厄災

Last-modified: 2021-05-17 (月) 21:47:45

「常に終末を覚悟しておくことだ。運が良ければ予想が外れるだけだし、運が悪くても… 逃げ出す準備だけはできてるからな」――放浪者

よう、シスター。もしくはブラザーか? 誰がこれを聞くことになるかは俺には分からない。密告屋か、間抜けか、あるいはまだ一方に決めかねている奴か。

だとしたらちょうどいい、今まさに話題になっている選択の話なんてのは戯言だ。言っておくが、お前を助けてくれるのはお前だけだ――そして確率は五分五分だ。

頭を使え。秩序立てて考えろ、分かったな? この世界には色んな噂が飛び交っている、だからこそ耳を塞ぐ時を見極めることが重要だ。あれ以来状況は大きく変わった、スロアンが暗闇に消え… おっと、言葉の選択を間違ったか? なんだ、早すぎる別れだってか? いいか、前に暇つぶしがてらにニューアルカディアに行ったことがあるんだ。そこで様々な経験をした。間違った噂も耳にした。

これからは信用する相手の選択には注意しろ、いいな? そう、俺も含めてだ。ただそんなことは今さら言う必要もないだろう。

「兆しや標は常にそこにある。無論、見るべきところを分かってる必要はあるがな。そして大概の奴はそれを分かってない」――放浪者

恐らく知ってるだろうが、俺は今ちょっとした旅に出てる――もう終わってるかもしれない。何しろこっちはお前がこれをいつ聞くことになるか分からないからな。

とにかく、俺が再び極寒の地を訪れるだけでも、状況を一変させるには十分なはずだ。下を見た時に既に何かが手元にあった時、そこから離れるのは簡単なことじゃない。それが最初から、ほとんど自分のものだったとなればなおさらだ。

確かに、俺は手癖が悪いかもしれない。でも俺は他の奴に渡すぐらいなら自分のものにするタイプなんだ――結局はゼロサムゲームだ。手に入れられるものは全て手に入れる。重要なのは、俺には協力者がいるってことだ。

知ってのとおり、俺はいつも誰かと連絡を取り合ってる――いつでもだ。誰かが俺の喉に触れているのを感じる。俺を殺そうとしているか、キスでもするつもりなんだろうな。

個人的には、選択肢の自由は残しておきたい。

「船が沈む時はもうどうしようもない。選び取るしかないんだ。共に沈むか、泳ぎ切るか」――放浪者

英雄、お前はどう思う?

お前の胸の中では今、死んだ心臓が鼓動している。お前が今も生きているのは、誰かがお前のために仕事を用意し、まだそれが終わっていないからだ。

最近、誰かに自分の考えを尋ねられたことはあるか? このところ色々なことが変わった――ここへ行き、あれを狩れ。奴を殺せ。彼女を始末しろ。そしてお前はこう答えるんだ。「了解だ、放浪者! 任せてくれ!」

お前に言ってるんだ、そう、それがお前の仕事だ。分かったか?

少しかけらをはめ込んでくれって頼むだけで、俺も悪者扱いされるのか? お前は自分のために俺が道を示してくれることを望んでる、そうだろ? 間抜けなりにお前にも頭はあるはずだ。

俺がお前の考えを聞いたのは、他の奴らはお前の考えなど聞かないからだ。絶対にな。

「待ち受けるものからは逃れられないと言うが、この俺の本気を見たことがないからそんなことが言えるんだ」――放浪者

俺はお前のことを知らない。お前がどんな考えの持ち主で、誰の味方なのかも分からない――表か、それとも裏か。もしかしたら縁かもしれない。コインが落ちる前に撃たれる可能性もある。

いずれにしても、そのコインを拾うのは俺だってことを覚えておけ。

自分が残した弾痕を中心にして的を描いた奴がいるって話を聞いたことはあるか? 放浪者の計画が動き出したんだ――思っていたほど美しくないし、適材適所ってわけでもないかもしれない。だがそれが事実であることは間違いない。

だから俺はお前にメッセージを残したってわけだ。注意を払わなければ見つけられない場所にな。状況は常に変化する――そのとおり、状況は既に変わった――それでも、放浪者は今でも安全な投資先だ。

それに俺にはまだ時間がたっぷりとある。昔に比べれば少ないってだけだ。

「悲観論者に誰も耳を貸そうとしないのは不思議だな。俺が知る限りでは、奴らが一番誠実だ」――放浪者

光に選ばれて神聖な魔法の赤ん坊になるってことは、失ったものを手に入れた上でいつでも戻って来られるってことだ。つまり、つい最近、凍傷で頭をやられたとしても、それをなかったことにできるってことだ。だからって痛くないわけじゃない――そのとおり、もちろん痛い――ただ、つま先を失っても二の足を踏まなくていい。それでもシチューを作る余裕があるかどうかを判断する能力は必要だけどな。

(まあお前には無理だろうが)

つまりだな、足下がしっかりしてさえすれば、縁の上も歩けるってことだ。十分な高さまで登らなければ、どちらに飛び降りるか決める前に、その両側の様子を確かめることもできない。

分かったか? 放浪者についてくるなら上等な靴は履くな。