トリエラ

他の義体の少女と同様に彼女もまた壮絶な過去を持つ。
ヒルシャーによれば出身地はチュニジア。極めて特殊な性癖を持つ客向けの違法ビデオ撮影の被写体としてとある組織により母国からオランダのアムステルダムへと「輸出」された。
しかし児童売買を斡旋していたマフィアのカモッラ幹部であったマリオは、自分の娘と同年代の子供たちが売られていくのを見るに耐えかねていた時、極秘に捜査を行っている二人の刑事と接触、動きの鈍い地元警察ではない二人ならばなんとかなるのではないかと情報を提供した。
マリオ・ボッシの情報提供で撮影現場へと踏み込んだ二人の警官はそこで暴虐の限りを受け、今まさに息絶えようとしていた一人の少女を救出する。
この二人は所属する欧州警察機構*1に無断で捜査を行い、バックアップも無いまま突入した"ヴィクトル・ハルトマン"と同僚である眼鏡の監察医ラシェル・ペローであった。
この時の銃撃戦でラシェルは重症を負うが、自身の命と引き換えにトリエラへ救命措置を行うことでトリエラは一命をとりとめる。
トリエラは救出できたものの、瀕死のラシェルを救い出す余裕のないヒルシャーは途中で援護に来たマリオと共に脱出、地元警察に保護されるが、ラシェルの遺体はその後も見つからないままとなった。
だがこの救命措置の時トリエラは一時的に意識を戻しており、その時の情景は彼女の心の中に「眼鏡をかけた優しい香水の香りの母」として存在し続けることになる…

事件は一応の解決を見たものの、暴行を受けたPTSDによる植物状態のトリエラをあくまで証拠として扱い、遅々として治療を進めないオランダ警察に見切りをつけたヒルシャーはマリオと共謀してトリエラをオランダの病院から書類を偽造して連れ出している。
その後あらゆるツテを頼り、義体技術が確立されつつあったイタリアの社会福祉公社の噂を聞きつけたヒルシャーにより義体化手術を受けて回復する。
（暴れたり独房入れられたりの紆余曲折で公社所属となった彼は本名のハルトマンからヒルシャーへと名前を変えることとなった）
ヒルシャー共々公社にフラテッロとして身を寄せ合いながらテロリストである五共和国派との血みどろの抗争へと身を投じていく…

• 「苦手なんだ 女の子ってさ」
  五共和国派の中でも正統派かつ主流であると目されるミラノ派。
  勢いを増す彼らは政府要人や司法関係者から民間人までを次々と暗殺しており、それに業を煮やした公社公安部はミラノ派の凄腕暗殺者「ピノッキオ」を調査するが担当していた公安部員のコーエンからの連絡が途絶え、彼の捜索を二課のマルコーとヒルシャーらのフラテッロで行うこととなる。
  トスカーナにてコーエンの痕跡からピノッキオの家を特定したヒルシャー＆トリエラ組は、突発的なトラブルによる少女の人質発生とコーエン生存の可能性を主張するトリエラの意見を受け入れて家へと突入、そこでトリエラはピノッキオを捕捉するがナイフを駆使するピノッキオの技の前に銃を奪われた挙句、完封負けをした上に命を取られず見逃され、また守るべきヒルシャーも現場にいたテロリストによって軽傷を負わされて逃走までされるというこれまでにない敗北を味わうことに。
  なまじ優秀であるが故に、今まで味わったことのない挫折感にはヒルシャーの慰めも効かず、ただただ年相応の少女のように廊下で座り込んでしまうのであった。

• 「オマエなんかに分かるものか!私は戦わなくちゃいけないんだ！」
  ピノッキオに完敗し、どこか不貞腐れながらも特殊部隊との訓練で技量を磨くトリエラであったがリベンジの機会は思わぬ形で到来する。
  内務省に五共和国派の一派から接触があり、ミラノ派の内紛からくる政治的取引の結果、幹部であるクリスティアーノの情報がリークされたのだ。
  クリスティアーノの邸宅へと潜入していく二課のフラテッロ達、トリエラはそこでクリスティアーノの救出に駆け付けていたピノッキオと遭遇、戦闘を開始する。
  圧倒的技量で義体のトリエラと互角以上に戦うピノッキオから、奪われた自身の愛銃で射撃される屈辱に満身創痍となりながらも怒りと闘争心を燃やし戦い続けるトリエラ。
  そして遂にトリエラはピノッキオのナイフ攻撃を「白刃取り」で受け、へし折った刃で相手の腕を叩き切る。
  最後に繰り出されたピノッキオの車のキーによる刺突を眼球で受けながらも、相手の頸動脈に貫手を喰らわせ、文字通りの紙一重の勝利で激闘の幕は閉じる。
  ボロボロになって応急処置を受けた彼女はヒルシャーの元に歩み寄り、敵を倒したことを誇らしげに語り褒めて欲しいと懇願する姿をみてヒルシャーはただ抱きしめる事しかできなかった。

• 「たとえ薄暗くても･･･長く燃えてと望まれる火だってあることを」
  世間はクリマスマスという中で任務のためにナポリに滞在するヒルシャーとトリエラ。
  ヒルシャーはそこでかつてクローチェ検事爆殺事件関連の担当検事であり、暗殺から守り切ったロベルタ・グエルフィと再会していた。
  だが彼らの本来の目的はナポリのあるマフィア幹部の暗殺であった。
  本来ならばトリエラとの任務をヒルシャーはアンジェリカの死に動揺した彼女を慮り、また薬物依存症の発作を危惧して単独で挑むことに。
  結果として暗殺は上手くいくものの反撃で腹部を負傷するヒルシャーを問い詰めたトリエラは、生きて欲しいと願うヒルシャーと戦うことを望む自分との埋まらない隔たりから夜の町へと飛び出してしまう。
  トラブルに巻き込まれつつも、かつて護衛をしたロベルタに助けられたトリエラはある顔見知りの家へと転がり込む。
  過去に身辺警護を行ったマリオ・ボッシの娘のミミを頼るが、そこには昨年にナポリで娘のクリスマスプレゼントのために証人保護の拘束からの逃走を目こぼししたマリオ・ボッシも滞在していた。
  再開を果たしたトリエラ達であったが、そこでマリオからヒルシャーと、そして自分の過去をマリオから語られる。
  居場所を見つけ出したヒルシャーと共にホテルへと帰り、ヒルシャーの腹部の治療を行う中でトリエラは彼の告解を聞く。
  トリエラはそこで自分の在り方を悟り、ヒルシャーへの愛情を再確認して誓う。
  例え死に向かうとも、ヒルシャーと共に必死に生きるのだと。

• 「この人と一緒に 必死に生きて そして死のう」
  激化する五共和国派との戦闘は遂に最終局面である新トリノ原発攻防戦となり、ヒルシャー＆トリエラ組もまた原発内部へと突入を行う。
  他の部隊に先駆けてヘンリエッタ、リコと共に水路を辿って原発内部に潜入するものの、待ち構えていた敵のM82での狙撃で左手足を損壊して移動できなくなると、ヘンリエッタ達を先行させ自身は決死の覚悟で薩摩の捨てがまりの如く通路での遅滞戦闘を行う。
  敵に追い詰められ、瀕死の中でヒルシャーが隔壁を爆破してまで駆け付け、共に最後まで戦闘を行い、身を寄せ合いながら戦死した…

• 「どうかこの糸を絶ち切らないで」
  新トリノ原発での作戦前、ヒルシャーはある手紙を恋人であるロベルタ・グエルフィへと託す。
  手紙はスイス銀行の口座を指し示し、マリオ・ボッシと共にグエルフィはヒルシャーの「自己満足」を託された。
  それは即ち、トリエラの卵子であり、ラシェルから渡されたバトンをロベルタへと繋ぐことだったのである。
  そして次代の「希望」と共に『GUNSLINGER GIRL』は終幕となる。

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