夏季

Last-modified: 2024-03-20 (水) 00:21:27

自分が武器にならなければならない時もある。

「バア」。レッドリージョンの侵略者は、不可知の言語で何かを言った。じっと伏せて、うめきながら立ち上がろうとするガーディアンに向かって右手でジェスチャーを送った。上にあるバルコニーの高所からでも、セウス7はそれが嘲笑を意味すると分かった。

彼の下は混沌としていた。民衆が、崩壊した建物のアーチで縮こまっていた。カバルは開けた中庭を撃ったり投げたりひっくり返したりしながら荒らし回っていた。奴らの通る道にあるものや人はすべて破壊された。セウスの一番近くにいたカバルがピストルを取り出し、まだかろうじて息があるガーディアンに銃口を向けた。

セウスはハンドキャノンを取り出してカバルより先に発射し、それから子供たちを脅していた他のカバルに命中させた。その後まもなくレッドリージョンはバルコニーに集中攻撃をした——しかしセウスはセンチネルだった。どうすればいいかは心得ている。

彼は飛び降り、光の力でシールドを作る――

しかし、光は消えていた。

彼の体から空気が押し出されるようだった。レッドリージョンの醜い顔が迫る。もう他に手はない。

彼は民衆に向かって逃げろと叫び、グレネードを用意した。

爆発がなければ作れ。

枯れ木の下にもぐったエスタ・テルは、頭上の橋をスキャンしながら、急いでケーブルの先のワイヤーを起爆装置に結び付けようとしていた。大丈夫そうだ。橋の一方はむき出しの道路で、もう一方は建物があったが、渓谷からは何も問題ないように見えた。

ちょうど3分後にカバルが通る。時は来た。

彼女は頭上の建物を見て耳を澄ました。エンジン音が聞こえた。

車両が視界に入ってくると、彼女は起爆装置を押した。あと10秒。

しかし、車両はカバルのものではなかった。医療車両だった。橋の上にを高速で通過している。

残り5秒。彼女の顔から血の気が引いた。彼女は自分のやっていることも分からないまま決断した。

スナイパーライフルを構え、橋の下のワイヤーと爆弾の接合部分に狙いを定めた。発射した。ワイヤーが落ちると同時に医療車両が橋を渡りきった。

遠くでカバルが来るのが聞こえた。ようやくだ。

爆弾を撃つ。

しまった。弾がない。考える時間もない。

自分のペースで、比類なき集中力でカタをつけろ。

リリア・グレミアは、ケーブルの支柱の下にある人目に付かない空間に潜り込み、マトックス9が上がってくるのを待った。彼は彼女がタワーの壁に打ち込んだファスナーを使って登り、彼女と目が合うと親指を立てた。

あと8階登れば、預言者と彼を拘束したカバルのケダモノの真下に着く。あと少しだ。

グレミアは遠くで弾けるような音を聞き、下から煙が上がってくるのを見た。見下ろすと、地上にレッドリージョンの部隊がいて、彼らめがけて発砲していた。

彼女はマトックスの方を見た。彼はうなずいた。

彼女は「登って!」と言い、ライフルを取り出した。彼はジョークを言うつもりで彼女のところに向かった——彼女はその表情に気づいていた——が、金属と金属が衝突する甲高い音が彼の邪魔をした。マットクスの頭が前に飛び出たかと思うと、再び上を向いた彼の目の赤い光が揺らめいて暗くなった。グレミアはライフルを落とし、彼の体を引き上げた——まだ、一緒に仕事を片づけることはできる。

彼女の周りは銃弾の穴だらけだ。弾が脇をかすめ、彼女は唸った。カバルは攻撃の手を緩めなかった。

グレミアはグレネードを起動し、それをマットクスのロケットランチャーに装填した。そして彼女は、旧友の体をつかんで飛び降りた。

彼らが敵のところにたどり着くと同時に、世界が爆発して真っ黒になった。

最後の1人になるまで持ち場を守れ。

ダイモス22は空いている腕を大きく振って、人間の民衆に呼びかけ、急ぐように懇願した。この屋敷は何年も彼らの家だったに違いない——それは所持品を腕一杯に抱えた人々が彼の横を通り過ぎていくことに基づく彼の推測だ。しかしそこも今は水浸しで、沈んでいた。

唯一水浸しになっていないトンネルは、ひび割れた腐った木ともろくなった金属でできていた——辛うじて立てる程度の広さだったが、地上に出ることができる。「こっちだ!」とタイタンが呼びかけると、彼らはどんどん彼の前を横切っていった。

子供たちや高齢者は泣いていた。「分かっている」。彼は声を荒げないように努めて言った。「だが動かないと」

女性が巨大なスーツケースを落とすと、彼はそれを脇へ蹴飛ばした。彼女はカバンを振り返ったが、民衆の中に消えていった。

建物全体がミシミシと音を立てていた。ダイモスはトンネルを見上げ、様子を伺った。なにか様子がおかしい。

すると彼の頭上の屋根の部分が裂けて、トンネル全体が歪んだ。屋根を押し上げながら、自分の腕がギシギシと鳴るのが聞こえた。持ちこたえろ。

彼は呼びかけ続け、民衆は次々に走り去っていった。

彼は支え続けた。彼が手を離した時は、自分が最後の1人だと確信した時だった。

鳥は編隊で飛ぶから道に迷わない。

「アノカイ・タイ、到着」

タイタンは、崩壊した建物のがれきや混雑した道路でウェイフェラーZを減速させながら、応答に耳を澄ませていた。彼は動きに目を光らせた。まだ何もない。

「タイ、見えてるぞ」。無線の声が返ってきた。「合流地点まで約12キロだ」

タイタンは身をかがめながら加速した。彼は2人組のガーディアンの回収に向かっていた——2人は彼と同じように別惑星の船に情報を送っている最中に、車が壊れたのだ。ほんの数週間前の彼なら、スパローに3人も乗せると聞いたらバカにして笑っただろう。今ではこうして乗せるのが日常だった。

種類は分からないが、巨大なレッドリージョンの船が彼の行く道に散乱していた。彼は操縦かんを引いてがれきを越えようとしたが、スパローの中の何かがプスプスと音を立てた。

1秒後、その何かが燃え始めた。

なんてことだ——

スパローはクレーターのできた道に落ちた。タイのすぐそばをプラズマが走る。奇襲だ。

タイはウェイフェラーZを飛び降りて、その陰に身を隠し、がれきからレッドリージョンの小隊が現れると発砲した。彼はどうにかスパローが爆発する前に2人倒すことができた。

紋章

シンメトリー理論が提唱される以前まで、暗黒を語る際は、善悪の判断基準をもとにした枠組みの中で議論が展開された。暗黒時代の学者たちは、その因果を超越した力を、我々に既に備わっていた道徳規範に直接当てはめた。すなわち彼らは[光=善]、[暗黒=悪]と定義したのだ。彼らはこの関係性を大前提としていた。暗黒が既知の世界を破壊し、トラベラーが破壊から人類を救ったことを考えれば、これは当然の帰結だ。

しかし、大崩壊後の混乱が落ち着いたことで、シティ時代の学者たちは、歴史的な視野を広げられるようになっていた。彼らは初めて、道徳的な観点からではなく、全体論的な視点でもって暗黒を研究した。この時代の初期シンメトリストの大半は、自らの理論に関して断定的な主張はせず、モルニハンも「暗黒による啓発」で以下のように記している。

「暗黒は確かに必要悪と言えなくもない。常に善なる力に譲歩することを考えれば、その存在を黙認するべきなのかもしれない。光が輝く時、暗黒は必ずその身を退いているのだ」

この時代に、ウラン・タンは初めてシンメトリー理論を提唱した。事実上、暗黒と光は道徳的な基準となっていたが、彼の仮説は暗黒時代の前提条件を覆すものだった。彼は、光と暗黒に対する我々の道徳的理解は、絶対的な力の主観的な体験に過ぎないと主張した。

光と暗黒、善と悪の概念が完璧には重なり合わないことを認めてしまえば、[光=悪]、[暗黒=善]が成立する宇宙が必ずどこかに存在していることになる。それが真であるなら、その時こそ、道徳的相対主義は究極的な勝利を手にすることとなる。そしてバンガードは、このシンメトリーの暗黙的かつ異端の考えが、大きな脅威になると考えたのである。

――『異端の聖人、ウラン・タン』からの抜粋

コインを投げて、表ならハンターの勝ち。裏なら相手の負けだ。

よし、この辺で「ハンターになるとはどういう意味か」とか「従うべきルール」とかを説明しようか。
ハンターであることに関して、ルールが1つある。見えるか? その... 肩をすくめてるんだ。も、文字で伝えるのは難しいな。
とにかく、何故肩をすくめたかって? それはつまり、ハンターになるための道は1つじゃないからだ。そのうち、自分の道を見つければいい。お前ならできる。じゃなかったら、ハンターになってなかったしな。分かったか?
何をグズグズしてるんだ? さっさと出ていけ。あぁ、ちょっと待て! 料金は1000グリマーだ。なんてな! じゃぁ、頑張ってくれよ。自分を誇らしく思うためにもな。いいな?
おぉ。やっぱり、俺って感動的なスピーチができるやつだなぁ。

「宇宙の研究に身を捧げれば、必ずその秘密が見えてくる」――イコラ・レイ

周りを見て。どこにいるかは関係ない。とにかく見て。
あなたがどこに立っているとしても、その目の前に何があったとしても、あなたの視界の中には無限の謎が無数隠されている。それを考えて。そして、いつの日か、その全ての答えが分かるようになる。
あなたはウォーロック。そのアーマーは知識であり、その武器は機転と創造力。想像と可能性が衝突する場所から力を引き出す能力を持っている。
この宇宙は入り組んだ機械。でも、どのような機械でも理解し、分解し、改造し、改善することができる。
あなたはただ見ればいい。
――イコラ・レイ

シティの忠実な守護者達を称えるための紋章。

シティを囲んでいる壁が見えるか? あれを頭に焼き付けておけ。あれは私達を守っているだけではない。自分が何者かが分からなくなっても、あれを見れば思い出すことができる。
お前はタイタンだ。敵を粉砕する壁。この暗い時代を蝋燭のように照らしてくれる存在。トラベラーの最後の贈り物の守護者だ。
このシティはお前の故郷だ。そこに住む人々はお前の血だ。壁はお前の盾であり、武器であり、神殿だ。
自分の役割を果たせ、タイタン。そして忘れるな。シティのために戦っている時、お前が負けることは決してない。
――タイタンバンガード、ザヴァラ