シーズン12

Last-modified: 2021-05-20 (木) 18:14:19

ホークムーン

獲物を追跡し、そのかぎ爪で暗黒を捕らえよ。

この感情は何だ?

こんなことは望んでない。理解できない。いらない。

クロウは無知なままのんきそうにしている。焚き火が彼の青白い肌を照らし、金色の瞳に宿る希望に引き付けられる。私が予期していた絶望する子供はどこにいる?

ゴーストの忠告に反し、彼は開いているワインボトルに口をつけた。ガーディアンは彼にどんどん酒を勧め、笑い合っている。この祝宴は狂気じみている。どちらも喜ぶ理由などないはずだ。彼らの世界は終わろうとしているのに、爆発する星の最後の煌めきに飲まれる死にゆく生物のようにもがいている。宇宙の消滅を前に、自分たちの存在の無意味さと無常さを理解していないようだ。

今度はガーディアンが炎の近くに立ちながら飲んでいる。彼のゴーストも同様に騒ぎに加わらないよう忠告している。彼らは喜びに浸るために自らを毒しているのだ。

姉妹のことを思い出した。波打つ海岸沿いで過ごし、可能性と謎に満ちていた無数の星を見上げていたあの頃を。私は恋しい気持ちに襲われた。

この感情は何だ?

分からない。こんなものはいらない。

彼らは宿られた兵に勝利したことを祝っている。クロウは手を銃の形にし、あと少しで空になるワインボトルをもう片方の手で剣のように振り回している。ガーディアンは焚き火近くの石に座り、隠されている秘密について考えながら物悲しそうにしている。クロウはそれに気づくが、それを表には出さない。彼はガーディアンに明るい気持ちでいてほしいと願っていた。一緒に勝利を祝えるよう、彼を助けたいと思っていた。

対等の立場として。

故郷のことを思い出した。太陽の暖かさと、家族の温もりと、父親の顔を思い出した。私が今まで裏切ってきた人々のことを思い出した。不死を理由に流してきた血も。太陽の暖かさがその記憶を私に焼きつける。

この感情は何だ?

こんなものはいらない。

炎がまもなく消える。クロウは倒れて立ち上がれないでいるが、大丈夫だと言い張る。ガーディアンは残り火を剣先でひっくり返している。ゴーストたちは秘密話を交わすかのように互いと会話している。祝宴は終わったが、それぞれが入り混じった感情を抱えているのが分かる。単純に、ひとつのことに集中すればいいだけなのに、無数の複雑な思いに悩まされている。

不本意にも、何かしらの絆がここで生まれようとしている。

この感情は何だ?

猶予なき時

武器のケーシングの内側にはただ一言、「今だ」という言葉が刻まれている。

ノヴァーロの時間軸解析によると、武器は謎のエクソのライフルであり、この時間軸上の未来で強化されたものが現在に転送されたことが判明した…

…ここ、エウロパに。黄金時代後期、秘密の研究所の奥深くに。

「時間軸は?」

「3025です、ブレイ博士」

「もうそこの可能性はないと判断したのでは?」

「ええ、ですが… また新しいものが出現しました」

「オースティン1、そんなことあり得るのか?」

「分かりません。どういう仕組みなのかも全く理解できていません。非常に不安定で制御――」

「武器の正確な位置は特定できたのか?」

「…大体は。エルシー1が今夜回収を試みる予定です」

「それより前に時間軸が閉じてはいけない。今回は私が向かう」

「ですが、前回は空に浮かぶ例のものに殺されそうになったではありませんか」

「そのおかげであれがどういう仕組みかわかった。行動しなければ分からないこともある」

老人は装備を整えて、ベックスのパーツから作られた奇妙な金属製ポッドに乗り込んだ。オースティン1はポッドから離れた位置に立ち、「3025年4月10日」と端末に入力した。

「行きますよ、ブレイ博士。出発まで3… 2… 1…」

光が溢れた。

氷の荒地だ。先ほどまで傷一つなく建っていたものが、何世紀も経過したかのように薄汚れ、古く、崩壊しそうになっている。

クロビスが瓦礫をかきわけて進んでいくと、人間、エクソ、ベックス、そして異種族の死体が散らばっている、凍りつき荒廃した戦場へとたどり着いた。地面に手を伸ばし、異種族の死体から雪を払い、複数ある腕の一本を持ち上げた。

「素晴らしい…」

耳をつんざく飛行音がどこか遠くから聞こえてくる――クロビスが顔を上げると、空中に黒と赤の船が浮いていた。戦場の真上に滞空すると眩しい赤い光を放ち、何かを探すかのように周囲をスキャンした。

クロビスはポケットからゆっくりと端末を出した。緑のボタンを押すと画面が点灯し、何ヤードか先の方で点滅しているのが見える。ちょうど船が捜索している場所のすぐ近くだ。

エクソの死体を掴んで腕に装着したパネルを開き、改造した後に静かに閉じた。素早く退避すると、数秒後にエクソが爆発し船の注意を引くことができた。彼は戦場を駆け抜けて、少し前に船が捜索していた場所へと向かった。

クロビスは再び端末を使い、点滅が点灯に変わるまで地面をスキャンした。雪の中を掘り進めると手に何かが当たった。半分だけ引き抜く――新品のように輝き、「今だ」とだけ刻まれたライフルだった。

クロビスは武器を完全に引き抜こうとした。しかし何かがつっかえている。何かにくっついているかのようだった。さらに力を込めて抜くと、死んだエクソが現れ、その手は武器の柄をしっかりと握っていた。彼は死体の顔をじっとと見つめ、息を呑んだ。

「エリザベス…?」

飛行音が再びクロビスの耳に入り、放心状態から我に返った。船は真っ直ぐ彼の元へ向かっている。クロビスはエルシーの硬直した手をこじ開けて銃を取り、来た道をそのまま戻るように疾走し、船が彼を射撃する直前のところでポッドに飛び込み起動することができた。

光が溢れた。

「危なかったわね」と馴染みのある声が言った。

「その代わりにプレゼントを持ってきたぞ、エリザベス」とクロビスが返事をして、息を整えながら身体からほこりを払った。

「1つ目の回収完了だ。まだ無数にあるがな。危険を冒すほどの価値があればいいが」彼は彼女の目を見つめ、中途半端な笑顔を向けた。

「価値があることを証明してみせる」