。救助員の記憶は削除済み。

ミヤ、ピピシ人の女性。「太陽の刻」で友人とかくれんぼをしていた時に名称不明のミームにさらわれた。友人の記憶は削除済み。

イザベラ、人間の女性。「星々の刻」で入浴中に失踪。浴槽付近に残されていた音声レコーダーからはオムニックの著名な音楽家ビソウェンの『月光曲』が流れていた。

ウィルム、オムニック人の男性。「ブルーアワーの刻」でガールフレンドとキスをした後、名称不明のミームにさらわれた。ガールフレンドの記憶は削除済み。

被害者がいた場所、種族およびその時していたことがすべて異なるため、現時点ではミームの行動に規則性は見いだせない。

『ブルースの夜』のチラシ

「ブルーアワーの刻」のチラシ、ロマンチックな雰囲気が伝わってくる。

ブルースの夜のチラシ

「ブルーアワーの刻」から来たチラシ。
シワシワで、多くの人に見られたようだ。
描かれているカップルは寄り添って耳元で何かをささやき、背後では夢の泡の海で飛空艇「暉長石号」が航行している。

黄昏、日没、そして街灯がともる
歌と踊りが止まることはない。
現実から抜けだそう
「ブルースの夜」

『夢境旅行ガイド-ショッピング編』

旅行ガイドの続編その一、観光客向けにピノコニーの特色ある土産店を紹介している。

『夢境旅行ガイド-ショッピング編』

おすすめ
エファ出版グループの『夢境旅行ガイド』続編、ピノコニーショッピング大全!
全ての悩みを忘れて、今を思い切り楽しみましょう!

買い物天国:オーディ・ショッピングセンター
キーワード:商店街、大型デパート、ブランド、ワンストップ
ピノコニーが初めてでどこに行けばいいか分からないときは、ピノコニー最大の総合ショッピングモール——オーディ・ショッピングセンターに行ってみよう。
そこには考えられる限り全ての商品が集まっている——最新型スフェロイド「フライホイール2001」から辺境の星で書かれた冒険小説まで——オーディ・ショッピングセンターに行けば、あらゆるニーズを満たすことができる。
ショッピング以外にも、いろいろなセットサービスが提供されている。全店舗に無料の配送サービスがあり、実物の商品はホテルの部屋または銀河宅配ネットワークで宇宙の隅々にまで送ることができるのだ!

オリジナリティーあふれるレストラン:デルマー料理店
キーワード:予約制、メニューなし、オーダーメイド
デルマー料理店は知る人ぞ知る個人経営のレストランで、料理の多くはピノコニーでしか味わえない。商店街にひしめくファストフード店と異なり、この店では主にオーダーメイドサービスを提供している。記憶を渡すと、シェフがそれを材料にあなただけのごちそうを作ってくれるのだ。
三代目シェフのレクターは「料理は単に空腹を満たすだけのものではありません。記憶が味と好みを作り上げ、メニューからはその人の人生が見えるのです」と語る。
銀河の巨星レスリー・ディーンもかつてここで食事をしたと言われている。

盛り上がるアクティビティー:「クラーク・スタジオ」キャラクターグッズストア
キーワード:漫画、クロックボーイ、フィルムランド、キャラクターグッズストア
「クラーク・スタジオ」は唯一の公式ストアであり、店舗全体が作中のドリームタウンを再現している。店員たちは街の住民の格好をしており、ルーサンコインを使ってクロックボーイの各種グッズを購入できる。
クロックボーイの人形、ブラザーハヌの帽子、ハムスターナイトのスフェロイドシール、折り紙の小鳥ランダムグッズなど、どれも人気商品ばかりだ。
面白いことに、近年ではファンの評判や好みが変化したことで悪役ボス・ストーンの人気が急上昇し、ひそかに新たな売上ナンバーワンになろうとしている。

熟睡体験:商店街の地下バー
キーワード:会員制、不定期営業、隠された場所、夢のカクテル
広場の脇にある商店街には隠れ家的な小さなお店がたくさん軒を連ね、そのドアを開けられるのは常連客のみだ。
このバーに名前はなく、店主にも名前がない。メニューにはスラーダカクテルというカクテルが一種類だけ。店主がその日の気分で作るので、毎回味が違うとのこと。
もちろん、ここでもクラシックスラーダを頼むことはできる——しかし味は外で飲む既製品にはるかに及ばない。

従業員ハミルトンのメモ

シングラーと一緒に夢境ホテルの異変を調査していた時に見つけた小さな手がかり。ハミルトンという名前のホテル従業員から受け取った。

従業員ハミルトンのメモ・1

その1

ついにこの時が来た。

今日夢に入る前、リーダーが私を見つけて親切にたくさん助言をしてくれた。早口だったので半分も聞き取れなかったが、何を言いたいのかは大体分かった。私は今回の夢に対して「見通しが暗い」と思っている。うまく任務を遂行できなければファミリーに追い出されるかもしれない。しかし彼は私を非常に評価してくれている。私のように謙虚で努力家で一生懸命に仕事をする若者は少ない、順調に試練に合格することを願っているとまで言った。

私は少しお茶を濁し、それから部屋に戻って夢に入る準備をした。緊張していないといえば絶対に嘘だ——でも、私に何ができるというのだろう?黙って受け入れるしかない。私は目を閉じて無理やり眠り、夢を見ないで休んだ…あんなことをするには、とにかくまず体力をつけて心の準備をしておかなければ。

従業員ハミルトンのメモ・2

その2

私は夢に入った。するといつもと同じホテル・レバリーの従業員宿舎で目が覚めた。

しかし雰囲気が全くなじみのないものになっている。周囲の人たちは何かに気付いているようで、私に向けられている目が少し他と違うように感じた。もちろんただの思い込みの可能性もあるし、本当のところは分からない。

普段は全く交流のない人に突然肩をたたかれ、激励されているようだ…しかし彼が何の仕事をしているのかさえ思い出せない。ドリームサポーターか?ああ、私の記憶は何者かに消されてしまったようだ……

私はジェリミと少し言葉を交わし、夢境ホテルで起きた一連の奇妙な出来事について話した。突然現れた絵画、客を襲う楽器など、聞いていると寒気がしてくる。おかしなことだが、彼と私は近しい間柄にもかかわらず、私が今日何に立ち向かわねばならないか全く知らないようだった…以前伝えるのを忘れていたのだ。大丈夫、それでもいい。心配する人が一人減るだけの話だ。

私は黒ずくめの服装に着替えた。黒は安心感を与えてくれる。宿舎で長い間待っていたが、その間は緊張でいてもたってもいられず、部屋を何周したか分からない。

そして、ドアをノックする音が聞こえた。

従業員ハミルトンのメモ・3

その3

本当に信じられないことだが、なんとシヴォーンさんと直接会って話す機会を得たのだ……

アイリス家の著名な人物で、地位は当主の次といったところだろう。いつもは一人でいることを好み、めったに人前に姿を現わさないと聞いたことがある。こんな所に出向いて、しかも私のような無名の小物と話をしてくれるなど思ってもみなかった……

最初は緊張して、一言も発することができなかった。しかしシヴォーンさんはまるで魔力を帯びているかのように、すぐに私を落ち着かせた。彼女はたくさんの重要なことを説明した。最近夢境ホテルに異変が起き、ファミリーは怪奇現象に対処するため努力していること、従業員はどんなことに注意すべきか、など…大きな事から小さい事まで詳細に話し、私も奇跡的に集中力を切らすことなく彼女の一言一言に聞き入った。

彼女は最後に、未知の危険を前にしてアイリス家の全員——いや、ファミリーのメンバー全員が武器を持って戦う覚悟が必要だと言った。VIPたちを守るため、我々は脅威をもたらす相手の前に立ちふさがらねばならない……

正直、自分にその準備ができているかは分からなかった。

従業員ハミルトンのメモ・4

その4

ついに成功した!デウムを賛美せよ!私は自分の仕事を守った——自分自身をアイリスと呼ぶことさえできた。

その過程は本当に恐ろしいものだった。三回試し、最初の二回は五秒と持たなかった…しかし最後の一回で奇跡的に成功したのだ!

微弱な調和エネルギーを頼りに、自らの思想とあのクソみたいな皿と気持ち悪いスポンジを協調させた。二十秒間継続し、皿を汚れ一つなく磨き上げることができた。さらに思念によって蛇口をひねり、皿に残った泡をきれいに流しさえした。

周囲の全ての人たちはまだ拍手している。私の姿はシヴォーンさんの目にも届いたようだ。これをクリアした今、もはや取るに足りない実習生ではない…誇り高きアイリス家の一員だ!永遠に!

編集者向け

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