マップ/イーストハーレム/螺旋の王座

Last-modified: 2020-03-11 (水) 12:57:48

螺旋の王座

螺旋の王座.png
ハーレムの最奥であるイーストハーレムに位置するマンション・ド・サルポザには奇妙な塔がある。
この塔は逆さに突き上がる螺旋でできていて、まるで神に挑戦でもするかのような姿で空高く伸びている。
ここの主が何を望んでいるのかは誰も知らない。
確かなのは、螺旋の先に到達して彼と対峙しなければならないということだけだ。


BOSS 黒い目のサルポザ
サルポザ.png

ストーリー

「もう一度」

幼い魔法使いの青黒い顔から、わずかに感じられた血の気さえ失せた。
もう、5回目。ここまで来るとどんなに世間知らずでも、何かが上手くいっていないことに気付くだろう。
ウォーロックの始祖を前にして彼への敬畏を示す歌を歌えという命令が、当初は一世一代のチャンスだと思った。

喜んで声を高め、その黒い目を真っすぐに見つめた。
思い返せば、愚かにも自ら命令を催促していたのだ。

「もう一度、と言ったはずだが」
「申し訳ございません! こ、殺してください!」

おどおどと偽りを告げる声はすでに泣き声と化していた。無表情なサルポザが、短くため息をついた。

「……何故どいつもこいつも殺してくれとばかり言うのだろうか」

黒い目が動く。額づいた幼い魔法使いの鼻先まで近寄って立ち止まった声にも身を斬られている気がした。
サルポザの傍にいたカシュパの重鎮たちは息を殺してその成り行きを見守っていた。

「“死を思わせる冷たい声”か。だからか? 私を見ると死が思い浮かぶから?」

「ち、違います。そうではなくて……」

生きる道を必死に模索していると、開いた口から思ってもみない言葉がどんどん垂れ流しになる。

'''「ぼ、僕が恐れているのは死ではなくて……サルポザ様です。
だ、だって魔界でサルポザ様の名を聞いて震え上がらない者はすでに死んでいる者だけだって言われているんですよ? 
で、でも直接お会いしたら……死者でさえもサルポザ様のことは恐れるんじゃないかと……」

「死者でさえも?」

「はい、そ、そうです! 死者でさえ……いいえ、死、そのものすらサルポザ様を恐れると思います!」

一瞬、サルポザの黒い目に微かな光が宿った。
石膏像のような彼の表情を読むことはできないが、その代わり後に立っていたドッグヘッドがキセルをくわえた唇の端をクッと持ち上げた。

「フフフ、賢い子ね。サルポザ様、私にくださいな。ちょうど首輪もいくつか残ってるし……」

「いや」

一言で全員を黙らせたサルポザが、片手を軽く上げた。

「私がもらおう」

その後に起きたことは、殆どの者が目視できていない。
小さな体を丸めて死の影から逃げようとした幼子は跡形もなく消え去り、いつも肩を怒らせて歩いていた

カシュパの幹部たちですら初めて感じた圧倒的な力の前に、心底震え上がった。
黒い目のサルポザ、ただ彼だけがその場にじっと立って自分の胸元を見下ろしていた。

「博士が言っていたな。例の奴……使徒も殺した英雄だと」

いつの間にかサルポザの傍に寄っていたドッグヘッドが乱れた彼の襟元を直しながら囁いた。

「あの世界では寝ている者の口に槍を刺しただけでも英雄と呼ばれるのですよ」

「1度顔を見てみたいものだ」
「お望みとあれば」

ドッグヘッドはサルポザの気持ちを察し、手に取った槍で円を描いた。
魔力が作り出した波長が拡がり、その場にいたすべての組織員と共に彼女もその姿を消した。
静けさに満ちた何もない部屋。その闇の中で新たに降臨する神のための王座だけがその主を待ちわびている。