ハーディ

Last-modified: 2021-05-17 (月) 21:49:02

「君達の誰にもあれをしろこれをしろと言うつもりはない。私はそこまで聡明ではない。自分の道を行くといい。自分が行きたい道を」

ファイル: ジェイコブ・ハーディ、パイロット、アレス・ワン
中央指令センターの役員室223B
A/Vモニター
アレスへの道: 打ち上げまであと517日
18:43

カンタベリー所長: 誰か電気をつけてくれないか?

ハーディ: カンタベリー所長、奥様がまだ乾杯していましたが...

カンタベリー所長: あぁ、分かっている。パーティから離席してくれて感謝する。

エヴィー: それでは、モニターを見てくれますか?

フィードラー大佐: 自己紹介からしてくれないか?

ハーディ: ハーディです。特別飛行隊のパイロットです。ここにはあまりいないので、誰が誰だか分かりません。

フィードラー大佐: それで君は?

エヴィー: エヴィーです、大佐。エヴィー・カルメットと言います。

カンタベリー所長: エヴィーはここで最も優秀な理論物理学者だ。保安サービスに重要なものを見せたいそうだ。

ハーディ: はぁ。

エヴィー: これです。これを見てください。

ハーディ: 私に月を見せたかったんですか?

エヴィー: 月ではありません。重量がまず違っていて... とにかく、この場所にあるべきものではないんです。

ハーディ: その隣にあるのは惑星ですか...?

エヴィー: 木星です。誰か分かりました? この物体は私達の太陽系中に忽然と現れたんです。そして、その目的は全くの謎です。

フィードラー大佐: この物体は何ができるのだ?

カンタベリー所長: 今のところは分からん。ただ放浪する衛星なのかもしれないし、もっと恐ろしい何かかもしれない。

「内に感じる深く、遠い警鐘に耳を済ませろ」

ファイル: アレス・ワンのパイロット、ジェイコブ・ハーディ
—補足—
中央指令センター・カンティーナ
A/Vモニター
アレスへの道: 打ち上げまであと480日
11:49

エヴィー: ジェイコブ。ちょっとだけいい?

ハーディ: ちょっとだけだ。すぐに行かないとだめだからな。ベラルーシで用があるんだ。月曜日には戻って来るが。

エヴィー: 急いでるなら、ブラウニーを貰っていい?

ハーディ: 半分だけな。それで、何を見せたいんだ?

エヴィー: 衛星Xが戻って来た。

ハーディ: 本当か? 木星に何をしたのか見たぞ。

エヴィー: 木星「と」何をしたかって言った方がいいかも。木星と協力してね。

ハーディ: どちらにせよ、あれが木星の2つの衛星を大きく変えた。

エヴィー: そうね。そして、姿を消した。14ヶ月の間、何もないかと思ったら今度は水星に現れて、また消えた。7ヶ月の間ね。

ハーディ: どこにいるのか分からないのか?

エヴィー: 方法はあると思う。でも、もう金星の横に現れたから、やっても意味がない。

ハーディ: 冗談だろう...

エヴィー: 全然。

ハーディ: 見せてくれ。あそこで何をするつもりだ?

エヴィー: 分からない。魔法かも。でも、次にまた消えたら、他のことを心配しないといけないと思うの。

ハーディ: 次はどこへ向かうのか、だな。

エヴィー: そう、次はどこへ向かうのか。

ハーディ: 残りのブラウニーも食べていいぞ。

「自分の種族を見て彼らの強みを覚え、そして彼らを呼ぶ準備をしておけ」

ファイル: ジェイコブ・ハーディ、パイロット、アレス・ワン
—補足—
ジェイコブ・ハーディの日記
プロジェクト・カタマラン
アレスへの道: 打ち上げまであと90日

ここに来てから1週間になり、今となってはクラブハウスも我が家同然だ。皆、狭い中で共同生活しながら、それぞれの仕事をこなしている。

私も人類に対して同じような信頼を抱けたらと考える。ニューオーリンズで起こった衛星Xのカルト集団間での争いは良くない兆しだ。

乗組員は話に聞いていた通りだ。ナビゲーターのチャオは、今まで会ってきた誰よりも探求心に溢れている。興味をそそるものを見ると、彼の顔が輝き出す。ミハイロワには船のAIを任している。彼女はとても生真面目だ。敬意を持ってチームに接するように十分に訓練されている。だが、彼女は自分より知能が劣っている者(おそらく、少なくとも彼女の分野では私達のほぼ全員)からの質問に答える気はあまりないようだ。

エヴィーなら彼女の知能に匹敵するのではないかと思う。エヴィーの衛生Xの追跡を可能にする理論のお陰で、初めてあれに会いに行くことができる。彼女が今こちらを見た。私が彼女のことを書いているのに気づいたのだろう。

「いつか、大きな功績を残した種族として知られるだろう」

ファイル: ジェイコブ・ハーディ、パイロット、アレス・ワン
—補足—
セントロ・アギーレ・パシフィカ・リゾート
アレスへの道: 打ち上げまであと63日
07:46

ハーディ: 誰かは知らないが、30秒で済ませてくれ。こうやって電話に出なくてもいいように、わざわざ海底まで休暇に来たんだ。

フィードラー大佐: フィードラーだ、ハーディ。

ハーディ: た、大佐...

フィードラー大佐: 衛星Xについて話がある。

ハーディ: はい。

フィードラー大佐: 君の仕事仲間のエヴィーが正しかった。衛星Xを追跡することは不可能だが、彼女は法則を見出したようだ。彼女が予想した場所に現れた。火星に向かっている。聞こえたか? 火星に現れるぞ。あれが木星、水星、金星に何をしたか見ただろう。従って、あれを妨害するために多国から乗組員を集めてチームを編成したい。

ハーディ: 多国からですか...

フィードラー大佐: その船のパイロットはお前に努めてもらう。

ハーディ: あの... 異論があるわけではありませんが、火星は5000万kmの彼方にあります。

フィードラー大佐: あぁ、大体で言うと、2ヶ月後には火星に出発してもらう必要がある。つまり、60日だ。

ハーディ: 60日...

フィードラー大佐: 休暇をしっかり楽しんだら、戻ってこい。今、クラブハウスと船を建設中だ。あの衛星Xを捕まえるぞ。

「私が何を信じてるか知ってるか? 自分の手中に収められるものだ」

ジェイコブ・ハーディの日記
プロジェクト・アレス・ワン(旧名カタマラン)
アレスへの道: 打ち上げ日から1日経過

24時間の遅れが生じた。
乗組員がこれほど落ち込んでいるのを今まで見たことがない。

本当に...馬鹿げている。クラブハウスの階段で起きた漏電による火災。 エヴィーが計算の最終仕上げに入り、沿岸の潮の一瞬の浸食が及ぼす影響についてテレビ通信しようとした時のことだった...

彼女がいないことにすら気づかなかった。

連鎖的に起こった一連の出来事のこと知り、大惨事が小さなもことの積み重ねから発生することを学んだ。

焼け焦げた電気システム。不十分な散水装置。煙。誰も注意を払っていなかったこと。水に濡れて滑りやすくなってる階段。

安全なはずの場所が死の罠と化した瞬間だった。

...

もちろん、それでも私達は出発する。

だが、エヴィーのことで気が重くなっている。エヴィーなしにトラベラーに会いに行くのだ。

正直、私はすごい体験をして高揚を感じるだろう。それは間違いない。だが、出発前に起こったことは絶対に忘れない。

それともう1つ。私達は銃を渡され、新しい名前を与えられた。事態が悪化しても対応できるように、だそうだ。