シーズン12ビークル

Last-modified: 2021-05-15 (土) 12:20:19

異空

「未来の私はきっと私に感謝するだろう」――エルシー・ブレイ
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私は始まりの地点に戻ってきた。これで3度目(4度目?)だが、毎回のように頭が混乱する。ケイド6がいる。ザヴァラ。イコラ。そしてパレード。ここで時間を無駄にするわけにはいかない。あまりにも多くの機会を失ってしまった。私は… 見つけなければならない… 誰を? ダメだ、考えろ。アナ? 違う。誰だ!?

それとも… 人ではないのか?

頭がかなり混乱している。過去の試みについては断片的に覚えている。でも詳しいことまでは思い出せない。簡単に記憶を更新する方法が何かあるはずだ。新しい装備品や設備ならそれも可能かもしれない。私の家族の遺産が生み出せるものがあるとすれば、革新的な技術しかない。私が目を覚ます時には、私の礎となるような何か見覚えのあるものが必要だ。常に持ち運べるものでなければならない。小さなものがいい。前もって考えておかなければ。もっと計画的になる必要がある。

時間についてはどうやら制限はなさそうだが、それでも無駄にするわけにはいかない。時間を無駄にすればするほど、過去と同じ失敗を繰り返す可能性が高くなる。バンガードに警告しようとした時のことを思い出した。彼らは私のことを悲観論者と考え、タワーからすぐに追い出した。確かに錯乱状態だと思われても仕方のない状況だった。私の正しさが証明された頃には既に手遅れだった。毎回のように、エリスは汚染されてしまった。放浪者は無謀な探求に溺れた。誰も私を信用しない。誰も私を信じない。私は影の中にとどまるしかない。

今回は何かが原因で、私が認識可能な影響を及ぼすことができない状態になっている。どこかにそれを阻止するための鍵が存在しているはずだ。何としても見つけ出さなくては。

私にはこの世界の過ちを正す機会が与えられた。私は無計画に突き進むのではなく、経験を重ねることを選択する。今回は、次のサイクルをより良いものにすることに重点を置くつもりだ。次こそは必ず救ってみせる、アナ。また会いましょう。

遡及的因果関係

「これはピースを失ったパズルだ」――エルシー・ブレイ
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「もうこれ以上は無理かもしれない」と私は疲れ切った声で彼女に言った。彼女に私のことを信じてもらうまで、どんなに説得を繰り返したか分からない。彼女の目を見ることができず、私は彼女のローブの複雑な模様を見つめた。

「これまでの話から判断すると、あなたに選択肢があるとは思えない」と彼女は真剣に言った。「ただ、あなたの運命は明確には決まってないようね。だからこそ、私は今ここにいる」

彼女が今、私の隣にいること自体がほとんど奇跡のようだった。ようやく彼女の声を聞くことができた。優しくて安心できる声。

「あなたは結果を変えている」と彼女は続けた。「少しずつね。これは消耗戦よ。あなたはその身を削り続けながら核となる部分を見つけ出す必要がある。決定的な出来事の発生を防ぐために」

「あなたにその感覚は理解できない」と私は言うと、崩れ落ち、頭を抱え込んだ。「失敗を犯す度に数年が失われて、それを強制的に経験させられるのよ」

「あなたにはやり遂げられるだけの強さがあるはずよ、エルシー。捕らわれているのがあなただけなら、そのループを止められるのはあなたしかいない」

私は視線を上げて彼女の目を見た。その瞳の中で炎が燃えている。その情熱と希望が私を満たした。

「これはあなたの役目よ。主導権はあなたにある。私はあなたを信じている」と彼女は言うと私の肩に手を置いた。人の温かみというものを久しぶりに感じた。

「ありがとう。私は… もう大丈夫よ」

「それならそろそろエリスのところに向かうべきね」と彼女は決断したように言った後、私を引き留めて聞いた。「参考までに聞きたいんだけど、これで何度目なの?」

「7度目」

「今回で最後になるかもしれない」とイコラは楽観的に言った。できることならそうであってほしい。

でもそうはならない。1週間後には全員死んでいる。そして彼女は私のことや芽生えた友情のことも忘れてしまう。

でもこの任務が完了するまで、私は彼女の言葉を決して忘れないだろう。

ファイアクレスト

速さは手段にも… そして終焉にもなり得る。
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修理屋が巨大なスパローの周りを旋回しながら、作業の最終確認を行なっている。彼は満足したようにうなずいた。これが2週間前まで、バラバラ状態の残骸だったなんて誰も想像できないだろう。

彼が研磨を開始すると、ガレージの扉から不吉な音が聞こえてきた。修理屋が溜息をつきながら扉を開けると、目の前にメンバーの勢揃いしたファイアチームがいた。他のガーディアンたちが自分のスパローにもたれかかりながらぼんやりと武器の点検を行なっている中、1人のウォーロックが店の中に入ってきた。

ウォーロックはそのスパローの周りをゆっくりと歩いた。「弾痕の処理は見事だ。ただ、磨き方が足りない」とガーディアンは言ったが、その厳ついヘルメットのせいでそれが冗談なのか本気なのか判断がつかない。

「安定性の調整はできたか?」と言ってウォーロックはスパローに乗ると、エンジンを始動させた。

「ああ、だがスピードを出した状態でのテストはできていない。ふらつくようなら持ってきてくれれば無料で直す」と修理屋は、ウォーロックが背負っているパルスライフルを恐々と眺めながら言った。

突然、ウォーロックのすぐ側の空中に小ぶりなロボットが現れた。修理屋は前にもゴーストを見たことがあったが、こんな近くで見たのは初めてだった。そしてゴーストが言った。「こんなの合理的ではありません。私なら命じられたままに、あなたのスパローを新品同様の状態に再生することができます。なぜこの人物にお金を払ってまで古いスパローを修理させたのですか? そんなことをすれば少なくとも故障率が18%は上昇します」

ゴーストをにらみつける修理屋の顔がどんどん赤くなっていく。彼はこのスパローを修理するために2週間休まずに作業を続けてきた。この仕事のおかげで向こう3か月は店も安泰だろう。彼にとってはこの一年で一番大きな仕事だった。

「分かっている、ただ人間的な暖かみが必要な時もある」と言うと、ウォーロックは手首のデータパッドを叩いた。「グリマーをそちらの口座に送金した」

「ありがとう。またいつでも来てくれ」と言って修理屋が手を伸ばすと、昔のやり方にならうように、ウォーロックがその手を握った。

「ほらな?」とウォーロックはゴーストに言うと、ファイアチームと合流した。「金を払うだけの価値がある」