本棚/ヤリーロ-Ⅵ(2)/外縁通路に捨てられた古新聞

Last-modified: 2024-03-11 (月) 03:23:58

昔の新聞、過去のベロブルグの風貌を断片的に記録している。

大守護者タチアナの重要スピーチ
※「告知板には丁寧に切り抜かれた新聞が貼られている。内容は、大守護者タチアナが新たに建設された博物館の前で行った記念スピーチの全文、『水晶日報』が掲載したものだ」※

大守護者アレキサンドラ逝去五十周年記念スピーチ

本日はベロブルグ3代目大守護者アレキサンドラ様の没後50周年にあたります。偉大なる人物が世を去ってから、私たちはベロブルグの創建以来、最も穏やかな50年を過ごしてきました。民は安居楽業でき、全てはあるべき姿へと向かっています。私たちは今、歴史上で最も良い時代を生きているのです。これらすべては大守護者様の功績の賜物です。アレキサンドラ様に心から敬意を払ってください。

アレキサンドラ様が大守護者を務めていた間、ベロブルグの形態に非常に大きな変化がありました。下層部の開拓進度が大幅に進み、多くの志ある青年が鉱山町で事業を興しました。下層部の経済を発展させると同時に、アレキサンドラ様は教育にも力を入れておりました。アレキサンドラ様は「ベロブルグ大学」の創立し、基礎科学の研究を支援しました、その援助が実を結び、地下世界の生態への認識は未だかつてない高みへ到達したのです。それ以外にも、アレキサンドラ様はベロブルグの度量衡を統一し、今も使われている「建創紀元暦」を制定なされました。アレキサンドラ様がいなければ、ベロブルグは今も、混乱した愚蒙な暗闇の中で迷っているとも言えましょう。

私個人の立場から言えば、アレキサンドラ大守護者は会ったことのない英雄のような人です。私がまだ大守護者候補だった頃、よくファイカ様が私にアレキサンドラお婆さんの物語を話してくれました。ですから、アレキサンドラは片時も離れることなく、私たちのそばにいてくれたと言えるでしょう。ベロブルグは永遠にアレキサンドラ、そして歴代大守護者の名前を忘れないでしょう、彼女らの偉大な名前を永遠に胸に刻み、今から50年後も忘れることはないでしょう。100年後、500年後、1000年後も同じです。

今一度、偉大なる大守護者アレキサンドラに深く敬意を表しましょう。

兄弟が法廷で審問を受ける、ゲーテ宅臨時封鎖
※「掲示板には丁寧に切り抜かれた『水晶日報』の記事が貼られている」※

ベロブルグで古くから知られている「ゲーテ一族」にとって、これまでの3ヶ月は一族の運命を変える3ヶ月となった。

オースティン・ゲーテの葬儀での騒動はいまだ収束しておらず、2人の息子はまたもや法廷で激しく対立した。波乱の裁判が終わった後、グレイ・ゲーテが「国家反逆罪」を犯したというニュースにベロブルグの住民たちは再び驚かされた……この間に一体何があったのだろうか?本紙記者が事件を整理する。

オースティン・ゲーテの死後間もなく 兄弟が遺言をめぐって対立

「ゲーテ一族」はベロブルグ成立時から名声高く、2代目大守護者「鉄腕のスベトラーナ」の厚い信頼を得ていた。ベロブルグ内の各勢力を統一する上で、ゲーテ一族は並々ならぬ功績をあげた。先日、一族の中心人物であるオースティン・ゲーテが死去し、盛大な葬儀が執り行われ、各界の著名人が参列した。

しかし、オースティン・ゲーテの遺言が2人の息子の待遇に差をつけていたため、葬儀の席で物議を醸すことになった。遺言では、長男のホワイトが財産の65%、次男のグレイが20%を受け取り、残りは一族の基金に投入、管理させ、定期的に孫たちに配分する事になっていた。グレイは財産の不平等な分配に抗議し、2ヶ月に及ぶ法廷闘争で2人の仲は完全に決裂した。

グレイはインタビューの中で何度も悔しさと怒りを滲ませ、「親父がこんな馬鹿げた遺言を作るはずがない――2人とも息子なのに、どうして差があるんだ?絶対に誰かが手を加えたに違いない……この遺言……俺は絶対に認めない!」と語った。

激怒する次男グレイとは対照的に、長男ホワイトはかなり冷静で、遺言に法的効力があることは疑いの余地がないとしていた。彼は「父が重病の時、グレイは1日たりとも帰って来ませんでした。父が亡くなり、すぐに金をせびりに来たのは本当にがっかりしました」と語った。

遺言をめぐる争いは最終的にグレイの敗訴で決着した。

グレイは敗訴後に国家反逆罪で失踪 ホワイトは罰金を支払うために家財を売却

グレイの敗訴により一件落着と誰もが思っていた。その矢先、大守護者タチアナはグレイ・ゲーテが重大な国家反逆罪を犯したとの判決を下し、多額の罰金を科した。これによって瞬く間に国中が大騒ぎとなった。『水晶日報』はすぐにクリフォト城のスポークスマンやゲーテ一族に連絡を取ったが、本記事執筆時点で、どちらからも明確な回答を得られていない。信頼できる情報筋によれば、グレイ・ゲーテは行政区を離れ、行方不明になっているそうだ。

グレイが犯した「国家反逆罪」の詳細については公開されていないが、大守護者様は強硬な態度を崩しておらず、グレイの兄ホワイト・ゲーテもこの罪名に異議を唱えていない。最近、「グレイが家族を連れて雪原の向こうに逃げた」と噂されている件について、クリフォト城のスポークスマンから「それは考えらえないような話」だという正式な回答が得られた。

「盛者必衰。これはゲーテ家の家訓です。私たちはいつもこれを心に留めてきました。ですが、こんなにも早く、こんなにも突然にやって来るとは夢にも思いませんでした」と語るホワイトだが、一族の将来のことに話が及ぶと、憂鬱そうな目で「巨額の罰金を支払うために屋敷を売り払い、使用人の半数近くを解雇しなければなりませんでした。今後は、残った資金で事業を興して一族の名誉を回復するとともに、弟の犯した許されない罪の埋め合わせをしたいと思います」と話した。

氷原オオカミ出没、大守護者が夜間外出禁止令を発令
※「掲示板には丁寧に切り抜かれた『水晶日報』の記事が貼られている」※

建創紀元144年6月19日、ベロブルグの大守護者タチアナは『第101号条例の夜間外出禁止令』に署名した。この禁止令によって、発令日より、毎晩6時から翌朝6時まで、街全体で夜間外出が禁止される。外出禁止の期間中は、シルバーメインおよび執政庁が認めた労働者を除き、外に出ることを禁ずる。『第101号条例の夜間外出禁止令』は、新たな政令が公布されるまで有効となる。

夜間外出禁止令を敷いたあと、大守護者タチアナは『水晶日報』にこの禁止令公布の実情を明らかにした。ベロブルグの外には生命の痕跡が殆どないため、シルバーメインは長い間、都市の出入り口の警備を怠っていた。最近、多くの市民が都市内で氷原オオカミの姿を見たと通報し、ベロブルグの温暖な環境が、耐寒種の移動を促したと考えられている。今回の目撃情報を受け、シルバーメインは外出禁止期間中、約1100人の兵士を動員して街全体で掃討作戦を展開し、氷原オオカミを完全に駆除する予定である。また、今回を機に、出入り口の警備を強化し、危険生物の侵入を防ぐそうです。

大守護者タチアナは、午後6時から翌日午前6時まで、警備を担当するシルバーメイン以外は、許可のない外出を禁じると再度強調した。また、氷原オオカミの情報を隠したり、匿ったり、それらに餌を与えたりすることも禁止とされており、違反した者は、その責任を負わされるだろう。