AR-18

• アーサー=ヒューム博士の人類理知研究計画に基づいて設計された180号機にして最後の人形。
  元第7総局作戦推進訓練隊所属の「Я」教官としての顔と、高級戦術人形リュドミラ=パブリチェンコとしての顔を持つ。
  リュドミラの名は、旧ソ連で最も高名な女兵士にしてスナイパーで、狙撃銃には向かないSVTを愛用したことで知られる。
• AR-18はSVTと同じショートストロークガスピストン方式で、ひ孫か来孫くらいの関係と言える。おそらくAR-18の民生用がAR180であることにちなんでヒューム博士が選んだと思われるが、リュドミラの名に関係があるのかは不明。しかし自ら選んだこの名前に誇りを持っている。
• AR-18以外にも全身に素体のパーツに偽装した部品を組み立てることで拳銃にすることができるなど、純粋な戦闘用人形として設計されているが、実戦経験に乏しく、自ら前線での経験を積むことで教官としての能力も上がると考えている。
• 腕時計の竜頭を巻くことで、「Я」教官とリュドミラの人格を入れ替えることができる。
  この腕時計は大型イベント「縦軸歪曲」での実績ともなっており、リュドミラを象徴するものとなっている。

• ストーナーが研究中だったAR-16、7.62mm自動小銃をもとに5.56x45mmNATO弾に合わせて縮小、スチール材のプレス加工を多用し生産性向上とコストダウンを図ったもので、作動方式としてAR-15のパテントに触れないようガス直噴方式をやめショートストロークピストン方式とし、コンパクトに改設計した機関部は、特にリコイルバッファーをレシーバー内に配置したことで折り曲げ銃床の導入を実現したため、AR-15よりも機械化部隊、空挺部隊での運用適性を向上させるなどアーマライト社の技術力を物語る出来栄えとなった。
• 特にプレス加工を主体とし、安価なスチール製であることがアメリカ政府の対共産圏戦略にも適合していたため、前述2つの要素により東南アジア等技術的後進国での生産にも適したAR-18をそちらの国々向けに製造、またはライセンス生産させることが企図された。
• それに際し東アジアの生産拠点として豊和工業が選定され、当時フェアチャイルド社から独立直後で生産能力が乏しかったアーマライト社と、ベトナム戦争を受けて新型小口径高初速軍用自動小銃の技術を取得し自社開発にも結びつけたかった豊和の利害は一致していたため両社はこれに応じた。
  ところがこの当時にはいわゆるカッパロケット問題などを筆頭とする、日本の武器または武器生産ないし武器開発応用可能技術の輸出で社会党などを中心に国会が大荒れだった時節であり、そこにもってきての対共産圏戦線構築を目的とした新型軍用小銃の国産及び輸出は戦火にガンオイルをぶちまけるが如しであったため、ときの首相佐藤栄作が有名な「武器輸出三原則」を打ち出したことで、AR-18の国産及び東南アジア諸国輸出は頓挫してしまった。
• これで大損を強いられたのがアーマライトであり、何しろ武器輸出三原則に従えば当時東南アジアに輸出可能な国家など存在せず、独立直後のなけなしの資本でせっかく極東に設置した生産拠点が宙に浮いてしまい、おまけに唯一の国内需要と言えた自衛隊はというとつい数年前に制式採用された最新鋭の64式自動小銃で満足していて、かつこれの調達で予算を組んでいる上に国内に生産設備のない5.56mm小銃弾のための銃など追加調達出来るはずもなかった。
• かといってこのまま泣き寝入りでは本当に丸損であり、純粋に自社製品の性能を信じセールスを獲得したかったアーマライト社は「軍需が駄目なら民需だ、まだAR-15も民間用は一般的ではないし高く、他にライバルになりうる機種も殆どいない」と民間市場への投入に方針を転換した。豊和としてもせっかくアメリカ最新の銃器製造技術からなるライフルの製造経験を積むことなく設備を粗大ゴミにすることを惜しんでいたため乗り気になり、AR-18自動小銃改めAR-180半自動小銃が生まれる。
  性能の割に安く、調達しやすく扱いやすく軍用弾が使えて強いと三どころか四拍子揃っていたAR-180は目論見通り民間ライフル市場、そのほか当時はまだ前述の通り民間用がほとんど無くM16は軍用なので余計に調達困難に苦しんでいたアメリカ警察（及びSWAT等警察特殊部隊）に歓迎された。この当時アーマライト本社のコスタメサ工場及び豊和工業で生産されたモデルは現在に至っても人気のあるバリュープライスモデルである。
• ……そんな優等生のような銃なので、当然様々なところがこの銃を欲したのだった。そう、本来この銃が成敗する相手である犯罪者、反政府組織、テロリストなどである。その一つが今で言うBlack Lives MatterことBLMのオリジナルと言えるBLA（黒人解放軍）、アメリカの極左武装集団であり、しかもこの組織が使用したAR-180にはよりによって「製造途中でAR-180用に転用されたAR-18」、即ち豊和製のものも含まれていた。
  他にも100年単位でイギリスに恨みを持ち独立闘争を掲げて活動していたIRA（アイルランド解放戦線）────から分派した暫定アイルランド共和国軍もアメリカから密輸入して実戦投入し、1970年代初頭頃からイギリス軍への襲撃に用いられるようになってしまった。
  当時最新鋭の「市街地戦に適した」軍用級最新鋭小銃で、しかも折り曲げ銃床のおかげで隠しやすく、低反動な都合イギリス軍のセミ限FALことL1A1よりも当てやすく、単純な設計なので扱いやすく、しかも今ほど性能が高くなかった軍用ボディアーマーの貫通に十分な威力を備えるという大変都合のいい性能だったため（悪い意味で）大活躍し、しかも彼らとも敵対する別の対イギリス武装集団であるアルスター義勇軍でも鹵獲運用された結果、AR-180はウィドウメイカー（未亡人製造器）などという不名誉極まる仇名を頂戴する羽目になった。当然の権利で日本の国会はまたも大炎上し、窮したため「政府からの要求」という名の圧力を受けた1974年に豊和工業での生産は中止された。
  しかも折り悪くアーマライト本社では「生産規模も精度も十分以上だ」と豊和に生産を任せて生産ラインを閉じてしまっており、しかもこの時点で売れた数は4000弱というものだったためアーマライトはまたも困窮して、代替生産先としてイギリスのスターリングアーマメント社を選定し生産を委託したのだが、生産開始までに5年ほどの空隙が生じた上に同社の生産技術では豊和、コスタメサ製に一歩劣る精度のものしか作れなかった。おまけにイギリス政府は色々あって生産をエンフィールド社に委託することを決定し、スターリング社は梯子を外される形となった。しかも直後に（本来の売り込み先と言えた）フィリピン軍がM16A1の後継としてAR-180を制式採用すると発表したのでアーマライト社を通じてスターリング社から生産設備が流れていったものの生産はいつまでも始まらず、アーマライト社が気を揉んでいる間にスターリング社は倒産してしまう……と、とにかく時勢に嫌われまくる可哀想な銃、それがAR-18/AR-180であった。
• とはいえ実のところ、あまりにも先進的すぎたAR-18は軍用ライフルとしての評価は決して高くなかった。その点として、折り曲げ銃床のヒンジ部強度の不足により長期使用中に破損する傾向が見られたこと、ジャム対策としての利点であった連動式コッキングハンドルの都合で「コッキングハンドルスライド用の切り欠きスペースから異物が入りやすかった」こと（イギリス軍が採用しなかった直接の理由の一つがこれ）、使用弾薬の種類によってはアメリカ軍の試験部隊が強調した注釈をつけるレベルで動作性が悪くなること、パテントの都合でAR-15と弾倉に互換性がないことなどが挙げられる。警察用としては人気は高かったが、本命だった軍用としてはついに星を掴むことなく終わってしまったのだ。
• しかし、後にイギリスが新型アサルトライフルとして採用したL85A1の試作品は、豊和製のAR-18をぶった切って機関部をブルパップ方式に魔改造したものだったとされるほか、そこまで露骨ではないものの日本の89式5.56mm小銃、中華民国の65式歩槍、86式歩槍、91式歩槍もAR-18の生産設備や経験を生かしたものだった。
  またH&KのXM8やG36、ブッシュマスターACR、FN SCAR、さらにはStyer AUGや先述のL85A1などブルパップ式アサルトライフルもAR-18と類似のボルトキャリアグループとオペレーティングシステムを採用しており、西側アサルトライフルの中興の祖ともいえる存在になっていたのである。一部設計に煮詰め不足な点はあったといえど、その基本設計の優秀さは間違いなく「名銃」と評するに足るものだったと言えよう。
• このため2001年にアーマライト社のブランドを買収したイーグルアームズ社によってAR-15とのパーツ共有性を高めロアレシーバーなどのパーツをポリマー化するなど、モダナイズしたAR-180Bが復刻されたのをはじめ、パテントの失効後はカナダのKodiak社から総アルミ合金のレシーバーを採用したWK-180(C)、アメリカ合衆国のブラウネル社からフリーフロート仕様の高精度バレルを備え、AR-15のロアレシーバーに取り付け可能なアッパーレシーバーキットBRN-180が販売開始されるなど、AR-180（AR-18）の評価は再興の兆しを見せ始めてさえおり、今後に注目される。

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