アーカイブ/キャラクター/素裳

Last-modified: 2024-02-09 (金) 12:20:51

一本の重剣を携えた少女。雲騎軍の新人で単純かつ熱心。
雲騎軍の伝説に憧れ、自分も名を響かせるような人物になりたいと願っている。
そのため、素裳は「頼まれたら必ず応じる、日に三度は我が身を省みる」という信条を固く守り、人助けを楽しみながら慌ただしい日々を送っている。

  • ストーリー詳細1

玉界は朗朗、瓊田は蕩蕩。
星槎は海市に織り込まれ、天門を往来する遊客は絡繹として絶えない。
羅浮に出入りする客人は、頭を上げれば広々とした界門を見ることができる。
その空間の隔膜は渦のように揺らぎながら、拠り所もなく大小不同の船を吐納している。
実に壮観な光景だ。

この天門の名は「玉界」、実は仙舟洞天の出入り口である。
門の下、少し離れた場所に並んだ観光客の列が、ゆっくりと羅浮の中へ進んでいく。
その中に杏黄の服を着た少女がいた。
顔だけ見れば16、17歳くらいだろうが、仙舟の尺度では実年齢を推測することはできない。
また、どれほどの怪力なのかはわからないが、かなり重そうな剣を背負っている。

その剣は二尺一寸ほどあり、尋常ならざる大きさを誇る。
白い布で剣身を覆ってはいるが、どうにも古典的で素朴に見える。
しかし、その両刃はセミの翼のように薄く、髪の毛を乗せて息を吹けば両断できるほど鋭い。
行き交う遊覧客はその兵器を見て度々賞賛の意を表しているが、少女は眉間にしわを寄せて考え込んだ。
「変だなぁ。母さんが教えてくれたこの心訣、心を静められるって言ってたのに、どうして効かないんだろう?」

彼女がさらに小難しい言葉を口にする前に、関門を守る持明の男が彼女に向かって手を振った。
「次の人!」少女は驚いて歯を食い縛ったが、意を決して前に進み出た。

「金石は鑠けども、盟誓は……」
少女は持明の男に向かって真面目に告げる。
「金石は鑠けども、盟誓は不破なり」、持明の男は少し訝しげに言った。「ただ通関すればいいのに、なぜ呪文を唱えたんだ?氏名、来歴、入境理由などを細かく記入してもらおうか」
少女は黙り込んだ。
そして、自分が羅浮の典故を間違って使ったことに気付く。
彼女は仕方なく四方鏡を取り出し、男の要求通りに報告を始めた。
「氏名:素裳、持ち物:『軒轅』、来歴……」
「…もう!この『曜青』の『曜』って字…どうやって書くんだっけ?」


  • ストーリー詳細2

素裳が雲騎の招集に応えて羅浮に来てから、すでにそれなりの時間が経過している。
彼女は日頃から真剣に見回りをしていたが、いくら続けても事件に遭遇することはなく、そのせいで最近は苛立ちを感じていた。
結局、彼女は暇さえあれば剣術や武術の鍛錬をしたり、講談を聞きに行ったりと、とにかく退屈な日々を送っていた。

その日、彼女は「不夜侯」のテーブルにもたれながら、講談師が羅浮「雲上の五騎士」の話を始めるのを待っていた。
しかし驚堂木が落とされる前に、雲騎の同僚が扉を破って入って来るや否や、堂内で叫んだ。
「素裳、急げ!あの殊俗の民がまた騒ぎを起こしたぞ!」

その言葉を聞いた素裳は瞬く間に気力を取り戻し、重剣を持って外に飛び出した。
現場に到着すると、赤い髪の少女が剣を呑んだり、火を吹いたりと、周りの観客を賑わせている。
やがて、その少女は巨大な青花崗岩の大板を持ち出して、その場で「胸で大石砕き」を披露しようとした。

「そこまで!ここは普段から渋滞が問題になってるの。雑技をしていい場所じゃないよ!」
素裳は厳しく叫びながら、『軒轅』の切っ先を少女に向ける。
素裳の剣が不安定に揺れていることに気付いた少女は、怯むことなく斜め後ろに足を戻すと、その三尺はある火棍を振り上げた。

「こっちから行かせてもらうね!」
その赤い髪の少女は朗々とした声を上げ、槍棒を素裳の腕部めがけて投げつけた。
素裳は咄嗟に一歩後退したが、その隙に少女は懐から丸いものを取り出し、それを勢いよく地面に叩きつけた。
爆発音が立て続けに聞こえ、辺りが一瞬にして煙に包まれる。
素裳が気が付いた時には、少女は姿を消していた。
「これって…爆竹!?」
「あの殊俗の民…侮れない!」


  • ストーリー詳細3

「親愛なる母さん、父さんへ

2人とも元気にしてる?
アタシは言われた通り羅浮の雲騎で修行してるよ。
今回は2人に報告したいことがあるんだ!

アタシにとって、ここ最近で一番重要な出来事は——
やっぱり他の人の手を借りないで危険分子を1人制圧したことかな!
その殊俗の民はあちこちで騒ぎを起こしてるだけじゃなく、大量の爆発物を持ってたりもして、公共の安全を脅かしてたんだ。
でも…その子は生計を立てるために仕方なくやってたんだって。
今はアタシに感化されて更生して——
なんとアタシの友達になったの!

それから、2人の言いつけ通り毎日剣術の稽古を続けてるんだけど、すっごく上達した気がするの。
休暇が取れたら家に帰って2人にも見せてあげるね。
きっと喜んでもらえると思う!

家を出る時に母さんと父さんに言われたことも忘れてないよ。
心を鎮めて鍛錬に励む、決して心遠意馬してはいけない。
アタシは色んなことを経験して、少しずつ成長してる。
まだまだ足りないものもあるけど、アタシはもう独覇一面になったから!
2人も心配しないでね!

素裳
10月21日」


  • ストーリー詳細4

「素裳へ

手紙を貰って、まるであなたに再会したかのような気持ちになりました。
こちらは変わりありませんので、どうか心配なく。

手紙に記されていた近況はよくわかりました、喜ばしい限りです。
今回は新しく言いつけておきたいことができたので、この手紙の通りに努めてください。

其の一、交友の際は損益を明確にするように。
あなたはすでに及笄の歳ですが、人心は計り難いこと、世には陥穽の危険があることをまだ理解していない。
邪なる悪党と同じ道を行くことになれば、私たちは深い憂いと憤りを感じるでしょう。
素直な人、信頼できる人、知識のある人は君子であり、広く交際するべきですが、便辟する人、善柔な人、便佞な人は小人であり、離れるべきです。

其の二、功名心に囚われてはならない。
素裳が常に義侠心を貫いていること、義を重んじていることは私たちも知っていますが、手紙の内容には虚実が入り混じっていて、いくつか誇張されていると思われる箇所もありました。
仙舟の諺にもあるように、『名は簡にして得られず、誉は巧にして立たず』。
実力を発揮して傲慢になり、功績を自矜することは、多くの苦労をしたとしても避けるべきです。
肝に銘じておきなさい。
私たち仙舟の民の寿限は無窮ですが、幾多の功名は目前を過ぎる雲煙に過ぎません。
だからこそ人は根本を固め、薄氷の上を歩くような気持ちで歩を進める必要があるのです。
一時でも功を急げば、岐路の先で災難に遭い、魔陰に落ち、終生の害となるでしょう!

別:日頃から剣技を砥礪すること。
『剣心訣』を唱え心気を凝練することも忘れずに。
心蘊は武芸の根本、いつか無形に心気を練り上げられた時、剣は身外のものと知るはずです。
草、木、石、竹、すべて等しく剣と成し、心と力に順じ、逍遥自在の境地に至れば、『軒轅』を飼い慣らせる日も近いでしょう。

又:誤字が多いわね、素裳。
勤務の後は読書しなさい。
それと、正しくは「独当一面」で「独覇」じゃないわ。

素衣
10月22日」