本棚/宇宙ステーション「ヘルタ」/コメットハンターからのお便り

Last-modified: 2023-11-19 (日) 19:49:22

コメットハンターであるホセ・ラサロからの手紙、罵詈雑言が書かれている。

この手紙を拾った「ヘルタ」のスタッフへ

こんにちは、まだ生きていますか?

反物質レギオンが「ヘルタ」を包囲したというニュースは、とっくに新しいものではない。全宇宙を見ても、「存護」を信じる阿呆どもだけが耳を塞いで見ぬふりをするだろう。他の連中が腹いっぱいになったら、「ヘルタ」がいつまで持ちこたえられるかについて賭けることもある。言うまでもないことだが、僕はあんたたちが最短時間で陥落することに賭けている。けど今回のレギオンは中々だったよ、宇宙ステーションにとっては味方を苦しめ敵を喜ばせたことで、このホセも儲けただけでなく、あんたたちのヘルタ様も顔色が変わったんだろう?もしあの「天才」が本当に助けを求めるなら、「博識学会」は彼女に手を差し伸べなくもない。彼女がそれを認めさえすればだ、「博識学会」は「天才クラブ」に引けを取らない、と。

どうだ?この公平な取引を早く彼女に教えろ。成約したら、パブ「ワールドエンド」に入って左から5歩、裏から9番め、鉄のスズとカマハシオンを飾った席にまで返信を送るように。手紙を4lの「カリパ」の下に挟んどいて。ハハッ!

悪名高い前スタッフ
ホセ・ラサロ

「宇宙地理課」すべての若者たちへ

若者、若者、すべての若者よ!よく見ろ、今お前たちの前にあるのは、「ヘルタ」を飛び越え、銀河に向かう前地理スタッフの思い。

そんなもの、たとえ100万の実体のない信用ポイントと引き換えに持ち出したとしても、「スターピースカンパニー」は売ってやらないぞ。なぜか分かる?その本質は自由で、反抗的で、不安定だからだ。リスクに反対し、ネジを回す「カンパニー」が最も嫌うものと言えよう。「カンパニー」が一番得意なのは、万の奇妙な商品を提供して、万の偽りの選択肢を作り出して、本当に大切なものをあんたらの目の前からそらすことだ。

これも「カンパニー」が多くの派閥と仲が悪い理由――既存の構図に偽りの繁栄と甘露を作り出してるから。

いまこそ真実と向き合う時だ。僕がまだ「ヘルタ」にいたころ、地理課はすべての研究課室の底にあった。生物学者、予備政治家、占い師、二流商人まで、僕たちを踏みつけにして、僕たちを石や泥としか付き合えない、役立たずと思った。しかし、「ヘルタ」を離れてみると、そうではないことがわかる。

僕たちが銀河版図に対する理解は、星の海を行き来する「ナナシビト」に劣らない。
僕たちはこの世界に対する憧れとともに、「開拓」の星神に祝福された。
その星神は星軌を敷き、諸星と連絡して暗域を駆けた。そして、その名はアキヴィリ。
この無料で粗末なページに、アキヴィリが亡くなる前の勧誘を、あんたたちのような無一文の貧しい若者に撒いてやろうと思う――それは永遠の誇りであり、永遠の心であり、星の海である。

時々失意に陥ったり、茫然としたり、宇宙が冷たくなったりしたら、どうにかして「ヘルタ」を大きな穴から吹き飛ばせ、宇宙ステーションから飛び出せ!そうすると、足元には銀河が広がってことに気づく。僕がそうやったように。

免責事項:僕が言ったことは地理スタッフのみが真似していいもの、他の青二才どもは引っ込んでな。

前ナナシビト、現博識学会-武装考古学派隊員
ホセ・ラサロ

昔の友とかたき、あるいは新しい友とかたきへ

このホセ・ラサロがどんな人物なのか知らない人は、応物課の責任者にでもきけ。

僕が「ヘルタ」の一科学者だったころ、応物科の責任者は温明徳の父親である温槐仁だったと覚えてる。あの老いぼれ斑鳩、ともすれば僕らの研究費を切りつめて、違う惑星の大気や土壌の成分を測定する機器の配給を減らし、商業交流の名義で華やかな骨董品を「カンパニー」から買いつけてた。温槐仁の目は有名だったよ、たくさんの奇物は彼によって安値で買い取られ、その後、高い星間流通時価に跳ね上がった。応物科はこの転売屋で日増しに大きくなる一方、僕らは切れ端で作った勘星用たがねを頼りに苦労して研究を進めるしかなかった。

僕に勘星用たがねで叩かれても、温槐仁は悔い改めることなく、「応物課のソースをオープンし、地理課の容量を節約する」を遂行した。僕がいなくなってから、時々突っ込んで帳簿を調べたり、不平不満を言ったりするトゲがひとつ減って、応物課も繁盛してきたんだろう。なんといっても「カンパニー」の商品ラベルに、サプライヤーが「ヘルタ・万有応物課」がマークされることが増えてきたもんな。

温槐仁の他にも、これまでに地理課の仲間をいじめた連中みんな、このホセ・ラサロが殴ってきた。そのうちの何名かは僕を「ヘルタ」から追放した敵となって、何名かはいつの間にか友人となった。僕って日ごろから歯を食いしばっていろいろやってるけど、本当に殴ってくれたのは温天翁だけだった。そして僕も、感服したよ。殴られて当然だった。

古い友たちは、ほとんどがまだちゃんと生きてるって知ってる。そして僕も生きてる。実際、「ヘルタ」を去った後、僕は何度も「壊滅」の焦土で命を落としそうになって、武装考古の無謀なやり方で派閥に追われ、長年の貯金をすべて仮面の愚者のパブに投げ出してしまったが…こんなに楽しく生きたの初めてだ。

昔の友か宿敵
ホセ・ラサロ