シャペロン
「母はシャペロンと呼ばれるショットガンを持ってた。シティに着くまで、私達を守ってくれた」——アマンダ・ホリデイ
「最後の安全な都市は存在しない」
ノーラ・ジェリコはそう両親に言われて育った。両親は、よく「この土地を離れるくらいなら死ぬ」とも言った。
ノーラは信じた。疑う理由がなかった。そうして10才の誕生日を迎えた。
数百年ももった塹壕を4本腕たちが突破した日だ。ボロボロのアーマーを着た騎士が追い払ったが、騎士の近くに浮かんでいる金属の球体は残酷な電気ブレードに貫かれた。
ノーラはシェルの破片を集めるのを手伝った。不思議には思ったものの、特に何も聞かずに埋葬するのも手伝った。
騎士はお礼だといって、最後の安全な都市について教えてくれた。地図とショットガンを彼女に渡し、彼女の幸運を祈って1人で砂漠の中へ去っていった。
ノーラの母親は、世界が覆されることを受け入れられなかった。彼女は塹壕の民の半数と共に砂漠に残った。
ノーラは翌日旅立った。
トリニティ・グール
「外すわけにはいかなかった。彼の命が危険にさらされていたから」――入り組んだ偵察者、マリン・マンサナス
「マリン・マンサナス…」通信機から狙撃手の声が聞こえる。「まさか本当に現れるとは」
マリンは土が舞う地面に唾を吐き、ブーツのかかとでなすりつけた。目を凝らし、土埃舞う荒れ果てた台地を見渡しながら、狙撃手を無視しチャンネルに接続している元コルセア、エロール・メイズに話しかけた。エロールは彼女のいる位置から700メートルほど離れた場所に1人、手を後ろで組みながらエーテルの容器を頭の上に乗せて立っている。
「エロール、何をしてる」
彼が肩をすくめるような動きをしたのが見えた。低い声が通信機から聞こえる。「悪いな、リン」
「賭けは賭けだ」
狙撃手は無視されたことが気に食わないようだった。「さっさとやれ。撃てるものならな」
マリンの目は荒れ果てた台地に点々と存在するがれきの山をちらりと見て、狙撃手の居場所を探した。
向こうの尾根に見える4本腕の塊は、おそらく自慢屋の置いたダミーだろうが、確信を持てない以上エロールの命を危険に晒すわけにはいかなかった。「撃てるとも。エーテルを無駄にして、メイズを連れ帰ることになっても賭けを反故にするんじゃないぞ」
異星人の笑い声だけが返ってきた。
彼女は矢筒から矢を3本抜きながら、「ポム、何があっても出てくるな」とゴーストに囁きかけた。彼女の左手に隠れたゴーストは、温もりを発して応えた。
彼女は矢を2本ベルトに挟み、3本めを相棒のトリニティ・グールにつがえた。
エロールの低い声が聞こえた。彼の息遣いが耳にかかっている感覚に陥るほどだった。
「おい、リン」
「喋るな。呼吸を止めろ」
「外すなよ、いいな?」
「名案だな」
「分かってるじゃないか」
マリンはグールを引き絞り、エロールのボサボサの青い頭の上に乗った容器に狙いをつけた。
「分かってるとも」
マリフィセンス
「ガーディアンの最大の脅威は他のガーディアンだ」——放浪者
そうだ、俺は今君に手紙を書いている。このことは忘れてほしい。この銃を持っているということは、今から書く以上のことはもう伝えてあるはずだ。だが改めて伝えておきたい。
君にこれを託す。役に立つことがあるだろう。このシステムで俺達は多くを成し遂げたし、今後も君と共にやっていきたい。
そうなればこれを持っていてもらったほうが安全だ。これはあらゆる物の頂点だ。その昔、俺はトルンという武器の代わりを探していた。これはトルンにはなり得ないが、俺にとってはそれ以上のものだ。2人で作り上げたからだ。
これを全員で持てば、ゴールデンガンを持つ男もためらうだろう。
確かに早撃ちでは敵わないかもしれないし、彼に勝つのは不可能なのかもしれない。だが全員で撃てばどうなると思う? 早撃ちなんかどうでもなくなる。
奴も死ぬからな。
その時のために、覚えておいてくれ。
——放浪者
願望の終人
「心配するな。簡単な遠征だ。昼食前には戻る」——スジュール・エイド、初代女王の怒り
スジュール・エイドは関節を鳴らしながら立ったソヴだけに忠誠を誓い真っ直ぐに立ち鷹の目でどんなに遠くの敵も貫いた。スジュール・エイドは耳を澄まし矢をつがえ女王の重ねる嘘を聞き真実はディヴァリアの霧のように絶え間なく漂う奥ゆかしい文句にしか聞こえなかった。
スジュール・エイドは影や風が歪み広がるのを見て暗号化される監視映像を見て謁見を申し出た全員の利き手をへし折った。スジュール・エイドは誓った暴露とともに湧き出る正義の怒り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り裏切り再び立ち上がることを誓った。スジュール・エイドは弓を引き放ち弓を引…
倒れた。
ロ ス ト
切り札
「諦めるなんてマネはしない、絶対にな」——ケイド6
ケイド6の遺書
関係者各位
ケイド6は、現在の安定している(こともある)身体と精神をもって、自分を殺した人物、エイリアン、動物、自然現象に全ての所持品を遺すことを宣言する。
前述の所持品には以下が含まれる:
・切り札
・銀河中に隠したお宝
・俺の親友、中佐
・借金。詳しくは添付の通り:
添付ファイルが大きすぎます
ケルベロス+1
「頭が3つあるのは良いが、4つならもっと良いだろう」——ジェザ「危険な」ヴェルライン
フォトニック・ハートの使い道は色々考えていた。
まずはマーカスの所に持って行って、軽く自慢をする。「何を見つけたと思う? 噂通りだっただろ、エンジンの代わりにこれを取り付けたらスパローがどれだけ速くなるか…」
次に、バザーでの売値を調べる。知っておきたいから。
その後はこいつを持って金星に行き、実際にどうするかをゆっくりと決める。
なのにどうだ。小惑星にぶち当たった。
なんとかショアの砂まみれの岬に着陸した。武器は全部駄目になった。ハートだけは、ヘルメットに入れてシートベルトでイスにくくりつけていたから無事だった。ゴーストに蘇生されたのは、オートライフルの破片に囲まれたクレーターの中で、持ち物は黄金時代の小宇宙ダイナモだ。まさに地獄だ。
最初は3つのバレルしかなかった。どうせなら徹底的に地獄を味わおうと思った。こんなに不安定な動力源を使って、出力を調整できるわけがない。特に、周りの制御シールドにヒビが入ってるんじゃあな。
初めてケルベロス+1の反動を感じたときに思ったよ。計画なんかクソ食らえだ。