本棚/宇宙ステーション「ヘルタ」

Last-modified: 2024-02-22 (木) 03:58:01

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本棚:宇宙ステーション「ヘルタ」 | ヤリーロ-Ⅵ(1) | (2) | (3) | 仙舟「羅浮」(1) | (2) |ピノコニー| 収録なし


「ヘルタ」資産損害明細書

「ヘルタ・万有応物課」が推定した資産損害リスト。数千件の貨物損害が記録され、天文学的な額の賠償金が発生し、それをスターピースカンパニーが全額負担している。

……
ナンバー#3471:沈黙拒絶
資産分類:収蔵奇物
物品記述:自動演奏する極小型の管弦楽器。0デシベルの状況下では、耳障りの良い異星の曲を流す。デシベルが0を超えると無音状態が維持される。
損害程度:80%
損害状態:機能、形質が逆転し、周りの環境が騒がしくなればなるほど大きな音が鳴る。
スターピースカンパニー保険見積もり額:118,000信用ポイント

ナンバー#3472:ブラックファイヤーウッド
資産分類:収蔵奇物
物品記述:暗い場所ではなんの変哲もないファイヤーウッド、見慣れると物足りないかもしれない。明るい場所に置くと、先の部分には緑色の気体状の粒子が蠢いており、無色無臭で触っても無害である。着火すると光を払い、闇を留める。
損害程度:100%
損害状態:「レギオン」のモンスターは意外にもこれを気に入ったようで、全て盗まれた。
スターピースカンパニー保険見積もり額:32,000信用ポイント

ナンバー#3473:換境ベッド
資産分類:不動産
物品記述:「ヘルタ・万有応物課」の室内に置いてあったベッド。芳しい新緑の蔓に囲まれ、幻想的な香りに包まれながら眠ることができる。夢の中で時間を変えることも、天地をひっくり返すこともできる。
損害程度:10%
一部の蔓が燃えた。星間輸送で補充部品を集めるよう申し入れ済み。
スターピースカンパニー保険見積もり額:97,000信用ポイント

ナンバー#3474:ホーム
資産分類:不動産
物品記述:宇宙ステーションのゲストを受け入れる役割を担うプラットホームで、多くの宇宙船が停泊している。
損害程度:50%
損害状態:トラス構造変形、コンクリート材欠損。
スターピースカンパニー保険見積もり額:5,777,000信用ポイント

ナンバー#3475:星穹列車
資産分類:宇宙航行乗物
物品記述:プラットホームに停泊していた宇宙航行乗物に対し、宇宙ステーションは二次的にその損失を負担することになる。
損害程度:20%
損害状態:ボディの擦れ、塗装の劣化、オイル消耗、モンスターの異臭。旅の中断、機会費用、不当な困難、精神的損失。
スターピースカンパニー保険見積もり額:990,000信用ポイント

ナンバー#3476:世斉望遠鏡
資産分類:スタッフ持ち物
物品記述:わし座の星明かりを観察するために使用する望遠鏡。
損害程度:70%
損害状態:壊れてから、素晴らしい景色を肉眼で見るしかなくなる。
スターピースカンパニー保険見積もり額:48,000信用ポイント
……

銀河正義表彰

「ヘルタ・銀河法政課」が「部分正義」の仲間を表彰するために発行する功労賞。

銀河正義表彰

ミス/ミスター開拓者へ
ガンマ線とニュートリノの溶岩流が銀河の渦状腕に阻まれ、新たな絶滅大君の陰謀が機知のレンジャーによって挫折した時、正義の歌が「存護」の壁を越え、七柱星神の民たちは共に喜び祝う!大事件が頻発する琥珀紀においても、「ヘルタ・銀河法政課」は、光年の彼方からささやかなメッセージを捉えた——これもすべて閣下の行いが、宇宙のわずかなエネルギーの変動に影響を与えたからです。

このような正義は、零落してもなお尊いもの。それは醜悪な敵を一挙に打倒することも、犠牲者のために失った権利を即座に呼び戻すこともできないかもしれませんが、それでもそれは、バタフライ効果のように悪意と相殺し、善意と結びつけ、宇宙正義の歴史に実在する一筆を書くだろう。

一羽の小さな正義の鳥が星の輝きを越え、称賛を咥えて、閣下に授けます。

巡海勲功爵

これからも宇宙の無限なる波の中に、閣下が世の浮き沈みを統べる姿がありますように。
この状を発して、励ましを!

「ヘルタ・銀河法政課」
琥珀2157紀
スタッフエリザベス・ワトソン授与

コメットハンターからのお便り

コメットハンターであるホセ・ラサロからの手紙、罵詈雑言が書かれている。

この手紙を拾った「ヘルタ」のスタッフへ

こんにちは、まだ生きていますか?

反物質レギオンが「ヘルタ」を包囲したというニュースは、とっくに新しいものではない。全宇宙を見ても、「存護」を信じる阿呆どもだけが耳を塞いで見ぬふりをするだろう。他の連中が腹いっぱいになったら、「ヘルタ」がいつまで持ちこたえられるかについて賭けることもある。言うまでもないことだが、僕はあんたたちが最短時間で陥落することに賭けている。けど今回のレギオンは中々だったよ、宇宙ステーションにとっては味方を苦しめ敵を喜ばせたことで、このホセも儲けただけでなく、あんたたちのヘルタ様も顔色が変わったんだろう?もしあの「天才」が本当に助けを求めるなら、「博識学会」は彼女に手を差し伸べなくもない。彼女がそれを認めさえすればだ、「博識学会」は「天才クラブ」に引けを取らない、と。

どうだ?この公平な取引を早く彼女に教えろ。成約したら、パブ「ワールドエンド」に入って左から5歩、裏から9番め、鉄のスズとカマハシオンを飾った席にまで返信を送るように。手紙を4lの「カリパ」の下に挟んどいて。ハハッ!

悪名高い前スタッフ
ホセ・ラサロ

「宇宙地理課」すべての若者たちへ

若者、若者、すべての若者よ!よく見ろ、今お前たちの前にあるのは、「ヘルタ」を飛び越え、銀河に向かう前地理スタッフの思い。

そんなもの、たとえ100万の実体のない信用ポイントと引き換えに持ち出したとしても、「スターピースカンパニー」は売ってやらないぞ。なぜか分かる?その本質は自由で、反抗的で、不安定だからだ。リスクに反対し、ネジを回す「カンパニー」が最も嫌うものと言えよう。「カンパニー」が一番得意なのは、万の奇妙な商品を提供して、万の偽りの選択肢を作り出して、本当に大切なものをあんたらの目の前からそらすことだ。

これも「カンパニー」が多くの派閥と仲が悪い理由――既存の構図に偽りの繁栄と甘露を作り出してるから。

いまこそ真実と向き合う時だ。僕がまだ「ヘルタ」にいたころ、地理課はすべての研究課室の底にあった。生物学者、予備政治家、占い師、二流商人まで、僕たちを踏みつけにして、僕たちを石や泥としか付き合えない、役立たずと思った。しかし、「ヘルタ」を離れてみると、そうではないことがわかる。

僕たちが銀河版図に対する理解は、星の海を行き来する「ナナシビト」に劣らない。
僕たちはこの世界に対する憧れとともに、「開拓」の星神に祝福された。
その星神は星軌を敷き、諸星と連絡して暗域を駆けた。そして、その名はアキヴィリ。
この無料で粗末なページに、アキヴィリが亡くなる前の勧誘を、あんたたちのような無一文の貧しい若者に撒いてやろうと思う――それは永遠の誇りであり、永遠の心であり、星の海である。

時々失意に陥ったり、茫然としたり、宇宙が冷たくなったりしたら、どうにかして「ヘルタ」を大きな穴から吹き飛ばせ、宇宙ステーションから飛び出せ!そうすると、足元には銀河が広がってことに気づく。僕がそうやったように。

免責事項:僕が言ったことは地理スタッフのみが真似していいもの、他の青二才どもは引っ込んでな。

前ナナシビト、現博識学会-武装考古学派隊員
ホセ・ラサロ

昔の友とかたき、あるいは新しい友とかたきへ

このホセ・ラサロがどんな人物なのか知らない人は、応物課の責任者にでもきけ。

僕が「ヘルタ」の一科学者だったころ、応物科の責任者は温明徳の父親である温槐仁だったと覚えてる。あの老いぼれ斑鳩、ともすれば僕らの研究費を切りつめて、違う惑星の大気や土壌の成分を測定する機器の配給を減らし、商業交流の名義で華やかな骨董品を「カンパニー」から買いつけてた。温槐仁の目は有名だったよ、たくさんの奇物は彼によって安値で買い取られ、その後、高い星間流通時価に跳ね上がった。応物科はこの転売屋で日増しに大きくなる一方、僕らは切れ端で作った勘星用たがねを頼りに苦労して研究を進めるしかなかった。

僕に勘星用たがねで叩かれても、温槐仁は悔い改めることなく、「応物課のソースをオープンし、地理課の容量を節約する」を遂行した。僕がいなくなってから、時々突っ込んで帳簿を調べたり、不平不満を言ったりするトゲがひとつ減って、応物課も繁盛してきたんだろう。なんといっても「カンパニー」の商品ラベルに、サプライヤーが「ヘルタ・万有応物課」がマークされることが増えてきたもんな。

温槐仁の他にも、これまでに地理課の仲間をいじめた連中みんな、このホセ・ラサロが殴ってきた。そのうちの何名かは僕を「ヘルタ」から追放した敵となって、何名かはいつの間にか友人となった。僕って日ごろから歯を食いしばっていろいろやってるけど、本当に殴ってくれたのは温天翁だけだった。そして僕も、感服したよ。殴られて当然だった。

古い友たちは、ほとんどがまだちゃんと生きてるって知ってる。そして僕も生きてる。実際、「ヘルタ」を去った後、僕は何度も「壊滅」の焦土で命を落としそうになって、武装考古の無謀なやり方で派閥に追われ、長年の貯金をすべて仮面の愚者のパブに投げ出してしまったが…こんなに楽しく生きたの初めてだ。

昔の友か宿敵
ホセ・ラサロ

コメットハンター秘蔵の宝物

コメットハンターであるホセ・ラサロの秘蔵、事前に公表された悪ふざけ。

「宝」の発見者へ(その1)

ヤッホー!騙されたぞ!
「宝」なんてどこにもないんだ。
唯一のサプライズは、この部屋にある僕の落書き。見て分かったと思うが、どうだ、中にはヘルタ様の凛々しいお姿もある、驚いたろ?
あんたが真面目なスタッフでしかないなら、深呼吸しろ!ビビって倒れちゃあだめだぞ。
その代わり、遊び心のある若者だったら、それを全部集めとく方を勧めるぜ。人生うまくいかない時、光もささないタワーで研究する時、それをみて楽しむといい。

ヤハハのホセ・ラサロより

「宝」の発見者へ(その2)

いいだろう、この言葉を読んでいることは、僕のアドバイスを聞いた、折れない尊き品質を持っているとの証拠だ。
認めるしかないね、あんたがここまで遠回りしたのに、僕が何も残さなかったと言うのなら、見当はずれだって。
何せいくつの琥珀紀がすぎて、ここに辿り着ける人が誰なのか知らないからな。
万が一、あんたがこのホセ・ラサロ未来の護持者で、この精神を引継ぐ者である可能性も。
むやみに味方を傷つけたら、すまないだろう?
仕方ない、本当の「宝」を出すか。

尊敬すべきホセ・ラサロより

「宝」の発見者へ(その3)

「カリパ」と言う炭酸水を飲んだことあるか?
一度は宇宙ステーションの看板で、サウスウォール星系で大人気を得た反重力ソフトドリンクだ。
かの有名な勘星用たがねと星域導影以外も、
無論、それらもこのホセ・ラサロの傑作だ。
「スターピースカンパニー」が500万信用ポイントで炭酸水のレシピを買おうとしたけど、僕が断った。
「ヘルタ・万有応物課」の温槐仁も33回コッソリ学ぼうとしたけど、僕にボコボコにされた。
今、僕はそのレシピを世に公開する——
500万の価値だぞ。じゃあまた次回に。

伝説のバーテンダー ホセ・ラサロより

「宝」の発見者へ(その4)

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自分の目を疑うな、以上が「カリパ」のレシピ。
嘘つきはハリセンボン。
あんたが本当に味方ならば、どこでパスワードを手に入れられるか知ってるはず。
ヒント:特別な現像法が必要。

義理を通すホセ・ラサロより

カリバ秘伝のレシピ

ソフトドリンク界の無冠の王。男たちの粗暴な友情は、致命的なまでのユーモアがある。

「宝」の発見者へ(その4)

温のじぃ、元気か?僕がヘルタのとこを離れた後、残った手引が教えたよ、僕が無鉄砲だったせいで、苦労したとか。応物課の後継ぎと言うタイトルを奪われたあげく、整備室に囚われて、僕が爆破したあの穴で働きながら弁償してるらしいじゃない。

すでにあんたを傷つけたと言うのに、今更事故だって説明しても、意味ないだろう。それにあんたも知ってるように、僕はあざとい人間が大嫌いなんだよね。銀河を放浪する数年間、ずっとあんたに手紙を書きたかったけど、あんたが宇宙ステーションの全員に、一番憎い人がホセ・ラサロと言い回したと聞いてな、仕方なく宇宙ステーションに潜り込んで、この謎解きを仕掛けたんだ。やっと、この手紙をあんたに届けたね。

今、「カリパ」秘伝のレシピをあんたに教える、これをスターピースカンパニーに売って、大儲けするといい。僕のせいで長年苦労した補償と思って、これからのすべてが順風満帆であるように。

「カリパ」のレシピ:カラメル、二酸化炭素、エンドウ豆、ホタルブクロ、換境樹の葉、豊穣香液、ランガワ。

自分の目を疑うな、以上が「カリパ」のレシピ。
嘘つきはハリセンボン。
あんたが本当に味方ならば、どこでパスワードを手に入れられるか知ってるはず。
ヒント:特別な現像法が必要。

義理を通すホセ・ラサロより

星域界種要旨:ウーウーボ

見た目は一般的な大型の書籍と変わらないように見えるが、よく見ると周囲には淡い星が煌めき、まるで呪文が隠されているようである。

※見た目は一般的な大型の書籍と変わらないように見えるが、よく見ると周囲には淡い星が煌めき、まるで呪文が隠されているようである。見開きページには、「ウーウーボ」に関する情報が掲載されている。手でページは捲れるが、いくら捲ってもこのページに留まる。この感覚はまるで……流砂の本を捲っているようである。どうやら、他の内容を見るには、何らかのアクセス権か、鍵が必要なようだ。※

星域界種ナンバー:霊質#415

界種学名:ウーウーボ

銀河別名:ウーブ、劇命鬼、いたずら星霊

分類:霊質生物界—星霊網—無形目—魂精科—サイヨウア種

研究概要:

星霊に代表される霊質生物の歴史は、琥珀紀の始まりまで遡る。「古獣受胎説」という仮説では、古獣の一部は黄昏戦争後に取り残され、その長い眠りの間に腐敗した細胞体は生物の始原の器となり、散逸した生命エネルギーは彷徨える星霊へと変化していったとしている。しかし、近年、「古獣受胎説」に反論する学者も増え始めている。他の綻びの多い仮説に関しては、ここでは紹介しない。

当初、星霊は自我を持たず、ただ銀河系をあてもなく漂っているだけであった。開拓紀の時代、「ナナシビト」は銀河系を旅し、人間の自由な移動は星霊を魅了した。有限の寿命を持つ生物の、生と死に対する愛と欲望という強い感情は、星霊の荒涼とした核心を刺激した。人類は、星霊の最も求める宿主となった。星霊は感情の匂いを追って宿主を狙い、体を乗っ取って宿主を歩く死体にする。星霊との融合に成功しなかった宿主は、その場で死んでしまう。エルヴィン・ヘスラーというナナシビトが最初に星霊の宿主となり、平和的な共生を果たしたことが記録に残っている。他には、多くの星霊の宿主が災いを呼び寄せ、長い歴史の中に消えている。

それ以来、この霊質生物は人間社会に紛れ込んできた。その卓越した感情認識とマインド操作は、恐ろしいものである。

ウーウーボは先祖である星霊の力を受け継いでいるが、それほどの殺傷力はない。単独では半透明のゆらぎのある幽霊のような姿となり、人々を惑わせて遊ぶことを好む。宿主に寄生した後、宿主に悪さをさせて狂気的な振る舞いをさせ、悪事を重ねた後、しらふに戻る。

星霊が略奪と進化のために大混乱を起こすとすれば、ウーウーボが純粋に遊びまわるのは——

「面白い」からである。

そう、ウーウーボは意味もなくトラブルを起こして回り、飽きたら静かに退場するのだ。騒ぎは収まり、宿主はやがて元の状態に戻るが、途中で周囲に与えた被害は元には戻らない。

「ヘルタ」で適用されているアドラー分類に基づくと、ウーウーボは中等度の収容監視が必要で、生命の危険はないものの、厄介な問題を引き起こす可能性がある。不当な流通には注意が必要だ。

辛-41雲卿訊音

雲郷訊音は異なる星から伝達してくる。そして、スタッフの故郷や親戚のメッセージを運ぶのである。
「ヘルタ・銀河法政課」が確認し、該当するスタッフに届けている。

発信元:惑星辛-41
カテゴリー:親族慰問
審査結果:通過、ミームウイルス無し
審査者:エリザベス・ワトソン
送り先:星域界種課-一般スタッフ-栄倉終

終ちゃんへ

あなたからの3通目の手紙が届いた時、お父さんと私はとても嬉しくて、お父さんが何年も前から私蔵していた「レッドムーン」を開けてお祝いしました。スリンキー人がスパイスの一方的な禁輸宣言以来、私たちの生活から関連商品を完全に消し去りました。お父さんは、捕まる危険を冒してまで祝い、あなたからの手紙を持って町に回りました。お父さんは家族のプライバシーを暴露したいわけじゃなくて、純粋にあなたを息子として誇りに思っているのだと理解してほしいのです。

あの夜、みんなで肩を寄せ合ってあなたの手紙を読みました。あなたが挙げた宇宙ステーションの「奇物」は、私たちの地域では聞いたことも見たこともありません。あなたが手紙に書いた同僚の「スタッフ」たち、ふふ、ずっと辛-41にいた私たちからすると、スリンキー人に匹敵する天才に思えます。でも、あなたの手紙によると、スリンキー人は真理の体現者、宇宙の支配者ではないのですね。もしかして、彼らは私たちの文明を終わらせることなどできないのでしょうか?スリンキー人よりももっと偉大な存在があるのでしょうか?正直、お母さんの想像を超えています。スリンキー人が来る前の歴史の記述を探そうと、放置されている本の山を掘り起こそうとしたのですが、お父さんに止められてしまいました。私が暇だから、禁書を漁るという命知らずなことをしているんだと言われました。私はあなたの言葉で反論しようと思ったのですが、お父さんはそんな時間があれば香辛料畑に行って香辛料を1カゴ余分に摘んできた方が、次の収穫期にあなたに少しでも多くの仕送りができると言いました。よく考えると、確かにその通りです。紙に書かれているようなことは、あなたたち若者に任せた方がいいですよね。ほら、かつて、あなたと同じ大学に通っていたミライという青年を覚えていますか?彼は、あなたの手紙を読んで凄く嬉しそうにしていました。

あの時、彼は椅子の上に立って、あなたがみんなにまったく新しい知識をもたらしたと言い、あなたを「火を抱く者」だと言っていました。そう言って、彼は慌てて帰ってしまった。この手紙を書いている時点で、彼は22日間も行方不明です。霧が濃かった今朝、彼の遺体が発見されました。最近、辛-41の朝霧がいつも濃いのですが、スリンキー人のスパイス焚きが増えているせいだと思います。何かお祭りをやっているのか、偉い人を歓迎しているのか、スリンキーの集落には小さな飛行船が頻繁に行き来しているようです。話が逸れてしまいました。ミライの事ですが、スリンキーの集落から100メートルほど離れた湿原に倒れていました。眼窩、口、耳の穴、腹部には使い古しの香辛料が詰め込まれ、廃草みたいでした。みんな、スリンキー人の警告だと噂しています。みんなでミライを小高い丘の、濃い黄色のライラックが咲き乱れている側に埋葬しました。お父さんを含めた数人は涙を流していました。彼らは大声で煙のせいで目が痛くなると言って、小声でミライの独断的なやり方は死に等しい、何か考えがあるならみんなで話し合えと言いました。また、ミライは口が硬く、火かき棒のように真っすぐで、死の間際まで漢であったとも言っていました。安心してください。これからは、お父さんがあなたの手紙を気安く他人に見せて回ることは止めます。

他にもみんなが疑問に思っていたことがあります。「ヘルタ」はあなたが働いている場所ですよね。じゃあ、「ミス・ヘルタ」は何ですか?人でしょうか?あなたの言う彼女は、スリンキー人に似ています。賢くて、お金持ちで、冷たくて、少しクレイジー。あなたは辛-41で10年以上スリンキー人と交流してきたのだから、彼女の目に留まるのも無理はありません。もちろん、お母さんはあなたの仕事をけなすつもりはありませんし、評価試験で1位を取るために一生懸命頑張ったのでしょう。その資質は、試験に合格して「ヘルタ」に行く切符を手にした時に証明されたのです。あとあなたが言っていたカポーティさん、彼はあなたにとても良くしているのですね。つまり、この銀河系にはまだ良い人がたくさんいるということです。でなければ、あちこちで「巡海レンジャー」の話が出るはずがありません。あなたは今、宇宙ステーションの「大スター」なのですから、あまり尖らないよう気をつけなければなりません。口うるさいとお母さんを責めないでください。ただ、若くてせっかちなあなたに悩みを抱えて苦しんでほしくないのです。この世で子をより理解している人は母より他にいない、ですから。

お母さんが言いたいことはこれだけです。このごろは、あなたの夢を見続けています。あなたが暗い部屋に一人で閉じこもっている夢で、とても不安になってしまいます。それとも、私が年をとって弱気になって、不眠症や夢を引き起こしているだけなのでしょうか。どうしても、向こうでどうしているか、ちゃんと食べているか、痩せてないか、寒くないか、いろいろと心配になるんです。この前、送った毛糸のズボンは、宇宙ステーションから返されました……向こうの人は制服である防護服を着ているから毛糸のズボンようなものは必要ない、と言われたからです。お父さんが怒って、あなたのために買った新しいバンガローに毛糸のズボンを放り込みました。このバンガローは、私たちがスパイスを集めて貯めたお金をほとんど全部使って買いました。無駄遣いだと言わないでください。スリンキー人の統治の下では、楽しみはあまりないのです。私たちは、あなたが早く家庭を築くことを楽しみにしていますが、あなたが辛-41に定住するつもりがないなら、それはまた相談が必要です。お父さんとお母さんはそんな可能性を今までに考えたことがないのです。

終ちゃん、体には気を付けてくださいね。早く跳躍星舟に乗って、帰ってきてください。

スタッフ-栄倉終の日記

スタッフである栄倉終の不平の声と偏執的な思考を記録したページ。寂しく、埃っぽく、気にかける人はいない。

琥珀2157紀39月51日 こと座流星雨

は、滑稽ですね。「ヘルタ」のスタッフは長い間宇宙で生活しているが、無重力に恐怖を感じているのですか?5時間が経過したが、腹部をホールドするケーブルの締め付けの感覚はまだ明確です。ケーブルが希少な第二相のフッ化リチウムでできていて、その繊維は鋭い刃物でも切れないほど長いと知っていても、私は束縛がほどけ、宇宙の深い淵に向かって漂っていくのを想像してしまいます。宇宙は広大で、人が滞在する場所は必ずあるのに、なぜ宇宙ステーションに滞在して屈辱を味わう必要があるのです?その暗い漂流の中で、私は運良く天彗星ウォールに遮られ、以後、遊牧者のカタカタと鳴る鉱車で星の海を彷徨うことになる可能性もあります。しかし、カゲロウが魚に飲まれるように、銀河の隙間に存在する古獣の深淵にそのまま落ちていくこともあり得るのです。

その内部は熱と闇に閉ざされているのか、それとも「ナナシビト」の言い伝えのように、穏やかな星空のようなものなのでしょうか?もし後者なら、少なくともここで孫になるよりは、死ぬ前に壮大な光景を見たほうがいいに決まっています。とにかく、そこで死ぬのは、人知れずここで死ぬのと同じことなのですから。

「ピポピ——ピ——バランス確認完了」

バランス室の赤いランプが光り、その音で検閲任務が完了し、防護網の電気的バランスが正常であることが確認されたことを知らせ、深淵での死は妄想となりました。コンソールに伏して真剣にメモを取ることができるようになった今、気合を入れて筆談をするのも悪くないと思いました。もしかしたら、初見のフィールドデータを無駄にせず、一刻も早く反重力防護網の研究報告を完成させ、前期研究での損失を補い、自己評価を上げるべきかもしれませんね。それとも、まずはメンテナンスルームに行って、温天翁に飲み物を頼んで、緊張をほぐすべきでしょうか?その時、もう研究報告を書く気はまったくないと潔く認めます。

窓からは、宇宙に拡散する反重力防護網の青紫色の輝きを見ることが見えます。この網はもう8琥珀紀の間存在し続けている…この長時間も変化しない能力は、「カンパニー」以外では考えられません。最初に採用した時、ミス・ヘルタへの媚びからだったのか、それとも予期せぬ危険からだったのでしょうか?おそらく、その両方を兼ね備えているのでしょう。やはりモンスターがやってきて、ステーションを攻撃する回数を増やし、より陰惨な変種を送り込んできました。これまでずっと、研究室に閉じこもり、宇宙ステーションの噂の中で亡霊のように生きてきました。しかし、最前線にいる今、私と彼らが正面衝突する可能性は決して低くはないのです。

これは悪い知らせではなく、逆に僕を奮い立たせてくれました。「レギオン」の情報は上官が独占しており、近距離で宇宙ステーションと最も密接な関係にある敵を観察できれば、防護電離のバランスを検査して、防御力をアップする方法を研究するよりも面白いに決まってます。防衛力を高めるのは本当に僕の仕事でしょうか?「カンパニー」は作るだけで、アフターサービスはしないのでしょうか?専門分野の中で最も評価点の低いスタッフに生存のテーマを割り当てるのは非論理的です。僕は、これは罠ではないのかと思っています。失格になったスタッフは、体力仕事で自分の価値を証明するべきです。

興味はないものの、まともな研究報告が書けなければ、この先もまた、このまま腐るだけになるでしょう。実に絶妙な懲罰サイクルです。

なぜ、すべてに点数が必要なのか、実はよくわからないんです。もちろん、スコアの正当性を問うのは、負け犬の僕だけだ、と誰かは思うに決まっています。毎年、決まった日にスタッフ全員が「採点室」に並び、『知恵』の名の下に、ベルトコンベアの上の豚肉のように検査され、優、中、劣の烙印を押されるんです。良い評価を得るために、結果が出るまでに長時間かかるアバウトでエキセントリックな研究がスタッフから見放される一方で、トリッキーで派手な題材や研究が増えてきています。その偽りの数字にあぐらをかいているスタッフたちを見て、理解したのです。僕たちは『知恵』の祝福を受けているのではなく、搾取されているのです。採点によって、この一見知的な頭脳集団を簡単に操り、どこにも居場所のない知性を特定の場所に集め、気ままで自由奔放な彼らの可能性を排除しているのです。

母なる星のことを思い出さずにはいられません。ああ、『ホセ惑星表』に乗っている辛-41にいる時、僕は天才で、元気でした。初めて試験の才能を発揮した時、あの幼い遊び仲間たちは今の宇宙ステーションで名声と富を追い求めるスタッフたちと何ら変わりはなかったのです。彼らは僕をはやし立てた、スタッフが「レギオン」を研究している英雄をはやし立てるのと同じでした。いつか彼らを母なる星から連れ出し、辛-41の住民に、植民地化されていない場所での生活を見せてほしいと願った。彼らは、いわゆる「スリンキー」という種族の不老不死の夢を満たすための幻の香辛料を集める人生ではなく、別の人生を想像していたのです。

宇宙ステーションに来て初めて、スリンキーが宇宙の支配者ではないことに気づいたのです。それどころか、宇宙の最高神と比べれば、辛-41の住人との差は、飛ぶアリとシロアリの差ほどしかなかったのです。もし辛-41の住人に度胸があるなら、浅はかな支配体制に反旗を翻すべきです。でも彼らに出来ないのです。知識も勇気も足りないのです。

同じような圧迫を受ける中で、知識不足を多少は克服しましたが、辛-41の貧しい土壌で育まれた臆病さは、いつも僕の骨に刻まれています。だから、あの予測不明な星霊生物で一桁の点数を貰った時、採点室で「天網」の視線を、母星の酸性雨のように浴びせられたのです——灼熱、屈辱、怨恨、言葉にできませんでした。

しかし、事実がその感情すら無駄であると証明した。宇宙ステーション以外では、人々を評価してレベル分けすることの利点はただ1つ、優越感を得るのに便利だからです。しかし、ここではもっとひどい。スタッフたちは、優越感などというものを必要としていないのです。みんなミス・ヘルタの注目と認可を得るために努力しています。私のような点数の低いのスタッフを、人々は無害な幽霊のように扱って通り過ぎていくのです。そう、ここにはいつも無害な幽霊が出入りし、無言で落ち込んでいるのです。ただ、僕が彼らに注意を向ける余力と意志を持った時、幽霊は私自身になったのです。

今でも故郷の家族に現状を伝えていません。辛-41の憧れの天才が、日夜憧れの宇宙ステーションではただの劣等な肉豚に過ぎないとは、知られたくないのです。

栄倉終

ウーウーボの行動考察

界種課の科学収集品、霊質生物「ウーウーボ」の行動習性に関する研究報告。

※紙がくしゃくしゃで、力いっぱい丸められて捨てられたようだ。※

ファイルナンバー:510523455323647432
所属課:星域界種課
著作権帰属先:栄倉終
累計課題提出数:第7回
推定入庫日:琥珀2157紀32月11日

本文

ウーウーボは単体でも、集団でも、寄生してもこの世に存在することが可能である。寄生していないウーウーボの生態は謎に包まれている。宿主に寄生した後のウーウーボの破壊性は、宿主の行動力と正の相関がある①②。

少数のテストによれば③、ウーウーボ単体の知性は人間の6歳児に匹敵する。集団で移動すると、個々の知能は著しく低下する。これは、霊質生物の思考波動には干渉作用があり、周波数共鳴がそれぞれの判断に影響を与えるからだと思われる。

寄生しているかどうかにかかわらず、ウーウーボ(とその宿主)の行動は、次の4つの論理にしたがっている。
1.楽しい気分のウーウーボはすぐに角が5つ以上ある部屋を含む部屋に逃げ込む。
2.悲しい気分のウーウーボは、寒々とした無人の部屋に集まり、互いの哀悼の意を表し合う。
3.怒っているウーウーボは、たっぷりと光を浴びれる場所に行く。中には感情の激しさに耐えられず、宇宙の塵となる個体もいる。
4.平常心のウーウーボは、最も秘密めいた行動をする。目的も意味もなく、純粋にいたずらに周りの生き物をからかって、行く先々で大混乱を起こすのである。そのため「劇命鬼」や「いたずら星霊」と呼ばれている。

注釈

①参考文献:『ウーウーボが寄生した宇宙ステーションの荒くれ者、1ヶ月で113足の放射線防護靴を盗み、臭いがきつくてついに捕まる』、『ヘルタ新聞』琥珀2156紀第25月号
②参考文献:『電撃戦!ステーション建設以来、最速の収容作業。5分で逮捕されたウーウーボは70歳の女性に寄生していた』、『ヘルタ新聞』琥珀2157紀第07月号
③1回目のテストのサンプルはスタッフのアドラーで、アドラーは年齢以上の知的能力を示したので、結果は無効であった。2回目のテストのサンプルはスタッフの温世玲で、このテストの結果は本報告で採用した。

審査者のフィードバック

1.逸話を参考文献にしない、常識である。
2.サンプル数は十分か?パターンは十分か?単一のサンプルだけで粗雑な結論を出すのは、ヘルタの研究価値と一致するか?
※見つけるのが面倒だからではありません。ステーションに子供は3人もいません。僕のせいでしょうか?※
3.なぜ「角が5つ以上ある部屋を含む部屋」なのか?
※5つの角がある部屋というのは、4つの角だけではない、他にどう説明するんですか?※
4.「中には感情の激しさに耐えられず、宇宙の塵となる個体もいる」この結果はどうやって得たのか。研究規約を守っているか、コレクションの資産を破損するなどの不正行為がないか、このスタッフを徹底的に調査することを求む。

審査結果

研究過程が厳密さと科学性を欠くため、研究の結論が正しいかは、証明を待つ必要がある。

研究審査結果:不合格、入庫予定無し
一審評価者:カポーティ・デュオ・ランキ※この野郎!※
二審評価者:無し

『ヘルタ研究図鑑・第七巻・交通』残巻

ステーション内の全ての交通型の奇物を記録した図鑑。

ヘルタ研究図鑑・第七巻・交通

奇物ナンバー:交通-01483
入庫時間:2154
購入価格:2,130,000信用ポイント
流通価格:1,842,000信用ポイント
取扱者:温槐仁

No.01483 銀河救命毛布

ベージュとブラウンの2色を散りばめたボヘミアン調の毛布。毛糸のタッセルがあるべき場所には、上下に均等に扇動する小型の金色の星の輪があしらわれている。

対象物の大きさに応じて一定の範囲内で自身のサイズを調整し、宇宙船内では救命具として使われることが多い。

星核が引き起こした最初の渋滞による宇宙規模の衝突事故では、数百人の乗客を乗せて、脱出に成功している。

奇物ナンバー:交通-01484
入庫時間:2154
購入価格:180,000信用ポイント
流通価格:560,000信用ポイント
取扱者:温槐仁

No.01484 複眼

ボロボロで見た目が悪いゴーグル。シャボン玉のようなカラフルな複眼で覆われている。使用者は最大36個のパノラマ視野角を得ることができる。

跳躍や超時空跳躍を行う船員の日常的な必需品と言われている。

星核が引き起こした最初の渋滞で、跳躍舟を運転していた乗組員ベスコット・ワグナーは複眼を装備しており、同時に跳躍した他の14隻の宇宙船との衝突を回避することに成功した。

奇物ナンバー:交通-01485
入庫時間:2157
購入価格:37,000信用ポイント
流通価格:41,000信用ポイント
取扱者:温槐仁

No.01485 ビーコン着色剤

虚空に浮かぶ1つの色彩豊かな欠片の傍に、長さ約32cm、もともと直径3cmの平たくつぶれた、黒と金色のゼラチン状の物質が詰まったブリキ缶が横たわっている。このゼラチン状の物質が既知の色をすべて吸収し、最終的にはこの色となった。

ナナシビトたちの共通の緊急アイテムであるビーコン着色剤は、宇宙の虚空でも惑星の表面でも、虚空や水面に明るい色を定着させ、光源の彩度やコントラスト、環境の色に合わせて自身を調整できる。

ビーコン着色剤の強い色彩と視覚的な刺激により、スターレスキュー隊は救助を求める目印を極めて容易に発見することができる。名画家であったナナシビトが考案したものである。星を渡る旅の途中の事故で荒涼とした無人の星域に取り残されたナナシビトは、白色矮星の破片を使い、やがて救助の歴史に残る偉大なビーコン着色剤を発明したのだ。

また、悪意と反抗心と奔放な自己意識から、ビーコン着色剤を使い、宇宙中に落書きを残す人もいる。

P17071

さようならヘルタ

スタッフであるロキ・マルティネスの書いた詩。

暗闇が遠方で隊列を組んでいる。残酷とも言える方法で

時間を解剖している。愛を求める花弁は唇にうつむく

無限の時空の中で時を刻む鐘の音のように。俺たちに選択肢はない。

黄昏の坂道を滑るように、不穏な宇宙の震動に身を任せるしかない

こうして星々は昔と変わらず頭上で曲を楽しむ。その途中には星々の優雅で疲れた顔があるだろう。

ロキ・マルティネス

伏堂伝語

「伏堂空境解語人」を自称する人が提出した密書。水魈の共謀者を戒める内容のようだ。

星の川は上から下に流れ、才ある者は上流にいる。塵界の色は知らぬが、同僚の優雅さを羨む。
あんなに穏やかで優しかったのに、こんなことになってしまって、とても傷ついた。凌雲の昇るがごとく、塵埃に入るを免れず。
魈魅の痕跡を細かく聞くも、ただ収容の片隅ばかりを見る。鉄靴が不世を踏破し、三堂の奥を問うを待つ。
これと与して謀を行うことを憂う。皎皎として独立するにしかず。他日振り返れば、自ずと星の輝きが道を照らさん。

伏堂空境解語人

ヘルタの手稿

本書は「スターピースカンパニー」が出資し、「天才クラブ」#83 ヘルタにより著された手稿。宇宙、星神、派閥、及びその他の一切について記している、「これこそ私が書きたいもの:孤独な神と盲目的な信徒」

『序文』

作者序文

ある日、燭炭学派のクリオ学士が私に聞いた。「君は宇宙のために何か書こうと思わない?」「思わない」って返事したら、彼女は続けてこう言った。「やっぱり書いてほしい、これはカンパニーからのお願いよ」。

正直なところ、今まで考えたこともなかった。私たち、天才クラブには独自のルールがあり、得たものを外部と共有することはほとんどない。実際、宇宙のことが私に何の関係があるだろう?勉強して、発見して、幸せになって、それで十分なのだ。私たち程の実力を持つ人は、銀河系が戦争に巻き込まれても生き残ることができる——だったら、本を書くことが私の妨げになるだろうか?ならない。実のところ、天才クラブの歴史上、本を書くために動いた人たちがいないわけではない。会員#1のザンダーは本を書いたことがある。九字算法を発明した会員#22リルタも書いていた。何琥珀紀前の会員#76のスクリューガムもハウスキーパーのために、膨大なコンピューター管理システムのメンテナンス方法を紹介する冊子を作成していた。それに、偉大な「知恵」のヌースが、自分の体内にすべての情報を蓄積しているのは、文章を書くことになるのではないか?そう考えると、実際に本を書いてみるのも悪くないと思ったのである。

先週、スターピースカンパニーから原稿の前金が来て、その数字の0の数には本当に驚かされた。この時から、私は書くことを真剣に考えるようになった。まず、この序文で、本書がどのようなものかを説明したい。この本には、私の驚くべき発見や、素晴らしい数学的導出が書かれているわけではない——もうすでに十分注目を浴びているが、ここでさらに素の自分を見せたいと思う。宇宙、星神、派閥、その他もろもろについて本を書きたいと思う。この1琥珀紀で、私は異世界との交流を深めてきた。「カンパニー」と提携し、「仙舟」が敵と戦うのを手助けし、「星穹列車」から数多くの興味深い物品を手に入れ、それから「ガーデン オブ リコレクション」と何回かの小競り合いを起こした。まさに、過去100年に類を見ない充実した経験ができた。宇宙で本当に面白いのは、味気のない法則や法律ではなく、凝縮した哲学の化身である星神たちと、その下に群がる愚かな人間たちであることがわかったのだ。これが私の書きたい内容である。孤独な神と盲目な信者たち。彼らが読者たちに満足をもたらすことを願う。

スターピースカンパニーの協賛に感謝する。

『天才クラブ』

第2章 天才クラブ

本章の最初に、読者に考えて欲しい問題が1つある。全宇宙で最も神秘的な組織は?

有名な、あえてカンパニーに逆らう「星核ハンター」?すべてが謎に包まれ、未知の「第IX機関」?アキヴィリと共に生涯を閉じた「ナナシビト」?それとも伝説の「天外聖歌隊」?どれも違う。宇宙で最も神秘的で超越的で説明のつかない組織は、この本の著者である私が所属し、ヌースの恩恵を受けている「天才クラブ」である。

まず1つの通りを通すことにする。宇宙規模で見ても、著者は100万年に1人の天才である——もう一言付け加えよう。著者は恥を知らないわけではないが、恥は著者の人生の一部ですらないのである——幼少期にソリトン波の難題とスパークスモデル予想を解決した。青年期のシグマ粒子の変換方法を発見した。壮年期にはヘルタシークエンスを提唱し、若返りに関する論文を発表した。老年期には若返りを果たした。再びの幼少期、虚数が満ち溢れる現象の謎を解き明かし、天外ある星核を捕らえ、封印した。著者は19回、自分のいる星を滅亡の危機から救い、2回、星神に拝謁している。上記はすべて、著者の数え切れない業績のほんの一部に過ぎない。著者のような100万人に1人だけが、天才クラブからの招待を受けることができる。ヌースの誕生以来、このような人は84人しかいない。したがって、天才クラブが最もミステリアスであるという著者の主張は、正当であり、説得力がある。本文では、史上で初めて天才クラブのベールを剥がしていこうと思う。

(原稿用紙はここで唐突に終わり、次のような走り書きがされている。
このクソみたいなクラブの人たちは全然会話しない、何書けばいい?
見知らぬ筆跡がその下にあった。
君は何としても書かなければならない、読者が望んでいるのだから。
見慣れたヘルタの筆跡が後に続く。
簡単に言うのね、だったらあなたが書けば?)

『博識学会

第3章:博識学会

宇宙は広大で、知性はすべてを包含している。天才には天才の生き方があり、凡人には凡人の自足がある。才能に溢れ、ヌースが直接接見した天才クラブ以外にも、銀河には「知恵」を動力とし、たゆまぬ学習と研究を行っている組織がある。彼らは「博識学会」と自称している。

個人的な好みはさておき、本会の努力はある種の尊敬に値する。ヌースのクラブにいるのは、怪人、狂人、一匹狼、心を閉ざした天才、社会不適合者がおり、彼らは絶えず驚くような発見をしている。出版するために体系化することはおろか、外部に知られることもなかった(本書は例外である)。しかし、博識学会の理念は交流と共有である。知識は通貨で、通貨は流通することで奇跡を起こす。スターピースカンパニーは彼らを受け入れ、スポンサーとなった。「カンパニー」の実力と世界中を移動できる技術で、学会の学士たちは世界中を旅して、あらゆる貴重な知識を集め、それを商品として取引している。

一般的な研究者に比べ、博識学会はもっと商業団体に近い。学会は「学派」を基本単位とし、各学派は独立した採算制をとっている。異なる領域の知識をテーマに、学士たちは自分の持つ知識を研究し、交換することで、かけがえのない宝物を見つけ出そうとしている。以下では、比較的有名な学派をピックアップして紹介している。

-通感学派-

宇宙に最も貢献した思想家がいるとすれば、それは通感学派である。コミュニケーションは、スターピースカンパニーにとって長い間重要な課題だった。取引の基本は契約であり、契約を結ぶにはコンセンサスが必要なのに、知的生命体は多種多様な言語を話す。通感学派の研究者は、種族間に共通の思考の架け橋を作ることに尽力している——その成果が、今日は広く知れ渡るほど発展してきた「共感覚ビーコン」である。

共感覚ビーコンは、物理的な動き、光の点滅信号、音の振動、におい分子の変化など、あらゆるものに反応する——意味を持つすべての信号は、思考インパルスに変換され、理解可能な言語に転換される。こうして、コミュニケーションの第一関門が突破された。共感覚ビーコンを基礎に、「スターピースカンパニー」は膨大なデータベースを構築し、1億近い言語と文字がストックされ、言葉はもはや神秘ではなくなった。

カンパニーは今でも毎期、かなりの額の特許使用料を通感学派に払っているらしく、学派は一国に匹敵するほどの富があるようだ。筆者は、通感学派の次の研究テーマは、超距離センシング通信技術であることを知らされた。この技術は、既に百数十年前に天才クラブ#56のイリアスサラスが発明し、クラブに応用しているものである。しかし、もちろん、天才は凡人にも知性を磨き続けることを勧める。

-星空生態学派-

この学派は、宇宙をより大きな生態系の観察対象として捉え、虚空歌鯨やブライトクラゲなどの宇宙の生き物の研究に夢中である。この学派は「天彗星ウォール」の発見から始まる。この壁が「存護」のクリフォトの古代遺物であることが証明されたことで、カンパニーは大喜びし、多額の資金を与えたそうだ。これは十分に「いい論文を書くより、いいテーマを選ぶ方が重要」を証明していると言えるだろう。

-燭炭学派-

燭炭学派は学会の印刷部門であり、多数のライター、スクリプター、タイピスト、プログラマー、書籍制作者などで構成されている。この学派は、利他的で崇高な意図から、利己的な科学研究を放棄し、より多くの人々が知識にアクセスできるようにするという大義名分に専念したのだ。学会の科学的蓄積は、ここで種類別に製本され、世界中に配布するために出版されている。特に『漫遊指南』と呼ばれる一連の書籍は、その代表格である。

-武装考古学派-

星間探査と文明の考古学に情熱を傾け、常に最も人を寄せ付けない惑星を旅し、最も危険な遺跡を探索する学派。想像してみるといい。徹底した武装で、学派は傭兵を率いて探査船から飛び出し、古代の建物の隙間をゴキブリのようにすり抜け、琥珀紀に忘れ去られた運河へ、途中で何人か馬鹿がトラップに引っかかって生贄となる。目的地に到着すると、貴重な古文書や書類を掘り出し、容赦なく爆薬を仕掛け、通路を爆破で作り、そして嬉々として船に乗り込んで離れる……彼らは学者というよりも傭兵だったと言う意見もあるが、その通りである。

  • 量子歴史学派-

元祖心理歴史学派の破綻から生まれた新しい学派。その本来の目的は、歴史の中に隠された擾乱や変化のパターンを見つけ出し、未来を予測することである。しかし、今は難解な「算法」を使って運命を占う魔術師の集団に過ぎない。ここでこの学派のことを書くのは、笑い話で終わる面白い文章になるからである。

『スターピースカンパニー』

第2634章:スターピースカンパニー

「琥珀の王」クリフォト——首のない巨大な像で、世俗のことには無関心で、ただひたすら神秘的で不可解な巨大な壁を作り上げることに専念している。なぜなのか?わからない。何に備えている?わからない。しかし、正気を保ってる人々は、自分の無知を悟り、この星神のことは考えないようにしてしまう。しかし、世の中には異常な人たちがいる。このグループは、2つのカテゴリーに分けられ、そのうち1つは、次のように考えている。「わあ、神様が壁を造っている!それって、この壁が神聖だということだな!自分たちも壁を造らないと!ロジックなんか知るか!」この者たちは、天啓を得たと思い込んで、それぞれの惑星の貴重な物質資源を浪費して、役に立たないものを作り始めた。彼らは「建創者」と呼ばれている。もう一方の人たちは建創者よりもバカである。建創者は、正気とは言えないが、少なくとも自分にとって何が利益になるかを考えていた。しかし、この人たちはこう考えている「わあ、神様が壁を造っている!それって、この壁が神聖だということだな!自分たちはその手伝いをしないと!」意味不明である。

そして、宇宙の彼方で、献身的な人間たちが集まり、クリフォトの後方支援隊が結成された。この後方支援隊は、自分たちの能力の低さを心得ながら、運命の力で様々な世界に飛び、壁作りに必要な様々な物資を調達し、神々に捧げた。この時、この愚かな集団の中から2人の賢い者が現れ、全宇宙の運命を一挙に変えてしまった。

これから、何が起きたのを陳述する。

まず、後方支援隊は見知らぬ惑星に着いた。幸運なことに、この星は親切な種族が多く、温かく迎えてくれた。後援隊は言った。「我らの偉大なる同志よ!宇宙は今、危機に瀕している。我々の星神は、光年の彼方で銀河を守るための壁を造っている。我々は、君たちにもそれに参加してほしい!」

そこに住んでいた宇宙人は微笑を浮かべながら「わあ、それは凄い。私たちにできる事はありますか?」と言った。

後援隊は「私たちは、木材、石、鉄骨、コンクリート、チタン合金……とにかく、全ての建築に必要な素材は全部必要だ」

「それはいい」宇宙人は言った「私たちは、この素材をたくさん持っています。何と交換してくれるのですか?」

——この時、経済学の最初のシンボルが生まれた。資源の交換が発生したのだ——

後援隊は「私たちは、木材、石、鉄骨、コンクリート、チタン合金……とにかく、全ての建築に必要な素材は全部ある」

宇宙人は言った。「それじゃあ交換する意味はありませんね」

先ほど言った賢い者はここで登場する。ルイス・フレミングと東方啓行の名前はスターピースカンパニー本部の全ての壁のタイルと天井に刻まれている。賢い者はすぐに答えた。「ここから3銀河ほど離れたところにクレメンタインという惑星がある。そこのウィンターサニーの実という特産品は、口の中で溶けて、凄く美味らしい。舌の上で綻ぶ甘さは、天上でも地上でも得難いそうだ」

宇宙人はそれを聞いて「本当に美味しそうですね。では、木材500kgとウィンターサニーの実500kgを交換しましょう」と言った。

——この時、その資源は定量的な価値を持ったのだ——

ウィンターサニーの実はとても貴重である。賢い者1号であるルイス・フレミングは言った。「琥珀紀1年でも500kgは生産できない!しかし、500kgの木材はあなたにとってそれほど貴重ではないはずだ。500kgの木材と2.5kgのウィンターサニーの実を交換するのはどうだろう?」

この会話は、約800琥珀紀前の出来事で、今なら一目瞭然である。賢い者1号は口から出まかせを言っている。ウィンターサニーの実は美味しくとも、そこまで貴重ではないはずだ。頭のいい人は嘘をつく、彼らが重要な富を握っているからだ。情報は非対称である。相手より多くの情報を持っている人が主導権を握れる。具体的に言えば、この例では、賢い者1号は値段を決める権利を持っているのだ。

それで、物事が好転し始めたのである。後援隊は、物資を得るためには、相手側に興味のある物品を交換に提供しなければならないことに気づいた。そうして、後援隊は、もう建材だけを扱うことはなくなった。食べ物、飲み物、洋服、日常用品……他の惑星が興味を持つようなものは、すべて買うようになったのだ。売買をするにつれ、商売が大きくなるにつれ、賢い者2号の東方啓行はあることを考えた。現在、全宇宙でこのような商売をしているのは自分たちだけなのだから、そろそろ独自のルールを導入してもいいのではないだろうか。

——こうして、星間通貨が誕生した——

今からおよそ770琥珀紀前、ルイス・フレミングと東方啓行は、後援隊の再編成を発表し、スターピースカンパニーを設立することを宣言した。それと同時に、スターピースカンパニーは宇宙共通の通貨を発売した。信用ポイントである。それ以来、すべての星の人々は、自分たちの特産品と引き換えにいくらもらえるかを心配する必要がなくなった——全ての価格が決まったからである!カンパニーから信用ポイントをもらい、その信用ポイントを使ってカンパニーから商品を購入する。取引は、カンパニーが管理する三者間市場を経由せず、カンパニーと直接決済されるようになった。買う側にも売る側にもあまり変化がないように見えるかもしれないが、官跡継ぎにとっては大きな利益が生まれている。

買い手と売り手の資産の流れに停滞が現れた。

——そして、停滞は固定資産の登場を意味する——

この何兆もある資産は、カンパニーの信用ポイントという形で静かに隠されていて、あっという間にスターピースカンパニーの懐を満たしたが、その懐は底なしだったのだ!こうしてスターピースカンパニーは、星神のために物資を調達する小さな組織から、宇宙最大の勢力になったのである。

注目すべきは、これだけの成功を収めても、カンパニーは当初の設立の理由を忘れていないことだ。現在、同社が蓄積した約800琥珀紀分の建築素材は、星神クリフォトの周りの惑星を埋め尽くし、その量は今も増え続けている。星神はそのことに対して何も言わない、何かを贈るつもりもない、それでもカンパニーの態度は変わらなかった。

これが信仰である。

「ヘルタ」恋愛詩

スタッフであるロキ・マルティネスが想い人に向けて書いた詩。

その1

リリー、俺のリリー。
どうして君を愛してしまったのだろう?
君の白いスカートに裾は、
地面へと降り立つ鳩のように、
この心を惑わせる。

ロキ・マルティネス

その2

ヘルタを離れた君は、羽のように軽くなり、
豊穣の肌の上で、踊っている。
この心も同じようにステップを踏む。
星核も一緒に跳ねて、星軌を塞いでしまった。

ロキ・マルティネス

その3

巨大な環と星々の他に、宇宙には1人の女性がいる
彼女は俺を問いただす。一生俺を問いただすのだ。
その答えは、ブラックホールのか細い縁に落ちている。
彼女の目は雲のため息、
ブルーは孤独によって俺の名前となる。

ロキ・マルティネス

ヒーラの人物脚本

ガン・コルノレフが創作したヒーラの人物脚本、その動機は謎に包まれている。

ガン・コルノレフ執筆

【ヒーラの人物伝記】

ヒーラ・ノヴァ、「ヘルタ・銀河法政課」のガイド、宇宙ステーションの名もなき法政課スタッフ二人の愛の結晶。両親は故郷の星ミルアットを守るため、「絶滅大君」を阻止する行動に参加し、命を落とした。出生以来、ガン・コルノレフが親代わりとして彼女を育てた。正統で完全な「正義」の教育を施されており、法政課の気骨を広めることを己の責任とする①。

言動端正、温和穏当、不公平に対して過激にならず、暗闇に対して悲観にならない。②定期的に宇宙ステーションで道徳に関する「思想実験」を行う。

注釈:
①彼女の本当の人生と比べたら、このような杜撰は非常に虚弱で粗悪。
②彼女の行動原則は、きっと後世に受け継がれていく。

【ヒーラの日常会話】

1.(微笑んで)知りたいのでしたら教えましょう、私の名前はヒーラ・ノヴァです。
2.(優雅に)私は一介の法政課のガイドです。ステーションのお偉方が定めたルールを他のスタッフたちに通達する事が私の務めです。
3.(情熱的に)私は私の全てを法政課と正義に捧げます。私の健康、私の夢、私の最も熱烈な感情も。
4.(悲しく)私は…生まれてから一度もこの宇宙ステーションを出たことがありません。そうですね、私の魂が…銀河に帰すまで、私はここを離れません。

自白書

ガン・コルノレフが宇宙ステーションでとある謎の実験を執り行ったため、書き残した陳情、自白書。

自白書
ガン・コルノレフ執筆

僕がまだ若かりし頃、その抑えきれない研究の原動力には幾つかの重要な源があった。生まれつきの好奇心、現実に汚された事のない素朴な価値観、子供時代と故郷の消滅に何もできなかった苦痛。

これらの複雑な感情が僕を押し続け、一冊、また一冊と銀河の正義、星の歴史、邪悪な勢力に関する本を書き残した。僕はそれらの中で混沌の秩序と宇宙の明日を議論し、一時期は銀河の過去、現在と未来は全て僕の胸の中にあるとさえ思いあがっていた……あの事件が起きるまでは…思い知らされたよ、僕は到底、一介の研究者に過ぎないと。現実が起こる時、僕では人の命を塵芥のように扱う強者を阻止できないし、風に散る弱者も救えない。

だから、キャリアの後期では、僕はもう正義を探求しなくなった。正義、力のない者にとって、それは贅沢すぎる言葉だ。この命が尽きる前に、僕はステーションでとある実験を行おうと計画した。そしてアスター所長はそれに同意した。

この実験はできる限り誰にも迷惑をかけないようにする——、合理的でない事は承知している、故にここで罪を自白する——それは、僕が正義について執拗に思索する事を止めたという、思想の転換で発生したささやかな付属品で、ただ、僕の小さな、小さな願い事を叶えるためのものだ。

アスターの家信

アスターが家の老輩とやり取りした手紙、何故かそれぞれの言い分の押し合いになっている。

※金付けされた一族の紋章がある便せん、とても高貴に見える、だがはっきりとしたシワがゴミ箱に投げ捨てられた過去を語っている※

「一通目の手紙」

アスター

曾祖母の容体が悪化した、速やかに帰れ、急を要する。
バーリント

「二通目の手紙」

親愛なる姪、アスター

二番目の兄が手下を病室の前に配置した、私と君の従妹たちは何度も試したが、近づけなかった。前日オンライン会議で彼と口喧嘩したのだが、何を言おうと、病院の方と連絡は取らせてくれない、曾祖母の方はどうなっているか全く把握できない状況だ。君のお父さんはまだラギモルトから戻っていない、私がメッセージを送っても返事がない、どうなっているのかわからない。

バーリントの奴は…恐らくスターピースの利益が欲しいのでしょうね、曾祖母に手を出すような真似はしないでしょう。曾祖母の事は心配しなくてもいいわ、全星系で最高の医療資源をここに集めているから、大事にはならないはずよ。
でも、私はあなたが心配なの、女の子一人で外に出て、星の軌跡とやらを考察するだなんて、やっぱり安全じゃないわ。バーリントの奴は段々待ちきれなくなったみたいわ、あなたを傷つけるような事をするか心配だわ。あなたの方も、信頼できる安保チームでも雇いなさい、でないと…いえ、大丈夫だわ、あなたのスケジュールを見てみたのだけれど、今あなたに最も近い惑星は████で、座標は████、あそこには私名義のスターピースの子会社がある。そこであなたのために精良な安保チームを用意しておいたから、直接向かえばいいわ。

それと、しっかりと覚えておいて、バーリントが何を言っても信じないで、奴に気を付けて!
あなたを愛している、テイラーおばさん

「三通目の手紙」

アスター

毎日お前の望遠鏡やら星やらをいじくって、自分が何者なのか忘れたのか?曾祖母がお前の名前を何度も口にしている、早く帰って来い!

バーリント

「四通目の手紙」

お嬢様

お忙しいところ恐れ入ります!
お嬢様は近日スターピースカンパニーが惑星████で投資した█████グループを訪問し、現地時間午後5:31に株式の譲渡協議書にサインをしましたか?

本基金は昨日の朝にこの書類を受け取ったのですが、確認すると、この書類の発信源はお嬢様の過去三カ月の常用地点ではなかったため、プロトコルを中止しました。

具体的な情報は二日以内に、グループの法律顧問が連絡しますので、通信機の着信に注意してください。

信託基金委員会理事、ギルソン

「五通目の手紙」

娘へ

お父さんの方は連絡が取れたわよ、突然磁気嵐が発生して、通信設備が全部ダウンしたそうよ。あなたはまだ流れ星の軌跡を追っているのかしら、忙しくないのなら一度家に戻ったらどう?ここの所、家では波乱が起きてね、平和じゃないの、特にテイラーおばさんには気を付けるのよ、信託基金から報告があってね、彼女があなたの株式譲渡協議書を偽造していたのよ、でもあなたが承諾しなくてよかったわ…はぁ、とにかく詳しい事はあなたが帰ってからにしましょう。

そうだ、お金は足りているかしら?先月の明細書を確認したんだけど、確かあなた、観測艦隊を雇ってフィールドワークに行くって言ってたわよね、なのに出費がこれだけ?もしかしてお小遣いはもう使い切っちゃったの?ああ、私の可愛いアスターちゃん、お金を節約するために自分をこき使っちゃだめよ、お金が足りないのならお母さんに言ってね。
あなたを愛するお母さん

アスターのショッピングリスト

アスターが寰宇でした買い物をまとめたショッピングリスト、意外なことに、受取人はアーランである。

敬愛なる終身高級会員「アスター」さん:
宇宙佳品をご愛顧頂きありがとうございます!
お客様の注文「239123**********」は、既に人員を特派し配送を開始しました、いつでも注文状態をご確認ください!お客様がお選びになったのは「ネット決済」です。実際の出荷情報は荷物に付属している紙質の発送リストをご確認ください。複数の注文がある時、分割して発送する場合がございます。注文詳細は「注文履歴」に記された情報に準じます。お客様はいつでも該当画面で注文の変更などの操作を行えます。

「注文番号:239123**********」
「アドレス:『ヘルタ』宇宙ステーション、座標*****、*****」
「受取人:アーラン」

本注文には荷物が1つ含まれています。詳細リストは以下のように:
1.ブランド独占生鮮食品:フルーツ味「すくすく伸びる」シリーズ高カルシウム還元牛乳 10箱×1箱20瓶 常温保存

2.ふわふわクラウド 加厚型暖絨真空圧縮保温布団「寮ベッド/シングルベッド適用」 青色星柄 1枚

3.秘蔵再販七部合集:『砕星の刃:銀河汎用大剣図鑑』

4.隕鉄製防具5件セット:ヘルメット、グラス、ボディアーマー、グリーブ、籠手を含む

5.カスタマイズ特注:ウェポンインターフェース専用!無線型外用特大容量落下耐性放射能遮断携帯式移動電源 おまけ:充電ドック×1個

アスターと「ビジネスエリート」のやり取りメール副本

アスターが「宇宙高エネルギーメタバース空間」を発明した「ビジネスエリート」とのやり取りメールの副本。

※プリントしたメール内容、最後にアスターのサインと「防衛課情報安全部に通報し全部ブラックリストに入れて」と書いてある※

「既読メール」
受取人:アスター@ヘルタ宇宙ステーション
差出人:リオン@銀河無限エネルギーグループ
メール内容:

最も見識があり、最も夢があり、最も潜在力のあるアスターお嬢様:

こんばんは、私は以前貴家が開いた慈善パーティで貴殿にお会いし、自己紹介もしました。しかしながら私は理解しています。偉い人は一々人の些細な事など覚えておれないものだ、貴方ほど高貴な出身で、豊富な学識を積んだ聡明な女性ならなお更でしょう。

ですので、ここでもう一度自己紹介させていただきます。ふふ、貴方が噂通り、慧眼の持ち主である事を願いますよ。

私はリオン、銀河系成功企業家協会の創始者、銀河無限エネルギーグループCEO、宇宙高エネルギーメタバース空間のブランド設立者です。過去十年に渡る辛勤な研究の過程で、私は幸運にも夢の中でとある匿名の「天才クラブ」メンバーの指導を得たのです。夢から覚めると、宇宙高エネルギーメタバース空間の開発に成功したのです。私はかつて貴グループに宇宙高エネルギーメタバース空間の共同事業計画書を送ったのですが、貴グループの提示価格は残念ながら私の予期に達しませんでした、その結果、貴殿と共に事業を興す素晴らしい機会を失ってしまったのです。

しかし、私は成功企業家協会の創始者です。本協会の膨大な人脈ネットワークを通して、熱心な会員が私に貴殿のメールアドレスを教えてくれたのです。私が思うに、貴殿はこの百年間、各名門の継承者の中で最も天賦に恵まれたお方です。そして、私も貴家がスターピースカンパニーに与える影響力を認識しています。ですので、私は僭越ながら貴殿を招待し、共に新事業を興そうと思います。貴殿のような高貴な出身で十分な潜在力を持つ若き秀才であれば、私の天才的な発明——宇宙高エネルギーメタバース空間が、貴方の伝説的な人生に最も輝かしい一筆を添えると理解できるでしょう。

(事業計画書の詳細は添付書類を確認してください、私が受け入れる価格は——貴殿が投資し、権利株の配当は、私が6割、貴殿が4割。このような好機は一度しかありませんよ!)
リオン

「送信済みメール」
受取人:リオン@銀河無限エネルギーグループ
差出人:アスター@ヘルタ宇宙ステーション
CC:ニーナ@スターピースカンパニー セキュリティセンター データセキュリティ部門
メール内容:

私は長年の研究の経て、宇宙の中で前人が発見したことのない新しい物質を見つけたの——なんと宇宙にはペテン粒子と言うタキオン粒子が存在するの。

ペテン粒子は正常な生命体の周りを回りながら高速に回転し、メタバース世界を構成する物質の基礎となる。外界の高エネルギー概念の持続的な刺激の下、ペテン粒子は高エネルギーの励起状態になる、暫くすると失活し、低エネルギー状態に戻る、と同時に信用ポイントを刈り取る。

でも残念ながら、宇宙にはとある反粒子が存在し、常にペテン粒子に囲まれている。最終的に、反ペテン粒子は自身のエネルギーを放出し、ペテン粒子の正原子価形態を剥奪し、それが湮滅するのを見届ける。

あいにく私はその反粒子を発見した者よ、私の所まで騙しを働きかけるだなんて、とんだ無知ね。

「反ペテン粒子」理論提唱者-アスター

アスターの機材仕入れ契約書

アスターが宇宙ステーションのため、自腹で購入した研究器材の仕入れ契約書、何故か謀をする者の手に落ちてしまった。

契約番号:27149号
項目:特注機材仕入れ

甲(仕入側):アスター
乙(サプライヤー):スターピースデンキ

一 仕入れ内容:
1.特注サービスタイプ磁気浮上式小型ロボット 宇宙ステーション特注版 3組×6個{Img#1}
2.特注探索器「リチャード」・Ver.0.63・マスタークラス・リミテッドエディション 充電ドック付き 10組×10個

二 品質要求:
銀河共通検査測定標準<10086>号及び甲が定める特注要求を満足する事

三 決済方式及び期限:
決済方式:オンライン決済
決済期限:代金引換払い

四 納品先及び期限:
納品先:宇宙ステーション「ヘルタ」 アスター、座標*****,*****
納品期限:甲が注文してから15営業日以内

五 検収方式:現場検収

甲(押印):
氏名(署名):

乙(押印):スターピースデンキ対外営業専用印鑑
氏名(署名):チャーリー

【本ページは2ページ目です。押印、署名完了後にカンパニーのプラットフォームにアップロードし、第三者の審査、検証を受審してください】

『ホーム用探索器』アフターセールス

「ホーム用探索器」の生産会社が顧客のアスターに宛てた返信、何故か良からぬことを企む者の手に落ちてしまった。

親愛なる終身高級会員「アスター」さん:
宇宙佳品をご愛顧頂きありがとうございます!
お客様の注文「1659851**********」の配送状況が更新されました。調査によると、運輸中に荷物を紛失した事により、予定した時間内に配送先まで荷物を配送できませんでした。

お客様が注文した商品を補填いたしました、しかし物流が反物質レギオンなどの不可抗力の影響を受けているため、15営業日後にお客様のアドレスに到着する予定です。

アドレスの変更や返金が必要の場合、いつでも専属カスタマーサポート「営業番号10000」にご連絡ください。

物流検索ルート:宇宙佳品——私の注文履歴——配送情報。いつでも注文の状況をご確認ください!

「スターピースデンキ」はこれから管理体制とリスクマネジメントを増強し、お客様により高品質なサービスを提供します。此度の不備、誠に申し訳ございませんでした。

付録:
注文情報をご確認ください:
【注文番号:1659851**********】
【アドレス:宇宙ステーション「ヘルタ」、座標*****、*****】
【受取人氏名:アスター】

本注文は商品1種類、荷物計10個を含みます。荷物リストの詳細は以下の通りです:
1.ホーム用探索器「リチャード」シリーズ・「リチャードくん」・Ver.17.93・高級特注版・デラックスエディション 充電ドック付き 10組×10個

星域界種要旨:ヨートン体

界種課の研究ファイル、宇宙にも珍しい無機生命体 ヨートン体の資料が記されている。

星域界種ナンバー:無機#27

界種学名称:ヨートン体

銀河別名:電光巨人、輝星多面体、息吹の地の巨礫

分類:無機生物界-ケイ素生物網-偏晶目-岩巨人科

研究概要:

ヨートン体の故郷は狂風が吹き荒れる惑星です。
言い伝えでは、通り過ぎる嵐は全てを滅ぼし、堅牢な生命のみが風の中で立ち続けられる。

この種族の生命形態は透明な水晶体です。内部には思考偏晶と呼ばれる論理中枢が存在し、その思考器官が発する電気信号でコミュニケーションを取っています。
それ故、その言語、思想、歴史は全て知られていません。

機械戦争時代、ヨートン体は一時期機械種族の最も忠実な下僕でした。
戦敗後、有機生命体が連合して清算にかかり、種族は絶滅しました。
ヨートン体は死亡すると純粋な鉱物となり、病はその体内で鮮やかな色彩となって残ります。
そんな訳で、現在の惑星ヨートンは千の風が吹き通る百色の星となっています。

戦火が鎮まり、その君主制の歴史を象った王族の冠だけが遺り、声なき風に埋もれてしまいました。

関連奇物:

耐えられぬ重さ

当ステーションに収容されている奇物で、一見水晶がちりばめられた冠。
実はケイ素系生命ヨートン体の王族の冠で、その君主制歴史の生きた化石。

崩御したヨートンの統治者は、
その論理中枢を取り出され、この歴代皇帝の思考偏晶によって作られたこの冠にはめ込まれるのです。

ヨートンの生命体は、この冠が統治者に代々受け継がれてきた知恵を与えると信じています。
そのため、ヨートン族の統治者は常に揺るがず、美しいのです。

ここ数琥珀紀で提起された予想では、この冠にはヨートン体の種族の記憶と基本細胞が含まれており、
冠を冷月の輝きの下に置けば、その秘められた歴史に触れられると。
そしてかの星神からの生命の火があれば、この滅んだ種族は蘇ると。

【録音テープ】風刺劇:禍祖は昔日の恨みを負い、愚者は剣を振るい金身を斬る

カセットから変換した戯曲の台詞、これは一部の年寄りスタッフが愛聴する風刺劇。

※録音テープは清潔無垢なプレーヤーにはめ込まれている、スタッフの清掃がいかに丁寧だとうかがい知れる。
再生ボタンを押すと、静寂な深空からテープが空回りする音が響く。
突然、拍子木が打ち鳴り、扇子が風を破る、紆余曲折な歌声が遠くから流れてくる。※

故国、陽が消え陰が増す、天罰至る所皆亡き者と化す。
只一身で神の光を斫断し、寰宇の天象を破った。

今日はこのお話をしましょう。禍祖は昔日の恨みを負い、愚者は剣を振るい金身を斬る

お座りの皆さんは知っているでしょう、この千の星が輝く宇宙には、
下界を気にもかけない星神が超然の地に居座っている、
そして愚鈍の信徒を啓蒙する七柱の神もいる。
信徒の祈祷の中から、壊滅の英名が時折聞こえてくる、
聞いて見てください、この二文字に宿る天地を崩壊させる神威は暴虐な信徒を導くのです。
蝗害が大地を覆うように、悪犬が太陽を喰らうように、それが銀河を脅かす壊滅のレギオン、
そして万物寂滅の化身——燼滅禍祖、
誰かが驚いた声で聞く:燼滅禍祖?何それ?
小声で答える人:何かの隠語だろう?レギオンと関係あるみたいだ。
他の人:先生は仙舟から来たんだ、きっとあっちの言い方だよ、勿論——
勿論、多くの世界ではナヌークと呼ばれています。

この軍団はブラックホールを炉とし、陰陽を炭とし、万物を銅とし、
燼滅禍祖とその麾下の絶滅の大君の号令を受け、極寒の星を鍛えるのです。
でもあ奴らはどこから来たのであろう?曰く、宇宙の洪荒。
何のために来たのであろう?それは私にも知らない。
嘆息せんのみ、禍祖の神威に匹敵する者おらず、向かうところ敵なし。
怒髪せんとも、星間の合縦連横は打算が絶えぬ。

鎧袖一触の銀河連合軍に相対し、その至高の行刑官はようやく思い出す
不義であろうとも、強大な力を持つ力に支配されていた故国を——
其は万を超えるヴォイドレンジャーを集結し、過去に答えを求めようとしました。
だが意外な事に、道の途中で星門を守る名も無き愚者に行く手を阻まれた、
彼は天と地を破る細身の剣を振るい、敏捷に攻撃を避けながら、隙を見つけては反撃に出る。
池の中にあっても捉えられない魚のように、刹那の瞬きで地平の彼方へ飛び行く流星のように。
燼滅禍祖はその者と七昼夜鏖戦した、
そしてようやく神体から金の血が汨々と流れ出る。
この一戦が、その癒えぬ傷の由来なのです。
座席から驚きの叫び:ホントに!?新人スタッフをからかっているんじゃないよな!
防衛課スタッフが注意する:静かに!先生のお話を妨げないように!

その瞬間、時空が転倒し、星辰が劇変した、
傷を負った禍祖は遁走し、軍団は散り散りに逃げ出した、
銀河の一隅から見物していた衆生はこのような光景を見た事あろうか?
皆わぁわぁと押し寄せ、その血筆金花を無上なる神託と見なし、
血蜜酒を造ろうと盗みを企み、
軍団の神力を削ごうと破壊を目論んだ。
突然誰かが叫び出す:そう、そう!それ聞いたことあるぞ!確か銀河のどこかにある酒屋で、そこのメニューにその蜜酒の名前があった。え~っと……
もう一つの声:ブラッドマリー?
幽々とした声:ち~~~がうよ!
もう一度当ててみる声:これだ、狂滅の紅炎!
また幽々とした声:お~~~それいいね!

しばらくの間、
星塵が滔々と銀河を渦巻いた、
そして愚者は笑いながら消え去り、衆生はまたいつものように駆けずり回る。
血筆金花を手に入れたお偉いさんたちの中に、
この宇宙ステーションから出立した者がいたのだ、彼は外で名を広めたがずっと里帰りしていなかった。
彼が帰ってくると、研究者たちは皆彼に敬服し、歓迎した、だが挨拶をすると、
その者は豹変し、災いが起ころうとなった——
はっ、この後いかがなりまするか、それは次回のお楽しみに!
観客席から一陣の騒動が起きる:
──これで終わりなの?全然聞き足りないよ!
──まさか反物質レギオンの侵入に繋がるのか…これって写実主義文学だったのか?
──もう騒いでないで、早く先生に見物料払って!次を聞くわよ!
──何が次だよ?デタラメばっかりで最後はこんなオチ、どう見ても終盤で爆死するって。さぁ去った去った!

メンテナンス課の知られざる秘密

メンテナンス課の手書きメモ、課の「知られざる秘密」を記している、宇宙ステーションが襲撃された時に紛失した。

※ぐしゃぐしゃな紙、様々な筆跡がそれがメンテナンス課での人気を証明している※
メンテナンス課の知られざる秘密、決して漏洩しないように!

「万能話術」
(丁寧で温和な口ぶりで、できない時は深呼吸2回)お待たせいたしました、再起動をお試ししましたか?

「よくある問題の効率的な返答案」
コツ:修理の三大解決案、再起動、再インストール、設備交換!

1.設備に反応がない?
答:再起動再起動もう一回再起動、するとすぐに反応が来ます。
※(荒い筆跡)法政課の奴、再起動させた後にまた反応がなくなったってオレを呼び出したんだ、確認したらこいつ何百個ものプロセスを同時に実行してたんだぜ、呆れるわ!※
※※(繊細な筆跡)この方案は負荷が高すぎる場合に適用します※※

2.再起動に失敗した時は?
答:電源を切ってから放電してください、放電が終了したらもう一度再起動してください。
※(荒い筆跡)注意、放電中はあいつらをちゃんと見張ってろよ、いつも自分の手をコントロールできない奴が出る、何で知ってるかは聞くな!※

3.設備がずっとブラックスクリーン状態?
答:電源を入れましたか?入れてないのならば充電してください、それでもダメでしたら設備を交換してください。
※(繊細な筆跡)昨日密巻課スタッフの設備検査を手伝っていた時、相手はずっとスクリーンが壊れたと言い張っていました、しかし検査の結果ハードはオールグリーンでした、ただ電源が入ってなかっただけなんです。本課の後輩諸君もこの教訓をしっかりと覚えておくように。※
※※(無力な筆跡)この項目に追加します:電源をチェックした後は、相手が電源スイッチを間違えているかどうかもチェックしてください……※※

4.データロストしたらどうする?
答:端末に自動バックアップがありますので、慌てないでください、先ずはバックアップを確認してください。
※(繊細な筆跡)注意:権限レベルが高いデータは所長に申請する必要があります。バックアップファイルは許可が下りないと閲覧できません※

宇宙ステーション健康診断に関する通知

医療室に貼られている、スタッフの健康診断に関するお知らせ。

同僚の皆さんへ

宇宙ステーションの発展に尽力してきた皆さんに感謝いたします。皆さんの健康を守るために、本年度の健康診断を開始します。

「レギオン」の侵入がもたらした影響は徐々に鎮まっています。宇宙ステーションの同僚達により便利な医療サービスを提供するため、事件後のメンタルケアも兼ねて、医療課が新しい健康診断サービスを始めました。通常の健康診断項目以外にも、心理課のカウンセリングとメンタルヘルス関連サービスを全面的にアップグレードしました。

未だ機能を回復していない施設があるため、医療室の収容人数には限りがあります。合理的に医療資源を分配し、心地よい受診環境を提供するために、同僚の皆さんには予約してから健康診断を受けてもらいます。

「予約方法」
1.端末で予約:ステーション内の端末を使い、「宇宙ステーション『ヘルタ』 スタッフシステム」にログインし、「医療室」画面で予約してください。
医療室で予約:年中無休、医療室の受付で当番スタッフのガイドに沿って予約してください。

「注意事項」
予約に成功した後に、予約成功のお知らせが届きます。どうか時刻通りに医療室へ向かってください。
予約をキャンセルする場合、少なくとも「ヘルタ」システム時間の2時間前に、「宇宙ステーション『ヘルタ』 スタッフシステム」でキャンセル操作を終えてください、または医療室の受付でキャンセルしてください。
予約をキャンセルした後、いつでも次の予約を行えます。

「結果の確認」
1.健康診断の電子報告書は「ヘルタ」システム時間36時間以内に生成されます。報告書が生成されると、ヘルタ・全景システムからのお知らせが届きますので、診断後にご自分の端末で確認するのを忘れないでください。
2.健康診断の結果に疑問がある、または相談が必要の場合は、身分情報の照合が必要なため、必ずご自分のスタッフ証をお持ちください。

健康診断の項目に疑問がございましたら、「宇宙ステーション『ヘルタ』 スタッフシステム」から医療室の当番スタッフまでご連絡ください。

宇宙ステーション紹介ハンドブック

訪問者のために用意した宇宙ステーションの紹介ハンドブック。

旧版:
(ミス・ヘルタが自ら執筆、デザイン問題のため、配布を一時停止しています)
宇宙ステーション「ヘルタ」へようこそ!
もし、あなたは生命の辺境を探索し、定位できない宇宙の何処に到達したのならば。
もし、あなたは義と理を明白にする弁論に、絶対の答えを求めているならば。
もし、あなたの宿願は銀河の本源を映し出す事ならば。
もし、あなたは既に符号と書物の底見えない渦巻に溺れているならば。
もう一度歓迎しましょう、宇宙ステーション「ヘルタ」へようこそ!
ここの知恵と答えは数多の未知と新奇の中央に潜んでいる、そしてあなたは小さな鍬を手にして、日々思い焦がれる答えを発掘するのよ。
——でも、このように精彩な体験をしたいのなら、まずは最も簡単な前提を満たさなければいけない:小さな小さな研究スタッフになること。もしこれを読んでいるあなたはただの宇宙愛好家なら、残念、あなたの探索の旅は始まりと同時に終止符を打たれました。接待ホールでの見学の旅を大切にしなさい、もしかしたら、今があなたの短い人生の中で最も知恵に近い時なのだから。

新版:
(アスター所長が自ら執筆、ステーションで正式に流通しているバージョン)
宇宙ステーション「ヘルタ」へようこそ!
宇宙の秘奥は多くの学者がその一生を費やして探索する議題。それはどのような言語を使ってでも表現できないほどに複雑かもしれないし、簡単に手が届く物事に隠れているほど普通かもしれない。そして星系の中に入り乱れる命あるものは、共に「文明」という名の美しい造物を築き上げた。

それが残した線を追う時、私たちは発覚した、全ての方向は常に一つの導きの星を指していると。それは美しく、魅力的で、数多の知識の追求者が真理の一角を一目見るために一生を捧げた。そして宇宙ステーション「ヘルタ」は、この導きの星を探索する道に建てられた庇護の回廊よ。

私たちは没落した楽章の残篇を拾い上げ、光り輝く時代の盛宴を再現する。私たちは未知なる科学の核心に迫り、文明が育んだ知恵の結晶の光を目撃する。学者たちは己を1隻の小舟にして、浩瀚な銀河の果てを目指すの。そして、彼岸で沈黙する答えが、私たちの前進に対する鼓舞となる。

貴方が宇宙ステーション「ヘルタ」で、未知の魅力と求知の楽しみを味わえるように!
見学申請:公式サイトの申請テンプレートを参考にしてメールを送信してください、見学期日はこちらで手配します。申請人数が多いため、あなたの申請は180営業日後に返信いたします。
見学可能区域:宇宙ステーション「ヘルタ」-宇宙エレベーター、宇宙ステーション「ヘルタ」-接待ホール
特別注意事項:お客様の見学時間は30分間までです。実験、作業区域の見学はできません。

ヘルタコレクションルーム使用規則

ミス・ヘルタが定めたコレクションルームの使用規則——このコレクションルームを使用できるのはミス・ヘルタのみだが。

※使用者はヘルタただ一人だけど、彼女は規則を制定した※

1 コレクションルームは奇物を保管する重要な場所、当コレクションルームの関連人員でない者は、許可なくルーム内に進入またはルーム内のあらゆる物品を使用することを禁じる。もちろん——許可があっても、ミス・ヘルタにはいつでもそれを撤回する権利がある。

2 コレクションルーム内部の物品は専門の人員を当てて管理するべき、貸出展示または貸出研究を許可された物品は、創始級スタッフの全行程の監督、指導の下使用すること、そして操作規定を遵守すること。

3 コレクションの展示許可評価はミス・ヘルタが一人で完成すること、そしてミス・ヘルタはいつでも評価の結果を変更、調整できる。

4 コレクションが周囲に消極的な影響をもたらすものである場合、必ず防護措置を強化すること、安全の保障がないと判断すれば、厳重性を考慮し実験を停止するべき。コレクションが周囲に積極的な影響をもたらすものである場合、必ず防護措置を強化すること、増益効果が漏洩し、愚か者が祝福されることを避けるべき。

5 コレクションルームを離れる時、必ずミス・ヘルタ及び防衛課の関連スタッフに告知すること。そして、あらゆる盗聴、監視などの機能を備えたソフト、ハードウェアをコレクションルームに残すことを禁じる。

6 上記の規則の最終的な解釈権はミス・ヘルタに帰属する。

研究報告:ヨートン水晶体

とあるスタッフがヨートン水晶体に対して行った学科を跨いだ実験。
残念ながら、スタッフの不注意でサンプルに問題が生じ、最後に得たのはトイレットペーパーにも等しいゴミ報告。

題目:ヨートン水晶体の内部電気信号交流のメディア・リテラシーの特質に関する初歩的な分析
報告人:星域界種課I級スタッフ
報告ID:04890
報告本文:

ケイ素世界惑星の生命体は私たちに新たな情報伝播のルートを示しました、ヨートン水晶体内部の波紋がそれを証明しています。本稿はヨートン水晶体の影印体に注目し、探索しました。

接触の方式で信号を伝達することを防ぐため、実験者は3枚の異なる個体の水晶体を、3つの真空容器にそれぞれ入れました。そして実験体1号の水晶体を電流文字センサーに接続し、予め入力した情報をインプットしました。その情報には5つの重要な点があります。そのうち4つはヨートン王族の正史であり、残りの1つは王族にまつわる野史です。

情報の伝達後、実験者は3枚の水晶体を同一の環境に置き、24時間静置しました、同時に3枚の水晶体の電気信号を監視しました。データによると、実験体1号が最初にヨートン王族の正史に関する情報を1つ提起し、2号と3号がそれに対してポジティブな反応を示しました。そして、実験体1号は王族の野史をシェアし、実験者がインプットしていない詳細情報を自発的に補足しました。それらの情報を受信し、2号と3号の内部電気信号の幅が大きく振動しますが、3枚の水晶体の電気信号はすぐに同期していき、高度な同調状態を表しました。ここに水晶体の交流内容の一部を示します。

1号:ミルシスフィンクを知ってるか?
2号:誰?
1号:私も噂を聞いたぐらいだが、そのミルシスフィンクという者はヨートン三世の腹心だったようだ……
3号:三世の腹心はロスワンでしょ?あいつは知恵者で有名だったよ!
1号:だから噂だと強調した!ロスワンは表面上の手足で、ミルシスフィンクは真の腹心なのだ!
3号:え!?そんな事ないよね?本当だったらロスワンが気付かないわけないでしょ?
2号:ロスワンはそれに気づいていて、ワザと口にしなかった可能性も……
1号:もしかしたら、ミルシスフィンクは三世の腹心だけではなく、ロスワンの……
(筆者注:インプットした情報にこのようなディテールはありません、これは1号が自ら捕捉した情報です)
3号:何てことだ!そんなの荒唐無稽すぎる!でも確かに王族がするような事だし……

以上述べたところをまとめて、実験者はヨートン水晶体内部の交流にも主観的な感覚と客観的な認識の差異が存在すると考えます。そしてその差異は炭素生命体に相似する可能性が非常に高いと推定します。更なる研究の許可を望みます。

返答:この研究の価値と合理性を否定するつもりはありません、そしてあなたが優秀なスタッフであることを信じています。でも残念ながら、あなたが使用したヨートン水晶体の影印体はトランスコードの際にエラーが起きているのです——とあるスタッフがエクスポート中に誤操作してしまい、自分の脳波も同時にアウトプットしてしまったんです。しかし、この報告は無価値ではありません、この報告を通して、私たちはスタッフのメディア・リテラシーに対して注目する必要があると認識しました。

不完全な録音を自動文字変換したファイル

反物質レギオンに侵攻される前に、奇物を研究する2名のスタッフが残した実験中の音声、このファイルは録音から自動変換したもの。

録音自動変換の結果:

「……」(雑音、恐らく回路の接続に問題があるのだろう)

「024号、前回の実験でも伝えたはずよ、この設備には問題がある」

「289号、上司面するな、私たちは同じジュニアスタッフだ」

「私と同格だと思っているのなら、あなたはまず自分の手を端末のキーボードから3センチも離れている場所に置くことを許さないでしょう。それと、もう一つ忠告してあげるわ、操作規範で定められた安全距離は10センチまでよ」

「あなたが無事この年まで生きていられるなんて、以前生活していた星の文明レベルはさぞ高度なものだったのでしょう」

「それを言うなら、私たちの出身はかなりかけ離れていたようだな、君の荒々しさと物忘れの加減を理解できた。289号、ピンセットをくれ。これは1本の髪の毛のようだ」

「……(足音と道具がぶつかり合う音が聞こえる)ピンセットよ、指を刺さないでね、シンデレラさん」

「今回の実験は収穫を期待できそうだ、この毛髪は綺麗な赤褐色だ。それと、シンデレラは糸車の針に指を刺された」

「289号の童話授業が始まりますよ、主役は赤褐色のゴリラ。そのゴリラは生前、このタイピングマシンを使い多くの感動的な童話を創作しました……」

「(大きな物音)024号、手伝わなくてもいいけど、騒音を起こさないでくれないかしら?」

「騒音?君の『童話授業』の事か?」

「(何かがぶつかり合う音がより明らかに伝わってくる、壁から引きずった音が聞こえる)024、最後の警告よ、でないと成果報告の時に、あなたが今日どれほどトラブルを起こしたか訴えるわよ」

「289号、私に濡れ衣を着せるつもりか?どうせ君が変な音を起こしているのだろう!」

「おかしなことを言うわね、私はあなたみたいに遊んでいる暇なんてないの。それこそ反物質レギオンがステーションに侵入したと言った方が信憑性があるわ!」

「はは!それは一度体験してみたかったんだ!ちょうどレギオンに加入して君を串刺しにできるしな!」

「024号、あなたの知能指数が低くなかったら、過去数回のバリア識別端末の侵入記録をあなたの仕業だと疑う所だったわ」

「……(金属がぶつかり合う音が段々と大きくなってきた)」

「行動力あるじゃない?024号、そのナイフはどこから持ち出したの?まさか収容部分から盗んだものじゃないわよね」

「…289号、これはわたしのナイフではない」

「……」

「……」

「助けて!!!!!!」

録音ファイル分類:#反物質レギオン# #傷害未遂# #実験失敗# #低レベル# #ゴミ音楽#

バリア識別端末の攻撃記録

反物質レギオンに侵攻された後、宇宙ステーション「ヘルタ」のバリア識別端末が記録したエラー報告。侵入された後、スタッフ エイブラハムはこっそりとここにメモを残した。

※この間宇宙ステーションが受けた攻撃の記録を全てここに記す※

攻撃記録:

記録000237:デブリが応急部分の外部電離網に衝突、システムによる自動修復完了、フィードバックの必要なし。
記録000238:18号巡行ルート、生命維持部分のレーダーが異常電波を検知、報告、防衛課に対処を要請。
記録000238 フィードバック:防衛課の確認によると、当該電波に異常なし、原因は奇物実験と判明。
記録000241:ベース部分-バランシング部分-ベンチレーター運行状態異常、風速が設定値の140%に増加、防衛課に対処を要請。
記録000241 フィードバック:ベース部分-バランシング部分-ベンチレーターの安定性が低下、一時停止した。
エイブラハム:このベンチレーターの杜撰な設計はステーションの不手際である。味方に対しては威張り散らすのに、外敵の前ではそよ風しか出せない!
記録000243:42号巡行ルート、ベース部分のレーダーが異常電波を検知、報告、防衛課に対処を要請。
エイブラハム:災い、災いの始まりだ。42号は災いの代名詞だ。もしあの時に斥力ブリッジを起動していたら、これ程の命が散る事はなかったのだろうか?はは、私は何をしているのだ、仮設か?白昼夢か?
記録000244:19号巡行ルート、収容部分のレーダーが異常電波を検知、報告、防衛課に対処を要請。
記録000245:2号巡行ルート、主制御部分のレーダーが異常電波を検知、報告、防衛課に対処を要請、優先度を<高>に変更。
記録000246:警告!ベース部分外部1号区域の電離網が正体不明の攻撃を受け、自動修復不可能。
記録000247:警告!ベース部分外部1号区域の電離網が無効化、自動修復不可能。システムは斥力ブリッジ起動のメッセージを自動送信。
記録000243 フィードバック:防衛課がベース部分に到着。
エイブラハム:若き青年たちよ、その時はまだファイアウォールの誤報だとでも思っていたのであろう!それが蝗害のような襲撃だなんて誰に想像できたか?はぁ…243号は彼らの命の終着点であり、災いの始まりなのだ……
記録000248:警告!外部からファイアウォールへの侵入を試みる行為を検知!システム防御レベルを<戦時状態>へ
記録000249:警告!ベース部分が正体不明の外部攻撃を受け、宇宙エレベーターのドアが変形。
記録000250:システムは全面防御状態を起動、全スタッフは速やかに避難してください!
エイブラハム:所長の指揮は見事だった、少なくとも、彼女にはこの災いが私たちに与えた悪影響を償おうとする意志がある。しかし私はよくこう考える。私は避難できず、あの野蛮な獣たちに踏みつぶされていたのなら…私を覚えてくれる人はいるのだろうか?
……
記録135298:ベース部分-72号実験室の外部廊下が崩壊。
エイブラハム:廊下が崩壊、薄っぺらい5文字だ。
記録135299:ベース部分-98号コレクション仕分け室のエネルギー供給が外部より切断、応急設備を起動し供給再開。
……
記録142854:反物質レギオン、第7波の攻撃-収容部分廊下の全エネルギー供給が切断、一部の部屋はショートが発生し開閉不可。
記録142855:反物質レギオン、第7波の攻撃-収容部分の宇宙エレベーターが損壊、入り口に爆発が発生。
記録142856:反物質レギオン、第7波の攻撃-ベース部分の24号廃物処理室が発火、スキャンの結果、生命反応なし、消火プログラムを起動。
エイブラハム:142856の次には必ず142857がある、バリア識別端末の数字が変化する度に命が散ってゆく。次は私なのだろう、だがその時はいつ訪れるのだ?
温明徳:権限を変更——エイブラハムのバリア識別端末記録閲覧権限を一時制限する。

スタッフたちの伝言のメモ

宇宙ステーションのスタッフが互いにメッセージを残すためのメモ帳、ステーションでの仕事と生活の些細な出来事を記録している。

その1

──くそ、なんでパスワードがまた更新されてるんだ?

──パスワードは██████です、お忘れずに!

──教養のない奴だ、パスワードを塗って何がしたい?他にも使う人がいるんだよ!

──だから今のパスワードは何なんだよ、誰か知ってるか?

その2

実験結果:無害、皆の友達に適している
実験データ:4.0~4.2
実験対象:精神状態良好
実験対象の状態:当該実験報告書を執筆中
実験者サイン:くそ、この研究員、名前を教えてくれなかった

その3

──もし自分の仕事を期限内に済ませないと感じたら、おめでとう、少なくとも君は外部環境への客観的な認識を保っているのだ!

──もし片付けられると言ったら?

──おいおい、僕のメモに勝手に返事書いた人は誰だ?

──ステーションの医療室って実は結構先進的なんだよね、それに費用はいつも「カンパニー」が肩代わりしてくれるし、お金を払う必要なんてないわ。だから、上のお二人さんに医療室で受診する事を真摯にお勧めします。

その4

──夜のシードアイランドに行くと、謎のアマウリの妖精に出会える、彼女はあなたが植えたアマウリを3倍の大きさにしてくれるんです。でもあなたが植えたのはアマ豆だったら、彼女はあなたをぶちます!今の所まだぶたれた事しかないので、アマウリを植え始めました、また妖精さんに出会えるように。

──更新:シードアイランドの「アマウリの妖精」は偽物です。あいつは私のアマ豆を盗もうとしただけなのです。私に見つかった後にとっさに攻撃した言い逃れとして「アマウリの妖精」を虚構したのです!こんな事をするだなんて信じられません!

──再更新:皆さん、私は前の発言を撤回します。アマウリの妖精は神や仙人とかじゃないけど、私は実際にこの目で彼女を見たのです。それに彼女は私の報告書を代筆してくれると申し出たのですよ!へへっ!

※他の人の筆跡※:もうやめた方がいいよ、それはうちの課から漏洩した幻覚剤が肥料を汚染して起こった幻よ。早く目を覚まして!美少女みたいなアマウリの妖精が報告書の作成を手伝うだなんて夢のまた夢よ!

その5

──ベース部分にいる上部の塗装がはがれた清掃ロボットは高度なAIを搭載しています。彼にチップをあげれば、壊れたトイレに連れて行ってくれます。なんとそこには彼が盗んできた希少な奇物がたくさん隠されているんです!

──これはデタラメだ!あの塗装がはがれた清掃ロボットにはシュレッダーが付いている!くそ!清掃ロボットにこんな機能を付けたのはどこの誰だ?

──さらに、彼はプリンターでもあるのです。友よ、事務&清掃の一体化機器、これこそが宇宙ステーションの「高効率事務」です!

その6

──この端末の█と█キーの間にある███キーが壊れました、ここにメモを残します。既にスタッフシステムで修理を要請しました、整備士さんを待ってください!
——皆さん、どうか注意してください、この中にはまだ僕の実験データが入っています!絶対に動かさないでください!絶対に!

──だからどうして壊れたキーを教えてくれないのですか?

──それら全部壊れているからだよ。

宇宙ステーション食堂フィードバック記録

宇宙ステーション「ヘルタ」の食堂のフィードバック記録、たくさんのスタッフの食堂の献立に対する意見や期待が記されている、同時に食堂AIのフィードバックも記録されている。

宇宙ステーション「ヘルタ」食堂の意見返答表

質問:もう一週間もミミズ干し食べてるんだけど、味を変えてくれない?
返答:来週はトマト味、ズッキーニ味、柚子味など豊富な風味のミミズ干しを提供する予定です。それと、サプライヤーの仕入れ問題により、「大宇宙チャーハン」の提供は不定期となります。これからは早い者勝ちです。

質問:合成肉を食べてお腹を壊すのは私だけでしょうか?
返答:フィードバックデータによると、類似の症状が起きたのはあなただけです。もう一度食べてみませんか?あなたのサンプルを採集し、調査しますので。

質問:ナス食べたい、アマ豆食べたい、キュウリ食べたい、野菜食べたい!
返答:被験申請を提出し、ステーションが新たに開発した「野菜タブレット」をお試ししませんか?1錠服用するだけで、任意の食物を咀嚼する時に新鮮な野菜の食感を感じられます!現在判明した副作用は、左足に軽微な麻痺、及び一部のモルモットが実験中に未知の身体障碍が発生との記録があります。更なる遊び方があなたの探索を待っています!

質問:私の実験畑から野菜がよく盗まれるんだが、ステーションはこれしきの防犯対策もできていないのか?
返答:シードアイランドの「防犯犬」機能を購入しましたか?下記のコードを個人端末にコピーすれば、システムは自動的にお利口な犬さんを生成します。犬さんは電離網の形式で現れ、あなたの菜園を守りますよ。日常生活でも、あなたの個人端末の秘書としてご利用いただけます~

質問:あのバカ犬機能を信じてはいけません、秘書なんて駄犬には務まりません!会議の音声を文字転換させたら、「ワン」を12000個もアウトプットしたんです!
返答:再生ボタンを押してください、そうすれば会議に参加しなかった犬さんも会議の内容を知れます!

質問:そろそろ食堂の管理AIを変えたらどうだ?こいつあからさまに挑発してるぞ!
返事:すいません、あなたの指示を識別できません。表現方式を変えていただけませんか?

とある界種課スタッフの週報の一部

とある界種課スタッフの週報、これはそこから破り取られた1ページ。

※どこかから破り落したページ、くしゃくしゃな紙は作者の気持ちの起伏を表している※

「ヘルタシステム週:第118週」
今週の計画:小分子化合物の体外増幅の研究を完成
今週の進度:条件に合う化合物が見つからず、研究計画の説明しか完成しなかった。
今週のまとめ:焦るな、次こそ行ける!

「ヘルタシステム週:第119週」
今週の計画:医療課と提携し、組織再生において、微細構造の磁気コントロール再構築の自動化応用方法の研究を進める
今週の進度:プロジェクト進度50%、引き続き進行中
今週のまとめ:医療課のジョアンって真面目で手が早いな、恥ずかしい限りだ。今週は最低でも5回の操作ミスを起こした、ジョアンを見習わなくてはならないな。次は安定させる!

「ヘルタシステム週:第120週」
今週の計画:医療課と提携し、組織再生において、微細構造の磁気コントロール再構築の自動化応用方法の研究を完了し、論文を作成。
今週の進度:プロジェクト進度75%、界種課が担当する部分は全て完了、医療課が担当する部分は進度0%
今週のまとめ:ジョアンが何かのウィルスに感染したと聞いた、彼女の無事を願う。今週の研究は一時停止するしかない。

「ヘルタシステム週:第121週」
今週の計画:医療課と提携し、組織再生において、微細構造の磁気コントロール再構築の自動化応用方法の研究を完了し、論文を作成。
今週の進度:プロジェクト進度75%!先週から一歩も進んでいない!医療課の進度を待つ!
今週のまとめ:ジョアンの奴め!言い訳ばっかり!手は動かさない!はは、論文?また怠けているのだろう?ははは、私の研究、私の報告書、私の産出…どうして医療課にはこのようなろくでなしがいるのだろうな!医療課の恥!もう彼女とは提携しない!絶!対!に!

「ヘルタシステム週:第122週」
今週の計画:異星細胞ホーミングメカニズムの生体解析
今週の進度:新型微環境細胞のホーミング過程を解明、基礎構造と作用原理の解明はまだ時間がかかる。
今週のまとめ:今度はほぼ自分ひとりでやってのけた、ふふ。しかし…まさかジョアンにこの分野の人脈があるとはな、外星系でこんな先導細胞を手に入れてくるとは。彼女の仕事も最後の少しみたいだ、手伝ってあげようか。ジョアンも悪い奴ではないな…先延ばし症候がちょっとあるだけだ、根はいい人だな。

スタッフのチャット記録

宇宙ステーションが襲撃される前の、スタッフ2名の雑談の記録、現在は防衛課の調査リストに入っている。

※設備のスクリーンには襲撃前の、スタッフ2名の仕事中の会話記録がまだ映っている。防衛課スタッフが調査を始める前まで、収容部分にいたII級スタッフはまだ音信不通のまま。※

某II級スタッフ:最近この仕事を本当に辞めちゃいたいって思うんですよ。

某IV級スタッフ:またあいつに無理難題押し付けられたのか?私があいつと直接会って問い質す!パワハラが過ぎるシニアスタッフもいるもんだ!

某II級スタッフ:違いますよ、一人だけじゃありません、そんな簡単な事じゃないんですよ。

某IV級スタッフ:あいつらが派閥を作ってお前を排斥しているのか?私はこのような学閥を最も嫌う!この件はお前のためではなく、私自身の原則を貫くためだ!

某II級スタッフ:はぁ、そうとは言えますけど。でも今回は本当にお手上げですよ。もしうまく処理できなかったら、僕は虚実の狭間の門番に降格でしょう。

某IV級スタッフ:私たちは兄弟みたいなものだ、お前に艱難があれば、私は自分を犠牲にしてでも、お前を助けよう。

某II級スタッフ:ありがとうございます。やっぱり先輩は他のシニアスタッフとは違いますね。実は、僕の研究予算が足りないんですよ、必要な実験もできないんです。

某IV級スタッフ:私を信じろ、「ヘルタ」で従事した事のあるスタッフは皆お前のような悩みに直面したことがある。そして正直に言おう、多くの若いスタッフはその困難を乗り越えられない。

某IV級スタッフ:でも安心するんだ、私がお前を導いてやろう。これから言う内容は私の経験談だ、きっと使えるぞ。

某II級スタッフ:お願いします。

某IV級スタッフ:まず、最も重要な事として、最初の志を忘れないことだ——研究する者として、徒党を組み、他者を排斥することはもっての外!功名を追う者と学問を求める者は同行できない!自身と外部の境界線をハッキリさせるのが核心だ。

某IV級スタッフ:そして、予算だ。「酒の香りは深い路地を恐れない」とも言う、能力が高いのであれば、予算が少なくても恐れる事はない。予算分配のロジックをおさらいしよう。成果が多いほど、予算が増える。つまり、十分な成果を出せば、この問題は自然と解決できる!

某II級スタッフ:確かに……

某IV級スタッフ:最後に、どうやって成果を出すかだ。ジュニアスタッフが回り道をするのはよくある事だ、枠組みがすでに整ったプロジェクトの1つや2つに参加し、勉強できれば上々だ。さっきも言った通り、私はできる限りの手助けをする。ちょうど私のところに批准されたばかりの大きなプロジェクトがあるんだ。

某IV級スタッフ:研究が成功すれば、予算なんて好きなだけ申請できる。だが厄介な事に、名声に釣られた輩が現れてな、私と中核スタッフのポストを競争し始めたんだ。私は世俗の名誉に興味ないのだが、この選考の結果はプロジェクトの進行に影響を及ぼすとは思っていなかったのだ……

某IV級スタッフ:私は中核スタッフの投票で後れを取っている、だが私たちが頑張って投票すればチャンスはまだある!

某IV級スタッフ:URLを送る、タップして投票システムに入るとスタッフIDを自動識別する、手動でログインする必要はない。

某IV級スタッフ:聞いてるのか?

某IV級スタッフ:……

某IV級スタッフ:(おかけになった端末をお呼びしましたが、おつなぎできませんでした)

ヨートン体は石である

某地理課スタッフのヨートン体に対する非常に鋭いトップクラスの評論、スクリーンには「あなたはブロックされました」と温かいお知らせが表示されている。

奇物「耐えられぬ重さ」の課題研究要員へ

先生は銀河生物多様性を研究する大御所と聞きまして、不才の身、いくつかの愚問を携え、ご教示いただきたく存じます。

以前、私は様々な正式、非正式の場、霊能付着や普通の植物繊維紙で書いた手紙などを通して、「ヨートン体」はケイ素生命体なのか、それとも見たままのただの石ころか、について多くの人と熱烈な討論を繰り返してきました、しかし依然解決されていない問題がいくつか存在します。

周知の通り、先生が活躍する分野では、「ヨートン体」を「内部電気信号を利用し個体間で交流するケイ素生命体」と定義しています。しかしながら、その種族は長い時間の中で既に絶滅していて、歴代統治者の思考偏晶が嵌められた冠——つまり奇物「耐えられぬ重さ」だけが残りました。

不才の身、いくつかの愚問を質問させていただきます:

1.「ヨートン体」は電気信号を通じて交流するのであれば、この銀河の中で彼らの思想、言語、歴史を知れる者は存在しません。そちらが電気信号は存在すると言うのなら、こちらも電気信号は存在しないと主張できます。これに反証可能性はあるのでしょうか?

2.反証可能性がないのであれば、この「ヨートン体」の歴史は最初から虚構歴史学者の杜撰ではないでしょうか?

3.宇宙ステーションの研究者は、とびきり優秀なものを除いて、ほとんどの人は外に出ません、惑星ヨートンでフィールドワークをした人もいません。水晶の冠を手にしただけで、どこから伝わったかも知らない不確かな歴史を聞いただけで、「ヨートン体」を悠久な歴史を持つ種族と定義するのは研究の基準に反するのでは?

4.宇宙ステーションの学際研究サミットで、地理課が「耐えられぬ重さ」の鉱物学特徴について詳らかな研究報告をし、それを宇宙にも奇しき希少な鉱石群と見なしていました。なのに界種課はそれを絶滅した種族の思考偏晶の構築体だと定義し、それを理由に奇物を強奪したのです。私から見たら、それは紛れもない強盗行為です。

奇物分類の誤りにより、先生の英名が消え去るのは心苦しいです。そして本学科の尊厳が、界種課という横暴な学閥に踏みにじられるのも耐え難いです。

私がこの手紙を書き、根本を究明しようとしたのは、ただ三言言いたいだけなのです。それは:

ヨートン体はただの石だ!
ヨートン体はただの石だ!
ヨートン体はただの石だ!

某率直な物言いをする地理課スタッフ

アフロ協会綱領

宇宙ステーションのアフロ協会綱領。強烈な主観的な思いが含まれている。

協会名
ヘルタ・ワイルドアフロ協会

協会綱領
科学が飛躍的に進歩し続ける一方、人類の自我構築の歩みはカタツムリのように遅い。研究者である我々には、他者と我々の課を識別しやすくする責任がある。そのため、自我を判定する特徴の一部である衣服を犠牲にすることにした。衣服は画一化されている。だから我々は他の方法によって個人の特徴を際立たせた。当協会は、頭部が人体の最上部に位置しているのは単に脳があるという理由だけではないと考えている。頭部は当然ながら「識別」という代替不可能な役割を担っている。そのため、自分だけの「アフロ」を手に入れることがアイデンティティにとっては重要なポイントとなる。そうすることによって、宇宙ステーションは科学的な雰囲気の中に人間的な香りを漂わせられるのだ。

協会の方針
毎日1回のセット、毎週1回のトリートメント、毎月1回の補強。

協会の目標
当協会は主に宇宙ステーション「ヘルタ」の研究者およびスタッフを対象としている。目標は、 各自の独自の魅力を育て、緊急時の特別なニーズに応え、ユニークなアフロテクニックを習得すること。そして、尽きることのない「アフロ」のエネルギーを全世界に広めることである。

「カポ様大百科」バージョン12.0

カポーティの熱烈なファンが定期的に内容を更新している。主にカポーティの日常行動が記されている。

「カポ様大百科」バージョン12.0
【以下のコンテンツは録音テキストです】
カポーティ:さあ、集中するのです。アーランさん。

アーラン:悪い。でも、どうしても貴様を…強気な上司と結びつけるのは無理だ。

カポーティ:目を閉じて感じてください。これは心に順ずる修行ですから!さあ、指示に従ってもう一度…

カポーティ:コホン…アーラン!今すぐ私のオフェスへ!待たせないでちょうだい、私の時間はとても貴重なものよ。

アーラン:は…はい!今、向かいます。

カポーティ:いいえ!こんなじゃあダメです!アーランさん、そうかしこまってはいけません。もし業務範囲外の内容を押し付けられたらどうします?それでも「はい!今、向かいます」か?

アーラン:俺は……

カポーティ:やれやれです!強気な上司との接し方を学びたいのなら、「心に順ずる」修行はまだまだ続けなければなりませんね!

アーランの業務記録

アーランの直近2週間の仕事の内容が書いてある。

先週の業務の振り返り:
1. エリア内にいる反物質レギオンの残党を一掃。

2. 統括エリア内で交換が必要なハードウェア機器を確認。

3. スタッフの緊急援助要請記録の処理。

4. ペペと一緒に何度か電子投影フリスビーで遊ぶ。

5. お嬢様が購入した荷物の受け取りと整理。

6. 先週のスイーツやドリンクのフィードバックと改善案のまとめ。

7. ペペと次のシーズンの新作バス用品を選ぶ。

今週の業務目標:
心に順ずる、鏡と化す、我を変える。

奇物管理日誌

アスターが管理・記載をしている奇物のファイル。宇宙ステーションの端末上で公開され、全てのスタッフが閲覧および使用できる。

その1

【ファイルナンバー】021
【奇物名称】勘星用たがね
【注意事項】記念用、実験を目的とした申請は不可。
【奇物ファイル】「ヘルタ」のスタッフが発明した、惑星の地質構造を探査しるための道具。主にとある消滅した惑星に存在した108番元素の金属で作られている。常に青い光を放っており、末端のプローブは使用者の出身地を指し、帰るべき場所を示す。どんなに硬い地質を持った惑星でも、勘星用たがねを地表にそっと挿すだけで、軽々と大量のボーリングコアを引き出せる。惑星の成長の歴史を研究するスタッフにとって尊い品物だ。
【関連研究】
1.地理課II級スタッフ チャドウィック:『「勘星用たがね」の発展の道および展望』
2.地理課II級スタッフ ミサ:『「「勘星用たがね」の開発歴史と現状』
【スタッフコメント】
勘星用たがねチェック。ステーションに来る前から聞いてたけど、今日ようやく本物が見られるわ!
──応物課:温世玲
一本の勘星用たがね、これは最も愛を表現できるプレゼントと言える。勘星用たがねは彼女のために道を示す。できるのなら、俺の気持ちも彼女に伝えて欲しい……
──地理課:*このスタッフは匿名希望です*
馬鹿者、お前が何をしようとしているなんて、全部お見通しだ!
──地理課:バーナード

【ファイルナンバー】056
【奇物名称】恒星の光(失効済み)
【注意事項】この奇物は「レギオン」侵入の際に損壊しています。実験申請を提出しないでください。
【奇物ファイル】精緻な装飾があしらわれた小箱。箱そのものは綺麗で整っていて、上下の二面以外の4つの面にはそれぞれ9つの小さな引き出しが設計されている。引き出しを引き出すと、内部には発光できる結晶体が見える、それぞれ恒星のスペクトルの一つに対応している。現在は修復された部分の断片のみを収容、完全なる修復は未だ不能。
【関連研究】
1.密巻課IV級スタッフ サラ:『スペクトル イメージング技術を利用した「恒星の光」の中の星神の手がかりの検査』
2.応物課II級スタッフ:『「恒星の光」天体画像からノイズ除去の方法について』
【スタッフコメント】
あああイラ立つ!あと2つの実験で私の番が回ってくるのに、「レギオン」に壊されるなんて!
──密巻課:エミリア
どうして密巻課はこんなにこれを研究することが好きなんだ?やっぱりお前たちが壊したんじゃないか!
──応物課:*このスタッフは匿名希望です*

【ファイルナンバー】148
【奇物名称】巻貝の笑い声
【注意事項】水に触れてはいけません。
【奇物ファイル】綺麗な巻貝。星の輪の紋様が刻まれている。巻貝の中からは遥か昔のジョークが聞こえる。笑いを我慢できれば、巻貝の中にある存在が少しずつ力を与えてくれる。この巻貝から力を得ようとする者たちは、皆比類なき力を持ち、憂鬱の中最期を迎える。噂では、まだ3名の使用者がこの世に存在し、どこかで隠居しているそうだ。
【関連研究】
「巻貝の笑い声」は近日に再度検修する予定です。過去の研究データはもう参考になりません、関連論文は一時閉鎖いたします。またの開放をお待ちください。
【スタッフコメント】
ありがとう、巻貝。あなたがいなかったら、気分が良くない時どうするべきかわからなかったわ。
──密巻課:メイア
何なのだこれは、壊れてるんじゃないのか?どうして私にはゴミみたいな話ばかりを送ってくるのだ?血圧が上がるだけで、ストレス解消にはなってないぞ!
──応物課:温世斉
名前を「巻貝の笑い声(闇堕ち)」に変えたらどう?@アスター所長 いつ更新できるんですか?
──医療課:ジョアン

その2

【ファイルナンバー】269
【奇物名称】分割包装されたハッピー
【注意事項】密閉した無酸素環境で収容するべき。
【奇物ファイル】計21件の小型携帯装置のセット、それぞれが特異的な材質で作られた立方体に包装されている。装置の外形はそれぞれ違っていて、ペン型録音機、小型モーター、ネクタイピン、コップ、ノートなどのモデルがある。装置ごとに別々の「ハッピー」、及び「ハッピー」に類似する感情を識別し、収集することができる。
【関連研究】
1.応物課II級スタッフ ロランナ:『「分割包装されたハッピー」の感情識別ロジックの簡易考察』
2.地理課III級スタッフ ミッシー:『「分割包装されたハッピー」の内部記憶媒体の波長形態に関する報告』
【スタッフコメント】
いつになったら分割包装されたハッピーの中の感情を取り出せるようになるの?早くそれを私の脳に注入して欲しい。
──密巻課:*このスタッフは匿名希望です*
上の方、もしハッピーを感じるのにこの奇物を頼るしかないと思っているのなら、医療課のメンタルヘルスを利用したらどうでしょう?
──サービス課:ローズマリー

【ファイルナンバー】458
【奇物名称】耐えられぬ重さ
【注意事項】この奇物の使用を申請する時に、「知能指数鑑定表」を添付すること。
【奇物ファイル】水晶がちりばめられた冠。ケイ素系生命惑星ヨートンの皇族の冠で、君主制の生きた化石。この種族の生命形態は透明な水晶体であり、内部で電気信号を発生させて思考、交流する。ヨートン体は死亡すると純粋な鉱物となり、病はその体内で鮮やかな色彩となって残る。崩御したヨートンの皇帝は、歴代皇帝の遺体によって作られたこの冠にはめ込まれるのだ。ヨートンの生命体は、この冠が統治者に代々受け継がれてきた知恵を与えると信じている。そのため、ヨートン族の統治者は常に揺るがず、美しい。
【関連研究】
1.界種課III級スタッフ シロリダ:『「ヨートン族」の遺伝子蘇生研究の発展経歴』
2.界種課II級スタッフ シェリン:『「耐えられぬ重さ」の相互反転モデルの確立および最適化に関する研究』
【スタッフコメント】
何故これほどの界種課スタッフがこれを研究するのでしょうか?
──応物課:温世斉
応物課の責任者さん、この暇でやる事のない奴に仕事を割り振ってくれませんか?もう何篇もの奇物ファイルで応物課の奴らが価値のないコメントを残しているのを見ました。
──界種課:*このスタッフは匿名希望です*

【ファイルナンバー】752
【奇物名称】採点銃
【注意事項】屈折率ゼロの材質でできた容器で保存してください。
【奇物ファイル】外見は非接触温度計と大差ないが、やや伏せた目がついている。誰かに持ち上げられるとキョロキョロと目を動かす。その姿は不気味と言わざるを得ない。もちろん赤外線によって測定するのではなく、それ自身の独特な基準、法則に基づき採点する。それを対象に向け、「ピッ」とすれば採点できる。パム1点、姫子9点、実験室のガラスドア10点、宇宙の花束2点、三月なのかは採点銃では採点不可能。その採点基準については、多くの研究員が独自の解釈を唱えていて、『採点銃の採点ロジックに関する考察』にまとめられている。
【関連研究】
???課???級スタッフ ???:遊んでみる
???課???級スタッフ ???:新たにデータを追加:銀狼 100点
【スタッフコメント】
姫子は知ってる、でもパムはどの課の人だ?たった1点?三月なのかは誰?
──防衛課:エドモン
このノートはアスター所長が編纂したものだから、所長の知り合いなんじゃない?
──応物課:温世玲
はぁ、なんでファイルに文字化けがあるの?端末がウィルスにやられたの?
──医療課:ジョアン

その3

【ファイルナンバー】1381
【奇物名称】心の全蝕
【注意事項】真空環境で保存し、起動しないでください。
【奇物ファイル】
未知なる岩石材料から研磨された錐体の装置、中心部の錐体が相互垂直になった時、装置は休眠状態に入る。錐体が平行になった時、装置は活性化状態に入る。活性化状態では、あらゆる物体が外輪星環通路と交わると侵蝕される、侵蝕が完了すると物体は基本粒子に分解される。この装置の一般的な用途は、ステーションの廃棄物を分解し、実験に使える材料に転換すること。注意すべき点は、この装置で一定量の物品を分解すると、侵蝕が拡大し、有機生命体の精神に著しい消極的な影響をもたらす。ステーションの書面許可なしに起動することを禁ずる。
【関連研究】
1.密巻課IV級スタッフ エステル:『人格の仮面と影:錐体侵蝕から星神投射までの心理影響の探求』
2.界種課III級スタッフ ラミナ:『脳の回復治療に対する脳生物電気方法および種を跨いだマイクロコンピューターの連通の影響』
【スタッフコメント】
精神が侵蝕されたらどうなるのだ?何かの人格を呼び覚ますのか??試した人はいるか!
──法政課:ルカーチ
侵蝕されると端末にマークされて、名前の後に「闇堕ち」と追加されるよ。
──メンテナンス課:*このスタッフは匿名希望です*

【ファイルナンバー】1984
【奇物名称】新世界へのドア
【注意事項】未知
【奇物ファイル】
応物課が偶然手に入れた瞬間移動装置、便器に似ていて、表面は陶器、内部には完全な流水機構が入っている。その稼働原理はまだ解明されていない、瞬間移動を完了した後に明白な副作用は見られない。しかし人には個体差があり、短時間で繰り返し使用すると、眩暈や嘔吐を引き起こすかもしれない。「頭を水洗式便所に突っ込むと、新しい世界が広がる」という噂はとある惑星で広く知られていた、このマシンの存在は噂の信ぴょう性を部分的に証明した。
【関連研究】
応物課の申請により、「新世界へのドア」の████████実験およびそのデータは非公開となる。
【スタッフコメント】
頭を突っ込んだんだけど、「新世界」には行けなかったぞ?
──地理課:*このスタッフは匿名希望です*
上のお前…バカだな。頭を突っ込むんじゃなくて、上に座って流すボタンを押すんだよ!
──界種課:アドラー

【ファイルナンバー】2691
【奇物名称】熱量ブラックホール
【注意事項】食物に接触してはいけません、接触する前に宇宙ステーション恒温システムの暖房モードを起動してください。
【奇物ファイル】とあるクリーンエネルギーを燃料とする暖炉、かつて「カンパニー」の貿易担当にホットプレートとして使われた(注:未遂)、応物課スタッフの慧眼により買い取られ、ステーションに収容された。密巻課の鑑定によると、暖炉表面の「紋様」には不詳の一族の家紋と「████ランドゥー」と思しき名前が確認できる。暖炉の発熱機能は故障していて、如何なる燃料を投入しても起動できない。今までの観測記録によると、この暖炉は自主的に周囲の物体の熱量を吸収する。恒温生物がそれに接触すると低体温症を引き起こす可能性がある。
注:応物課とサービス課の合同実験の結果によると、暖炉が吸収できる「熱量」は食物の「熱量」を含まない
【関連研究】
1.応物課II級スタッフ ターレ:『ブラックホールの熱力学性質と物質降着特性』
2.応物課II級スタッフ アドラー『個体群の成長および大爆発に関する新観点:有機生命体個体群とブラックホール』
【スタッフコメント】
え?「食物の加熱には使えません」?あなたたち、これで何をしたの?私では想像できない!
──密巻課:メイア
不謹慎な実験で不確定な結論を下さないで!「ゼロカロリー」の判断条件が厳しすぎる!教えてあげるわ、包装に明記されてないのは全部ゼロカロリーよ!応物課の****に何が分かるの!
──界種課:*このスタッフは匿名希望です*

アドラーの怪談研究レポート

応物課スタッフであるアドラーが書いたレポート。宇宙ステーションの様々な怪談を記録している。

その1

騒がしいセキュリティドア

琥珀なん紀か、宇宙ステーション「ヘルタ」はその命に定められたスタッフを迎えた。彼は静かに約束した。このステーションで人生のすべてを捧げ、唯一無二の研究成果を創造する。しかし、彼の「人生」はあまりにも長く、ほぼ無限にイコールするものとなってしまった。

彼がどのような実験事故に遭遇したかはわからない、しかし私たちは確定できる、この「事故」は後続の「物語」の必要条件であることを。過去の物語を推論するには、ちょっとした想像力が必要だ。もしかしたら、それは「精神投射」の機能を持つ奇物。もしかしたら、彼のプロジェクトは「精神投射」の分野に関するものだった。彼は期待を胸に抱き、ボタンを押した。スクリーンに自分が欲しかったデータが出てくると思ったが、彼を迎えたのは悲劇の始まりだった。

防衛課の記録によると、ステーションで発生した事故の中、スタッフが命を落としてしまった状況は少なくない、しかしスタッフが「そのまま消えた」記録はなかった。だが彼の「身体」はそのまま消えた、どこに行ったかは誰も知らない、そして彼の経験を記録した者もいない。もしかしたら、彼の影は今でもステーションに残っている——皮肉にも、彼自身が実験の最後の一歩を完成させた、彼の脳の思考は完全にとある物体に投射された。

考えてみよう、君は目の前で起きた様々な事を「観測」することしかできなく、それらに干渉することも、自分の考えに沿った行為を行うこともできないというのは、どのような体験なのか?答えは:歪んでしまう!脳の思考を「牢屋」に閉じ込めたら、思考はその中で「何」となる?おぼろげな思考を収めるにはどのような容器が必要なのだろうか?この答えを知る者はいない。

だが、これはステーションに影を落とした——コーヒーカップの中に注がれているのは熱いコーヒーではなく、どこかの大人のネガティブ思考だったら、誰も嫌がるだろう。

あるスタッフの証言では、彼は研究室の防犯ドアの近くで奇怪な声を聞いた。彼の描述では、その声は「泣いているようで、騒いでいるよう」で、何かの謎の生物が号泣していたかと疑ったようだ。筆者と助手はただちに現地に向かい調査した、そしてその謎の騒がしい防犯ドアを再調査した。結果は残念なものだった——私たちは如何なる怪奇現象も確認できなかった、そして「精神投射」の根拠となれる証拠も見つからなかった。筆者と助手はあたりを詳らかに調査し、結果、防犯ドアの付近で仲間とはぐれたウーウーボを一匹発見した。そのウーウーボは「ウーウー」と鳴き続けていたため、神経衰弱を患っていたスタッフがそれを鳴き声と間違い、今回の茶番を引き起こしたのだ。

筆者からの呼びかけ:怪談は解くべき、仕事は適度にすべき!ではまた!

その2

消えた便器

筆者注:まさか怪談ノートがこんなに人気になるとは思わなかった、応援してくれてありがとう!これからも助手とステーションを歩き回り、みんなに新しい閲読体験をもたらそう!それと、みんなのコメントは真剣に確認した。読者の中には僕の文章スタイルが嫌いな人が結構いたから、今回のノートで調整してみた。意見やアドバイスがあったら、是非コメントしてくれ!

「もし君の目の前に便器が突然出現したら、君に流すボタンを押す勇気はあるのかな?」

前日、筆者はとある特殊な投稿を受け取った。投稿者の容貌に応じて、具体的な情報は開示できない。言えることはただ一つ、これは怪談の「当事者」よりの投稿であり、今までにない目新しい物語が記されている。

その当事者をインタビューし、筆者と助手はこの怪談の全貌を復元した。もし廊下の端に突然出現したミステリアスな便器の「流すボタン」を押すと意識を失い、ある謎の部屋に「連れて」行かれる……

筆者と助手はそのミステリアスな便器を見つけられなかったため、身体が移動される過程の原理を解くことはできなかったが、私たちは実際にその謎の部屋を訪れた。ドアを開けるその瞬間、筆者の心は恐怖と不安に満ちていた。これは罠なのだろうか?ここは邪悪な存在を封印する場所なのか?しかし、真相を暴き読者の皆様に呈するために、私は毅然と中に入った。

結果、そこは普通の部屋だった。中には応物課のスタッフがいて、「便器」の行方を掴もうと努力していた。いや、それの名前は「実験品13号」…筆者はそのスタッフと交流し、事の発端を知った——そのミステリアスな「便器」は応物課がとある機密実験のために借りてきた奇物、コードネームは「実験品13号」。実験中の操作ミスにより、「実験品13号」はステーションで様々な噂を残すこととなった。

そのスタッフの解釈は真実なのか?何かの陰謀なのか?それとも……この答えは読者の皆様が執筆するべきです!「宇宙ステーション怪談」スレッドでコメントしよう、今期のトピックは:この流すボタンを押せ!ペンを君に、君が会談を書くんだ!

その3

連載終了のお知らせ

残念ながら、本アカウントの更新を終了させて頂くこととなりました。

筆者個人の事情により、本報告の後続内容を連載することを不可能だと判断しました。

筆者による厳粛な声明:本アカウントの全内容はステーション内の噂を筆者がまとめたものであり、如何なる科学的な厳密性も伴いません。同時に、筆者のプロジェクトに対する態度や思考ではありません。どうか理性的に閲覧してください!

最後に、本報告へのご愛読、ありがとうございました!

十四種類の幻覚の顔

名の知らぬ純美の騎士が残した告発状。

十四種類の幻覚の顔
「純美の騎士団」 ある廃棄された自白書

私の頭が運命の悪魔に弄ばれなかったならば、
あらゆる感覚の誘惑と精神的憧れを感じ取っていたでしょう。
語りと行動があなたを本当に存在させているのだと分かっています。
あなたの顔と刃には、世の人々が持っていない血と情熱が流れています。
私はあなたの高貴な品性とその恩恵のすべてを尊敬しています。
それは夜の帳の中で鎧に隠れ、心臓よりも深い場所にあります。
おそらくあなたに会いたくてたまらず、幻覚の中であなたを覗き見たのでしょう。
厳しい修行で自分自身を焼き尽くしたのは、あなたにより崇高な存在になっていただきたいがためです。
盲目的な忠誠心ですべての土地と王国からあなたを取り戻します。
恐れ知らずの心は、白い布よりもしっかりと私たちの怖じ気づいた目を覆ってくれるでしょう。
十四の戒律は蛆虫の呼吸の如く、常に決意を試す。
私がどれほど敬虔か知っていただきたいのです。
私がこれほどまでに切望していることを知っていただきたいのです。
私がこれほどまでに熱狂していることを知っていただきたいのです。

警告!!!

界種課が植物栽培ルームに貼り付けた警告。

ここで栽培されている特殊な植物は、完全な安全性テストを経ていないため、むやみに接触すると予測不能な結果を引き起こす可能性があります。

これまでに確認された副作用は以下の通りです。
1. 頭上に気泡を浮かべる小人、プーマンに乗った星神、空一面に漂う信用ポイント、床をはい回るお菓子などの幻覚を見る。
2. 性格の急変。一般的に、同僚や上司に秘密を突然話したくなる衝動が生まれる。
3. 自己認識の混乱。もしあなたが自分を電気炊飯器やボールペンだと思っている場合、間違いなく今のあなたは危険な状態にある。
4. 存在しない警告やでまかせの副作用など、偽物を自信満々に作り出す。

植物の危険性を鑑みて、上記の副作用やその他の異常が発生した場合、ただちに植物から離れて宇宙ステーションに助けを求めてください。
さもないと、あなたは…あなたは……

ああ~私みたいに…賑やかな…ペンになってしまう……

プーマンに乗って……

この銀河に雨のように降り注ぐ信用ポイントを受け止め……

そして足の生えたお菓子を食べる……

界種課の植物栽培計画表

界種課の栽培目標の計画表が記録されている。

界種課の植物栽培計画表
次の栽培予定の稀有植物はすでに銀河各地から送られ、来月には宇宙ステーションに到着する予定。今回の植物を入れ替えた後、土壌と水源の徹底的な交換と消毒を行う。今後に備え、種子の適切な保管が必要。

栽培目標:宇宙放射線が植物に及ぼす変異の影響を検出し、植物の接ぎ木と交配の新しい方向性を模索する。
栽培方法:祭司の杖と夢破は専門家がなだめたりする必要があるものの、その他は通常の土壌栽培で構わない。

―― 今回の植物紹介 ――
「ブカンルイの花」
モップ状の花。強烈で粘着性のある悪臭を放ち、慣れると人の嗅覚を歪めて喜びを感じさせる。
かつて「愉悦」の信徒が大量にブカンルイの花を栽培し、それを材料にして人型生物化学兵器を作った事例があり、今ではブカンルイの花が空気を汚染するため、個人での播種が禁止されている。

「夢破」
成長が遅い巨大な植物。伝説では亡霊を呼び寄せ、その葉の下に住まわせるとされている。
この植物を購入できる人は、愛する人の墓のそばに植える。その下で眠ると故人とデートできるからだ。
実際は植物が放出するフェロモンが特定の夢を引き起こしている可能性があり、さらなる研究が必要である。

「祭司の杖」
杖のような形状の植物。花びらは失われた古代の占いの重要な道具とされている。
1回に3枚までしか摘めず、それを超えると祭司の杖が摘んだ者の匂いを覚え、次に近づいたときに激しく叫び、その先端で激しく殴りつける。

「黄昏の島キノコ」
繊細で豊かな色彩を持ち、全体に縞模様があるキノコ類の植物。
なぜか常に暗い気分や絶望を感じさせ、近づくと制御できないほどの喪失感や目まいを引き起こす。摂取すると、秘密を守ることができる。

「ジャンパーの実」
氷晶のようにきらびやかな果実を結ぶ。未熟な果実は熱を吸収し、周囲の温度を急激に下げる。
2人が同時にその果実を摂取すると、意識が連動する現象が起きる。

―― 警告 ――
1. 祭司の杖を最も厚いシャーレに封じ込めること。でないと、その叫び声が宇宙ステーション全体に響き渡る可能性がある。
2. 暗闇の中で黄昏の島キノコが発するかすかな光を追ってはいけない。それによって人を死に至らしめる。
3. ジャンパーの実に触れてはならない。ジャンパーの実を食べた他の人物――その人物が誰かまったく知らない可能性がある――に意識をのみ込まれる可能性がある。

Dr.レイシオの伝言のメモ

Dr.レイシオが宇宙ステーションを「訪問」した時に残した意見。真摯なる彼の感情が窺える

その1

(1)
お菓子について
お菓子がそこら中を走り回っている。
宇宙ステーションのスタッフは解雇されるべきだ。これほど無秩序な研究室は生涯で見たことがない……
それとも、このお菓子が実験室を管理しているのだろうか?あまりにも非常識だ。

その2

(2)
「砕星王虫・スキャラカバズ」について
まさに天才の大胆な一手だ。技術開発部は一生、このような奇抜な研究方法を思いつかないだろう。
このメモを見た君へ。自分の幸せを求めることだ。僕が君なら、今すぐ引き返すだろう。

その3

(3)
博識学会には、自分の業績に満足している凡庸な学者がたくさんいる。彼らは真理が危険であることを理解していない。愚かな者が知識を不用意に追い求めても、自ら災いを招くだけだ。
一通り見て回ってみたが、そんな未熟で凡庸な人物は1人もいなかった。
ようやく、この研究室の素晴らしいところを発見した。

その4

(4)
植物栽培ルームについて
呼吸するのが困難なほどのほこりや微粒子…この近くには洗浄室すらないのか?

感情の本質——ある生理学分析

名の知れぬ誰かの論文。生理学レベルで感情が発生する原因とその発現メカニズムについて記載されている。

感情の本質——ある生理学分析

著者:███
連絡先:スクリュー星機械城ベアリングストリート██号
概要:感情はあらゆる存在の中で最も神秘的な現象である。長い間、感情の本質が何であるかを私たちは理解していなかった。
本稿では宇宙のさまざまな生命体の生理学的分析を通じ、「感情とは何か」という困難かつ重要な問題に答えようと試みる。
キーワード:感情、生理学

1. 人間の感情

スクリュー星に来る前、私は特別な脳腫瘍患者エマに出会った。エマの脳腫瘍が切除された後、彼女はまるで別人のようになった。
以前は社交的で活発だったエマだが、今では人付き合いを嫌い、怒りやすく、冷淡になったのだ。
エマの知能は影響を受けておらず、優れた大学教授のままだ。しかし、彼女はもはや教育の仕事を全うすることができない。
詳細に調べたところ、エマの論理的能力、記憶力、注意力、その他の認知能力は損なわれていないことが分かった。
しかし、彼女は自身に起こる出来事に対して感情を覚えなくなっていた。すなわち、重度の感情障害の症状を呈していた。

……

これらのデータと分析を通じ、私たちは人間の感情が特定の生理学的組織に依存して存在すると確信できる。
恐怖は扁桃体、嫌悪は島皮質と関係があり、前頭葉皮質は感情の表出と調節に関係している。
そして共感や罪悪感は、島皮質や帯状回などの脳組織に関係している。

……

これは、生理学的組織を改造することで人間の感情を操作、さらには複製が可能であることを意味するのではないだろうか?
また、もし生命体が人間のような組織を持っていない場合、それは彼らに感情がないことを意味するだろうか?

2. 無機生命体の感情

これらの問いに答えるため、スクリュー星という無機生命体に満ちた星を訪れた。
スクリューガム氏の助けを借り、私は機械生命研究室の使用権を得た。機械生命体の体をスキャンすることで、人間とはまったく異なる構造を確認した。

ケース1:アナイアレイトギャングから逃れた機械少女は、外部の事物に対する強い警戒心を示し、中心回路に焼け焦げた痕跡が見つかった。
ケース2:家族の死により動けなくなった機械老人は検査の結果、体に問題はなかったが、外からの問いに答えることができなかった。
……

電流が彼らの体内で血液のように流れている。機械生命体は人間とは大きく異なるが、人間と同じような感情の流れが見られる。これは何かの錯覚だろうか?それとも、感情は特定の生理学的構造とは関係なく、生理学的なものを超えた何かなのだろうか?

……

おわりに

スクリュー星を去ろうとしたとき、親友が名残惜しそうに別れを告げてくれた。
私は彼の結晶体のような顔から、とても輝かしい銀色の涙が滑り落ちるのを初めて見た。その瞬間、私は愛を感じた。間違いなく愛だ。
では、感情とは何なのだろうか?それはいずれかの生命体の特権ではなく、むしろすべての生命体の本質なのだ。
それは抽象的な行動パターン、共通の内なる言語である。おそらく生命体は創造されたときからこの言語を理解しており、この言語によって生命体は理解し合い、愛が存在するようになったのだろう。
これ以上の問いについては、今後の研究課題としたい。

謝辞

研究室を提供していただいたスクリューガム氏に御礼申し上げる。

ルアン・メェイの注釈:
感情は生命の共通言語です。これは██の生涯をかけた結論です。
もしかすると、██自身がそのような人物だったのかもしれません。私には同意も理解もできません。直接彼女に聞いてみたいものです。

完全お菓子レシピ抜粋

ルアン・メェイの注釈が残されたレシピ。その筆跡は彼女本人と同じく秀麗だ。

序文

本レシピ集は、銀河各界のお菓子のエッセンスを集めたもので、まんじゅう菓子、餃子菓子、蒸餅菓子、団子菓子、巻き菓子、ビン菓子、パイ菓子の7つのジャンルが取り揃えられています。オーソドックスなものから革新的なものまで、さまざまな新メニューを網羅しています。各レシピには詳しい作り方が記載されており、初心者から専門家まで幅広く利用できます。
星暦██年██月██日、この本を購入――ルアン・メェイ
……
梅干し大豆の蒸餅
主材料:無念の中で見た落ちている梅、シソの梅粉、大豆
副材料:何年も梅の花に積もった雪が溶けた水。少女の手で払い落として花瓶に入れ、地中に1年以上埋めておく。
調味料:ささやくような歌声、失意した人の詩
作り方:大豆を洗って泡立たせ、梅の花の雪水を加えてペースト状になるまでかき混ぜ、砂糖とシソの梅粉を加える。
そして歌を歌いながら炒り、団子状にして型に入れて冷やす。落ちている梅を数輪のせ、失意した人の詩が印刷された油紙で包んで保存する。
味:食べると香りが鼻を突き、余韻が残る。
備考:作り方が複雑で1年前から準備が必要。梅の花が咲く時に雨水で入れたお茶と一緒に楽しむのがおすすめ。
このお菓子はとても上品で、私の心を掴んで離さない。

砂糖蒸しチーズ餅パイ
主材料:牛乳、酒醸の汁、上機嫌の時の気持ち3つ、夏の夜の風
副材料:氷砂糖15グラム、アーモンドスライス5グラム
作り方:牛乳を氷砂糖とともに沸騰させ、上機嫌の時の気持ちを3つ加えて濾し、夏の夜の風の中で冷ます。酒醸を牛乳に入れてよくかき混ぜ、容器に分けて蒸し器で約15分蒸す。冷まして凝固させたあと、アーモンドスライスを乗せ冷蔵庫で3時間冷やして固める。
味:柔らかく、すっきりとした香りがして濃厚。
悪くない。暑さを凌ぐのに最適。

レンコンデンプンとモクセイ砂糖の蒸餅
主材料:レンコン、小麦粉
副材料:恋人たちのつぶやき、モクセイ
作り方:レンコンをスライスして水に3日浸す。つぶして汁を取り出して濾し、水に入れたあと古いかまどで熱してレンコンデンプンを作る。レンコンデンプンに小麦粉、白砂糖、モクセイ、恋人たちのつぶやきを加え、かき混ぜて固める。恋人たちのつぶやきがない場合は、白砂糖で代用できる。
味:弾力があり、モクセイとハスの香りが豊か。
子どもの頃によく食べたが、今では本格的なものが少ない。
……
爆玉ショーロンポー
主材料:発酵させた生地、キャベツ、プーマンの目
副材料:ネギとショウガのエキス
調味料:砂糖、しょうゆ、オイスターソース
作り方:キャベツを細かく刻む。タピオカパールの中に、しょうゆとオイスターソースを少量加えてネギとショウガのエキスを加えて混ぜ、15分間漬けておく。プーマンの目とキャベツを入れてよく混ぜ強火で炒める。発酵した生地をこねて丸い皮に伸ばし具を包んでせいろに入れ、強火で蒸し上げたあと弱火にする。火を止めて2~3分蒸らした後にせいろのふたを開ける。
味:生地はもっちりとしていて、具は噛み応えがあり、甘味と塩味がハーモニーを奏でている。ミルクティーとの相性も抜群!

(末尾の三点リーダーから、ためらいと不信感が感じ取れる)
星空を仰ぐパイ
主材料:銀河の固有魚種、澄んだ眼差し、愚者の叫び
副材料:ゆで卵、ジャガイモ、玉ねぎ、ベーコン
調味料:オリーブオイル、チキンスープ、ワイン、バター
作り方:魚を洗って内臓を取り除き、頭と尾を切り分けて残す。魚の身を半分に切って、タルト生地に入れる。玉ねぎとジャガイモを小さく切り、チキンスープとバターで煮てタルトに入れる。澄んだ眼差しを加え、愚者の叫びで30分間焼いたらでき上がり。
味:濃厚なミルクの香りと、こってりとした味わい。パーティーに最適!
備考:一緒に星空を仰ぎ見よう!
だんだんおかしくなってきたような気がする…

ルアン・メェイの実験ノート

不完全な実験ノート。ルアン・メェイが研究の過程で残した貴重な記録。

No.92
実験目的:純粋な理性を持つ生命の創造
……
実験結果:それはそこで停止したまま、精神錯乱により死亡。
失敗原因:生命と純粋な理性は相容れない可能性がある。
……
No.524
実験目的:#8 ラムの育成
……
実験結果:#8 ラムはほほ笑んだ後、姿を消した。
失敗原因:#8 ラムは戻ってきたくないようだ。
……
No.1024
実験目的:分散型存在の生命体創造
実験環境:加速器と特殊なシャーレ
実験方法:高エネルギー粒子を裂界創造物に衝突させ、複数の量子状態で存在する生命体に分裂させる。
実験過程:高エネルギー粒子を加速させ、束縛された実験体が分裂するまで衝突させる。分裂が完了するまで、「豊穣」の賜福を受けた果実を与え、その生命形態を維持させる。
実験予想:実験体が複数の場所で同時に存在できる分散型生命体となり、いずれか1つの生命体が得た情報はすべての生命体に伝達される。
実験結果:123秒後に消滅
失敗原因:感情検出器が大きな悲しみを検出。実験体は過剰な情報を得て、ある種の…真実を見た模様。真実を知った実験体は悲しみに耐え切れず、自ら消滅することを選んだ。しかし、実験体が残した微粒子は今も止まることなく、原子の音量で歌い続けている。
実験台の処理:機密扱いとし、処理はしない。
……
No.1732
実験目的:「生まれながらの天才」たる生命体の創造
実験環境:特殊なシャーレ
実験方法:混合、攪拌、加熱
実験原料:霊性、練習、星震を1:1:1の比率で混合し、知恵の基盤を作成。
その他の原料:天才の特性。スクリュー星特産の機械油、余清塗が調合した毒酒、セセルカルのクモの糸、ヘルタ人形の破片、#22 リルタの自筆文字などを含むが、これらに限らない。
実験過程:
1. 楽天型天才:スクリュー星特産の機械油を2杯追加。
2. 悲観型天才:#55 余清塗が調合した毒酒を3滴追加。
3. 不安型天才:#29 セセルカルのクモの糸の抽出物を追加。
4. 攻撃型天才:ヘルタ人形の破片を追加。
5. 無私型天才:#22 リルタの自筆文字から抽出されたインクを追加。
実験予想:異なる天才の特性を知恵の基盤に追加し、天才に対応する特徴を持つ生物が創造される
実験結果:失敗。
失敗原因:
1. 「実験台」内の天才特性の成分が低い(高確率)
2. 数名の天才の資質が平凡(超低確率)
3. 実験過程で「霊性」の成分が高すぎ、製造物が「創造者を模倣する」傾向を示した(低確率)
4. 創造者が収集した天才の品が偽物だった(超低確率)
実験台の処理:一括して回収後、廃棄または封印予定
……
No.1733
日付:星暦██年██月██日
実験目的:使令の育成および
実験環境:特殊なシャーレ
実験方法:████を溶錬し、抽出された██を原体に注入する。
実験原料:████、宇宙の蝗害の一部始終、蟲の王が残した「データ」
その他の原料:「憶泡」、「次元界」の欠片、「模擬星神」の原体、「胞子」の擬態
実験過程:「次元界」の欠片を基盤とし、「憶泡」、「模擬星神」の原体、「胞子」の擬態を加え、宇宙の蝗害の「データ」から「繁殖」の運命のフローエネルギーを抽出し、最後に蟲の王が残した「データ」を滴下する。
実験予想:複製された繁殖の使令が誕生し、56秒間存在する。
実験結果:成功。56秒後に消滅。
実験台の処理:自己消滅
……

ルアン・メェイの日記のページ

ルアン・メェイの日記から破り取ったページ。断片的な記録から彼女の最近の研究課題が窺える。

1ページ目
私はヘルタから「位相霊火」の火種を借りた。

2ページ目
あの火が見当たらない。セセルカルに嫌われなければいいのだが。

天才クラブ:研究成果考察

ある匿名希望の者が残した手稿。
天才クラブ各メンバーの成果(未遂のもの)について討論されている。

天才にも優劣があるのだろうか?もし#83 ヘルタ、#81 ルアン・メェイ、#76 スクリューガムの功績を1つずつ並べ、優劣をつけようとしたところでいつまでたっても決められないだろう。

筆者も疑問に思ったことがある。#2 ハラルド・パンチと#3 ニューウェル・イマンはガレージで天才クラブの結成を宣言し、その後、幾度となく対立と和解を繰り返してきた。彼らもお互いの優劣を競い合っていたのではないだろうか。

幸い、模擬宇宙プロジェクトは一時的な安定を見せている。
しかし、この安定した三角関係が新メンバーの加入により崩れる可能性があるのかは、誰にも分からないだろう。

おっと、危うく忘れるところだった――四角関係だ。#84 スティーブン・ロイドもいるのだから。

編集者向け

行数オーバーを防ぐため、長いものは下位ページを作り、includeしてください

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