本棚/収録なし/梁沐の手紙

Last-modified: 2023-10-15 (日) 15:29:16

同行クエスト「譬えば朝露の如く」

梁沐の書き置き・その一

半夏へ

君がこの書き置きを見つけたということは、僕を探しに来たのだろう。そして勿論、僕は既にこのコンテナを離れ、別の場所に隠れている。便せんの裏に新しい隠れ家の場所を記した、埃を拭いたら見えるはずだよ。(どうやってコンテナの位置を伝えるのかわからなかったから、大まかに描いてみたんだ)

この前、君は僕の病気を心配して、僕が流雲渡しでちゃんとした療養ができるために、機巧鳥で若干の料理と布団、枕を送って来てくれたね。僕は大喜びしたよ、でも同時に罪悪感も感じていた——ここまで君に気にかけてもらって、僕はどうしたら君の恩に報いる事が出来るのだろう?思うに、どれだけ君に恩返ししても足りないのだろう。

恐らく、僕も何百年、何千年と生きなければ、君への恩は返しきれない。
長生は僕の追求する終極ではない。君にならわかるだろう、僕は長命を貪ろうとする薬乞いとは違う、僕にはより長期的な目標があるんだ。
君の助けがあれば、この長い旅路も無駄に終わる事はないだろう、不老長生も…叶うだろう。

心から感謝しているよ。

話を戻すけど、コンテナでの生活の跡は消しておいたよ。「薬王秘伝」の人がここに来たんだ、きっと君が原因なのだろう。怒っているわけじゃない、僕は今興奮しているんだ、これで成功に一歩近づけたんだ。

僕は次の隠れ家に隠れているから、着いたら僕を呼んでくれ。君が一人だと確認したら、会いに行くから。慎重すぎるかもしれないが、僕を責めないでくれ、このおかげで僕は今まで生きてきたんだ。

梁沐

梁沐の書き置き・その二

半夏へ

君がこの書き置きを見たということは、僕はまた別の場所に隠れたということだ。前回のように、便せんの裏に新しい隠れ家の場所を記しておいた。(今回は埠頭の方に隠れようと思う、このように転々としていると、いつかは隠れられる場所がなくなってしまう)

ここには薬王秘伝以外に、十王司の人もいる、どちらも僕では相手にできない。そいつらに見つからないために、今回は早めに場所を変えたんだ。間違っているかもしれないが、これが僕の推測だ。薬王秘伝は機密が漏洩されないために君と僕を追っている、そして十王司は薬王秘伝の情報を得てそれを捕まえようとしている。

僕が「薬乞い」でなければ十王司に拍手を送っているよ。

やっぱり早く僕を探しに来てくれ、今すぐ君に会いたいんだ。

今回も僕は隠れているから、着いたら僕を呼んでくれ。君が一人だと確認したら、会いに行くから。「一人」で、絶対に「一人」で来てくれ、他の人がいたら、僕は姿を現さないから。

梁沐

梁沐の手紙

半夏さんへ、

展信舒顔。(仙舟の手紙にはこのような社交辞令があると聞いた)

流雲渡しを離れてから、何度も君に連絡を取ろうとしたが、君からの返事はなかった。だから前に君が派遣した医士に、手紙を君に届けるよう頼んだ。ここからが正念場なんだ、このまま何も言わずに去りたくはない、だから君には僕の考えを教えなくてはいけない。

正直に言って、あの二人の医士が来なかったら、僕は君に見捨てられたと思っただろう。

だが僕は君を許したわけではない。あの医士たちに聞いたんだけど、君は僕を探しに来なかっただけじゃない、僕が望んだ名簿も持ってきてなかったじゃないか。君は僕を憐れんだから、あの二人を寄こしたに過ぎない。僕に必要なのは「治療」か?そんなものいらない!僕が欲しいのは「対等な尊重」だ。君は常に僕のような短命種を見下している、溝の中のネズミのような気分だよ。

僕があのボロボロなコンテナの中でどれくらいの間身を潜めていたか知っているか?薬王秘伝のやつらがどれほど兇暴なのかわかるか?十王司の判官がどれほど危険なのか想像できるか?君は何も知らない、ずっと丹鼎司に引きこもっているだけ。君は自分の身の安全しか考えていない、僕の命なんて初めから気にかけていない。

君が僕のためにしてくれたことはどれくらいある?僕を愛しているとなど言っていたが、僕は微塵も感じなかったな。

だからここではっきりとさせたい、僕は君を好きになったことはない。君が長生不老の薬を手に入れられると言ったから、僕は君に近づいた。君が薬王秘伝は実在すると言ったから、そいつらに加入するよう君を押した。君が薬王秘伝の名簿を手に入れられると言ったから、リスクを冒して流雲渡しで君を待った。独りよがりはやめろ、君の憐れみなんて僕はいらない。

ついでに、僕は既に司辰宮に送還された。君がこの手紙を受け取ったころ、僕はもうここを離れている。さよなら!

梁沐