パラドローム・キューブ

Last-modified: 2021-05-13 (木) 20:05:15

ベックスのドメインで回収された生体コードのキューブ。

ミスラックスは自身の小部屋に敷かれたカーペットの上に座りながら、パラドローム・キューブを手に持ち、意識を集中させた。

数時間経った後、エイドが心配し、彼の隣に座った。そして彼の腕に触れた。

「何が見える?」と彼女が囁いた。

彼は果てなき夜が裂ける姿を目にした。液体が白い雨のようにシティに降り注いでいた。浅瀬からは巨大なミノタウロスたちが姿を現した。彼はタワーでガーディアンたちが戦う姿を目にした。だが波立つ液体にはその光景が映し出されることはなかった。やがて彼はそのビジョンをあとにした。

それに続いてさらに百の幻覚がその場を支配し、それが千になり、さらに千の人生と等価になった。

――クリスタルの監獄の中に閉じ込められたひとつの形、白を纏った巨大なひとつの姿、血走った瞳を溢れさせる知覚、一斉に話しかけるシティの声、形を成す影、常に監視され続けてきたことの認識、金属を伝う涙――

ひとつの選択、そしてそこから生まれる無数の結果。

「偽りだ」彼は静かに答えた。