ウォリアースティード
冒険に堂々と乗り込め... そして乗り越えるのだ。
どうしてこんな仕事につれてきたんだ? ハンターじゃないのに。専門外だ。足だってこんなにでかい。スムーズに動くのもコソコソするのも苦手だ。ドアや壁を蹴破って、ものを踏み潰す。破城槌みたいなもんだ。スピードがほしいとは言っても、こういうのじゃないだろ? 俺のは勢いって感じだ。丘から突き落とされて転がったって、運が良ければここに居るメンツより速く動けるかどうかってところだ。いや、呼んでくれたことは嬉しい。こういうことは一度やってみたかったんだ。みんなそうだろう? 誰でも怪盗になりたいって思うもんだ。変装して、パーティーに潜入、ジジイの宝石を盗むようなやつだ。その感じは分かるぞ。でも… 俺にこの仕事は向かない。本当に分かってない…
ああ、そうか、なるほど。分かったぞ。そっちのチームがやることやって、お宝を奪ってる間に俺は残って… え、ここか? 岩の後ろ? なるほど、そうか。お宝を奪ったらチームは逃げる。インターセプターが追跡に出てきた所で俺がドーン! タイタンアタック! それならなんとかなりそうだ。お前らはお宝を持ってとんずらできるし、俺は…
待てよ。
俺の取り分を30%にしてくれ。それならいい。いいだろ?
うんうんうん、オッケーだ。
ヘキュバ-S
「見た目よりも機能性だが...少しのスマートさは加えて損はない」——ヘクター99-40
バンシー44は頭の後ろを掻いた。昔、髪があった頃に身についた癖だ。15回目の起動でやめたが、彼の中の大量のコードはまだかすかに記録されているらしい。
バンシーには分からないことばかりだった。少なくとも、意識的には。
自分が一体何を見ているのか、理解しようとしていた。
「もしこれが銃なら、この頭は相当なポンコツだ」
ハッケ鋳造所の公務用フレーム、ヘクター99-40は大らかに笑い、バンシー44の背中を叩いた。
「大丈夫です、バンシー。あれはスパローです!」
バンシーは唸る。「何故だ」質問ではあるが、疑問形で発音しなかった。
「何故だ、とは?」
「何故ハッケがスパローを作る?」
「我が社の基本設計が銃以外に転用できることがわかったからです。親しみやすいデザインに、驚異的な機能性。それを活かせるものはスパロー以外にありません!」
バンシーは再び唸った。
「気に入りましたか?」ヘクターが訪ねた。
「俺には関係ない。俺は乗り物じゃなくて銃を売っている」
「それでも。感想を聞かせてください」
バンシーは腰に手を置いてスパローの曲線と直線が入り混じった機体を眺める。
冷たい青い瞳に、少し温もりが宿った。
「乗ったら楽しそうだ」
ぎこちなく頷いたあと、足を引きずって店に戻った。
ヘクターはその後ろ姿を眺める。フレームの指は、頭蓋ユニットの後ろをこすっている。肩をすくめるのが見える。
「買おう」
ラヴィジャーライド
牢獄の底で見つかったものは全て、そこから持ち去るべきではない。
「「ひたすら歩けばいつか自分が見つかる」ということわざがある。問題は、ここまで来れば他の誰かに会う前に自分が見つかるってことだ。岸辺ではロクな奴に会えないからな」
「岩陰も、物陰も、どこもかしこも無法者と敵だらけだ。味方も… 仲間と呼ぶ連中だって、生存がかかっていればいとも簡単に裏切るんだ。絆も壊れる」
「信頼は、物事が変わって状況が悪化すると嘘に変わる」
「だからどんなに疲れていても、歩き続けろ。油断するな。岸辺に出てしまったら… 銃に弾を込めておけ。腕に覚えがなければ行くな。決していい場所ではない」
——C.C.ラグランジ訳『フォールンの原典:入り組んだ岸辺の文献および観測記録』