ストーリーブック/テイベルスの光

Last-modified: 2023-04-09 (日) 20:17:02

テイベルスの光

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イシス=プレイ表記は原文ママ。

ストーリー

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黄金の星、テイベルスは燦爛たる光で満ちた場所であった。
 
五色の宝石で溢れかえり、大きな岩を抱いた木の影が
太陽の軌跡をたどってゆっくり流れるところであった。
 
四季は存在せず、昼と夜が同時に存在した。
誰もが疲れたら宙に浮く木の下で翼を休め、お腹が空けば果物をもぎって食べた。
 
静かに波打つ透明な黄金色の海で子供たちはまだ小さな翼をばたつかせながら遊び、
青年たちは大きな木を手に入れるため激しい風をかき分けながら競い合った。
だが、誰も「最も高い者」には勝てなかった。
 
彼は停大な者であった。すべてを凍らせる寒さにも負けず、
高<飛び上がり、空の星の歌を間きながら眠りについた。
彼の後を追ったせいで倒れた者は数えきれず、彼の鋭い羽根によって目に傷を負い、
地へ落ちた者もまた数え切れなかった。
 
最も遠くを見ることができ、星の光の向こうにある遠い未来を見ることもできた。
彼は光の泉の水を飲んだ者であった。
黄金色に輝く世界で彼は自ら光を放つ者で、人々は彼のことを海に落ちた太陽呼んだ。
誰もが彼の歌と美しい翼を愛した。
 
しかし…この平和な世界に紫色の雨が降り始めた。
 
雨は苦く、すべての木の実は酸っぱくなった。
黄金の海は激しく荒れ、黄色い野原には亀裂が出来崩れ落ちた。
何か悪いことが起きたに違いない。
 
青い火の母、ルフソンが彼を呼び出した。
異変の調査を頼まれ、彼は一気に赤い空の上まで飛んで行った。
そして星の光の間に不気味に揺れ動くあるかけらを見つけた。
 
そのかけらは彼の故郷に向かっていた。
彼は何の迷いもなくかけらを追いかけた。
 
最初は単なる流星だと思い、破壊するつもりだった。
だが、近づくにつれその暗くて汚いかけらの中に宿る
強力な意志が自分を見ていることに気づいた。
 
一度はその場で突進しようとした彼は考えを変え、故獅に戻りルフソンに告けた。
 
「黒いかけらには危険が潜んでいる。破壊してくる。
私が戻らなけれはばみなで逃げろ。」
 
ルフソンは一緒に逃げけるよう引き止めたが彼は飛んで行った。
みなが彼を送り出しながら涙した。
 
ー日が過ぎ…。
 
ニ日が過ぎた。
 
三日…四日が過ぎた。
 
五日目にルフソンは翼を広げた。
 
「みな、空へ飛べ。誰よりも高<飛び、誰よりも遠くを見る、
誰よりも強いイシス=プレイを助けに行こう。」
 
だが、イシスは実に遠いところにいた。つらい飛行に疲れ、
誰よりも硬い口ばしを持っていたスレニクロンの翼も羽根ががすべて抜けた。
 
その羽根を略奪者、ロスオールが取り自分の尻尾につけた。
後ろめたさゆえ、ロスオールはその立派な尻尾を自慢することもできず、
スレニクロンのことを恐れ、今もなお夜の洞窟に身を潜めている。
 
刃より鋭い氷が高く飛んだ者たちの翼を傷つけた。
翼が凍りつき地に落ちる者が続出した。
赤い足のアルケトープレクセスは両翼が肩から同時に剥がれ、海に墜落した。
 
アルケトープレクセスは海の小さな岩島に落ちた際、
頭をぶつけ気絶したが幸い命は助かった。
その島には今もアルケトープレクセスの頭の跡が残っている。
 
イシス=プレイを助けるどころか、
彼がいるところに行けなくなったルフソンは涙を流しながら悲しい歌を歌った。
みなも歌を歌い雲の間から見える黒いかけらを見つた。
 
突然空が激しく揺れた。かけらはどこかへ吸い込まれるようにして消えた。
そして紫色の雨が止んだ。だが、イシス=プレイは二度と帰ってこなかった。
 
今もテイベルスの人たちはイシス=プレイを待ち続けている。
最も高く空を飛んだ彼の姿が再び黄金色の海の水面に映し出される時、
深い悲しみに沈んだ世の中も以前のように幸せの歌で満たされるようになるだろう。