アーカイブ/キャラクター/ゼーレ

Last-modified: 2023-06-03 (土) 22:48:16

颯爽とした立ち振る舞いの「地炎」のメンバー。地下の危険な環境で育った彼女は、一人で行動することに慣れている。
保護する者と保護される者、抑圧する側と抑圧される側。世界がゼーレに見せるのは、いつも白と黒で分かたれた景色だった——
そう、「あの少女」が現れるまでは。

  • ストーリー詳細1
    ゼーレの初めてのケンカは自分のためだった。

その頃、彼女は当てもなく町を彷徨い、喉が渇けば孤児院の救済所で水を求め、
お腹が空けばゴミを拾い、町の物売りにそれとクッキーを交換してもらって食べていた。
リベットタウンの裏では、誰もがその怖いもの知らずな流浪の少女を知っており、誰もがその野蛮で頑固な幼いならず者とは関わりたくないと考えていた。

ある暑い日の夜、遊びすぎて喉が渇いた彼女は給水所に来たのだが、鉄のバケツの中の井戸水が底を尽いていることに気が付いた。
そこに、彼女と同じく水を求めて浮浪者がやってきた——
ひとしきり戦った結果、浮浪者は逃げ、ゼーレは水を独占する権利を勝ち取った。

ゼーレがその浮浪者に再会したのは3日後のことだった。
診療所の窓を覗いた時、ベッドの上に横たわる痩せ細った体が見えたのだ。浮浪者は今にも死にそうだった。

それ以来、彼女は後から来る人のために水を残すようになった。


  • ストーリー詳細2
    幼い頃、ゼーレは一度だけ上層部に行ったことがある。
    それは彼女がオレグに出会った後のこと——
    当時のオレグは下層部の治安を守るシルバーメインの兵長だった。
    オレグはゼーレが憧れている街を見せてあげようと、彼女を自分の補給袋の中に隠れさせ、ケーブルカーで上層部に戻ったのだ。

ゼーレはオレグと共にベロブルグの名所を巡り、今まで食べたことのない美味しいものを食べ、
想像すらできなかった綺麗な服を着た。
彼女が粗暴な鉱夫のスラングで子供たちを追い払った時は、オレグも思わず笑ってしまった。
2日間という短い間だったが、彼らはずっと笑顔だった。

上層部を離れる前、2人は行政区の広場のベンチに座っていた。ゼーレは向かいのレストランをじっと見つめている。

「上層部は楽しかったか、ゼーレ?また来たいか?」
「ねえ、質問があるんだけど」
「…なんだ?」
「あの上層部の人たち、半分だけ食べてご飯を捨ててる」
「……」
「アイツら、地下の人がご飯を食べられないの知ってるの?」
「……」

オレグはゼーレの表情を窺った。幼い顔には一抹の憂いが滲んでいる。

「帰ろう。もうここには来たくない」


  • ストーリー詳細3
    診療所のベッドに横たわった時、ゼーレはようやく落ち着くことができた。
    彼女は静かに自分が「地炎」になってからの経験を振り返る。

彼女にとって怪我や流血は日常茶飯事である。
ゼーレは人よりも痛みに強かったため、戦闘中は取るに足らない傷や痣を無視して、思う存分自分を解放することができた。

傷は必ず癒える。裂界の脅威が常に増しているように、そして一度は救われた人々が、
再び退屈で苦難に満ちた生活に戻ってしまうのと同じように。
時折、ゼーレは下層部全体の時間が止まったように錯覚することがある…
彼女や「地炎」の努力は、すべて無駄なのではないかと思ってしまうのだ。

女性の医者が入ってきて、ゼーレに優しく怪我の具合を尋ねた。
彼女は何とか言葉を絞り出し、自分の困惑を相手に伝える。

「ゼーレ、重要なのは奇跡よりも……」医者はにっこりと笑い、手のひらを彼女の額に乗せて言った。「奇跡に対する人々の希望を守ることよ」


  • ストーリー詳細4
    行政区は多くの人で賑わっており、まるでベロブルグ市民の半分がここに集まっているようだった。
    ゼーレは騒がしい人々への嫌悪感を抑えながら、鋭い視線で彼らの顔を眺めている。

その努力の甲斐あって、彼女はターゲットを見つけることができた。
灰色のチェック柄の帽子を被った男は両手をポケットに入れ、人の間を縫って進みながら、陰に隠れた目で周囲を探っている。
近くに自分を見ている人がいないことを確認した後——
少なくとも彼自身はそう思っている——
彼は傍にいた女性のショルダーバッグに手を伸ばした。

彼の指がショルダーバッグの肩ひもに触れる直前、細いながらも力強い手が彼の腕を掴んだ。ス
リは痛みに声を上げそうになったが、ゼーレはもう片方の手で彼の口を塞いだ。

「静かにしなさい」

荘厳なトランペットの音が空を切り裂き、賑やかだった群衆が一瞬にして静まり返った。
そして派手な格好をした男が高台に駆け上がり、鋭い声で話し始める——

「レディース・アンド・ジェントルメン、本式典のテープカットゲストである——
大守護者、ブローニャ・ランド様に歓迎の拍手を!」

耳をつんざくような歓声が広場を包み込む。その喧騒に紛れて、ゼーレは静かにスリを人混みから連れ出して、
広場の端で見張りをしているシルバーメインに引き渡した。
彼女が遠くの高台を振り返ると、白いスカートの女性と視線がぶつかった。
大守護者は彼女に短く笑いかけ、ゼーレも小さく頷いてそれに応えた。

そして彼女たちは視線を逸らした。1人は光の中へ、もう1人は影の中へ足を踏み入れる。
——それでも、彼女たちは出会った。