アーカイブ/キャラクター/ホタル

Last-modified: 2024-06-27 (木) 13:25:32

星核ハンターの一員、装甲「サム」を身に纏って戦う。任務に忠実で、粘り強い性格。
スウォームに打ち勝つための兵器として生まれた彼女は、成長速度が一般人とは異なり、寿命が非常に短い。
「生」を求めて星核ハンターに加わり、運命に抗う方法を探している。

  • ストーリー詳細1

透明な培養カプセルの中、彼女は純白の卵に包まれ、冷たい人工羊水に浸かっている。
不意に容器が揺れると、彼女は本能に従って羊水の中を漂いながら、冷たく柔らかい縁を探り当て、カプセルの壁にぴったりとくっついた。こうして隅っこで丸くなると、体が温かくなる気がするのだ。

巨大なものが落下する音、金属がぶつかり合う音、忙しない足音が断続的に聞こえたかと思うと、再び培養カプセルが揺れ始めた……
「戦士たちよ、目覚める時だ……」
「女皇陛下のために……」
機械の手に抱き上げられ、眩しい光が世界を切り裂く。彼女は思わず泣くことを止めた。
「己の誕生を誇りに思え……」
「女皇陛下のために……」
彼女は目を開けたが、自分に話しかける相手の姿は見えない。
立ち上がった彼女は、分厚いカーテンをくぐり抜け、宮殿の奥へと進んでいく。
「その栄誉、その運命を受け入れよ……」
「女皇陛下のために……」
整然とした足音が人気(ひとけ)のない宮殿に響き渡った。

彼女は荒れ果てた広大な庭園を通り抜け、巨大な虫の死骸を横目に、1つ、また1つと孵化装置の間を進み…最後に、煌びやかな議事堂に辿り着いた。そこには玉座に座る1人の女性がいた。顔はよく見えないが、疲れたように腕をだらんと垂らしている。

「顔を上げるな」
誰かが彼女の傍に来て、囁くように言った。その人物にはナンバープレートが付けられている。AR-26702――これは一体……?彼女は自分を見た。AR-26710。
「こちらへいらっしゃい…我が子よ……」
頭の奥底から声が聞こえ、言いようのない熱狂が彼女の心を呑み込んでいく。
彼女は女皇の前に進み出ると、跪いてその指先にキスをした。

女皇の手は氷のように冷たく、彼女は熱狂に包まれる中で一瞬呆然とした。
「存分に燃え上がれ、グラモスの未来のために……」
「女皇陛下のために……」


  • ストーリー詳細2

気づけば彼女は戦場に慣れていた。
目の前で倒れていく同胞たちを尻目に、ただ毅然と前に進み続ける。しかし、彼女はちゃんと理解していた…今こうしている自分も、いつかは同じように戦場で倒れ、後から来た者が己の体を越えていくことになるのだと。
だからこそ、休息の時間はいつも貴重なのだ。彼女は顔を上げ、天高く懸かる銀河の海に降り注ぐ、星々の光を眺めた。

星空の下は何もかもが静寂に包まれている。ロストエントロピーの脅威に直面することになっても、彼女は装甲を脱ぎ捨て、世界の姿を見たいと思った。
記憶の中の声が徐々に浮かび上がる。
「レンズを通してみると、世界が違って見えるの」
――AR-214、彼女は常に「眼鏡」をかけていた。
「軍規第8条:生存者は速やかに帰還せよ」
――彼女はAR-1368。真面目な性格で、装甲に赤い綬帯を付けている。
「次の戦いでは、星が見えるといいな」
――AR-53935、彼は自分とは「異なる型」だ。
「みんな、お帰り!」
――AR-4077。直接会ったことはないが、彼が決して戦場に出ず、後方に留まっていることだけは知っている。

星空の奥からスウォームが現れ、例によって耳障りな警報に休息を邪魔された。
彼女は装甲を起動して戦闘状態に入ったが、今回の敵襲は特に激しいようだ。
「これは普通の襲撃ではない、虫の潮…虫の潮だ!」
通信機を通して聞こえる微かに震えた声。ますます多くの鉄騎が空に昇っていったが、それは果てしない星の光のように、あっという間に爆発して闇に吞まれてしまった。
「防衛線を死守せよ!包囲網を突破するのだ!」

目の前で無数の鉄騎が倒れていく。
彼らの中に、以前自分に話しかけてくれた人はいるのだろうか?そう考えた時、彼女は初めて気がついた。
――もしかして…人はそれぞれ違うものなのだろうか?

ついにスウォームが左右に割れ、その裂け目から母虫がゆっくりと姿を現した。
彼女は一筋の光のように、密集したスウォームの間を縫うように飛び、他の鉄騎と共に巨大な銀蟄虫の口に向かって突き進む。母虫に吞み込まれる最後の瞬間、彼女は目を閉じ、惑星1つを破壊できるほどの爆弾を爆発させた――

目が潰れるほどの光が母虫を中心に炸裂した――次の瞬間、すべてが静寂に包まれた。
彼女は糸の切れた凧のように、大きな衝撃に弾き飛ばされてしまう。地面に向かって落下していく中、忘れられない思い出が彼女の目の前に広がった――

そこはファイアフライが舞う水辺。彼女は装甲を脱ぎ、夜の爽やかな風と涼しさを感じている。
その時、1匹のファイアフライが近づいてきて、彼女の手の甲に止まった。それが羽を動かしているところを、彼女はただじっと見つめる。
「…この子たちは儚い命だけど、星よりも輝いてる」

暗闇が彼女を呑み込む。
スウォームの死骸や壊れた甲冑が塵となって、星々の上に降り積もっていく。それは宇宙に降る静かな雪のようだった。


  • ストーリー詳細3

昏睡状態から目覚めた時、彼女は知らない星系にいた。

銀河を漂う発光浮遊生物が彼女に引き寄せられ、その周りを踊るように飛んでいる。
それらが遠くへ去っていくのを見送りながら、彼女は自分の行き着く先がわからないでいた。
「どうして死ぬんだろう?」
「どうして生きるんだろう?」
今の彼女にとって、夢はあまりにも遠いものだ。果てしない暗闇をぼんやりと見つめていても、やはり答えは見つからなかった。

……
「こうしてグラモス共和国は滅び、鉄騎兵団の噂だけが残った」
何かに体の自由を奪われ、彼女は警戒を強めた。
「どの鉄騎も、共和国最強の兵器を制御するために遺伝子操作された赤子だった。彼らは生まれながらに欠陥を持っていて、人生のある時点で急速に老化が始まり、死に至る……」
足音と共に、女性の声が少しずつ近づいてくる。
「定められた結末…私たちと似ているわよね。そうは思わない?」
宇宙船のドアが開く。
彼女の体が炎に包まれ、熔火騎士の装甲が形成されようとしている。
「あなたは何者ですか?」
目の前の女性は、まるで久々に再会した旧友のように微笑んだ。
「運命を信じる?同じ道を歩む人たちは、いずれどこかで出会うことになる。そして私たちは…今、出会ったの」


  • ストーリー詳細4

また静かな夜が訪れた。彼女はいつものように高台に座り、明かりが点いては消え、夜明けまで宇宙船が出入りする空港を見つめている。

すると、そこへ眠そうにあくびをする銀狼がやってきた。
「眠れないの?」彼女は体を少しずらしてスペースを作る。
「変な夢見たんだ、パンクロードが電子悪魔に侵入される夢。走りながら風船ガムでウイルスをくっつけてるところで目が覚めたの」
「夢かぁ……」
「ピノコニーに出発するの?」
「うん、たぶんあたしの夢は…そこにある」
「でも夢を見ることができない人が共感覚夢境に入るには、『死』に匹敵する代償が必要だって聞いたけど」
「知ってる。あたしの意識は憶質の重圧で粉砕されて、特殊な方法で再構築されることで、初めて夢の国へ到達できる…その死は別に怖くない。もう慣れてるから」
「…そう?それじゃあ幸運を祈ってる。星穹列車の人たちによろしく言っといて~」
……

彼女はアスデナ星系の境界に辿り着いた。記憶の海の激しい波に揺られ、1粒の火の粉のような彼女は、今にも嵐の中に消えてしまいそうだった。
彼女は飛び上がり、記憶域の中に飛び込んだ。
四方八方から重圧が襲い掛かり、視界が徐々にぼやけ、体が制御できなくなり、記憶域の奥底へと落ちていく。
濃密な憶質に隠された感情が、まるで幻影のように彼女の耳元でぐるぐると回りながら呼び掛ける。
――「存分に燃え上がれ、グラモスの未来のために…」
――「女皇陛下のために……」
――「…この子たちは儚い命だけど、星よりも輝いてる」
――「どうして死ぬんだろう?」
――「どうして生きるんだろう?」
……
どれほどの時間が経ったのだろう。荒れ狂う憶質はいつの間にか鎮まっていた。
目を開けた彼女の瞳に映ったのは、まるで真珠のように朧げな光を放つピノコニーだ。次の瞬間、涙が彼女の頬を伝って落ちていった――
「これが…夢?」