アーカイブ/キャラクター/鏡流

Last-modified: 2024-02-24 (土) 01:06:03

かつての羅浮の剣首、雲騎常勝の伝説を築いた者。
しかし今、その名は抹消され、魔陰の境を歩く仙舟の裏切り者となっている。

  • ストーリー詳細1

剣、長さ三尺七寸、この上なく軽い。
それは普通の鉄で鋳造されたものではなく、堅い氷を凝集させたものである。淡い光を放ち、まるで一筋の月の光を握っているかのようだ。

「剣、長さ三尺七寸、重さ七斤余り。手に持ち、鋭利な先端で敵を突き刺す」
軍装の女性が軽く手を振ると、、剣は魂が宿ったかのように武器の棚から飛び上がった。そして女性の手の中で収まると同時に鞘から抜かれ、少女の横に突き立てられる。辺りには衝撃で剣が震える音が響いた。
「覚えた?覚えたなら、歩離人の陸戦で最もよく使われる戦獣を相手にしてみよう。血眼の睚眦を10体倒せば、最初の授業は終わり」
彼女は口を閉じたまま、ただ左右を見回す。これは彼女が救助されてから初めて病室を離れ、生まれて初めて剣という武器に触れた瞬間だった。
「医士と助手には席を外してもらったわ。私の命令がなければ、彼らはあなたを探しにこない」
「蒼城の災禍を生き延びた人は多くない。救援が到着するまで、あなたが一体どんな経験をしたのかはわからないけど…あなたがこのまま過去の恐怖に溺れながら人生を送っていくところは見たくないの」
「口が利けなくても大丈夫、それを使って話すといいわ」
「それを使えば、私たちのすべてを奪った怪物を完全に消し去ることができる。それほど素晴らしいものは、この世に多くは存在しない」
軍装の女性は表情を変えることなく、少女の横にある長剣を見つめる。

鏡のような刃が彼女自身の姿を映し出している。無数の鋭い破片が嵐のように巻き上げられ、少女を引きずり込む――
暗く深い空の中、羅睺という名の妖星が悲鳴を上げ、歌を歌いながら、燃え盛る山脈と大地を伴い、人々に襲いかかってきた。
大通りにいた人々は叫び声を上げ、終末の絶望の中で藻掻き、転げ回っていた。金色の枝や蔓が口や鼻の中で成長することに構うこともできずに。
すべての出来事を目の当たりにした彼女は、身動きを取ることができなかった。体の内側が沸騰するように熱い。何かが彼女の体の中心で勢いよく転がっている。熟した穀物が殻を破って飛び出そうとするかのように、それは無限に膨張していく。
しかし、目の前に迫った山脈を見た彼女は、自分はただのカゲロウであり、まもなく死神の指先によって捻り潰される運命なのだと悟った。

溺れ死ぬ直前、彼女は傍にあった唯一の浮草を掴んだ。
剣、長さ三尺七寸、重さ七斤余り。


  • ストーリー詳細2

剣、長さ六尺五寸、重さ十四斤。
これは雲騎軍の大剣の形に作られているため、両手で握らなければならない。その刃には離火が秘められており、敵に接触した瞬間、器獣のイナート外殻を切り裂くことができる。
また、戦闘を支援するための飛剣が12本あるのだが、「大椎」から「陽関」までのツボに繋がっているため、激しい嵐のように一瞬で展開することができる。
彼女は剣術のことをよく理解しておらず、まだ多くのことを学ぶ必要がある。

軍装の女性にそれ以上を教える時間はない。まもなく軍を率いて出征しなければならないからだ。そして少女の2回目の授業は戦場で行われ、倒れた敵から学ぶことになった。
「突き刺す」は確かに簡単でわかりやすいが、敏捷な怪物は彼女に処刑されるべく、自ら剣先に向かってきたりはしない。そこで彼女は「斬る」ことを覚えた。
次は「絡む」ことだ。驚くべき力を持った怪物を前にして、少女は剣の背で攻撃を受け流すことを覚えた。
彼女は、自分は完璧に剣術を習得したと考え、自分の10倍の大きさはある器獣戦士「龍伯」に飛び乗った。
しかし、持っていたすべての剣を折っても、相手の巨体には浅い傷しか残らない。
大きな手で弾き飛ばされ、戦場の血に染まった泥の中に倒れた彼女は、再び恐怖に溺れた。溺死する瀬戸際で、彼女は剣術にも限界があるのだと理解した。
その時、炎を纏った弩の矢が龍伯の頭を吹き飛ばした。「立ちなさい」軍装の女性は彼女を見つめていた。

「もう剣術の修行はやめる。こんなもの…何の役にも立たない」
「役に立たない?私には大いに役立っているけど。結局のところ、扱う人間が役立たずなだけでしょう」
「……」
「剣術を学ばないなら、何を学びたいの?飛行士の星槎にある煉石矢?神腕営に標準装備されている熾火弩?それとも…仙舟『朱明』の朱明火?あの妖星を滅ぼすだけなら、それがあれば十分ね。それを学びたいの?問題ないわ。それらを使えば顔を合わせて戦わなくても相手を殺せるもの」
「…私はただ、なぜあなたが剣術を学ばせようとするのかわからないだけだ!」
「将軍から兵卒に至るまで、雲騎軍は全員が剣術から学び始める
「工造司の様々な兵器は、確かに自分の代わりに敵を倒してくれる。でも、そうした兵器はいずれも自動で動いているだけ。ある日、矢が尽きて、星槎が墜落して、金人の動きが止まったら、誰が私たちを守るの?誰が仙舟を守るの?」
「この剣を握って、心に刻みつけなさい。雲騎軍が自ら剣を握って出陣してこそ、人間たちの戦いになる。私たちは自分の肉体と技を使い、あの人ならざる忌み物たちに証明するの。機巧に私たちの代わりを任せるのではなく、私たちの手であいつらに勝つということをね!」

軍装の女性は背を向けると、鏡流と折れた剣だけを残して演武室から立ち去った。
剣、長さ二尺一寸、折れて柄と鍔しか残っていない。


  • ストーリー詳細3

剣、長さ五尺、非常に重く、黒い刃には血の色が浮かんでいる。
この剣は天外の金石を使い、何度も精錬して作られたもので、通常の武器の規則からは外れている。この剣を鍛えた短命種の職人のように、それは手がつけられないほど横暴で、極めて誇り高かった。

これまで剣だけを友人としてきた彼女に、多くの友人ができた。

彼女が剣首の名を獲得した日、その職人は黒ずくめの服装で式典に現れると、後ろ手に剣を放り投げた。剣は地面に数尺ほど埋まり、ほぼ柄しか見えなくなってしまった。人々は騒然となった。
「俺が鍛えた剣の真価を発揮できるのは、羅浮雲騎軍の剣首だけだ」彼は歯を見せて笑った。

月のように孤高で不遜な羅浮の龍尊は、彼女の神技を目の当たりにして闘争心を抱いた。
剣と槍は何年にもわたって戦い続けていたが、勝敗が決することはなかった。最終的に、彼女は顕龍大雩殿で剣を使って海を断ち切ることで、龍尊の敬服を勝ち取った。

星海を飛び回る見識の広いナナシビトは、彼女のために船の舵を取り、星海の向こう岸で作られた美酒を持ち帰った。彼女と酒を飲みながら語らい、共に輝く空の星々を見つめた。

「天の星々であろうと、我は斬り落とす」
ぼんやりと、彼女は酒の勢いで口にした大言を思い出した。子供の頃の記憶にあった、突如として現れた燃え盛る星宿、そして彼女を悩ませ続けていた恐ろしい悪夢も、もう怖いものではなくなっていた。
これまで剣を振るい続けてきた彼女だったが、今、初めて生きる望みとは何かを知ったのだ。それまで彼女が抱いていたものは、死の志に過ぎなかった。

そして彼——彼女の弟子。
彼女は彼との出会いを思い出した。彼は幼いくせに悪知恵だけはよく働く子供で、昔の自分とまったく同じ質問をしたのだ。
「師匠はなぜ剣を使うことにこだわるのですか?敵を殺せる武器はたくさんあるでしょう。あの星を消滅させたいなら、仙舟の朱明火を使えば可能だと思いますが」
「その質問は詩人になぜ詩を書くのか問うのと同じこと。自分を表現する方法はたくさんあるが、我の方法はこれだけなのだ」
今では彼も雲騎軍の俊才となっている。

もう彼女に師はいない。軍装の女性は戦の中で命を落とし、これ以上彼女に何か教えることはできなくなった。
しかし、もう彼女に師匠は必要ない。彼女は剣のすべてを会得した。今の彼女にとって剣は体の一部、所作の一つになっている。
人々は彼女を「無罅の飛光」と呼ぶ。それは到底手の届かないような剣士の頂点を意味している。しかし、彼女は理解していた。「天の星々を斬り落とす」には、彼女の剣でも力不足であることを——

たとえ彼女の手に握られているのが仙舟一の宝剣と称えられるものであったとしても……
剣、長さ五尺、非常に重く、黒い刃には血の色が浮かんでいる。


  • ストーリー詳細4

剣、長さ五尺、非常に重く、黒い刃にはいくつもの亀裂が入っている。
混乱した戦いの中で、彼女はその剣を手に、戦友や弟子と共に歩離の旗艦に攻め入り、戦首の頭を斬り落とした。また、空高くそびえる飛空城に登り、羽衛たちの羽を切り落としたこともある。彼女は慧駿の執綱者と戦い、六足駿馬の精鋭をことごとく牢獄へ送った…ひとたび彼女の剣が向けられれば、その先にいる忌み物は死ぬか敗れるかの二者択一で、逃れられることはない。
彼女は、生死を共にしてきた友人に剣を向けることになるとは思いもしなかった。

彼女は息を切らしながら傷ついた体を何とか支えていた。遠くの洞天からは悲痛に満ちた龍の咆哮が聞こえてくる。それはまるで束縛からの解放を求めているようだった。
誇り高き匠が泥の中に倒れるのを見て、彼女は彷徨う魂のように彼の横を通り過ぎる。
「先にお前を殺すべきだった…だが、お前には背負うべき別の罪がある。永遠の罪が……」
彼女は折れた剣を龍尊に向けた。
「馬鹿な。龍師たちは言っていた…我が一族の血、我が祖先の魂は、別の龍尊を創るはずだと。何もかも…こうなるはずではなかった」
「お前を殺してすべてが元に戻るなら、我はそうしよう…だが今は……あの龍の逆鱗の場所を教えてくれ」
「頭頂部だ……」

半分は龍の姿をした厄獣が稲妻のように空を駆け抜けていく。水平線を呑み込むほどの巨体で浮島を砕き、千本の剣がぶつかり合うような声で泣き叫ぶ。
彼女は自分の体の中心が燃えているように感じた。熟した穀物が殻を破って飛び出そうとするかのように、それは無限に膨張していく。
彼女は再び子供時代の悪夢に囚われる自分を見た。凶星が降り注ぎ、カゲロウは無力に藻掻く。
女性は服の裾から黒い布を破り取り、それで両目を覆った。
雷が轟く。彼女は剣を持って高く跳躍し、邪悪な龍に立ち向かった。
夢とも現実ともわからない幻覚の中で、彼女は自分の肉体がついに限界を超え、崩れ始めたことに気がついた。まるで糸のような束縛が体中を締め付け、少しずつ彼女の最後の意識を切り裂いていくかのようだ。
その時、突然あの言葉が耳元で響いた。
「天の星々であろうと、我は斬り落とす」

その瞬間、彼女は夢にまで見た宝剣を握り締めた。
それはあらゆる束縛を断ち切れる剣。それは長年慣れ親しんできた剣。
それは普通の鉄で鋳造されたものではなく、堅い氷を凝集させたものである。淡い光を放ち、まるで一筋の月の光を握っているかのようだ。
剣、長さ三尺七寸、この上なく軽い。