ポジティブで些細なことにはこだわらない、義手の格闘家。「地炎」のメンバー。
リングから戦場へ、ボクサーから戦士へ。ルカはその力で下層部の人々を守ってきた。
その身で絶望を経験したからこそ、ルカは他の者に希望をもたらそうと努力する。
- ストーリー詳細1
一度、もう一度と、ハンマーを振り下ろす。
火花が目の前で弾け、筋肉と関節が擦れる音は、金属がぶつかり合う音の中に埋もれる。少年の身長ではまだ棚の一番上には届かないが、ハンマーを振り回す力はもう熟練の鍛冶職人に匹敵する。
この小さな鍛冶屋が彼の生活の全てだ。父は店の前に座り、錆びついた表札を何度も拭いている。彼はたまに、硬いベッドの上に横たわって自分の未来を想像する——だが、いくら思考を巡らせても、果てには父親の背中が浮かんでくる。
足音が聞こえてきて、彼は手を止めた。父が立ち上がった。その厚くもやや曲がった背中からは、一抹のへつらいが見える。また「地炎」の人たちだ——ハンマータウンに戒厳令が敷かれてから、彼らはよくこの鍛冶屋に来るようになった、おかげで各種武器の注文もかなり増えた。
少年が考え事をしていると、リーダー格のあの常連客と偶然目が合った。その人は黒い皮膚と逞しい体躯、そして鋭い眼光を持っている、だが、自分を見た瞬間に突然柔らかくなった。彼は少年に向かって頷く。
「ようこそ、オレグの旦那!今日は何が必要ですか?」
「まあまあ、急がずに。今日はただ話をしたいだけだ」、彼はルカを指差した。「お前さんの息子について」
- ストーリー詳細2
炎の光が辺りを照らし、煙が彼の視線を遮る。怒号と叫び声が耳に伝わってくる。オイルと血の匂いが交わって襲い掛かってきた。ルカは吐き気をこらえる。
初めて標準的なストレートを打ち出した時、オレグ師匠の笑顔は彼を大きく励ました。しかし、前線の残酷さをその身で知った後、あの時のような温かい心の流れはもう感じ取れなくなった。整列する時、彼はいつも戦友たちの表情をこっそりと観察する——一つ一つの顔から読み取れる不安が、逆に彼の緊張感を和らげる。
大きな叫び声がルカを現実に引き戻す。声の方向を見ると、子供がモンスターに追い詰められていた。彼は本能的にモンスターと子供の間に飛び込む。
後ろからとても大きな声がした。ルカはパニックになった男の子を抱きしめながら、ゆっくりと振り向く。流れ弾が急所に当たったのか、異形のモンスターは既に倒れていた。
「あ…ありがとう、お兄さん……」
「大丈夫か?」
「お兄さん…腕…腕が……」
子供が指差す方向に沿って、自分の右腕を見ると——上腕があるはずの肩の部分には、風に揺れる布切れしか残っていなかった。その下からは血がだくだくと流れている。
痛みが意識を奪う前に、あの温もりがもう一度彼の心に流れ込んてきた。
- ストーリー詳細3
初めてのトーナメント。ルカは決勝戦で倒れた。
「ハハハ、役立たずが!これが弱肉強食の世界だ——テメェみてぇなザコが出しゃばっていいところじゃねぇ!」
ルカはその侮辱を気にしなかった。決勝戦の相手は、汚い手ばかり使うことで有名なワルだ。卑劣なやり方でしかチャンピオンを勝ち取れないのなら——ルカは思う——ベルトなんかいらねぇや。
次の日の夜、彼はクラブの曲がり角で数人の子供を見かけた。やせっぽちな男の子が満身創痍でうずくまっており、大きな図体の子供たちがその周りを囲んでいた。
「ははは、役立たずが!」先頭に立ついじめっ子が傷を負った男の子を見て嘲笑う。「これが弱肉強食の世界だ——テメェみてぇなザコが出しゃばっていいところじゃねぇ!」
その時、ルカは下層部のチャンピオンになることを誓った——彼自身の方法で、正々堂々と。
- ストーリー詳細4
「今日はここまでにしよう。こっちだ、小僧、座りな」
「…これで終わりっすか?今日はもう何セットか追加しようと思ってたんすよ!」
「まったく、無理をするな。早く来い!」
「ハハハ、今行きます!」
「小僧——一つ聞く、正直に答えろよ」
「お?なんだそりゃ、師弟の打ち明け話をするんすか?んじゃどうぞ、師匠」
「じゃあ聞こう。お前は…心からボクシングが好きなのか?」
「ハハハ、どうして突然そんなことを聞くんすか?もちろん好きっすよ!じゃないと師匠の傍に何年もいられる訳ないじゃないっすか?」
「小僧、上手いことを言ってるとでも思ってるのか?真面目に答えろ!」
「真剣だな…わかったよ。正直に言えば…そんなに好きじゃないな」
「…ああ、ようやく本音を言ったな。じゃあもう一つ聞く…もし、下層部が『地炎』を必要としない日が来ても…お前は拳を振り続けるのか?」
「うーん、そうっすね…振るい続けると思う」
「なぜだ?お前はチャンピオンベルトのためにリングに上がった訳じゃない、俺にバレてないだなんて思うなよ。もし下層部が本当に平和になったら…それでも拳を振り続ける理由がお前の中にまだあると思うのか?」
「師匠が言ってたっすよね?どの時代にも悪党がいる。たとえ裂界のモンスターが死に絶えても、人間は些細な出来事で争い合う」
「あー…確かに言ったな」
「だから、この世に悪人がいる限り、守るべき善良な人がいる限り——」、ルカは立ち上がった、「——オレは拳を振り続ける!」