ピュロス

Last-modified: 2021-05-17 (月) 22:09:11

「強固なヘルメットの外からでは、どれほどの傷を受けているか見ることはできない」――エクソ・タイタン、リード7

シミュレーション再構築ログ//LA-02-01//水星

エクソタイタンのリード7が、背中に太陽の光を浴びながら、水星の砂漠に巨大なシルエットを作り出している。リードとゴーストは空を横切る二筋の炎を見つめていた。

「両方とも遅刻です」リードのゴーストが言った。

「まただ」リードは溜息交じりに言った。彼の目が、くすんだベージュ色の空を横切る炎の痕跡を追っていると、その惑星の大気の中に2隻のジャンプシップが姿を現した。

「信号を受信しました… 公開通信で口論をしていますね」ゴーストはそう言うと、リードの周りで上下運動をした。「衝撃に備えてください」

大気圏を抜けたジャンプシップが降下して地面すれすれを飛行すると、砂の雲が舞い上がり、カロリス・スパイアの石造の古い庭全体に押し寄せた。リードが振り返ると、ジャンプシップが反対側の地平線に向かって勢いよく飛び去っていくのが見えた。

「――他にもできることはあったはずだ!」通信越しに声が鳴り響き、物理的空間の中でその言葉が完結すると、リードの同僚のウォーロックであるシャユラが地上にトランスマットした。シャユラともう一方のガーディアンであるハンターのアイシャからエネルギー波が発生し、バチバチと音を立てている。シャユラは烈火のごとく怒っていた。彼女の頬を黄金の炎の波が舐めている。

リードは到着した仲間たちに向かって何も言わなかった。水星の住人全員の代わりに会話をしているのかと思えるほど盛り上がっている彼らのことは放っておいて、彼は黙ったまま、目の前の任務に集中することを選択し、巨大なライトハウスへと向かった。その外ではガーディアンたちが集まり、かの有名なオシリスの試練に参加するために順番待ちをしていた。

リードのゴーストが心配そうに彼を見た。リードはゴーストを安心させるために指で優しくシェルを叩いた。ただ、リードの耳には、激しさを増す口論の声が届いていた。この手の議論は初めてではない。エリスは信じられるのか? バンガードはケイドを殺した人物を追跡すべきか? ケイドの死は彼自身の無鉄砲さが招いたことだったのか? 彼らの意見の対立は必ずお互いの納得する形で結論を導き出していた。ところが今日は、どうやら様子が違うようだ。

「おい!」リードは振り返って叫んだ。その声は彼が想像していたよりも大きかった。彼は自分の声の大きさに少したじろいだ。叱責されたことで、ウォーロックとハンターの両方が口論をやめた。突然の静寂の中、2人は彼のほうに顔を向けた。

リードは決まり悪そうに自分の首の後ろをかいた。「後にしてもらえないか? 頼むから」

シャユラとアイシャは一時的に冷静さを取り戻して顔を見合わせた。彼らは黙ったまま、次の機会のために口という武器を閉ざした。シャユラは剣を引き抜くと、挑戦状を叩きつけるように、吹きさらしの庭の反対側にいるガーディアンの一団を示した。

「分かった」アイシャはしぶしぶ同意した。

その規模はともかくとして、これはリードの勝利と言えそうだ。

「ファイアチームは家族だ。そして、家族も時には失敗する」――エクソ・タイタン、リード7

シミュレーション再構築ログ//LA-02-03//シティ、タワー、バザー

バザーのノイズが遠くから聞こえる。電気的なものではあるが、かなり多くの有機体システムによって生み出されているようだ。リード7はマクロレベルで全体を捉えながら、人間の平凡な会話に安らぎを感じ、生を実感していた。それは彼にとって言語以上の何かであり、ウォーロックには宇宙の音がこのように聞こえるのではないかと考えていた。少なくとも彼は、彼らにはこうした音が聞こえていると予想していた。

この状況にリードは安堵を感じていた。イオの揺り篭から彼を悩ませ続けてきた恐怖の声ではなく、バザーの人々の声しか聞こえなかった。そのことを深く考えすぎると、彼は今でもゴーストを通して暗黒の不平の声が聞くことができた。彼はそれに関して思い悩まずに、何か他に集中できる情報を探し、気を逸らすようにしていた。

バザー全体が死者の祭りに向けた装飾で彩られており、装飾が施された不気味な木にはエングラムの形をした色とりどりのオーナメントがぶら下がっている。1体のゴースト――間違いなくウォーロック、オシリスのものだ――が、布を引きずりながら陽気に転げ回っている。その楽しげな空気に心を癒やされながら、リードはアイシャとシャユラが待つニューモナーキーの敷地内のテーブルに戻った。

「飲み物だ」リードがそう口にすると、蒸気が上がっている大きな3つのマグカップを置いた。アイシャは励ますような、だが緊張を滲ませた笑顔を彼に向けた。「気をつけろ」と彼が言うと、彼女はマグカップに手を伸ばした。「熱いぞ」このように非常に慎重な性格をしていたおかげで、彼はストライクダッドというニックネームで呼ばれていた。

「お前のはシナモン入りだ」とリードはシャユラに言った。どうやら彼女は眠っているらしく、テーブルの上で腕を組み、そこに頭を沈めている。シャユラは目を覚ますと、彼に向かって力なく親指を立てた。完全に安心できたわけではないが、その返答のおかげで少なくとも気分は安らいだ。アイシャは何も言わずにリードに向かって心配そうな顔を向け、首を振った。彼が席を外していた間、2人の会話は暗礁に乗り上げていた。

「スロアンのことで怒ってることは知っている」とリードは言うと、決意を固めて会話の糸口を探った。「ただ、司令官はできることは全てやっている。我々もそうだ。自分を責めるな、その――」

「ありがとう」とシャユラは顔を上げずに言った。彼女は姿勢を変えて両手で蒸気の上がるマグカップを掴むと、今にも沸騰しそうなリンゴ酒を引き寄せた。彼女はマグカップを覗き込むような格好になると、シナモン、蜂蜜、リンゴ、そしてクローヴの香りを吸い込んだ。彼女は周りを見渡してから目を閉じた。どうやら、先ほどよりも意識がはっきりとしてきたようだ。

アイシャとリードはゆっくりと深呼吸をした。そしてシャユラに呼吸をする時間を与えた。「分かってる」とシャユラがようやく小さな声で決まり悪そうに言った。「すまない」彼女がスロアンのことを言っているのか、自分の態度のことを言っているのは分からなかった。

「我々に謝る必要はない」とリードはアイシャを見ながら言うと、アイシャがうなずき返した。「レイトカと彼のゴーストに謝るべきだ」

「あれはタイタンでのことだった」とシャユラはマグカップをにらんだまま言葉を絞り出すようにして言った。リードとアイシャは顔を見合わせたが、どちらも口を挟まなかった。要点にたどり着くまで、シャユラのペースに任せることにした。「私はタイタンにいた。光なき者だった時と同じように、ハイヴに囲まれていた。そこにナイトがいた… 私が何度そのナイトを倒しても、奴は復活し続けた。私はそこで死ぬべきだった」

「だがそうはならなかった」とアイシャは言うと、テーブルの反対側から手を伸ばし、安心させるためにシャユラの手を力強く握った。「私たちは光を取り戻した、そして――」

「暗黒が迫ってきた時に何が起こる?」シャユラが質問した。だが彼女はリードやアイシャがその質問に答えられないことを知っていた。「彼女は再び光なき者になるのか? ひとりきりで」

リードとアイシャは顔を見合わせた。エクソはテーブルの向こう側から手を伸ばすと、アイシャの握るシャユラの手の上に大きな手を置いた。リードは人を鼓舞するような言葉も、勇気づけるような言葉も、気休めになるような言葉も言わなかった。彼はただそこにいて、彼女の傷を癒やすことに専念した。

それで事足りることを願うほかなかった。

「ファイアチームのために死んだことはあるが、彼らのために生きようと思ったことはない」――エクソ・タイタン、リード7

シミュレーション再構築ログ//LA-02-02//水星、ライトハウス、試練アリーナ

リード7は腕が今にもつなぎ目からバラバラになりそうな感覚を味わっていた。体全体が振動しており、彼は1秒ごとに体が崩壊する恐怖を感じながらバリアを保持していた。それは彼の光を拡張したものであり、彼の体そのものでもあった。何度も繰り返し使ったことで既に限界を超えていたが、なんとかオートライフルの矢継ぎ早の攻撃を防いでくれていた。

相手チームのガーディアンはあと2人だけだ。3人目の体はアリーナ全体に散らばっており、煙と炎を上げている。リードは追い詰めたガーディアンたちのもとまで、アイシャが何秒でたどり着けるかを計算した。リードが倒されたとしても、それだけの時間があればアイシャとシャユラ――彼女がどこにいるか分からないが――なら間違いなく勝利を手に入れられるだろう。

「アイシャ?」とリードが言った。彼の声は不安を感じてうわずっており、バリアも安定性を失い始めていた。彼には今しかないことが分かっていた。その時、アイシャのほうに視線を移すと、彼女の拳の中に炎が見えた。

アイシャはもっと良い作戦を思いついていた。

敵のガーディアンが動きを止めて遮蔽物の後ろでリロードしている間に、アイシャは空中に舞い上がってバリアの頂点から飛び出した。リードはバリアを解き、今にも膝をつきそうになりながらも、四肢への負担が即座に緩和されたのを感じた。アイシャは眩く輝き、燃えさかる車輪のように回転しながら、凝縮したプラズマから生み出した無数のナイフを全方向に飛ばした。

リードからは炎の光と煙しか見えなかったが、敵のガーディアンたちがドサリと崩れ落ち、アイシャが彼の隣に着地した。リード7は安堵の溜息を漏らすと、可能な限りの熱を込めて親指を立てた。

「上にいる時にシャイの姿を見たか?」とリードが聞いた。

「いや。恐らく隠れている敵と追いかけっこしているんだろう」とアイシャは言った。「彼女と合流して終わらせよう」

まるでアイシャの発言に答えるかのように、ベックス様式のブロックの近くで小さな炎が上がった。ライトハウスが柔らかい音を発した。対戦が終わり、近くにいたゴーストたちがそれぞれのガーディアンの再構築を始めた。

炎が上がった方向から悲鳴が聞こえ、アイシャとリードは身構えた。2人は見覚えのあるベックスの建造物のほうへと素早く移動した。さらに2回、苦痛に満ちた悲鳴が鳴り響いた。彼らはその発生源に向かった。そしてリードはその光景を目にして凍り付いた。シャユラがガーディアンの顔をフェイスプレート越しに剣で貫いていたのだ。相手のゴーストが憤りながら悲鳴を上げ、必死になってシャユラとガーディアンの間に割って入ろうとしている。

アイシャが何かを言った。だがリードには耳の中を激しく流れる血流の音しか聞こえなかった。だがそれは彼の血ではなかった。ある種の記憶だ。カーボンポリマーとプラスチールのプレート層の奥深くに埋まっていたものが掘り起こされたのだ。それは彼のシナプスネットワークに入り込んでいた。その瞬間、リードの意識は自分の体の外に存在していた。凍り付いたいくつもの顔が目に浮かび、イオでゴーストが苦しそうに懇願する小さな声を思い出していた。

分からないのか?

リードの心臓の鼓動が早くなった。

光には、弱さしかない。

敵チームのガーディアンはゴーストの力で復活した。だが彼が大声で訴えかける前に、シャユラは一振りで相手の腕を切り落とした。そして容赦なく、そのままヘルメットの頭頂部を切り開いた。リードは胸が締め付けられ、自身がパニック状態に陥り始めているのを感じた。

あるのは失敗のみ。

「シャイ、やめろ!」とアイシャは叫び、友のもとに駆け寄った。彼女はシャユラを抱きしめた。シャユラはまるで怯えた獣のように叫び、ガーディアンの死体のほうに向かって剣を振り回した。

死だけだ。

「シャユラ! 対戦は終わった!」とリードは叫ぶと同時に、突然現実世界に引き戻された。「対戦は終わったんだ!」

怒り狂ったウォーロックを抑えつけるには、リードとアイシャの両方の力が必要だった。シャユラの声は凶暴な叫び声に変わり、炎が彼女の腕を伝って血で濡れた剣に沿って渦を巻いた。

「ダメだ! やめろ! やめるんだ!」シャユラは雄叫びを上げ、仲間たちの拘束を振りほどこうとしている。アイシャはシャユラがこれ以上剣が振れないよう、彼女の手首を掴んだ。その間に復活したばかりのガーディアンは大急ぎでそこから避難した。

「シャイ」とアイシャは彼女に訴えかけるように名を呼んだ。「シャイ!」

シャユラは悲しみの叫び声を上げ続け、それが燃えるような水星の空に響いた。

「もしも全てをやり直せるとしたら、全く違う選択をするだろう」――エクソ・タイタン、リード7

シミュレーション再構築ログ//LA-02-04//シティ、ペレグリン地区、住宅の屋上

「太陽系全土からガーディアンが集まっています。ハンターですら戻ってきています」

リード7のゴーストはこの30分間、彼に逐一、最新情報を伝え続けていた。屋根の端にある手すりにたどり着いてから、彼は全く動くことができなかった。トラベラーの動きは警戒に値する。だがトラベラーが発しているビーコンのような光は、タイタンの人工の心臓を止めるのに十分な力を持っていた。彼はゴーストが話しているのを把握したうえで、完全にそれを遮断していた。

アイシャとシャユラは下のテラスにいる。会話が聞こえないぐらいリードからは離れており、彼はただ2人の身振りを観察していた。2人とも真剣な表情をしており、特にシャユラが熱くなっていた。リードはその姿を見守りたかったが、トラベラーからどうしても目が離せなかった。割れたシェルの中から発せられている燃えるような青白い光の波、自身を洗い流すかのような光の波の流れ。それは人類が必要とする時にトラベラーは必ず助けてくれるだろうという彼の希望の裏付けでもあった。彼はシャユラがそれを見て、自分の考えを理解してくれることを望んだ。だが彼女を見るたびに、彼女がより遠くにいるように感じられた。

「リード」とゴーストが言った、これで5回目だ。リードはようやく自分の名前が呼ばれていることに気付き、無言のまま落ち着かない様子でゴーストのほうを見た。「変な… 感じがします。何かが起こりそうです」それはむしろ訴えに近かった。半信半疑で困惑した訴えだ。ゴーストでも、これから押し寄せてくる波が自分たちにどんな影響を及ぼすのか分からなかった。もしかしたら大崩壊の前触れがこんな感じだったのかもしれない。だがこの瞬間、リードの頭にはシャユラとアイシャのことしかなかった。彼は2人のほうを見た。

アイシャの姿が見えた。驚いた様子で目を見開きながらトラベラーを見つめている。シャユラは視線を落とし、テラスの下の様子を確かめている。彼女は相変わらず無頓着で、トラベラーが心臓のように鼓動し、眩い光を発している今もそれは変わらなかった。

彼がファイアチーム、つまり自分の家族のことを考えていた時、彼を光が包み込んだ。

光が消えると、光学センサーが再調整され、彼は思わず仮想の涙を流しそうになった。トラベラーが月のようにシティの上にぶら下がっている。完全な姿だ。その瞬間、リードの考えの正当性が再び証明され、それと同時に試されることとなった。シティが喚起に湧く中、立ち去るシャユラの姿が彼の目にとまった。

「どれほど強い者でも、いつかはひとりで担えないほどの重みに出くわす」――エクソ・タイタン、リード7

シミュレーション再構築ログ//LA-02-05//シティ、タワー、仮想ライトハウス

「ジャンプシップのコックピットの中にはまだ雪が残っている」格子状の波の中から現れると、アイシャはそう言った。補助的なベックス合流点から生じているその波はパチパチと音を立てており、今はタワーの安全な場所でライトハウスをシミュレートしていた。

「だから遅れたのか?」リード7は軽くからかうように言った。アイシャは辺りを見回すと、両手を広げた。

「シャユラもまだのようだが?」

「彼女は今向かっている。我々が発った後、どれぐらい謎のエクソのキャンプにいた?」リードは質問をした。アイシャは庭の向こう側にあるライトハウスのほうを見た。彼女の緊張した様子に彼は気付かなかった。

「数時間だ。辺りを探索した。ハウス・オブ・サルベーションはベックスの遺跡の近くに長い間滞在していた。奴らをそこから追い出したかったんだ」アイシャはそう説明すると、2本の指で自分の首に触れてアーマーの首もとにあるボタンを押し、眩い光りを発生させながら頭部にヘルメットをトランスマットさせた。

リードが鼻を鳴らしてうなずいた。「奇妙だと思わないか?」と言い、彼は話題を変えた。アイシャは何も言わずにリードの説明を待った。「シミュレーションのことだ。これはいわばセイントの… 戦闘用クローゼットだ。本物にしか思えない」

「これは現実だ。つまり、私たちは、だな。この空間は… そうだな、魔法のようなものか? だが私たちはどうだ? あのガーディアンたちは? 私たちが私たちであることは間違いない。危険性はシミュレートできるだろう。だがその影響は現実世界のものと変わらない。セイントならそうする」アイシャはそう言うと、確かめるようにリードのほうを見た。「お前にしたって無限の森には入らなかったんだろう?」

「当然だ」リードはすぐに認めた。「いくら積まれても断る。ベックスは苦手なんだ」彼は身震いしながら付け加えた。「お前は蜘蛛が嫌いだろう? 私にとってはそれがベックスだ。とにかくダメなんだ」

アイシャが何か言おうとしていたが、シャユラが歩きながら仮想空間に現れたために突然中断された。彼女はリードとアイシャの横を通り過ぎてライトハウスに向かった。「行こう」

シャユラのぶっきらぼうな口調にリードとアイシャは困惑した表情を浮かべたが、彼らはそのことについてそれ以上触れなかった。

シミュレーション再構築ログ//LA-02-05//仮想ライトハウス、仮想試練アリーナ

リードの肩が敵チームのガーディアンに激しくぶつかった。相手の胸部の骨が全て砕け散り、そのまま壁へと激突した。リードが向きを変えると、アイシャのハンドキャノンが一対のスペクトラルブレードを引き抜いてこちらに迫ってきていたもう1人のガーディアンの胴体を撃ち抜いた。彼女はリードの視界の中で攻撃を阻みながら、いつものような炎や光を使った戦いではなく銃撃戦を繰り広げていた。

「シャユラはどこだ?」リードはスカウトライフルをリロードしながら言った。アイシャは2本の指で通路を示した。

「彼女は対戦が始まってからずっと、あのアウォークン・ウォーロックを追いかけ回していた。恐らくそのウォーロックの近くにいるはずだ」と言ったアイシャは既に駆け足になっていた。「3対1だ、行こう」

リードは頭を振ると、急いでアイシャに続いた。彼は前に冷静さを失ったシャユラが何をしたか思い出していた。彼らは試練に戻るべきではなかった。あんなことがあった後だというのに、戻るのが早すぎた。シャユラはファイアチームの前の状態に戻すために、試練に参加することを強く求めた。だが彼は今になって、やはり時期尚早だったと感じていた。

彼らがようやくシャユラを見つけた時、彼女はまだ命のあるアウォークンのガーディアンを見下ろしていた。ガーディアンのヘルメットは割れており、片目が露わになっていた。彼は彼女を見上げ、炎に包まれている彼女の剣に視線を移した。アイシャとリードは銃を構え、シャユラがトドメを刺すのに失敗した時に備えた。その時リードは何かがおかしいと感じた。シャユラが狙いを付けていたのは、相手のガーディアンではなく、そのゴーストだったからだ。

「シャイ?」とアイシャは心配そうに声を震わせながら言った。

シャユラは叫び声を上げると、剣でゴーストを攻撃して地面へと叩きつけた。ガーディアンは苦痛の悲鳴を上げた。そしてシャユラはすぐにピストルを引き抜くと、彼の額に弾を撃ち込んだ。ゴーストがさえずり、耳障りな音を立てている。ゴーストは完全には故障していなかった。シャユラはピストルをホルスターにしまった。

「シャイ!」リードは叫ぶと、スカウトライフルを捨てて猛然と彼女に迫った。だが次の瞬間、シャユラが手のひらからエネルギーを放ち、その衝撃によってリードは地面に叩きつけられた。彼女が再びゴーストのほうに振り返り、両手で剣を構えたその時、彼女は突き刺すような寒気が自分の腕と足を登ってくるのを感じた。

リードの目の前で、濃青色の氷がシャユラの足を縛り付け、彼女のプラクシックファイアを消し去り、彼女の手と剣を含む全てのものを凍り付かせた。彼女の体に氷の波が押し寄せ、その体表に無数の氷の塊が羽根状に形成されていく。リードはアイシャに視線を移した。彼女は手を伸ばし、その手のひらから冷気の波を発生させている。彼女はシャユラからゴーストを救った。だが彼女が使ったその力は――彼の知る限り、光ではない。

彼は今まさに全てが変わってしまったことを理解した。