アーカイブ/キャラクター/ミーシャ

Last-modified: 2024-02-24 (土) 20:22:37

礼儀正しく聡明な「ホテル・レバリー」のドアボーイで、祖父のような銀河冒険家になることが夢。
働き者で、機械の修理が得意。ホテルの宿泊客から聞く星々のエピソードに夢中になっている。
早く大人になることを切望し、そしていつか星を巡る旅に出られる日が来ることを楽しみにしている。

  • ストーリー詳細1

時計が朝の6時を告げると、いつものように厨房からホットミルクとトーストの香りが、彼の小さな寝室に漂ってきた。

もうすぐお客さんが来る。彼は慌てて飛び起き、玄関に立った。彼が口を開く前に、数人の背の高い人物がホテルに入ってくると、機械油と革、そしてタバコのにおいが彼を襲った。

「い…いらっしゃいませ……」

遠路はるばるやって来た冒険家たちは、下っ端のドアボーイなど目もくれず、過去の武勇伝を大声で吹聴している。そしてそうした話はなぜか、いつも彼の心を惹きつけ、彼は時折振り返っては耳を傾けていた。

「巨大な光の束が天から降り注いで、緑の生い茂る星を貫いたんだ…俺はその時近くにいたが、飛行船が衝撃で吹っ飛ばされちまったよ。なんとか写真に収めたが、命懸けだったぜ……」
「それが何です。私なんかもっとすごいですよ。星の間を旅していた時、底なしの記憶域に落ちたことがありまして…見たこともない怪物だらけで、幽霊みたいなやつなんかもいて……」
「シケた話ばっかだな!お前らは、地表を覆い尽くすほどのスウォームを見たことがあるか?俺様は生きて帰ってきたが、星がまるごと滅んじまったのよ……」

本当かも分からない武勇伝をうらやましそうに聞きながら、彼はついに勇気を出して口を開いた。
「あの…すみません!銀河で冒険するために、何か勉強した方がいいことはありますか?」
会話が止まり、数人が一斉に彼を見た。
「どうした、チビ助。お前も銀河を冒険したいのか?」
「はい…冒険家になって、銀河中を旅したいんです。祖父のように」
「でっかい志だな、ハハハ!」
「おチビさんよ、冒険家になるってのは簡単じゃないぜ。武器の使い方から修理の仕方、方向感覚…勉強することは山ほどある」
「知ってます…祖父はいつも、何かが壊れたとか、コースを外れたとか…延々と愚痴を言ってますから。学べることがあるかも……」
「まったくお前さんたち、子供を怖がらせるのが好きじゃのう」
先頭の老人がせき払いをして、ミーシャの方を向いた。
「ゆっくり学べばいいんじゃ、ただしようく考えないといかんぞ。本当にその夢を叶えたいと思っておるのか?いつまでもその夢を持ち続ける覚悟はあるか?ミーシャよ、それが最も大事なことじゃ」


  • ストーリー詳細2

時計の針が昼の2時を指すと、彼は掃除と出迎えの仕事を同僚に任せる。そして自分は作業服に着替えて、機械を修理する仕事にかかるのだ。

ウェルダーは前を歩きながら、時々立ち止まっては複雑そうな機械を叩いている。ミーシャは小走りで彼の後ろをついて行き、機械から発せられる音を聞いて、問題のある箇所を正確に指摘した。

今日の仕事は、山積みになった壊れた時計の修理だ。さびたもの、廃棄されたもの、歯車が欠けているもの、壊れてしまったもの…それらがミーシャの目には方角を見失った船員たちに見えた。誰かが、正しい方向へ導いてあげなくては。

「壁掛け時計さんは、西へ向かってください。えっと…懐中時計の奥さん、そこで止まらないでください!」
「目覚まし時計さんは、まずご飯を食べてください。そちらにいる三人の時計さんは、懐中時計の旦那さんについて行ってくださいね」
突然、壊れた時計が全て動き始めた。ねじを回し、針を調整するミーシャの姿は、まるで時間の海を旅する船長のようだった。
「ミーシャ船長、方角はこっちでバッチリですね!」
「ついに霧から抜け出しました。この海を渡れば目的地です」
「航海を続けよう!大海原にも負けないぞ!」
ミーシャの目には、時計たちに命と意志が宿り、前に進める喜びを力いっぱい表しているように見えた。

ウェルダーは微笑みながらミーシャの頭をなでた。
「時間が狂う心配はなさそうだな。何があっても、君という船長がいる」


  • ストーリー詳細3

時計の針が夜の7時を指すと、彼は早めの夕食を済ませて、戸棚を改造した小さなベッドに横になる。
目の前の閉ざされた暗闇を眺めて、懐中時計が刻むカチカチという規則的な音を聞きながら、幸せな妄想に耽る——仕事も現実もなく、ただ自由な空想の世界へ。

霧を通り抜けると彼の空想物語は、最高に手に汗握る海戦のシーンに差し掛かる。両手を伸ばし、波でひっくり返った仲間を引っ張り起こした。そして彼は、まるで海の怪物をやっつけるかのように、画面に横線を引いた……

「船長、船長、起きてください、晴れましたよ!」
目をこすると、そこには信じられない光景があった。
手足が生え、制服と赤い蝶ネクタイを身に着けた懐中時計が彼を呼んでいるのだ。
銀色の鏡が彼の姿を映し、長いスカートをいじりながら望遠鏡で景色を見ていた。
昨夜の嵐は跡形もなく消え、爽やかな風が制服をなびかせる。遠くにはもう新大陸の影が見えていた。

「船長、見てください。海岸まではもう遠くありませんよ」
クロックボーイはミラーガールと手を取りながら、軽やかにジャンプする。ミーシャがまだうまく反応できないうちに、三人は雲に飛び乗った。下には果てしない大海原と三日月形の大陸が広がっているのが見える。クロックボーイとミラーガールは歓声を上げてミーシャの手を取り、楽しそうにタップダンスを踊った。彼は仲間たちの手をしっかりと握りながら、喜びと驚きに胸を躍らせた。

「アナタたち…アナタたちはボクの仲間なの?」
「そうですよ。私たちは道中いくつもの大きな困難を経験して、何度も道に迷いながら、ついに新大陸に到達したんです」
……

夜が明けると、彼は夢から覚めた。目の端から一滴の涙がこぼれ落ちる。
寝室を見渡すと、懐中時計が胸に押し当てられ、鏡が壁から落ちていた。
涙をぬぐった彼は、何も失っていないような、あるいは何もかも失ってしまったような、そんな感覚に陥った。


  • ストーリー詳細4

時計の針がまた朝の6時を指すと、いつものように厨房からホットミルクとトーストの香りが、彼の小さな寝室に漂ってきた。

彼はここの生活にすっかりなじみ、自分の夢を心の奥底へとしまい込んだ。宿泊客の語る物語にたやすく心動かされることも、祖父はすぐ帰ってくると期待することもなくなった。

「大人はみんなそういうものなのかもしれない。約束を守らないし、子供の話なんて真面目に聞いてもくれない」
宿泊客はミーシャに荷物を預けると、彼に目もくれずそそくさと立ち去った。その場には、独り言をつぶやく彼一人だけが残された。

彼は時計の部屋に戻り、いつものように時計をチェックする。世界にはいろいろなタイムゾーンがあり、それぞれの場所で流れている時間は都度違う。壁一面にかかった時計をぼんやりと眺めながら、そうした世界で起こっているであろう出来事を空想した。やがて彼は画用紙を広げ、自身と空想上の仲間たちの物語の続きを描きはじめる。

物語は、すでに終盤へと差し掛かっていた。

「みんな、さようなら!ボクは新大陸に残るよ。そしてここが完成したら、キミたちと一緒にまた新しい世界を目指す」
「ミーシャ船長、さようなら!きっとまた会えますよ」
仲間たちは行ってしまったが、ぴょんぴょん跳ねるクロックボーイと、優しいミラーガールは残ってくれた。彼はかつて仲間たちを率いて霧のなかを航海し、海を渡った。危険に遭遇するたび、羅針盤を調整して皆を正しい方角へと導いた。そしていま、ミーシャという子供は再び錨を上げるその時まで、新たな大陸に新たな国を築くのだ。

「続きを描くなら第二部は…とりあえず、新大陸での冒険記かな」
最後の部分を描き終えると同時に、聞き覚えのある音と振動が伝わってきた。それはまるで、宇宙から何かものすごく巨大な怪物がやって来て、ホテルの外に止まったかのようだった。

彼は筆を置き、ドアを開けて外へ飛び出した——

「こんにちは、いらっしゃいま……」

夜明けの光を浴びて輝く星穹列車は、やや疲れた様子で、しかし誇らしげに…そこで静かに佇んでいた
——まるで、「夢」の中にいるようだった。