ストーリーブック/哀而不悲

Last-modified: 2023-04-09 (日) 17:54:24

哀而不悲

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アガンゾに対する少女時代のウーの胸中を物語ったストーリー。
時期としては悲鳴の洞窟でロキシーを喪ったよりも後の話。

ストーリー

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あの方をこちらに運れてきてもう15日も経った。
回復は早いが表情は暗いままだ。
時々、剣を握りしめる仕草を目にし、心を痛める女がここにいる。
 
近くにいると嬉しいが恥ずかしくなり、まともに顔を見ることができない…。
時には悲しくて切なくなり、何もできなくなってしまう。
つまらない失敗も多くなったが師匠は何も言わない。
私も気づかないふりをした。
 
静かに遠い空を見つめている…。そのたびに心が痛む。
外で楽しそうに鳴いている小鳥たちが憎い。
 
実に滑稽だ。
見ていても嬉しくて切ない…
見なくても嬉しくて切ない…。
師から学んだすべてが一瞬で崩れ落ちる気がした。
 
母がもう少し早く私を生んでくれたら―言
言葉を交わせたかもしれないのに。
涙しながら親を恨んでいる少女を夜空の月がじっと見つめている。
 
月よ。
私のことをあぎ笑うな。
この心の痛みが君には分からないだろう。
何を恐れているのかも聞くな。
 
夜が明け、剣をを背負う音が聞こえると目頭が熱くなった。
傷も癒えないその体で一体どこへ…。
 
いつ帰ってくるのか聞くと、分からないという答えだけが返ってきた。冷たい人…。
 
小さな雲は風に流れ、師の後ろに隠れた少女はただ笑っているしかなかった。
そう、もうどうしようもない。笑って送り出すしかないのだ。