アーカイブ/キャラクター/停雲

Last-modified: 2024-02-11 (日) 03:40:46

八方美人な狐族の少女、天舶司商団「鳴火」の首席代表。
生まれつき弁の立つ停雲が口を開けば、人々は彼女の言葉に耳を傾けざるを得なくなる。そんな停雲の指揮のもと、仙舟の貿易祭は次第に有名になっていった。
できるだけ戦闘を避け、できるだけ口で説得する——これが停雲のルールである。

  • ストーリー詳細1

「狐族は生まれた時から商売に精通している」と言われている。
茶屋「不夜侯」に少し滞在すれば、その事実を強く実感できるだろう。

「ご存じないかもしれませんが」、その狐族の女性は精緻な扇子を揺らしながら、目の前の半信半疑な男を見つめた。
「一方の水と土が一方の生命を育むのです。
水質がよくない国のカラタチの種をウェンワークの土地に植えれば、甘くてずっしりとした熾陽ミカンが実る。
それはウェンワークの四季の調和が取れており、土壌が肥沃だからです。
また、タラサの灯魚を我が仙舟に持ち込み、鱗淵境の持明族に育成を任せれば、三尺余りの灯魚に育つでしょう」

「『鳴火』の目標は、最も商業的な潜在力のある品種を厳選すること。
安全を保障するため、商団の星槎で中継輸送を行う予定ですが、数ヶ月もあれば最初の商品を受け取れるでしょう。
それらはタラサの淵底水晶宮を彩り、貴国の特産品になるかもしれませんね」

エラを持つ男は真珠のような泡をいくつか吹き出した。
それは泡語で躊躇いがちな称賛と同意を意味している。
そして、彼は不思議な音節を発した。
「『鳴火』は投機や仲買ばかりやっていると思っていました。
もしかして、カンパニーが運輸業を独占している局面を崩そうとしているのでしょうか?
どうぞ、値段を言ってみてください」

「往復の費用は9割にしましょう。
仲買商売は濡れ手で粟に過ぎません。
『大商算じず』という諺があるように、相手に利があってこそ己の利となるのです。
水晶宮の淵主が認めてくださるのなら、一紙…こほん、一邦の友人と長期的な契約を結びたいのですが。
いかがでしょうか?」

その日、停雲は契約を交わしただけでなく、同盟のために新たな友好関係を築いたのだった。


  • ストーリー詳細2

停雲は幼い頃から他の子供たちとは様子が違っていた。

稲妻のような反射神経と鋭い感覚を持つ狐族は、生まれながらにして反応が素早い。
そのため、幼少期の狐族はやんちゃでイタズラばかりする。
しかし停雲は?
この尖った耳の女の子はいつもふわふわとした様子で、人に会っても髪を引っ張るどころか、自分の髪を引っ張られても無邪気に笑い、甘い声で相手を止めるだけ……

性格は人それぞれと言うが、いつも家をめちゃくちゃにしようと企んでいる狐族の子供たちに比べ、争いごとが苦手な停雲は大人しすぎると言ってもいい。
天舶司で軍備士をしている彼女の両親は、そんな彼女のことを心配していた。
やがて停雲が成長すると、両親は彼女に家業を継がせることを諦め、自由に道を選ばせた——

こうして、羅浮の貿易史に輝く新星が昇った。
狐族の少女は持ち前の温厚な性格と才能を以って、16の世界の貿易使節団を取り持ち、スターピースカンパニーと互恵協定を結び直した。
仙舟人の貿易祭「海市」も、彼女の努力のよって星海に広く知れ渡る盛典となったのである。


  • ストーリー詳細3

停雲の六骨畳扇といえば、工造司の名物機巧である。

旅の危険から身を守るため、天外行商人の多くは武器を携帯している。
その中でも停雲は例外で——自分の美学にそぐわない武器は決して使おうとしない。
刀、槍、剣、戟などは剛強すぎて軽やかさと優雅さが足りない。
しかし、投矢や銀針などの暗器を使っては、自分が陰湿で悪辣な人間に見えてしまい、体面が保てない。

考えに考えた末、停雲はこの精巧に彫られた扇子を選んだ。
彼女によると、その理由は——

「商売人たるもの、和を以て貴しと為さなければ。
兵器を携えていては、友誼に亀裂が入り、商談にも暗雲が垂れ込んでしまいます」

「ですが、この扇子は違います。
普段は扇いで涼を取れますし、話の通じない方に出会ってしまった時は、この扇子で熱を冷まして差し上げることもできます。
座って話ができれば一番いいのですが、それが難しいようであれば……」

「——この扇子で思いっ切りひっぱたいてあげましょう!」


  • ストーリー詳細4

舵取に昇進するのであれば、停雲の温厚な性格は助力ではなく、足枷にしかならない——
天舶司の歴代責任者は全員超一流の飛行士であり、数々の修羅場を潜り抜けてきた戦士である——
停雲には星槎を操縦する才能もなければ、殺生を好む性質でもない。
彼女と天舶司の現舵取・御空には雲泥の差があるのだ。

それでも御空は停雲に未来を託そうとしていたのだが、彼女は自分にその資格があるのかどうかわからなかった。

彼女にとって御空は信頼できる上司であると同時に、行商で遭難した時に命を救ってくれた恩人でもある。
彼女の心の中で、御空は光芒を放つ偶像になっているのだ。
それは彼女の心の拠り所であり、前路を照らす道しるべでもある。
彼女は星の光を掴もうとしたが、自分は影の中で必死に追いかけることしかできないことに気が付いた。
そしてある日、その孤星が彼女に言った。

「時代は変わっている。
仙舟は変わっている。
いつの日か、この巨艦は血と炎の空に嫌気が差すでしょう。
その時、この天舶司はあなたの舞台になるわ」

その言葉はどこまでが冗談なのか、彼女にはわからなかった。
それでも彼女はそれを丁寧に封筒に入れ、店の引き出しの奥に仕舞った。
この言葉は絶対に忘れてはいけないと思ったのだ。

「たとえ戦場に立つことができなくでも、私の力を発揮できる場所はある」
狐族の少女は自分に言い聞かせた。
羅浮は緩やかに航行しながら、忌み物との征戦で負った傷を癒している。
そして、商業の繁栄がこの時代の下地となった。

停雲は御空の期待を理解している。
だからこそ、彼女はさらなる助力と親交を求めて星空に飛び出した。

「現在の羅浮で舵術の頂を拝する者は誰かと聞かれれば、人々は当然、御空様の名を挙げるでしょう。
しかし、私に言わせてもらえれば……」

「私の弁才も、ある意味『舵取』の能力に違いありません。そうは思いませんか?」