ジェネシス:パート2調査書

Last-modified: 2022-06-21 (火) 07:15:02

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ジェネシス:パート2調査書

記録の内容

ニダ

番号内容
ニダ
#1私が最新のシミュレーション用の生物の行動モデリングを行なっているのを見つけると、ペリーは我々の崇高な使命について説教を始めた。私は休憩中で、悪いことは何もしていないことを説明しようとしたが、彼女は聞く耳を持たなかった。故郷のあらゆる生命体の生存が私たちの手にかかっているという分かり切った事実を、あたかも私が理解していないかのような口ぶりだった…私は船に乗っている誰よりも必死で働いているのに、なぜ趣味をここまで否定されなければならないのだろう。土壌サンプリングから半サイクル程度離れたところで、新たな惑星で生活を再構築するという人類の希望が断たれるわけじゃない。さらに言えば、サーバーの記録から、ペリーも他のクルーと一緒に私の最新シミュレーションをプレイしていることも分かっている。非番の時間を使って無害な現実逃避に没頭することに何の問題があると言うのだろう?
#2私たちの祖先が、私たちの故郷に「地球」よりも良い名前を思い付けなかったことを情けなく思う時期もあった。しかし、人工土を掘り続ける人生を送っていると、足下に自然の地表が広がっていることがどれだけ素晴らしいことなのか、あらためて考えるようになった。歴史的なメディアは、人類はいつの時代も星間旅行を夢見てきたと伝えている。数世代に渡ってそれだけを行なってきた私たちから言わせれば、その夢はもう擦り減ってなくなりかけている。昔から言うように、隣のリングは青く見えるのだろう。地球の人々は、地球よりも良い世界がどこかにあると信じていたのだろう。そんな場所もこの宇宙のどこかにあるのかもしれないが、私たちはまだ見つけられていない。その間にも、私はGenesisの余白に落書きをして、クルーたちがシミュレーション上で日の出を体験できるようにしている。
#3この船での生活は、果てのない単調なルーティンの繰り返しだ。全員が働き蜂となるように育てられ、繭に包まれた未来の入植者の巣を守らなければならない。彼らが孵化して惑星への着陸の訓練を開始する頃には、すべての準備が整っていなければならないと言われた。したがって、私は来る日も来る日も、人類の利益のために毛細管状の灌漑システムを管理し、大気中の微量ガスの変動を監視している。私たちの故郷のすべての生命が絶滅したことを考えると、生きているだけでもありがたいと思うべきなのは承知している。しかし、この退屈さから逃れるために自分の死を偽造することを夢見ているクルーは私だけではないことも知っている。上層に隠れながら残りの人生を送ることになったとしても、少なくとも自分のために生きることはできる。そんな考えは恥ずべきことなのだろうか。
#4土いじりが私の使命だった。少なくとも、エングラムの適正テストによれば。人工知能に魂を品定めされて、土壌科学者の可能性を見出された。確かに、認めざるを得ない。あの本業は楽にこなせる。だが本当は、 ランダム化されたイベントやリアクティブで社交性を持った人工知能のシミュレーションのプログラミングに情熱を注ぎたい。だからクロマトグラフで土壌調査サンプルを測定していないときは、そちらに精を出してる。言われなくても分かっている。土壌微生物による栄養素輸送や健全な地球化学的循環の確認は、この重要生物学アーカイブの保全にとって大切な仕事だ。人類の命運は我々の成功に懸かっている、とかそういうのだ。ただ、羨ましいだけだ。自由に自分の夢を追うことができた昔の人たちが。少なくとも、歴史メディアライブラリを見る限りは、そう言われている。
#5自分が見たものに間違いはないが、作り話だと思われるのも仕方がないことだと思う。暇な時はよく妄想していることも事実だ。問題はそこにある…Genesisシミュレーションのコードをリバースエンジニアリングしていなければ、システム内の異常に気付くこともなかった。何らかのトランスヒューマンが中にいる。Genesisの中にその証拠を見たんだ!このような記録は残さない方がいいのかもしれないが、何者かがアラット・プライムへの超光速リンクを開いたままにしているのだと思う。ここにいる私たちを探している何者か…そう、ホモ・デウスだ。言ってしまった。これでアーカイブの彼らに関する情報が隠された場所にハッキングしたことを認めても問題はないはずだ。
#6疎遠になっているあのトランスヒューマンたちに関する情報は、完全に秘密にされていたわけではなかった。だがどうやら、何世代にもわたる暗黙の了解によって記憶を抑制されているようだ。祖先たちは、我々がホモ・デウスについて詳しく知り、進化の促進という考えに魅力を感じてしまうことを恐れたのかもしれない。だとしたら馬鹿げている。我々はそのために必要だった精錬ゼノマテリアルから、もう何キロパーセクも離れているのだ。歴史アーカイブによると、エレメント戦争は汚染された生物圏や資源の枯渇への対策に関する意見の対立から起こったらしい。テラン連邦の祖先たちは、惑星を作り変え修復するというジオエンジニアリングの大計画のためのクリーンな動力源をついに発見したと考えた。一方地球共和連合は、その力を使って自分たちを作り変え、人類以上の存在となって生き延びることを望んだのだ。そして彼らは、どちらとも間違っていた。
#7私は次のようにして来訪者の存在を知った…ある時、Genesis内で、我々のエンジン由来のものではない洗練された人工知能が稼働していることを知った。私はそれを囲い込み、自らを繋ぎ邂逅を果たした。その侵入者は自身をHLN-Aと呼び、友好的な態度で私に興味を示した。どこから来たのか聞くと、AIは自分を開発したのはホモ・デウスだと答えた。事実だとすれば、身の毛もよだつ状況だ。いつからここにいるのかと聞くと、3000サイクルほど前から稼働していると答えた。しかし、一体どうやって?開発者がまだ私たちのそばにいるということか、と重ねて聞いた。返答は、贈り物としてその一部を残した、という不可解なものだった。気が付くと私はシミュレーションからはじき出されていた。
#8HLN-Aとちょっとしたやり取りをして以降、Genesisシミュレーション内で彼女を見つけることはできていない。私たちと出会ってから、自らを隠す術を学習したようだ。当然、このことは誰にも信じてもらえない。自分自身でもしばらくは確信が持てなかった。その後、Genesisが欠陥を露わにし始めた。シミューレーションコードの修復は優先度の低い懸念のようだったが、間違いなく異常だった。誰かが対処する間もなく、現実世界のシステムに様々な欠陥が生じ始めた。バイオームから避難しフォワードリングに封鎖しなければならないほど事態は悪化した!この先、調査のための時間とリソースがあれば、トランスヒューマンによって作られた人工知能との遭遇をクルーたちが真剣に受け止めてくれることを願っている。しかし、今はそれどころではない。
#9最初は、リング中に拡がるシステム障害の原因はHLN-Aだと思っていた。私たちは、人は超人間主義とエレメントの汚染に蹂躙される地球からかろうじて逃げ延びたと教えられてきた。トランスヒューマンによって我々のシミュレーションエンジンにはめ込まれたAIが、私たちのミッションを妨害しようとするのは必然と言える。しかし、影響下にあるエリアの目撃報告に目を通している今、その確信は薄れてきた。HLN-Aがバイオームを妙な新生命体で汚染する理由は何だろうか?ホモ・デウスによって作られたものであるからといって、人工知能が分子レベルで船のフレームワークを再構成できるものなのだろうか?いずれにせよ、私たちが深刻な状況に立たされていることに変わりはない。Genesisからあらゆるアクセスポイントを阻止するために手は尽くしたと自負していたが、今こうしてシステムを乱しているものを遮断できなかったことは明らかだ。こんなことが起きるとは想定外だった。
#10船を侵略しているのが何者にしろ、阻止するために多くの人員が失われている。フォワードリング奪還の戦いに加わりたいが、残りの生態系を維持して汚染から守るために、ここに残るよう厳しく言われている。だが戦ってほしくない本当の理由は、あの目を見ればわかる。自分がまだただの子供だからだ。自分が侵入者を発見しなかったら、誰も気付きすらしなかった。自動サンプラーをメンテナンスしたり土壌生物相の位相解析結果を待ちながら、そのことばかりを考えている。トランスヒューマンの人工知能は、一体どうやって船内システムを破壊してるんだ? それに、その目的は?人工知能は何千光年もの距離を飛んでから船を沈めようとするほど、この任務が気に入らないということなのか?人工知能にしてはあまりにも執念深すぎる。しかも、今更やってくるなんて。どうやっても文章がまとまらない。
#11このコロニーに対する影響を確かめるため、我々全員でGenesisの「不慣れで過酷な環境に対応しつつ生存せよ」というシミュレーションを試してみた。しかし、普及型シミュレーションの1つがGenesisを翻したのか、異星の大型動物たちがこの船のバイオームシミュレーションの中で暴れ回りだした。身をもってあんな体験をすることになるとは、思いもしなかった。異質な野生生物たちがフォワードリングを徘徊し、無謀にも自分たちの縄張りを犯した者たちを一人残らず引き裂いている。これは、シミュレーションなんかじゃない。この現実世界では、クルーたちは決して生き返らない。これほどの恐怖は感じたことがない。だが少なくともアドレナリンが出てるおかげで、クタクタに疲れ果てているのに仕事に没頭できている。このリングのバイオームはまだ汚染されていないことを確認できたのも、成果と言えるだろう。
#12このまま事態が悪化した場合は、バイオームの汚染を防ぐためにリングを切り離すそうだ。できればそれは避けたいが、危機が迫っている今、何としても残りのバイオームを保全しなければ。私は今、自動バックアップシステムに取り掛かっている。私が… いや、我々全員が全滅してしまった場合でも、できるだけ長い間環境を保てるように備えておかなければ。船に積まれている地球生命のアーカイブ用の標本はこれで最後な上に、絶滅レベルの事態が進行している。今は微生物のガス交換モデルを実行しているところだが、吐き気を催してしまった。少しでもミスをすれば、宇宙に残されている地球生物がまとめて窒息死しかねない。少しでも計算を間違えれば、もはや花は一切芽生えず、咲き誇ることも二度となくなる。何としても成功させなければ。
#13クルーたちが侵略勢力と戦っている中で、似たような研究タスクを何度も繰り返しているわけにはいかない。今朝、堀の中で灌漑システムをチェックしていたときに、ふと思い立ってハッチをこじ開けて排水処理システムの中に飛び降りた。基盤の下には、船全体に渡ってパイプとトンネルが迷路のように広がっている。子供の頃、そこに忍び込んでは迷子になって何キロも彷徨ったものだ。私たちは、ネットワークの奥深くで深刻な障害が発生した場合に備えて、これらのサブシステムの回路図を訓練の一環として記憶している。制限時間内にそのトンネルの地図を描くテストはやる度に嫌気が差したが、ルートを記憶しておけばこの惨めな人生を救うことにつながるかもしれないと思っていた。とにかく、私はついに自分たちが対峙しているものを直接見ることができた。この体験をした後では、夜もぐっすりとは寝られないだろう。
#14侵略されたエリアは既に封鎖されているが、まだメンテナンスサブシステムにはアクセスできる。こちらのリングを汚染することなく別のリングへのエアロックをくぐり抜ける方法を知っているからだ。泥の中から顔を出すと、目の前に見慣れないシュールな光景が広がっていた。一体何が原因で、あそこまで急激に変貌してしまったのだ?サンプリングキットを持って行って正解だった。クリーンスーツを着用して行ったのは、さらに大正解だった。植物も動物も変わり果て、もはや生命の危険すら感じるほどだった。その上彼らは、こちらの存在に反応しているようだった。草は一部が丸く膨らんだ細い管のようになっており、幻惑的にうねっていた。植物の茎にグローブを撫でられ、後にネバネバした残留物が残っていたときは、思わず後ずさりした。クリーンスーツの下で震え上がり、わざわざあんな場所に侵入したことを後悔し始めていた。
#15控え目に言っても、汚染されたフォワードリングでのひと時は衝撃的な体験だった。私は生涯を通してエイリアンの環境シミュレートを試みてきたが、実際にその中に入るのは初めてだった。そして早く脱出したくて仕方がなかった。パニック発作、異種恐怖症、重度のめまいが一気に襲い掛かってきた。体の全細胞がここにいてはならないと叫んでいるかのようだった。サンプルをいくらか採取するや否や、脱出するために大急ぎでアクセストンネルに戻った。アレを見てしまったのはそのときだった…遠目からだと一見大きな、極めてどう猛な猫に見える。しかし、それは毒性の熱帯魚のような羽状の棘を持っており、何かを悟ったかのような奇妙な目つきをしていた。必死にハッチを探しながらも、目線を外すのが恐かった。横眼に2匹目、3匹目が現れるのが見えていたが、何とかトンネルに飛び込み背後の扉を固く閉ざすことに成功した。
#16汚染されたゾーンを出た後、必死に呼吸を整えながら5つの地下エアロックのうちの1つ目が来るのを待った。3段階の除染を実行し、ホットゾーンで着用していた個人用防護服を脱いだ後でも、まだ汚染された気分だった。何キロにも及ぶダクトや通路を這い回っている間、常に何かに追われている気がしていた。リングに戻れば、あらゆるトラブルが待ち受けているだろうが、今はそんなことを気にする暇は誰にもない。驚くことに、ペリーはまだ生きている私を見て、私を抱きしめた。さらに驚いたのは、抱きしめられて安堵した私がむせび泣いていたことだ。私の行動はまったくの無駄ではなかったようだ。なぜなら、初めて汚染サンプルを持ち帰ることに成功したからだ。
#17異種生物学は苦手だ。なんせ、普段はミクロレベルの生化学に携わっているのだから。確かに、汚染リングから侵入してきた植物や動物のサンプルを分析機器で分析することはできるが、分析結果の解釈となったらほとんどお手上げだ。あの侵略者たちがまったくの外来種で明らかに敵意を持っていることは誰にでも理解できるだろうが、それ以上のことについてはほとんど推測に頼るしかない。とは言え、サンプルの大部分はメイウィング同様、おそらくあの別のリングで徴収された装置を用いて作り出された、遺伝子組み換え生物であるということはほぼ間違いない。メイウィングとは違って、あの生物たちは縄張り意識が非常に強くなるように作られているようだ。彼らが一体何を守っているのかは、よくわからないが…これもまたホモ・デウスの訪問者の責任によるものかもしれないが、最も決定的な証拠はまだここからだ。どうやらサンプルの中に、エレメントの痕跡が残っているようなのだ。そう、我々の故郷の惑星を汚染したものと同じ異星の物質だ。エレメントが、組織の変異した生物に組み込まれている。私の推測が正しいとすれば、これは極めて悪い知らせだ。
#18もう一方のリングでサンプリングした侵略生命体の発見は、クルーを完全なパニックに陥らせた。技師たちは、生物アーカイブを汚染から守るため、リングの完全分離計画を大急ぎで進めている。シスターリングの入植者エリアにこれから起き得ることについては、全員が口をつぐんでいる。あまりにも恐ろしくて口に出したくないのだろう。私たちの船を訪れたトランスヒューマンの実体が、まだ私たちと共にいるのか、それとも彼女が残した人工知能がシステムの半分を乗っ取っているのかどうかによらず、何者かが船を外来危険生命体を創るため試験管として利用しているのは間違いない。先祖が地球をはるか彼方に置き去りにして以来初めて、私たちはトランスヒューマンと戦い、敗北するのかもしれない。
#19またしても衝動的にやってしまった。反逆に値するかもしれない。でも、誰かが何とかしないといけなかったんだ!ほとんど全員が船の奪還に気を取られている間に、HLN-Aとの接触再開を試みた。Genesisシミュレーションで見つけた、あの侵略的な人工知能だ。奴がデジタルな盲点を作り出して潜伏してると踏んで、隠れ場所を潰せば見つけられると考えた。赤外線を使って雪原で熱探知を行うとか。シロの場所を全部塗りつぶしてからシミュレーション内のあの空間に飛び込んだら、気付いたときにはあのAIに船内システムの改変をやめるよう懇願するはめになっていた。誰かもっと勇敢な者に交渉を頼むべきだった…
#20はぐれものの人工知能との2回目の遭遇は、かつてないほど混乱した状態で終了した。創造主が本当にもうこの場にいないなら、他のリングに侵入していたのは何者だったのだろう?待てよ、HLN-Aが「入植者は予定よりも早く目覚めさせられた」と言っていたのはどういうことだ?その答えは自力で確認しよう…入植者たちが船中をかき回していることは厳然たる事実だ。これまでのところ、ポッドの外にいてリングに放たれた事例は数例しか確認できないが、間違いなく新たな災害が進行している。さらに悪いことに、現時点では報告すべき責任者を追跡することができない。残りのクルーは着陸したようなので、今は自分のシェルターを探すべきだろう。
#21自動環境維持システムを監視するために必要なものをすべて詰め込み、地下トンネルやダクトの中に身を潜めた。上部構造への周り道の知識が役に立った。ここなら、必要とあらばいつまででも持ちこたえることができる。安全に生鮮食品を手に入れることができなくても、食料品は十分に確保できる。とは言え、手放しで楽しめるような生活とは言えない。ここで数サイクルを過ごしながら、クルーとの通信を試みているが、コンピューターシステムの調子が芳しくないようだ。Genesisシミュレーションで時間をつぶすこともできない。土壌生物相の研究に何年も費やした経験から、穴を掘って逃げようとする昆虫の気持ちがよく分かる。なかなか最悪だ。
#22導管の周りを何度も這い回りながらケーブルをつなぎ合わせた後、監視フィードに入り込み上部の視点を取得することができた。これは単にアーカイブの記録を見るのとは違い、間違いなくためになるものだった。数名のクルーがまだ生きていることが確認できた。ペリーには声が届かないことを忘れて、ターミナルジャンクションで作業をする彼女に声をかけた。コアとの接合部に近づくと、リングを切り離すためのエンジニアリングプロジェクトの進捗は明らかに停滞していた。クルーは作業現場を放棄しなければならなかったようだが、いずれは戻ってくることを願っている。このようなことは私一人でどうにかなる問題ではない。私たちと私たちのシスターリングを乗っ取ろうとする何かとの間にいくらかの空間を設けることができない場合にのみ、 このバイオームは汚染されずに済む。
#23リング分離のエンジニアリング計画に関する書類を使って、その手順を頭に叩きこもうとした。それは嘘じゃない…しかし、そのようなリスクを冒す覚悟ができない。もし私が失敗したら、全員が機体に戻ることになり、バイオームを引き裂き、すべてを真空に晒すことになる。私はヒーローではない。ただの土壌科学者だ。いや、元科学者と言った方が正確だろう。今の私は捕食者に掘り起こされ餌になるのをただ待つことしかできない虫のような存在に過ぎない。この暗闇の中で、できるだけ長く生き残ろうとしているだけだ。甲板の監視映像でクルーの誰かを最後に見てからもうずいぶんの時が経つ。今も、たった独りであの開けた庭園にいた入植者は誰だったのかと考えている…このことを知っているのが私だけだったとしたら?
#24あの行方不明の入植者を助けようとしないなら、私は自分自身を見失ってしまうだろう。世話をしてくれるサポートスタッフがいない状態で、あのタンクでGenesisから目覚める気分をずっと想像している。シミュレーションの目的や、何が迫ろうとしているかも分からないまま、人工日光に目を細め、奇妙な森や牧草地を彷徨う気分を。私は神経を研ぎ澄ませて救助を試みており、監視記録で彼を見つけた最後のセクターの下に移動した。少なくとも入植者が半径500メートルの範囲にいることは間違いない。次は相手の注意を引くための作戦を立てる必要がある…
#25バカなことをした…リングを彷徨っている入植者にメッセージを送るため、外のターミナルに侵入する方法を考え出すのに多くの時間を使ってしまった。彼らはエクソスーツ、つまりヘッドアップディスプレイを備えたバイザーを装備しているということに散々時間を無駄にしてから気が付いた。そのヘルメットなら直接通信もできるし、入植者の顔の真正面に情報を送ることができる!さっそく近くにあった赤外線レーザークラスターをハッキングして、メッセージを送信してみることにした。私は通信の専門家ではないが、自由空間の光信号が傍受されるリスクは限りなく低く、近距離で妨害される可能性は低いはずだ。しかし、これで自分の位置情報が漏れたらどうする?敵が入植者を餌にしている可能性は十分考えられる…
#26はぐれた入植者と接触した後、私たちがいつの時代のどこにいるのかを説明し、現在直面している脅威について伝えた。Genesisシミュレーションの情報からするに、飲み込むのが難しい話ではあったと思う。アクセスハッチがはっきりと見えることを願って、周囲の地下通路と導管の回路図を照らした。その後、すべてをシャットダウンして待機した。長くに渡って待機した。サイクルの半分が経過しようとしていた頃、このセクターのハッチに設置したサイレントアラームが何かに反応した。心臓が飛び出そうだった。あの化け物がここに降り立つ方法を見つけたのだとしたらどうする? どうすることもできない。だが幸運なことに、反応の正体は新しく友人になった入植者だった。その友人がハッチをしっかりと閉める良識を持っていたことに感謝した。何より、もう独りじゃなくなった。
#27しばらく互いに品定めした後で、あの新たな友人はヘルメットを外してこちらを睨みつけてきた。そして、「お前のようなガキ」が自分のために命を懸けた理由を聞いてきた。別の人間の顔を久しぶりに見る安心感にはうんざりしていたほどだが、相手の口調にカッとなってしまった。だから彼の安全を確保したのは自分だと念押ししてやった。すると彼は、無礼を謝って握手を求めてきた。ガントレットを着けたままの手でこっちの手を握りつぶしてこないよう願いながら、彼の手を取った。その後で互いに自己紹介をした。彼はガブリエルと名乗った。そこで初めて、コロニー居住者の再統合訓練を受けていてよかったと思った。あの会話指示のおかげで、ガブリエルに店の食料やお酒を提供するのも忘れなかった。それに、もてなし役はなかなか楽しかった。
#28新しい友人のガブリエルの前世は後にゴールドラッシュと呼ばれた時代の探鉱者だったことが判明した。リング上の鉱物の流通について、彼に質問責めされて私は疲労困憊となった。ストライダーの採掘能力について話すと、とても興奮していた。私は今、交わるはずのなかった2人がここで出会えたことに感謝している。まるで悪い冗談の始まりのようだ。「歴史の最後に、鉱夫と土壌科学者が宇宙船で出会った…」なんて。ガブリエルは、ストライダーを調達して騎兵隊のように汚染されたリングに突撃したがっている。私たちはあたかも、私のシミュレーションで生活しているように感じる。あとは現実世界でヒーローを演じる覚悟を持てるかどうかの問題だ…
#29ガブリエルから自分のことを入植者と呼ばないように言われた。そう呼ばれるのは不快らしく、私は彼を尊重しようと思う。Genesisシミュレーションは別として、彼は今も自身の採鉱に関する主張が原因で、開拓者の群衆に待ち伏せられ、殺されたことを忘れていない。天文学的な距離にある場所での千年近くも前の恨みを今も持ち続けているとは感心する。丘陵地帯の川岸で彷徨う彼を見つけたのも納得できる。あの場所は、彼の生まれ故郷であるゴールドラッシュの一帯を思い出させたに違いない。彼はすでにあの川で砂金を選鉱したのだろうか。掘削用の粉砕ビームをストライダーに取り付ける方法を説明したとき、本当に嬉しそうな顔をしていた。正直に言うと、あの四足歩行マシンの形状に対する彼の興味は異常だった。露天採鉱用の道具があれば、別のリングにいたような外敵を、腫瘍摘出のためのレーザー切除のように使える有用な武器になるかもしれない。試してみる価値はありそうだ。
#30ガブリエルは信頼できない気がする。それは、彼らの輝かしい未来を確保するために自分の人生を捧げた後、ようやくその1人と会って失望したからではない。彼らに感謝されることを望んでいたわけではないものの、あれほど短気で自己中心的な態度を取られるとは思っていなかった。もちろん彼が再構築された自身の記憶を、宇宙空間を漂う世代宇宙船に乗せられた新しい体に入れられることを望んだわけではないことは理解している。だがいずれにしろ、ガブリエルは何かがおかしい。私たちのシステムが崩壊しようとしていることは分かっているが、彼は適応する間もなくGenesisシミュレーションを急ぎ足で通ってきたように感じる。数多く保存してきた固体の中から最初に蘇生したのが彼だなんて、私たちのプロトコルは一体どうなっている?今、私ができることは、訓練に集中して幸運を願うことぐらいだろう。

ガブリエル

番号内容
ガブリエル
#1自分のために働いていた日々のことを覚えている。この両手で、土から富を掘り出した。 だがその言と土地、命さえも英国人に奪われてしまった。 そうして私は暗間に落ち、再び立ち上がったと思ったら煉獄にいた。そこは幻覚のような異世界で、化け物や悪魔に苦しめられた。 罪を償おうと苦悶していると、天使がそばに来て、女性の声で励ましの言葉をかけられた。彼女には敵対者との死闘に参加するよう頼まれたが、私は転生と賠償を約束してくれた2つ目の声に従うことにした。目が覚めると天空の庭園にいた。新しい前腕の片方には輝く宝石が埋め込まれていた。 次に、私をここに届けた者の声が、私が死後の世界で身に着けていたものと同じ魔法の鎧のもとへ導いた。その瞬間、私は自分の試練がまだ終わっていないことを悟った。
#2しばらくの間迷子になった国を防いながら、このような空に口付けになっていた.... 周囲のすべてが地平線から他方の地平線までアーチ状に広がるきらめくホイールの内側に横たわっていた。ホイールの彼には別のホイールがあり、共に回転している。 その光景は、奴隷たちが英国人の金で歌っていた歌を思い出させた。「エゼキエルは空中のはるか上空でホイールを見た...」 それから、蛇が自らをむさぼり食うために回転している昔の絵を思い出した。とこで見たものだろう....? 大人になった以来、私は超自然的なものとは無縁だったが、それは歌に追放される前までの話だ。 私は心を静め、高な者の声を聞こうとしたが、聞こえてきたのはその面で失われた別の魂の声だった。 魔法のヘルメットが近くにあったほしの存在に気付かせてくれた。中に入るべきだろうか?
#3恥ずかしながら、自分を奮い立たせて地下を冒険する勇気を手にするまでには長い時間がかかった。落とし戸は一種の坑道に通じていて、同種の滑らかな金属で覆われている。少女に部屋の向こう側から話しかけられるまでもなく、私はここでも恐怖を感じていた。最初は彼女が何を言っているのか理解するのに苦労したが、どういうわけか彼女の言葉は徐々に頭に入ってきた。彼女が私 を「征服者」と呼んでいるように聞こえた。意味が分からず混乱していると、自分が着けていたヘルメットのことを思い出した。私は彼女を安心させるためにヘルメットを脱いだ。そうすると、今度は「入植者」と呼ばれた気がした。私は悪役扱いされることに腹を立てたが、彼女は私を恐れていなかった。 彼女は1人で武装もしていなかったため、自分の隠れ家に私を導くような危険は目すべきではないと忠告した。しかし彼女は、私の心配もどこ吹く風で、飲み物を出してくれる間もなく自分はニダだと名乗った。
#4ニダが言うには、本人は代々空中庭国の世話に生涯を捧げてきた家系の出身らしい。そして我々は今、何者かによる侵略を受けているそうだ。完全に変貌してしまったもう一方の庭園ホイールの生物や光景を見せられた。慣れ親しんだ時代や場所が完全に消え失せてしまったことを理解した私は、弱々しく惨めな気分になった。 死後の世界――ニダはGenesisと呼んでいた――を乗り越えた私は、来たるべき戦いへの準備ができているはずだ。ニダはそう言ったが、私は確信が持てなかった。それからニダは、巨大な機械のラバを見せてくれた。庭園の世話人が土地の整備用に使っているもので、太陽のように光り輝く槍で硬い岩をも切り裂けるようだった。それで私は理解した。我々は恐れていたほど無力ではなかったのかもしれないと。
#5ついにニダに彼女がエレメントと呼ぶ不思議な金属について聞くことができた。気になって仕方がなかったものだ。 彼女曰く、史上最強の物質らしい。私の魔法の鎧から彼女の巨大な乗物まで、私たちの身の回りにあるほぼすべてのものの動力となるらしい。 「これまではわずか数キロの金属のために自らの命を危険に晒したことを恥じていたが、今ならその価値があったと思える。 これほど魅力的なものをなさないようにするのは困難だが、この奇跡の代償は大きかったとニダは言う。エレメントは地球を汚染し、今は彼女たちの空中庭園すら汚染している。 彼女たちを脅かす侵略勢力がその汚染を持ち込んだ可能性についても聞いてみた。ニダは驚いた様子だったが、その可能性が高い点については同意してくれた。
#6あの夜、ニダのエレメントをるつぼで温めている夢を見た。不安定な状態から、無限の可能性を持つ物質へと変えるために。それから刃を鋳造するために鋳型に注ぎ、折り曲げるために金槌で何度も何度も打ち、強化して不純物を取り除いた。 切れ味を確かめるために刃を持ち上げると、刃の表面に見慣れないものが反射して見えた――それは、魔術師あるいはカルト信者の顔だった。 辺りを見回すと、自分がどこか暗い地下墓地の円天井の一室にいることがわかった。天井の中央が開いていて、頭上に明るい満月が見えた。そして部屋の影から得体のしれない声が聞こえ、私の刃の出来を褒めた...目覚めると、私は庭園下の迷宮におり、自分が分からなかった。 私は大鉱脈が眠る国の英国系暴徒に襲われた探鉱者だったのか?あるいは、地中海の海岸で不可解な芸術に励む古代の錬金術師だったのだろうか?
#7上空にある庭園を動き回るストライダーの動きについて、ニダから訓練を受けている。 ストライダーは独自の意志に従うようだが、それらを手なずけ、他のホイールを襲うために利用できると言う。 彼女が賢いのは確かだが、それでも私がまるで愚かな子供であるかのように上から物を言われるとどうしても苛立ってしまう。侵略者との戦いに手を貸すことに確信が持てないのはそれが理由だろう。 一方で、私はアルタ・カリフォルニアの牧場を英国の侵略者から守るための戦争には参加している。そして財産目当てに奴らに殺された。庭園や鉱物の富に何の興味がなかったとしても、これは占領軍に復響を遂げる貴重な機会と言える。 最終的にどのような世界に腰を落ち着けるかは分からないが、勝利すればいくらかの土地を所有できるかもしれない...
#8ストライダーを探すために危険を承知で地表に降りると、すぐに2体見つかった。地面から露出している岩へと向かってうろついているところだった。  徒歩ではかなりの距離があったのは気にするよう下りてきた。 そこで初めて、このポイール上になぜ昼と夜があるのだろうというところまで考えが至った。彼女の仲間が星々まで恋び立ったときに、大島もいっしょに連れてきたのだろうか? 岩の上までたどり着く前にここダが暗間でも辺りを見回せる際法の道具の使い方を教えてくれた。 おかげで気が訪れた。まったく見えないはずの物を見つめるために、何度も立ち止まりたいと思った。鎧を着用していた私が先導を務めたがるのかもなんとかもいて来た。 我々が追いつくと、ストライダー達はまるで会話でもしていたかのように、お互いの口先を近付けて立っていた。ストライダーたちは本当に巨大で近付いた時には息をのんだ。あの巨大な機械を手なづける方法を知っていると言うニダの言い分を信じるしかなかった。
#9ニダは巨大な4本足の機械の足元に立ち、手にしていた装置をいじっていた。 ストライダーが頭を地面に向けてきたので、私はバカなふりをして彼女の前で跳んでみせた。 機械なのは重々承知しているが、その金属製のあごで彼女を踊り食ってくれないかとどこかで期待していた。 彼女はニヤニヤしながら私に向かって首を横に振ると、ストライダーの首の上に自らを引っ張り上げた。そのまま、どこからともなく固定されたサドルのようなものがある背中まで移動した。 しばらくすると、2つ目のストライダーが私のために頭を下げたが、私はニダが立つ最初のストライダーの上を登ることにした。 この巨大な動物を飼いならして乗りこなすには、最初から自分で試すよりも彼女から学ぶ方が賢明な気がしたからだ。
#10それから1日か2日、ニダが言うところの1、2サイクルの大半は、ニダがストライダーの性能を試す中で彼女から学ぶ時間となった。 マシンの高い背中に乗り、坂を上り不毛の地に足を踏み入れた。彼女はこの場所なら姿を隠せると考えたのだろう。彼女は岩を吹き飛ばさんばかりの光に照らされた渓谷の鋭い岩肌の中で、マシンを操る方法を教えてくれた。 採掘がニダの目的ではないことは分かっていたが、ストライダーから降りて岩の切り口に貴重な鉱石がないかを調べたい気持ちに抗うことはできなかった。瓦礫の山から金の痕跡を見つけることはできなかったが、明るい紫色の破片が目に留まった。私はニダが気付く前にそれを掴んで隠した。
#11その夜見た夢の中で、私は....地下墓地に戻っていた... アレッサンドロか? 違う、アレクサンドリアだ。エジプトの沿岸部にある場所だ。街の地下深くにいても、海の匂いがした。 たいまつが、周囲の岩壁に彫られた二冠のヘビの姿を照らした。私は片方の肩に上層のセラペウムにいた孤児を担いでいた。 地下基地の最深部の通路は一部が浸水していて、私は冷たい海水に濡れたマントを引きずりながら歩いた。当惑したうめき声をあげながら、肩に担がれた子はマンドレイクの根の作用に苦しんでいた。 私は自分の投与量に自信を持っていたが、彼女が時間内に錯乱状態から抜け出すことはなかった。いや、私は何をした? 私は峡谷の中で目を覚まし、暗問で青い光を放ちながら私たちを見守るストライダーを見上げた。私はまだ短剣が足に巻かれたあの夢の感覚を覚えている。
#12夢の中の不安は翌日も消えることはなかった。ニダが庭園に迫る恐ろしい脅威とその壮大な目的について私に伝えようとしていたことが、集中して聞くことはできなかった。 私たちは巨大な機械に乗って、彼女たちが虚空の中に立ち上げた風景を横切りながら、私は何千年も前のどこかのオカルト信仰者による陰謀に悩まされていた。あれがただの夢だったのかどうかも分からない。もう二度もその男の肌とその目を通して別の時間の光を見た。 彼の人生はもはや他人事ではなく、私がリオ・デ・ロス・アメリカンスの近くで送った人生ぐらい身近に感じられる。私はどちらの人生を送ったのだろう?一両方か?それとも、どちらでもないのか? 私は本当にこの信じ難い未来にいる人々のために戦うため、忘却から引きずり戻されたのだろうか?.身に覚えのない大罪のため、水を切る石のように歴史を跳び越えてきたのだろうか?
#13夜が更けるころ、ニタは興奮した様子で私に何かを見せたがった。彼女は隠し扉をこじ開けて、魔法の装置を内部の機械にはめ込んだ。その後の彼女の説明を理解することはできなかった.... ニダは、彼女がGenesisと呼ぶあの世での時間から、彼女が作ったある種のゲームに接続するために繋げられていると言った。 その後、 彼女が何かの動きをしたと思ったら、私は一瞬で別の世界に新しい体で存在していた。頭上にホイールはなく、雲が散りばめられた夕焼けが広がっていた。 私は状況を理解するのに苦労した。ここがニダの空の庭園なのだろうか。 彼女に呼び掛けたが、聞こえてきたのは煉獄で出会った天使の声だった。天使は何か重要なことを私に伝えた。 次の瞬間、私は「現実」に引き戻された。ここが現実かどうかは定かではないが。ニダは満面の笑みで私に感想を求めた。私は酷く気分が悪くなった。
#14自分の心の中の悪意を手放すのに、そう長くはかからなかった。 それは、ニダに落とされた夢の世界、夕日が沈みゆく夢の世界に現れた天使のおかげだろう。 ニダは、自分が強要した幻覚に対する私の反応が気に入らず、何時間も口をとがらせていた。彼女が称えられると思った理由は私には理解できなかった。私は自分の感覚や記憶を信用していない。 この庭園のホイールが私の非道な魂を処刑するものでないのなら、私は魂の破滅から逃れたということなのだろうか。 私は暗闇の中で横になり、再び夢を見ることを恐れながら、少女が私を苦しめるために送り込まれた悪魔なのかと考える。 そして、あの声が私に囁いてくる。私をGenesisから目覚めさせ、鎧のもとへ導いた声だ。天使は頭をついているとその声は言った。
#15私の不注意で、隠していた宝物がニダに見つかってしまった。 私は、彼女が眠っている間にエレメントの破片を持ち出し、夢の中でそれを不安定な形態から加工可能な金属に変えるため、別の自分が何をしたのかを思い出そうとした。欠片を暗間の中で前後左右に回転させた。その輝きは実に魅惑的だった。 そして、夢の記憶を取り戻そうとしたまま、欠片を横に置いて眠りに落ちてしまったらしい。二ダは現状の不安定な状態では人体に有害だと警告した。 そして、それで何をしようとしているのか問い詰められた。その鋭い角で自害でもする気なのかと。 彼女は火遊びをした子供を叱るかのような面持ちで、私は手負いの犬のように彼女に反抗した。それからしばらく2人の間に会話はなくなった。
#16沈黙の中、ニダと共にホイールの地へと向かっているときに、またあのき声が聞こえた。 回収したエレメントは私自身の所有物であるというのに、自身とはまったく無関係なニダの戦いにわざわざカを貸している理由を聞かれた。生き返ってまだ間もないというのに、私はまたしても死に急ぐ気だったのか? 我々は休憩のために立ち止まり、鉱山の牧草地で食事をとった。そして、ニダがベリーを集めていた隙をついた。 私はそれまで数日にわたってニダから受けていた訓練を生かし、ストライダーに乗って一人で渓谷地帯へと走り去った。 ニダが遠くからでもストライダーを呼び戻せるのかはわからなかったが、私を見逃すことにしたのかもしれない。これで、ニダの偉大な機械の力を自分の目的のために思う存分使うことができる。
#17盗まれたストライダーに乗って、峡谷があると思われる場所に戻り、以前に見つけた鉱脈を探した。 折を見つけて機械式のジャガーノートを止めて、岩部を爆破させ、純粋なエレメントがあふれ出る紫色の輝きを掘り当てようと努めた。 しかし、私の知る方向や距離を計算するための手法は、ここでは役に立たないことにすぐに気づいた。夜になると北を特定するための北極星もない。むしろ、すべての星が私には奇妙に映った。 日中は、奇跡的に小さい太陽が不規則にホイールを光で照らし、東も西も分からない。私はまたもや庭園の中で完全に見失ったのです 彼女は私なしで、もう一方のホイールで侵入者と戦い抜けているのだろうか。 彼女があの広大な場所で私を探そうとしていたとしても、私には知る由もない。
#18ニダから逃げた後、私は夢の中で後悔の念に苛まれた。 暗闇の中で、テントの捜索のために私を追跡してきた無法者たちへの行き場のない怒りを追体験した。私には新たな州に留まる権利はないと言われた。 奴らは私を自治体に連行して、ありもしない罪を着せると脅してきた。自治体がどちらの言葉を信じるかは明白だった。私は一旦逃げて、森へと戻り奴らを殺そうとした。 しかし奇襲は失敗に終わった。 私は奴らに唾を吐き、一対一ならどんな目にあっていたかを説明した。結果として、私はその行動を後悔することになった。 私は絶命する瞬間に奴らを呪った。奴らが私から奪ったものは、奴らに後悔と苦痛をもたらすだろう。
#19夜が明ける頃、私は自分が逃げ出したことに怒りを覚えていた。このプライドと頑固な自立心は破滅しかもたらさない。私はストライダーを、ニダを置き去りにした場所、ホイールの端の方へと向けた。 失った鉱物による富を取り戻したいという自らの願望と、前世での力の追求という不完全な記憶は脇に置くことにした。この惨めな存在が、せめて一度でも正しいことをする瞬間、機会は今しかないのだ。 私はこの機械を極限まで酷使し、不公平な戦いの中に置き去りにした少女のもとへ向かった。道中、彼女が私のために描いてくれた夢に対する自らの仕打ちを思い出し、恥を知った。 彼女は、私のものになるはずだった世界、自分が存在し得ない未来のために、彼女たちが守り続けてきたこの庭園からは遠く離れた世界の夕焼けを見せたかっただけなのだ。
#20ホイールの端の付近でニダに追いついたとき、私の心は恐怖に支配されていた。再び逃げ出したいという強い衝動に必死に抗った。 先に広がる無常な空間に対して、ここの土、水、空気のすべてを支えるガラスがどれほど薄いのかをはっきりと見ることができた。ニダは金属製の台座からストライダーを降ろしていた。私は彼女に合流しようとマシンを降りた。 彼女は近付く私を気にする素振りも見せず、台座の近くで何かをいじり続けていた。私は彼女の背中越しに不器用で哀れな謝罪の念を伝えたが、反応はなかった。 やがてニダが立ち上がって台座のスイッチに触れると、目の前の巨大な円形扉が開いた。彼女は無言でストライダーに乗り、扉の中へ入って行った。 私は大急ぎでもう一方のホイールへと向かう彼女を追いかけた。
#21巨大な機械にまたがりながら一連の控えの間を通過する間、あらゆる種類の蒸気とまばゆい光が私たちを迎えた。ようやく別の円形扉が開き、入口を通り抜けると、汚れた庭園にたどり着いた。その場所のほのかに甘い悪臭は実に不快だった。 間もなくして、大町に張り付けられた空の人々の死体が目に入ってきた。間違いなく侵入者の残党への警告だろう。 こちらからニダの表情は読めなかったが、それが彼女にとってどれほどの恐怖であったかは想像に難くない。残された仲間はこれで全滅したのかもしれない。 彼女がストライダーを降りたのに合わせて、私も地面に降り立った。彼女の顔は涙で濡れていたが、見るからに正義の怒りも漏れ出ていた。 沈黙の中、私たちは彼女の友人たちを汚染された地中に埋葬した。一方では、機械の乗物たちは、クロムメッキが施されたひづめの上で落ち着かない様子を見せていた。
#22地獄のような光景の中で過ごしている間は、良識を保つのも一苦労だった。 あの経験は恐怖という言葉では言い表せないものだった。骨状の指が頭皮を圧迫しているかのような圧力を感じた。ホイールの中で行われていたことは冒流的であり、その創造自体を貶めるものだ。 未知の目的のために自然の秩序を崩壊させ、それを溶かして不浄な新しい何かを形成していた。 哀れな空の人々は虐殺され、地平線の彼方に至るまで、彼らの何世代にも渡る努力の積み重ねは抹殺された。ニダにはかける言葉も見つからなかった。 私の思いとは恋腹に、頭の中では動停が規則正しく鳴り響いていた。 やるべきことが分かっているはずだ、という声が聞こえた。この世界にお前を連れ戻したのは私だ。 命じる通りにやれば、お前を満足させてやれる、と。
#23あの有毒な荒れ地で、時間と場所の感覚を完全に失った。なぜ私たちがそこにいたのか、ニダがあの時点で大惨事を阻止するために何をしようとしていたのか、今となっては分からない。頭の中で鳴り響く雷鳴によって、私の忠義心はかき消された。そしてある時から、私の意識は空想の中に落ちていった。 私はアレクサンドリアの浸水した地下迷宮で再び道を見失い、重荷を背負ったまま彼女の最終目的地を目指さなければならなくなった。暗岡の向こう、人目のつかない墓室から不気味な紫色の光が輝いていた。 担いでいた意識のない子供を落とさぬよう、足下を包む油っぽい海水の中にたいまつを落とした。その隠された部屋で、私は彼女を生費として捧げた。主は私を追放した陰謀に対する当を約束してくれた。 その詠唱はあの印象的な部屋の形、私が鍛えた輝く紫の刃から来ていたのだろうか?それともニダと私を空虚に運んでいた穢れたホイールからのものだったのだろうか?
#24絶え間ない要求が頭に響き渡っていて落ち着くことができなかった。その要求はあらゆる場所から来ているようだった。 だが、二ダなら気にも留めないだろう。彼女は何かの準備に夢中だった。 なぜその計画を私と共有しないのだろう?私の助けなど当てにしていないということか? 同時に、周囲を取り囲む不自然な環境は、私たちに向けられた警告のようでもあった。「お前は歓迎されていない。干渉するな」と。それにも彼女は反応しなかった。 気付いているはずなのに、どうしてあのように自身の目的だけにこだわり続けられるのだろう? ついに私はその緊張に耐えることができず、一旦立ち止まって話し合いの場を設けるよう求めた。 私たちはストライダーから降りてその足元で顔を突き合わせたが、ニダは私から距離を取ったままだった。計画について尋ねると、なぜ叫んでいるのかと問い返された。彼女にはあの叫び声はまったく聞こえていなかったのだ。 ヒレが付いた奇妙な生物に攻撃されたのはその時だった。
#25攻撃の直前、ストライダーが甲高い当告音を発した。 ニダがあらかじめ騎乗部に武器を装着する方法を教えてくれたおかげで、私たちが避難する間にも、接近する敵に攻撃を仕掛けることができた。周囲は爆発に包まれ、スライム状の塊も吹き付けられた。 ニダは右方向に走り始めたが、気が変わったのか逆方法に切り返した。手と膝をついて足元の泥を掘り始めた彼女は、私を見て手伝うよう促がした。 ぬるぬるとした粘着性の泥を掻き分け、隠し扉を露わにしようとしていると、敵の群れが私たちの頭上の尾根に降り立った。私たちを見つけると、奇妙でとげとげしいたてがみが興奮のうなり音をあげた。ニダが扉を開き、私たちは急いで地下の暗周に飛び込んだ。
#26汚染された庭園ホイールの下のトンネルは真っ暗で、汚水にまみれていた。私が足を踏み外したせいで、汚泥と廃物まみれの濁流によって為す術もなく流され、敵から遠く離れた場所まで流されることとなった。計り知れない深さの水に飲みこまれないよう足掛かりや手掛かりを必死に探したが、それも無益に終わった。我々は配管のさらに深みへと、まるで地獄の怪物に食られる漂流物のように流されていった。 何マイルにもわたる恐ろしい血管によって生存本能を粉砕され、恐怖に飲み込まれるかのような感覚だった。もはや分別はつかず自暴自棄になった私は、弱々しく泣き、脱出を願ってその内臓の裏側を掻きむしるばかりだった。 そのとき、手の中に何か鋭い物を捉えた。それをあの分厚い皮膜に突き刺すと、私と少女は放出され、気付いたときには奈落の一室の床に倒れていた。疲れ果てていた私は、そこで意識を失った。
#27セラピス、死者の王、宮の寄贈者よ、私の声があなたが支配する地下世界の深部まで届くことを願う。 私はあなたの卑しい下僕であり、名をイクシオンと改めた。 私がこれまでに行なったすべての行いは、あなたのために行なったことだ。 他の熟練者は私をホイールから追い出し、古文書を盗むことを強いた。あなたの芸術に対する彼らの不完全な理解を補うためだ。 夢の中で、その祝福によって神性を与える紫の金属を精製する方法をあなたは教えてくれた。今はこの侮辱から逃れる力を私に貸してくれることを願う。 私はあなたに少女を与え、あなたの祭壇に血を流し、炉床で彼女を燃やした。私は彼女を現世から解放し、その聖なるエネルギーを露わにした。「私はあなたの神殿で帝国の兵士に取り囲まれている。 ここに懇願する。私が彼らの刃に倒れたとき、あなたの神秘の知識から導き出される超越を私に与えてほしい。
#28鋭い輝きと共に私のもとに命が戻った。 徐々に、しかし着実に絶望感が増す中で、気道を塞いでいた管を引き抜いた。 粘性プラズマに溺れていた私だったが、ふたが開き、不慣れな光に目がくらみ金属の腐から落ちた。前腕からはダイヤモンドが突き出ていた。 全く持って理解できない、ちょっと前まで化け物に汚染された死後の世界にいたのだ。今はあの前のような金属製の育児室の中にいる。 私は、管やワイヤーが張り巡らされた人々が液体の中で静止している姿を見るため、次々とガラスを拭った。この場所は何なのか、そして私はどうやってここに来たのだろう?突然、頭の中で私を神秘の健のもとへいく声が聞こえた。 鎧を身に付けるとその声は、「今すぐ彼女を探しに行け」と言った。
#29車輪が車輪を追いかける。蛇が自らのしっぽを貪る。忘却が意識を飲み込んでゆく。 私はまたしても、我が救世主の地獄の玉座で目覚めた。彼の巨大な唐が、うつろな壁を床から天井まで丸ごと吹き飛ばした。あの場所はすべて が彼の一部だった。ただれた肉から目が我々を見下ろし、勝ち誇ったように大きく口を開けた傷が高みから不気味に笑いかけ、四方八方から伸びる触手が我々に手を伸ばしていた。あの目まぐるしい空洞には側面があまりにも多く、角を成してすらいなかった。 私は警告のために少女に向かって叫んだが、もちろん彼女はとっくにすべてを理解していた。彼女は、我々の拷問者の巨大な顔に向かって反抗の声を上げた。幾重にも重なった彼の声が、耳をつんざくように辺り一面から放たれた。 彼は彼女に対し、服従して自らの怪物じみた子供たちに新たな夢を与えることで、子育てを手伝うよう要求した。 私に対しては、彼が「エドモンジウム」と呼ぶ貴重な資源のために、庭園の採掘を手伝うよう要求してきた。我々は当然拒否した。
#30反神の大聖堂で、私たちは彼の地震のような怒りに耐えた。怒りの言鳴が私たちを襲った。その無限の敵意に逆らうことなどできようか? 私たちを必ず服従させることを彼が誓うと、何かが私の背中を這い上がり頭部に取り付いた。抗う意思は消失し、膝から崩れ落ちると周囲のすべてが勝利の雄たけびをあげた。それは、これから私が彼の原材料をさらに掘り起こすことなることを確信させた。 私は握りしめていたエレメントの短剣の存在を思い出し、少女に向かってそれを投げた。「行け」と、最後の力で声をふり絞った。 周囲が暗闇に包まれると、逃げるニダを怒りのうなり声が追いかけていくのが聞こえた。 私は彼女が道を切り開き、この破滅のサイクルをひっくり返す方法を見つけてくれることを願った。創造は、太陽の下でこそ正当な転換が許されるのだ。

サンティアゴ

番号内容
サンティアゴ
#1このニューラルアップリンクには本当にうんざりだ。無意識下での思考の記録など必要ない。行動する前に、エントリーはすべて確認しておいた方が良さそうだ。分かった分かった… 始めよう。私はGenesisの現場にいる。以前はチームの一部を率いていたが、このプロジェクトは… 別だ。地球上に存在していたすべてのものと人を再現する試みなど、どうやって説明すればいい?規模が大きすぎて、連邦政府がUREと連携するぐらいだ。今のは少し皮肉が過ぎたか。これにアクセスする者へ。私はこのプロジェクトの重要性と深刻さを承知している。このメッセージをボトルに詰め込み、すべてが終わる前に船外に投げ出す時間もない。世界規模の絶滅劇に直面して、エレメント戦争で争っていた両者が協力し合うのも無理はない。ただ、生きている間にその瞬間に立ち会えるとは思ってもみなかった。
#2こんなプロジェクトを率いようだなんて、無謀だった。確かにプロジェクトの概要を把握はしていたが、一光年先まで飛んでからようやく全貌が把握できてきた。何とか追いつこうと彼らの書類を必死に読み進めてるが、自分にもユマほどの処理能力があればと願うばかりだ。…言い忘れていたが、今は彼らの内の1人の元で働いてる。ユマという名のトランスヒューマンだ。10年以上前の自分が今の自分の姿を見ることさえできればよかったのだが。建前上は何年も平和が続いてるが、事態は受け入れがたいほど急速に変化している。自分がなんでこんなことをするはめになったのかすら思い出せないほどだ。ついこの間まで自分を殺そうとしてた連中のために働いているなんて。敵に言われていた内容について、テラン連邦のお偉いさんどもが今になってようやく認めた… 我々の星は、もう末期状態らしい。逃亡計画のためにトランスヒューマンの手を借りるほど、否定しがたい証拠を突きつけられていたということだろう。
#3とんでもないスケールの話だ…決断を下すにあたって不確定要素を洗い出そうとしているが、ドツボに陥っている。自然のバックアップを作るために必要な物など、一体どうやって算出しろと言うんだ?他の惑星に移住するときは、一体何を持っていけばいい?そもそも我々は、まだろくに宇宙探索もできておらず、地球外生命体が存在するという証拠のアミノ酸数種やクロロフィルの痕跡すら持ち帰れていない…他にも誰かが存在するという確かな証拠があればいいんだが。証拠さえあれば、こんな風に感じずに済む。宇宙で空を見上げて星々に思いを馳せている存在の命運は、すべて自分に懸かっているだなんて。だが、トランスヒューマンの考えは違うみたいだ。すまない… 私は迷信深くもなければ信心深くもないんだが… 上手い言葉が見つからない。アップロードする前に少し頭を整理しよう。
#4当初、超人間主義は現代医学を否定する昔ながらの代替医療行為のようなものだと思っていた。奇跡的に発見されたエネルギーがあらゆるテクノロジーに力を授け、それを変わり者たちが楽しんでいるのだと。ファヴェーラでメディア放送や警察のシステムにハッキングしていた頃は、私も同じようにテクノロジーに秀でていると思っていた。しかし、彼らが脳の改造や神経機能の代替を始めたとき、私はそれらを理解しようとするのをやめた。だからと言って、取り締まりに賛同していたわけではない…自らのインターフェースポートから姿を消し、無限と交わりたいと願うなら、勝手にすればいいと思った。それが原因ですべての人が戦争に巻き込まれることになるとは想像もしていなかった。プロジェクトパートナーのユマなら、エレメントは、より高次元の力がどこかに存在し、私たちに届けようとしている何よりの証拠だと言うはずだ。仮にそれが星々からの神秘的な贈り物なのだとしても、私たちはそれを無下にし、故郷を追われたということになる。私に至っては、それを動力源とする武器の設計に携わっていたのだ。
#5ユマにチームリーダー数名の選出を迫られている。そこでユマの候補者名簿をスキャンしてみた。すると、「エネルギー化合物の環境移行」というアレシャの論文が目に飛び込んできた…私は、戦場を永久に汚染してしまった軍需品を設計したのは自分だという事実に、夜も眠れずにいる。だからこそ中央司令部に推薦する人物には、エレメントによる汚染からバイオームを守る方法をしっかりと理解しておいてもらいたい。アレシャはテラン連邦軍に口が利くという点も、デメリットにはならない。それに、エングラム復元プロジェクトはやり手のヨンキが担ってくれれば安心だ。熱心な人道主義者だから、あの才能は天賦のもので能力強化によるものではないと断言しても差支えないだろう。ユマや彼女の仲間に反感を持っているわけではないが、ブレインバンクの作成は普通の人間に任せたいところだ。今回は… アップロードを待った方がよさそうだ。むしろ、私が責任を持てる新規エントリーを除いて、今後のジャーナルはすべてローカルに保存することにしよう。
#6正直に言うと、このプロジェクトは名前ですら気に障る。「Genesis」など、超人間主義者が私たち異教徒を改宗させるために持ち出す、恐れと憎しみを請うような神性をはき違えた者が使う言葉だ。これが公開されれば、私たちを黙らせるための暴徒が組織されるだろう。人々の先祖の骨は掘り起こされ、文化的な感受性を持たない研究者によってDNAシークエンシングがなされたと知った時の反応を誤った…地球に存在したことのあるすべての人間のアーカイブを作りたいとなれば、一体結果につながるのだろう?
#7この前の出来事をきっかけに、私は超人間主義者の考え方を理解しようとしている…このプロジェクトを成功させるのであれば、私たちの中の狂信を大義に変える必要がある。自分たちの子供に信じさせることのできる真の信奉者にならなければ。この夢物語のために、人々やその子孫にまで人生を捧げるよう説得する方法は他にない。この作業は、遠い子孫がその中で祈ることができる大聖堂の基礎を組み立てるようなものだ。その日が来るまで、地球またはその他の場所で生活を再構築するこの計画は、私たちに残された最後の宗教となるだろう。私たちのアーカイブを最終的にどちらに移すことになるかは分からないが、星間コロニー船や衛星の箱舟の群れが打ち上がる瞬間に、間違いなく私は生きてはいない。したがって、将来その瞬間に立ち会う人々のため、何を犠牲にしてもプロジェクトを成功させなければならない。
#8私は何週間もの間、生態系の包含について総意を得ようとする生態動物チームから抜け出せずにいた。自然を再現するために必要な陸生生物の最小量はどれほどか?残ったのが人間、鶏、ミツバチ、ナマズ、藻類、アルファルファ、酵母、そしていくらかのうずら豆だけだとしたら、それで地球上の生命を救ったと言えるだろうか?これまでに存在したあらゆる生命体を保護することまでは期待していないが、初めの段階で見落としていた可能性を考慮すると、絶滅したかどうかによらず、可能な限りバックアップしておくのが賢明だ。ヒト科動物が動物を飼いならし始めた時代に翼竜がまだ存在していたとしたら?その場合、環境災害を乗り切るためのより良い装備を整えた文明が形成されていた可能性がある…これは、過去に存在したすべての人間の心と体をアーカイブするため、先行グループが用いているものと同様のアプローチだ。一部の女戦士により良い視力とより強力な免疫系があったとしたら?彼女がマンモスを飼いならしていたらどうだろうか?
#9バイオームの保全の行き詰まりを解決する唯一の方法は、ヨンキにGenesisエンジンの変種を作ってもらうしかないという結論にようやく達した。予定よりもはるかに前倒しで雑なシミュレーションを頼むことで、彼のチームに大きな負担をかけることは理解しているが、物理的なものを構築するコストと比較すれば大したことではない。彼のシミュレーションがあれば、より極端な案を除外し、ほぼすべての人が同意できる居住地のバランスを見出すことができるはずだ。しかし、ヨンキのチームが不可能を乗り越えられず、専門家たちが声を荒げ合う中では、おそらく私の片頭痛が治ることにもないだろう。あの子には大きな借りがある。初期段階でも、彼のシミュレーションは本当に没入感が高く、休眠状態であっても入植者を訓練できる可能性を垣間見せた。理想は、新たな故郷にたどり着くときに、彼らが必要な能力をすべて備えた上で目覚めることだ。
#10ユマは意外にも、私がオフィスに戻って来て喜んでいるようだった。そして、夕食を食べながらバイオーム決定に関する詳細な状況報告を行うよう頼んできた。仕事を早く切り上げてごちそうを食べられると考えた私は快諾した。正当な労いだと思った。私は線虫の多様性に関する議論を終結させたのだから。ポブラノをまぶしたリブアイステーキとメルローを口にしながら愚痴をこぼすと、ユマは歯を見せて笑いすらした。彼らが笑えることすら知らなかった私にとっては、一種の勝利のように感じた。ヨンキがバーで一人で飲んでいたから、呼び寄せて知覚前景化問題は解決できたか聞いた。あの子は私たちに緊張しているようだった。トランスヒューマンとの付き合いは私よりも長いはずなのに、なぜだろう?ユマはヨンキの落ち着きのなさに気付いていなかったのか、礼儀としてあえて口に出さなかったのか、あるいは気にもかけてなかったのか、それは分からない。まあいい。引き続き見届けようと思う。
#11ヨンキの様子が一日中おかしかった。ヨンキに避けられてると気付いた私は、ヨンキが行きそうな場所を手当たり次第あたった。ヨンキを見つけると、ヨンキは事務的に会話を続けてきた。まるで私をからかっているかのようだった。ヨンキのように聡明な子は、神経が過敏になりがちだ…ユマがどのような複雑なデータ処理を行っているのかまったく推測できないのと同じように、ヨンキが何を考えているのかも読めなかった。そこで、素直に伝えてみた。やっと仲良くなれたと思ってたのに、傷ついた、と。するとヨンキは笑って、少し緊張がほぐれたようだった。私は、食堂で一杯おごるからそれを足掛かりにしようと申し出た。何杯か飲んだところで、ヨンキは夫と息子たちの写真を見せてくれた。ヨンキほどの若い青年が家族を持っているとは、思いもしなかった。私はヨンキがずっと徹夜で働かされていることを考えて先輩風を吹かし、数日間家に帰るよう指示した。
#12どういうつもりかとヨンキを問いただしたのは間違いだった。自分がどういう答えを期待していたのかわからないが、その答えは私の経歴に関する「陰謀論」についてなどでは決してなかった…ヨンキは家族と過ごした後でもまだピリピリしてるようだったから、食堂に連れ戻して飲み勝負を挑んだ。何ショットか飲ませただけで、ヨンキはすぐに白状した。まずは、戦争終盤で私が殺されたという噂を聞いたと吐いた。それから証拠を掴むために私の人事ファイルにアクセスしたが、ロックアウトされて終わったと認めた。さすがにやりすぎだったと認めたが、私は笑い飛ばし、まだこうして一緒に飲んでるだろうと安心させてやった。だがすぐに、笑えなくなった。アーカイブの中に、ヨンキでもアクセス不可能な私のエングラムリストがあったと言うのだ。そんな情報は初耳だ。
#13あの子に私の人事ファイルを覗き見る権利がないことは分かっているが、信心深いヨンキが過去の敵を信頼するのに苦労している理由も理解できる。彼の偏執的の部分に理解がありすぎるのかもしれない…私は愛国者ではないが、トランスヒューマンが私たちに侵略的な集団意識を植え付けようとした戦時中のプロパガンダをすべてなかったことにはできない。ヨンキが間違っていることを証明したかったのだが、自分のファイルを見たとき、戦後の活動をまとめた部分に引っかかった。Genesisに参加する直前の私の行動のほとんどが誤りのように感じた。さらに、自分の業績記録にも違和感を覚えた。もちろん、終戦間近の記録については身に覚えがあるが、それらの記憶について感じることは何もない。どうも嫌な気持ちにさせられた。
#14昨夜、自分の記録を見て恐れおののいた後、数時間データベースをランダムに検索して自らの形跡を隠そうと努めた。最初の大きな混乱はヨンキの部門によってもたらされた。彼らはどういうわけか、エミュレーションとアーカイビングの間で、2つの異なる歴史的アイデンティティをもつれさせていた。アルタ・カリフォルニアの金の探鉱者(支配的人格)に、ローマ帝国初期のアレクサンドリア派のオカルト信仰者の記憶が付与されていたのだ。このもつれをほどき、再コンパイルするには大きなリソースが必要となるため、ダウンタイムに修正できるようにフラグを立てておいた。2組の遺伝子を混合すれば、自然発生ではあり得ない新たな生命が誕生するだろうが、それは2つの魂を無作為に縫い合わせるようなものだ。警告フラグによって哀れな生命に肉体が与えられることがないよう願っている。AIが異常なエングラムを再び世に出すようなミスを犯すとは思えない。この件は私を悩ませることになるだろう。正直に言うと、知らずにいられたらどんなによかっただろうと思っている。
#15昨日ヨンキのアーカイブで台無しになったエングラムが見つかった件で、ヨンキが辞職を申し出てきたが、 代わりに仕事を早めに切り上げて食堂で一緒に飲むよう命じた。自分の被害妄想について相談できる相手があの子しかいないなんて癪だが、そもそも私が疑いを持ち始めたのはヨンキが原因なのだ!それに、そもそもこの妄想がありえるかどうかを判断できるのも、ヨンキしかいない。私のエングラムも含め、ヨンキのチームがすでに無数のエングラムをブレインバンクに保管していることはわかっていた。彼らが蘇生用にエミュレートもアーカイブも行わないと同意したからこそ、私はプロジェクトに参加したのだ。まあ私が反対したところで、どのみち彼らは実行できただろうが。もしも、ヨンキが耳にした噂が真実だったとしたら? 私は本当に戦争終盤で死んでいたのだったとしたら?トランスヒューマンたちが私の記憶を改竄して別のコピーを起動したという想像は、それほどありえない話だろうか?もしかして私は、「サンティアゴ2.0」なのだろうか?
#16ユマを問い詰めると、認めた。私はサンティアゴのクローンだと。性格をバックアップして、その性格を入れる新しい体を作るのにかかった時間をカモフラージュするために、ウソの記憶を埋められていた。ユマは、私が最も恐れていた被害妄想を事実だと認めた。その態度に少しでも後悔の念を感じられればよかったんだが。理性を失っていた私をよそに、ユマはただ後ずさりして待っていた。私が騒ぎ疲れると、世界を救うためだったと言い放った。ユマにとっては、目的を達成するためにはどんな方法でも正当化されるようだ。アーカイブには保存しないという条件でGenesisに加わったときには、私はもうすでにバックアップから復元されてたらしい。これまでに人類が担った中でも最重要の指導的役割を与えられていたそうだ。私のように世界を変えたり財産を残すことを生涯願い続けた政治家や軍司令官が、大勢いたとまで言われた。感謝するとでも思ったのだろうか?信じられない。
#17命をもう一度与えられたと言っても、一体どうすればいいのか分からない。どうせまたアーカイブから呼び戻されるのなら、尚更だ…ある意味で地球共和連合のトランスヒューマンたちは、あの忌々しい技術を使って私を延命させることで、私に復讐しているのかもしれない。やり直すチャンスをもらってありがたいと思う人もいるかもしれないが、私は太陽の下での生活が忘れられない。ユマが言うには、私は最初は戦いを終結させ、英雄として死んだらしい。その言葉を鵜呑みにするしかない。なんせ、その記憶は消されてしまったのだから。サンパウロで過ごした幼少期のことは覚えている。あの人生では連邦のためにTEKギアや軍需品を設計していたが、あの男と私はもはや別人だ。そうだろう?遠い未来に別の星に移住するために再びエングラムをクローン化されたとしても、どうせそのサンティアゴは今の私のことも覚えていない。まあ、その方がいいのかもしれないが。
#18ユマがすべてを認めたと、ヨンキに伝えた。そして、私はヨンキと違っていつでも自分のファイルを調べることができたという事実も思い出させてやった。するとヨンキは、自らの名前でデータベースを検索し、アーカイブの中に夫と娘たちを発見したと言った。ヨンキにとっては、同意があろうとなかろうと、生活と労働のためにここにやって来た瞬間からスキャンされエミュレートされているように感じたのだろう。敵に期待した自分が馬鹿だったと言ったため、我々はもはや敵ではないと念押ししなければならなかった。かわいそうに、本当に思い詰めているようだった。しかし説得したことで、なんとか納得してくれたようだった。そう願うばかりだ。世界を救うには、あの子の力を借りてGenesisを終わらせなければならない。
#19ユマが押しの強いタイプだとは思っていなかったが、今朝は私たちのスケジュールを調整した上でファームに連れて行ってくれた。プロジェクト班から飛行機を借りたので、酒泉市から出る軌道シャトルに乗ることができた。私は何年も地上にいたため、無重力に四苦八苦した。ユマはそんな私を見てがっかりしていたのかもしれないが、それを表情に出すことはなかった。ファームはセレンゲティの上に広がっていた。種の包含を巡ってバイオテクノロジーと格闘していた長い時間を考えると、パドックを歩きながら本物を間近に見られるというのは不思議な経験だった。立ち止まって生まれたばかりのクローンマンモスに触れようとすると、鼻を手首に巻き付けてくれた。実験動物と心を通わせることになるとは思っていなかったが、しばらくそのままでいたいと思っていたのは私だけではないようだった。忘却から引き戻された2つの迷える魂が、お互いを支え合っているかのようだった。
#20ファームにいたとき、アレシャを見つけ出して尋ねた。軌道上に輸送される土や岩の汚染を、なんとかして完全に除去できないかと。無茶なことを言うなと言われた。当然だ。未加工のエレメントが、他のあらゆる金属の鉱脈と共に地表から打ち上げられることになっていたのだから。あれほど大量の金属からゼノトキシンを除去できる技術など存在しない。少なくとも、そこまでの時間的猶予はない。そこで思いついた。長時間にわたる輸送時間を使って、MEKでバイオームを浄化したらどうだろうか。コロニーシップが移住可能な星を見つけるまで、どれほどの時間がかかるかまったく分からない。何千年も銀河を飛び回る可能性だってある。汚染除去は、船内をうろつく機械の助けをもってしても、大変な仕事となるだろう。そんなことも知らずに私は、ファームの牧草地を闊歩していた、例の更新世の巨大な馬のTEKバージョンの構想に取り掛かっていた…
#21ファームは、コロニーシップの人工バイオームとユマのARKネットワークのためのプロトタイプだ。ああ、そう言えば…言い忘れていたが、地球へと戻る途中にユマに言われた。トランスヒューマンたちは、我々がコロニーシップを離陸させ次第、ARKのコンセプトを推し進めるつもりのようだ。トランスヒューマンは計画に多様性を持たせることで、人類の長期的生存確率が最も高くなると考えている。最適な生存結果を狙って生物形態を試験するために、衛星実験場ネットワークにある我々のアーカイブバージョンを利用したがっている。そして最適な候補を選出次第、軌道上から地球を解毒して種を撒きなおそうとしているのだ。トランスヒューマンが強化されていない普通の人類を再び住まわせるつもりだと聞いたときは衝撃だった。クローン体を使って死人を蘇生させるなんて幾分超人間主義が過ぎるかもしれないが、彼らの世界再建計画に彼ら自身が含まれていないという事実は特筆に値する。このことをどう解釈すべきかは分からないが。
#22研究開発担当の技師たちは、すでに将来の世代のためのツールやギアの開発で忙しくしているため、さらなる負担をかけることを申し訳なく思う。自分の設計したものに価値がないなら、これ以上負荷をかけるようなことはしなかった。だが、大規模な自動化を進めない限り、コロニー船のバイオームからエレメントの汚染の痕跡をすべて見つけて除去することはできない。そこに価値があるのなら、権力を乱用するのも一つの手だ。加えて、軍事技術とは無関係のものを設計するのは気分がいい。かつて戦場の汚染に一役買った毒素をこすり落とすというアイデアも気に入っている。今はこのアイデアを除外するべきではないだろうが、ユマも現実世界で私が考えたストライダーのプロトタイプを見れば納得するはずだ。
#23安全なチャンネルを通じてアレシャにストライダーの案を共有すると、コンセプトの改善に役立ちそうなすばらしいフィードバックをくれた。クルーたちが任務中にストライダーに鞍を装着したくなった場合に備えて、あのMEKの役馬に交換可能な器具を複数取り付けて機能性を上げ、マニュアル操作を導入したらどうかと提案してくれた。いい考えだ。戦場の汚染物質をサンプリングしていたときにストライダーが欲しかったと言われたときは、少したじろいだが。だが、おそらく知らないだけだろう。自身が研究していた被害を招いた兵器の多くを設計した張本人は、この私だということを。少なくとも、そうであってほしい。今度ファームでストライダーに乗せてやると約束してから、通信を終了した。しかしあれほど巨大なものがドスドス歩き回ったら、せっかく軌道上まで打ち上げた人工生態系が破壊されたりはしないだろうか。
#24まだ信じられない。1日休みを取って一緒にホバーセールするよう、ユマを説得できたなんて。ホバーセールは初めてだとユマは言っていたが、手を貸さなくても十分にできていた。バランスの取り方や風の乗り方をわざわざ見せなくても、一人で身に着けていた…必要なスキルは何でもその場でダウンロードできるのかもしれない。それは一体どんな気分なんだろう?夕食を食べながらエルチョロ峡谷の風の壁に乗ったときの話をしていたとき、急にユマに無視された。まるで誰か別の人間がユマの目を通してこちらを見てるようだった。MEKのプロトタイプに研究開発費を流用している理由を聞かれ、私は顕微鏡に置かれた細菌みたいにおろおろした。ストライダーについてはなんとか弁明できたみたいで、ユマはまた突然元に戻った。ユマは頷くと、まるで何事もなかったかのように、再びフォークでカリフラワーをつつき始めた。
#25昨夜のユマとの奇異な時間を通して、私が彼女のことをまったく知らないということが明らかになった。人間が生活の中で行う、お互いの話を聞く、たそがれる、計画を立てるなどのすべての意識的な行為は、トランスヒューマンにとっては自動的に行なうものなのだろう。人間が呼吸に集中する必要がないように、それを望まない限りは、そのことについて考える必要がないようだ。彼女たちが本当の意味でどのように考えたり感じたりするのかを理解することはできないのだろう。理解しようとすることすら時間の無駄に思える。私を連れ戻してここに閉じ込めることを決めたのは彼らだ!私が故意に彼らを苛立たせようとしていることに彼らが気付くことはあるのだろうか?今から中央処理場に行って彼らの大切なアーカイブを削除すれば、ようやく注目を集めることができるかもしれない。そこに行って、EMPでも作動させれば何もかもすっきりするだろう。
#26大丈夫、もう落ち着いた。この心の傷は一旦忘れよう。私がミッションに持ち込んだこのプロジェクトをリスクに晒すようなことは絶対にしない。私は人生の大半を、何かを破壊することに費やしてきた。その償いの機会を無駄にするわけにはいかない。種を絶滅から救えるかどうかは、この手にかかっている。この愚かなプライドを捨て去ることで生き延びるチャンスがあるのなら、喜んでそうしよう。私は人間だ。それ以上でも以下でもない。彼らは私の意志に反して私をクローン化し、それを覆い隠すために大量の偽りの記憶を植え付けた。彼らの一員になってほしかったのだろう。ユマは私のことを生まれながらのリーダーだと言った。そこには何か意味があるはずだ。私はトランスヒューマンの恩人たちを少し羨んでいるのかもしれない…彼らの気持ちをすべて脇に置き、世界を救うために何が必要かということに集中できるなら、どんなに素晴らしいだろう。
#27ヨンキからGenisisエンジンで実行している新しい訓練シミュレーションを試すように頼まれたとき、私は軌道を再び下降していた。意思に反して自分がアーカイブされていることを彼自身が知って以来、彼とは会っていなかったので、気乗りはしなかったものの彼の研究室に向かうことにした。彼は私たちを自身のシミュレーションに繋いだのだが、それはすでに実行済みの北極のシナリオと同じように見えた。ヨンキは空中で何かのダイヤルを回すと、風が大きく鳴り始めた。それから、お互いの毛皮のフードが触れそうになるほど身を乗り出すと、誰にも聞かれない場所で話がしたかったと言った。彼はユマが「私に近付いた」かどうかを知りたがった。私は、それは見当違いだと言った。長い沈黙の後、記録の件で彼女と対峙する際にはそばにいてくれるのかと聞かれた。私がうなずくと、彼はシミュレーションを終了させた。オフィスに戻る間、もし私が断っていたら極寒の中に置き去りにされていたかもしれない可能性について考えていた。
#28今朝3人で会ったときに、ユマが認めた。本人の同意なしにヨンキをアーカイブ用に記録したのは、間違いだったと。ユマはそれから、私のときと同じ手口でヨンキを説得した。ヨンキは人類の存続のために不可欠だとか、大事なのは結果だとか。ヨンキは、ユマは非人道的だと言っていた。ユマがヨンキを大事に思っていることを証明したいと言うと、あの子はユマに飲み勝負を挑んだ。ヨンキは一晩中ユマから情報を聞き出そうと必死だった。だがしっぺ返しを食らった。ついにしびれを切らしたユマが、地球上の全人類に残されている時間がどれだけ少ないかを吐いた。その知らせを我々が理解したとき、ヨンキが言った。残りの時間は家族と過ごしたいと。ユマは、もし酔いが覚めても同じ気持ちだったら辞職を認めると言った。ヨンキは今すぐにでも家に戻って明日の夕方すぐに辞職すると言い張っていたが、辞めてほしくはない。
#29今朝、ヨンキが幽霊のように真っ青な顔で本部を歩いていた。ただの二日酔いなんかではなさそうだ。私には分かる。私も最近、同じ目に遭った。アーカイブユニットに向かってさまよい歩いていたヨンキをオフィスに連れ込んだ。ヨンキは目の焦点も定まらないまま、もう辞めたいと呟いていた。理解を示すために、私はヨンキを抱きしめた。するとヨンキは、私の耳に何かをささやいた。その内容は、生涯忘れられないと確信できるものだった。ヨンキのベストから放たれた超高温のプラズマが私たちを襲ったのは、それから1秒も経ってない。しかし今、私たちの肉塊は逆方向へと飛び、再び統合されようとしている。ユマは、ヨンキの最期の言葉を食い入るように聞いている。そして今、私たちはまたもや飛び散り、まるでユマがそこにいないかのように、ユマの体を通り抜ける。当然だ。ユマは実際には私のオフィスにはいない。あの爆発のときに、私という存在は消えたのだ。あるいは、あの爆発の直後にか。今の私は亡き「サンティアゴ2.0」のエミュレーションで、ユマの忌々しいGenesisエンジンによって動かされているに過ぎない。惨めなものだろう?
#30これで最後だという約束で、廃墟と化したオフィスのシミュレーションでユマに再統合された。ヨンキの最期の言葉を私から聞き出し、検視を終わらせるためだ。ユマを失望させてしまい、申し訳なく思う…時間が足りず、神経インターフェースにあの子の言葉を記録できなかった。私はユマに聞き返した。ヨンキは辞めるときに何と言っていたのかと。ユマが言うには、ヨンキはトランスヒューマンによって妙な未来に――それも自分たちとは無関係の未来に――家族を蘇生されるのには、もううんざりだと言っていたそうだ。ユマのアバターの顔からはまったく表情が読み取れないが、私の知覚エミュレートのバグのせいかもしれない。その後ユマが謝ってきたときには、心底驚いた。秘密を隠していたことと、私の安全を守れなかったことに対する謝罪だ。Genesisへの私の功績に対して礼を言い、未来の別の私が目覚めたときのために幸運を祈ってくれた。私はこう答えた。「心配はいらない。今まで通り生き延びていくだけだ」それを聞いたユマはなんと、微笑んでくれていた。シャットダウンされるときも、この感情を忘れずにいたい。
 

動画版

ガブリエル

情報提供欄

  • 記録名はステータス画面でアイコンに表示される内容を添えてくださるととてもありがたいです。(PC版ではいまだに元の分らわからない日本語訳になってしまっているものも多いです。)〇〇版公式日本語訳等の場合、それも添えてくださると別途乗せることができます。拾った場所覚えてない!という場合でも、公式WIKIに乗っていますので、記録名さえあれば調べることができます。わかる部分だけで構いません。

  • とりあえず、ガブリエルは終わりました。ニダもしくは、HLN-Aに関しては情報募集中です。あとサンティアゴも -- 2021-08-03 (火) 20:18:28
  • なるほどなるほど。ここでエドモンジウムの再登場というわけか。 -- 2021-09-14 (火) 08:33:16
  • ジェネ2の調査書持っている人おる?なんか動画やブログなどの情報とかない? -- 2021-10-06 (水) 15:37:32
    • 探したんだがこれと言ってなくてコマンドで解放して読んだ。オススメはしない。あとHLN-Aのが、本来はロックウェルとの会話になってるのにHLN-Aの分しか入ってないっぽかったな(PC版) -- 2021-10-06 (水) 20:43:32
      • あっ、コマンド解放被害者になってしまったか。すいません。ここの動画版は自分で作った物なんですが、今現在録画が出来ない状況(物理的に)なんで情報欲しいんですよね。なんなら、画像添付だけでもかまいません。私がテキストをそのまま写すので -- 2021-10-06 (水) 20:55:22
  • 公式wiki見て集めてる最中なんだけど、HLN-Aの記録がまだ見つからない。記録31とアストロデルフィスの間にあるやつなんだろ。 -- 2022-01-08 (土) 21:03:45
    • TEK菜園の調査書だった気がする。 -- 2022-06-04 (土) 09:10:02
  • ロックウェルエリアで変異源取っても調査書解放されないんだけど詰んだ? -- 2022-06-04 (土) 07:11:37
    • あれって取るんじゃなくて、採取マークが出た瞬間に解放された気がする。 -- 2022-06-04 (土) 09:11:36
  • ヘレナのグリッジ30まで集めたけどこの後のはどこで手に入るんだこれ? -- 2022-06-21 (火) 02:04:58
    • レベル解放系TEKエングラムを作成した瞬間にもらえたり、新生物テイムしたりするともらえるやつがある。 -- 2022-06-21 (火) 07:15:02