本棚/宇宙ステーション「ヘルタ」/星域界種要旨:ヨートン体

Last-modified: 2023-11-19 (日) 19:57:34

界種課の研究ファイル、宇宙にも珍しい無機生命体 ヨートン体の資料が記されている。

星域界種ナンバー:無機#27

界種学名称:ヨートン体

銀河別名:電光巨人、輝星多面体、息吹の地の巨礫

分類:無機生物界-ケイ素生物網-偏晶目-岩巨人科

研究概要:

ヨートン体の故郷は狂風が吹き荒れる惑星です。
言い伝えでは、通り過ぎる嵐は全てを滅ぼし、堅牢な生命のみが風の中で立ち続けられる。

この種族の生命形態は透明な水晶体です。内部には思考偏晶と呼ばれる論理中枢が存在し、その思考器官が発する電気信号でコミュニケーションを取っています。
それ故、その言語、思想、歴史は全て知られていません。

機械戦争時代、ヨートン体は一時期機械種族の最も忠実な下僕でした。
戦敗後、有機生命体が連合して清算にかかり、種族は絶滅しました。
ヨートン体は死亡すると純粋な鉱物となり、病はその体内で鮮やかな色彩となって残ります。
そんな訳で、現在の惑星ヨートンは千の風が吹き通る百色の星となっています。

戦火が鎮まり、その君主制の歴史を象った王族の冠だけが遺り、声なき風に埋もれてしまいました。

関連奇物:

耐えられぬ重さ

当ステーションに収容されている奇物で、一見水晶がちりばめられた冠。
実はケイ素系生命ヨートン体の王族の冠で、その君主制歴史の生きた化石。

崩御したヨートンの統治者は、
その論理中枢を取り出され、この歴代皇帝の思考偏晶によって作られたこの冠にはめ込まれるのです。

ヨートンの生命体は、この冠が統治者に代々受け継がれてきた知恵を与えると信じています。
そのため、ヨートン族の統治者は常に揺るがず、美しいのです。

ここ数琥珀紀で提起された予想では、この冠にはヨートン体の種族の記憶と基本細胞が含まれており、
冠を冷月の輝きの下に置けば、その秘められた歴史に触れられると。
そしてかの星神からの生命の火があれば、この滅んだ種族は蘇ると。