第4章/4-6 安定性

Last-modified: 2014-03-30 (日) 23:42:54

4-6 安定性
4-6-1 テスタ等による審査
(1) 自動車は、安定した走行を確保できるものとして、安定性に関し、重量計、傾斜角度測定機等その他適切な方法により審査したときに、次の基準に適合しなければならない。(保安基準第5条関係、細目告示第8条関係、細目告示第86条関係)
① 空車状態及び積車状態におけるかじ取車輪の接地部にかかる荷重の総和が、それぞれ車両重量及び車両総重量の20%(三輪自動車にあっては18%)以上であること。
ただし、側車付二輪自動車にあっては、この限りでない。
② 牽引自動車にあっては、被牽引自動車を連結した状態においても、①の基準に適合すること。
③ 側車付二輪自動車にあっては、空車状態及び積車状態における側車の車輪(駆動輪を除く。)の接地部にかかる荷重が、それぞれ車両重量及び車両総重量の35%以下であること。
④ 空車状態において、自動車(二輪自動車及び被牽引自動車を除く。4-6-1において同じ。)を左側及び右側にそれぞれ35°(側車付二輪自動車にあっては25°、最高速度20㎞/h未満の自動車又は車両総重量が車両重量の1.2倍以下の自動車にあっては30°)まで傾けた場合に転覆しないこと。この場合において、「左側及び右側に傾ける」とは、自動車の中心線に直角に左又は右に傾けることではなく、実際の転覆のおこる外側の前後車輪の接地点を結んだ線を軸として、その側に傾けることをいう。
⑤ 被牽引自動車(ポール・トレーラを除く。)にあっては、空車状態の牽引自動車と連結した状態において、④の基準に適合すること。
⑥ ポール・トレーラにあっては、空車状態において左右最外側の車輪の接地面の中心の間隔が荷台床面の地面からの高さの1.3倍以上であること。
(2) 積車状態における側車付二輪自動車の側車輪の接地部にかかる荷重は、次の例により算出した値とする。
(参考図)
(算式)
W=w+a・p/T
ただし、
W :積車状態における側車輪の接地部にかかる荷重 審査事務規程4-6(35) -1-
w :空車状態における側車輪の接地部にかかる荷重
p :積載物品又は乗車人員による荷重(側車における物品積載装置又は乗車装置の幅の中心に集中荷重として作用するものとする。)
a :車両中心線から、荷重pの作用位置までの最短水平距離
T :輪距(側車付二輪自動車を平坦な面に置いたときの、車両中心線から側車輪のタイヤ接地部中心点までの最短水平距離。なお、三輪以上の自動車にあつては、直進姿勢にある空車状態の自動車を平坦な面に置いたときの前車輪又は後車輪のそれぞれの左右のタイヤ接地部中心点間の水平距離を車両中心線に直角に測った長さとする。)
(3) (1)④の規定は、自動車を左側及び右側に傾けたときに自動車が転覆しない最大の角度(「最大安定傾斜角度」という。4-6-1において同じ。)を、次のいずれかにより計測し、又は算出若しくは算定した値で審査するものとする。
ただし、理事長が指定する自動車にあっては、①により計測した値とするものとする。
① 傾斜角度測定機により計測する場合
ア 測定条件
(ア) 測定する自動車は、空車状態とする。
(イ) 測定する自動車のタイヤの空気圧は、指定された値とする。
(ウ) 車高調整装置が装着されている自動車にあっては、標準(中立)の位置とする。
ただし、車高を任意の位置に保持することができる車高調整装置にあっては、車高が最低となる位置と最高となる位置の中間の位置とする。
(エ) 空気ばね装置を有する自動車にあっては、レベリングバルブが作動しない状態とする。
(オ) 測定する自動車は、一時的に安定性を増大させることを目的として荷重を取り付け、又は輪距を変更する等の措置が施されていない状態とする。
(カ) 車軸自動昇降装置付きの自動車にあっては、車軸を上昇させた状態とする。
イ 測定方法
(ア) 測定する自動車について、左側又は右側の前後車輪の最外側輪の外側面を傾斜角度測定機の車輪止め(測定車両を傾斜させた際に車両の横滑りを防止するために踏板の側端に設けた車輪止めをいう。4-6-1において同じ。)に接して傾斜させたとき、反対側の全ての車輪が当該測定機の踏板を離れる瞬間において踏板が水平面となす角度(単位は度(゜)とし1゜未満は切り捨てる。4-6-1において同じ。)を計測し、当該角度を最大安定傾斜角度とする。
ただし、踏板が水平面となす角度が35°(側車付二輪自動車にあっては25°、最高速度20㎞/h未満の自動車又は車両総重量が車両重量の1.2倍以下の自動車にあっては30°)に達したときに、反対側の車輪の一部が踏板に接地していれば、当該自動車の最大安定傾斜角度は「35°(側車付二輪自動車にあっては25°、最高速度20㎞/h未満の自動車又は車両総重量が車両重量の1.2倍以下の自動車にあっては30°)以上」とすることができる。
(イ) (ア)の場合において、傾斜角度測定機の車輪止めは、次の図のうち何れかの形状によるものとする。
(図)
(ウ) 自動車の前後車輪の最外側輪と傾斜角度測定機の車輪止めは次の図のように接するよう配置し、測定するものとする。
(図)
② 傾斜角度計算により算出する場合
次に掲げる計算方法により算出した値(重心高の算出をア(イ)の方法による場合は、算出した値から5°を減じた値)を最大安定傾斜角度とする。
この場合において、重心高をア(イ) の方法によって算出した結果、当該検査申請に係る自動車を重量計を用いて測定したときの車両重量が設計時の車両重量と±50kg(普通自動車及び大型特殊自動車にあっては±100kg)の範囲を超えて相違するときは、当該計算方法により算出した値を無効とする。
ア 重心高の算出
(ア) 自動車の水平状態と傾斜状態における接地する輪荷重を測定して算出する場合(前輪揚程法)
(算式)
ただし
H:重心高
R:タイヤの有効回転半径(前後のタイヤの有効回転半径が異なるときは、両者の平均値とする。)
L:軸距
h:前車輪を揚げたときの揚程
ただし、前車輪は可能な限り60cm以上揚げるものとする。
w:車両重量
wr:空車状態の被測定車を平坦な面に置いたときの後軸重
wr’:前車輪をhだけ揚げたときの後軸重(この場合において、前2軸又は独立した軸を有する自動車にあっては、中間の軸の車輪が接地しないようにして後軸重を計測する。)
(イ) 自動車の部分ごとの重心位置を既知として算出する場合(モーメント法)
(算式)
W1・Z1+W2・Z2+W3・Z3+・・・・Wn・Zn
H=
W
ただし
H :重心高
W1、W2、W3、・・・Wn:第1~n番目の部分の重量
Z1、Z2、Z3、・・・Zn:第1~n番目の部分の重心位置の垂直方向の距離(車軸自動昇降装置付きの自動車については、車軸を上昇させた状態における距離)
W :設計時の車両重量
イ 安定幅の算出
(参考図)
(算式)
ただし
Br:右側安定幅
Bl:左側安定幅
Tf:前車輪の輪距
Tr:後車輪の輪距
L :軸距
w :車両重量
wfl:左側前輪荷重
wfr:右側前輪荷重
wrl:左側後輪荷重
wrr:右側後輪荷重
α:前後車輪の接地部中心点を結ぶ直線が、車両中心線と交わってなす角度
G:重心位置
ウ 最大安定傾斜角度の算出
(算式)
Br
右側β=tan-1

Bl
左側β=tan-1

ただし
β :最大安定傾斜角度
H :重心高
Br :右側安定幅
Bl :左側安定幅
③ 最大安定傾斜角度実測書により算定する場合
ア 傾斜角度測定機を有し、かつ、能力を有する者が①の測定条件及び測定方法(①イ(ア)ただし書を除く。)により計測したときの値を記載した書面(最大安定傾斜角度実測書)により算定した値を最大安定傾斜角度とする。
この場合において、イ(ア)の車両重量と当該検査申請に係る自動車を重量計を用いて測定したときの車両重量が±50kg(普通自動車及び大型特殊自動車にあっては±100kg)の範囲を超えて相違するときは、当該最大安定傾斜角度実測書により算定した値を無効とする。
イ アの場合において、最大安定傾斜角度実測書には、次に掲げる事項が記載されたものであること。
(ア) 計測を行った自動車の車名、型式、車台番号又はシリアル番号、車両重量及び最大安定傾斜角度計測値
(イ) 最大安定傾斜角度の測定を行った者の氏名又は名称、測定場所及び測定日
(4) 次に掲げる自動車(理事長が指定する自動車を除く。)にあっては、(1)④の規定に関し、(3)の規程にかかわらず、視認その他適切な方法により審査することができる。
ただし、イに掲げる自動車にあっては、同一の受検者により同一の事務所等に申請された場合に限る。
ア 次のいずれかに該当する自動車
(ア) 指定自動車等と同一の構造を有すると認められるもの
(イ) 指定自動車等を基本として、リヤリフトゲートの装備、燃料タンクの増設、荷台床面の鉄板の装備、バケットの変更、その他の改造(重心高が著しく高くなるものを除く。)を行ったもの
(ウ) (ア)及び(イ)以外の自動車であって、車体の形状が箱型、幌型、ステーションワゴン、ピックアップ、ボンネット、キャブオーバ、トラクタ又はダンプのいずれかであるもの
ただし、ハイリフト車、簡易クレーンの装備等重心高が著しく高くなる架装を行った自動車を除く。
イ (3)①により計測した結果、基準に適合していることが確認された自動車と同一と認められる自動車
審査事務規程4-6(35) -7-