概要 
ここでは、【ドラゴンクエストシリーズ】のゲーム作品で使用された音楽について解説する。
作曲は、2021年9月30日に90歳で逝去した故【すぎやまこういち】が、生前に発売されたゲームのうちDQSとダイの大冒険シリーズを除いた全作品を担当していた。
公式サイトによれば、逝去当時開発中のDQ12の曲がすぎやま最後の作曲になったとのこと。
DQ1でBGMとして作られたのは8曲のみだったがシリーズが進むごとに増えていき、DQ8以降は作品ごとに20曲以上が作曲されている。
ナンバリングタイトルにおいては、シリーズ初期からDQ7までは、同じ曲が複数作品で使われるケースはオープニングやスタートメニュー、アレフガルド以外にはほぼ無かったが、DQ8からは過去の作品の曲の再利用が増えている。
反響 
今でこそ、各地でDQに限らず多くのゲームミュージックのコンサートが開催されているが、昭和~平成初期のファミコン黄金期には、一部の有識者や教育評論家などを中心にファミコンへのバッシングが酷く、それに伴ってかゲームミュージックにも批判の矛先が向けられることがあった。
1990年8月5日に放映された、テレビ朝日『題名のない音楽会』では、冒頭にまずDQ3の曲を流し、
ゲームといえばファミコンである。
一応、ストーリーらしきものもあるが、それは映画のやり直しのようなものだ。
音楽が無機質で単調だ。
と、当時の司会者であった黛敏郎は辛辣にゲーム、そしてゲームミュージックを批判した。
1990年といえば下記にもある通りDQ4のサウンドトラックがオリコン1位を獲得した年である。にもかかわらず、ゲームミュージックに対してこのような厳しい見方もあったのだ。
しかし平成も後期になると、同番組も2010年8月29日には「マリオ・ドラクエ・FF~大人気ゲーム音楽SP」という特集で、DQの音楽では冒険の旅や【そして伝説へ】などが番組内で演奏された。特に「そして伝説へ」は、ゲストとして招かれていたすぎやまこういち自身が指揮を担当したほどである。
さらに2011年10月9日には「すぎやまこういち 音楽の道 ~恋のフーガからドラクエまで」という特集を組み、【この道わが旅】が番組内で演奏されることになる。
もっとも2010・2011年の『題名のない音楽会』の司会者は指揮者の佐渡裕だったため、20年前とは番組の雰囲気も大きく異なってはいたのだが、それでもこの番組の露骨な掌返しは、裏を返せばそれだけゲームミュージックが市民権を得たひとつの証だと言えるのではなかろうか。
さらに時代が令和になると、2020東京オリンピック(2021年開催)の開会式という世界中の人類が注目する舞台に投入されるという歴史的な快挙を成し遂げ、すぎやまの死後はNHK紅白歌合戦で演奏されるなどゲームとは直接関係のない場面での登場も増えてきている。
もはやDQをはじめとするゲーム音楽は、紛れもなく日本を代表する「文化」の一つとして認められてきていると言える。
DQ1 
容量の小さかったDQ1でのBGMは、【序曲】【ラダトーム城】【街の人々】【広野を行く】【戦闘】【洞窟】【竜王】【フィナーレ】の8曲のみ。
ループの長さも短めで、【名前】と【復活の呪文】の入力画面は町と、【ほこら】は城とそれぞれ音楽を共用しているが、『ラダトーム城』や『洞窟』は階層ごとに音色や音程が異なるというアレンジがなされている。
この他に【勝利】【レベル・アップ】【呪いのモチーフ】などのおなじみのME(musical effect)も初代から作られているが、【宿屋(曲名)】は本作オリジナルのものとなった。
すぎやまこういちへの作曲依頼は「1週間で8曲」であったが、以前からCMソングなどで短期の依頼をこなしていた経験が生きた上、この頃は非常に調子が良かったらしい。
すぎやまはゲーム音楽について「聴き減りのしない音楽」を重視しており、その傾向はDQ初作品である本作から既に見られる。
剣と魔法の世界という説明を受け、「中世ならクラシックだろう」とクラシックをベースに作曲。
なお、ワーグナーの「ニーベルングの指環」にヒントを得たという報道があったが、本人曰くこれはデマであり、ワーグナーは全く関係ない、とのこと。
また、【鳥山明】のデザインした可愛らしい【スライム】を見て曲の方向性が決まったといい、【戦闘】や【ダンジョン】でも暗いイメージではなく、可愛らしい綺麗な音楽を作っていくこととなった(「THE FIRST BOOK OF DRAGON QUEST XI」より)。
そして出来上がったのが上記の8曲であり、これらは本当にたったの1週間で作られたのである。中でもオープニングテーマである『序曲』の構成を5分で作ってしまった逸話は有名だろう。
すぎやまはファミコン黎明期に音楽的な制約の大きい中、名曲を生み出していた数少ないプロの作曲家である。
各楽器が出す音の音形を考えつつ、ファミコンのPSG音源3和音でも曲の良さを損なわないように作曲。さらには聴き減りのしない音楽を目指した同作品の楽曲群はオーケストラのみならず、ピアノや吹奏楽などでも演奏できるようにさまざまな編曲が施されており、今日でも多くの人々に聴かれ、また奏でられている。
FC版のDQの曲をよく聴いてみると、伴奏まで丁寧に作られていることがわかるだろう。当時からオーケストラを意識した作曲をしていたというから驚きである。
DQ1発売から約4ヶ月後には【アポロン音楽工業】からアルバム「組曲ドラゴンクエスト」がアナログ盤・CD・カセットテープと3つの媒体で発売された。
演奏は【東京弦楽合奏団】。他にも、ゲーム音源【ゲーム・オリジナル・サウンド・ストーリー】とシンセサイザー演奏によるアレンジバージョンが収録された。
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リメイク版 
ソフトがDQ2とのセットで発売されたことから、DQ2の【聖なるほこら】と【レクイエム】が逆輸入されて使われている。
SFC版では、DQ5での欠点だったサウンド面の音質の悪さ、安っぽさが大きく改善された。
オーケストラ版演奏は【ロンドンフィルハーモニー管弦楽団】が初担当。このロンフィル版はDQ6の演奏と時期が近いためか、演奏が雑であり、評判は良くない。
DQ2 
今作では【塔】や【船】の登場に伴い、塔専用、船専用の曲が、またほこら専用の曲も初登場した。
フィールド曲も3曲に増えた。その中でも前作から引き続き登場した【アレフガルド】では前作と同じ【広野を行く】を流し、前作を経験したプレイヤーを懐かしい気持ちにさせる。
この他に名前・復活の呪文入力専用のBGMも作られ、この【Love Song 探して】を歌う歌手【牧野アンナ】とのタイアップキャンペーンも行われた(ただし売り上げは残念なことになっている)。
MEも宿屋の曲が今作からおなじみのものになったほか、パーティ制の導入に伴って【仲間(出会い)】も登場した。
制作時に「今作はDQ1の100年後」という説明を受けたすぎやまこういちが気持ち現代寄りに作曲したという経緯があり、他のシリーズの作品と比較すると明るい曲・ポップス寄りの曲が多いのが特徴。
実際に歌詞が付き、ポップスとして成立してしまった曲も数曲あり、【この道わが旅】はアニメ版【ドラゴンクエスト ダイの大冒険】(1991)のエンディングでも採用された。
初アルバムは引き続き【東京弦楽合奏団】。
このアルバムは、他作品とは違ってクラシックではなく、サックスやエレキギター、ドラムセットを積極的に使用したポップス調になっている曲が多い。
ちょっとチープかつ昭和の香りを色濃く漂わせるアレンジとなっており、異彩を放っている。
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リメイク版 
新たに追加されたプロローグ用の曲【パストラール~カタストロフ】が作られた。
DQ1と同様、SFC版ではDQ5での欠点だったサウンド面の質の悪さ、安っぽさが大きく改善されている。
多くの曲に積極的にドラムセットが取り入れられ、さらにポップス色が増している。
一方、SFC版発売後にリリースされた【ロンドンフィルハーモニー管弦楽団】のアルバムでは、すべての曲がオーケストラ演奏になり、FC版のアルバムと比べて雰囲気がかなり異なるものとなった。
DQ3 
今作では【村】専用、空を飛ぶ乗り物専用の曲が初登場した他、【ジパング】【ピラミッド】【幽霊船】という、特定の場所でしか使われない独特の曲も登場している。
また、タイトル画面が容量の都合で簡略化されたことから、従来のタイトル画面で使われた曲は【ロトのテーマ】としてエンディングで登場。"ロト伝説の始まり" というエンディングの内容と相まって、この演出は多くのプレイヤーたちを感動させただろう。
楽曲面の特徴としては、DQ2とは打って変わって、かなり保守的なクラシック寄りの曲が多い。
バッハなどのバロック時代、ベートーベンなどの古典派の時代、そのような古い時代の語法を意識して作られたようである。
これは、DQ1よりもさらに過去であることを意識したものであると、すぎやまは語っている。
本格的にオーケストラでの演奏が始められたのも今作である。
初アルバムは【NHK交響楽団】の演奏。初めてのオーケストラ版は感動も大きく、N響の音源は今でも名盤として愛されている。
社会現象を起こしたほどの人気作である本作は、楽曲面での人気も非常に高い。DQに関係の無い番組やイベントでもよく使われ、知名度のある曲も多い。
特に【戦闘のテーマ】が甲子園での応援に使われたのが有名だろう。
2015年には30~40代へのプロモーションか、トヨタAQUAのCMにゲームミュージックが使用され、そのうちDQからは【冒険の旅】【おおぞらをとぶ】【そして伝説へ】が使用され話題を呼んだ。
北米のNES版『DRAGON WARRIOR III』ではタイトル画面が新たに作られたが、この画面では日本版では聞けないオリジナル曲が使用されている。
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リメイク版 
晴れて「ロトのテーマ」がタイトル画面で使われるようになった。
また城・町・村の夜専用のアレンジバージョンがシリーズで初めて登場したほか、【バラモス】戦などで使われるボス曲や、新要素の【性格診断】や【すごろく場】の曲、強化された【オルテガ】イベント用の曲などが追加された。
加えてアレフガルドの各所ではDQ1のBGMが多く使われるようになった。
SFC版でのBGMはDQ6のサウンドドライバーを使用しているため、非常に高クオリティ。シンセで紡がれたオーケストラがゲームで聴けると言っても過言ではない。
追加楽曲を含めた交響組曲を【ロンドンフィルハーモニー管弦楽団】が演奏した。
この頃からロンドンフィルの演奏が良くなってきており、リメイク版で新たに追加された楽曲の演奏は好評である。
【戦いのとき】の猛るような金管・ティンパニの迫力は一聴の価値あり。
アプリ化時の容量削減の煽りか、ガラケー版では追加曲の多くが省略され、その移植であるスマホ版、PS4・3DS・Switch版も同様の構成となっている。
DQ4 
5章構成となった今作での最大の特徴は、各章の主人公にテーマ曲があることだろう。そのテーマ曲が、各章のフィールド曲に採用されている。どれもキャラクターの性格や心情をよく表しており、プレイヤーのより一層の感情移入を誘う。
【カジノ】や【コロシアム】という施設が初登場し、それ専用の曲も登場した他、【ラスボス】以外のボス戦闘曲が登場したのも今作が初である。
【冒険の書】選択画面の【間奏曲】や、カジノのファンファーレや【アイテム発見】のMEも登場したのも本作から。
また、DQ1~DQ3の頃とは世界観が変わったためか、いくつかの楽曲では方針転換が図られており、オープニングテーマのファンファーレ変更、【海】の曲の3拍子をやめる、といったところにそれが見て取れる。
それ以外に関しては基本的にDQ3と同様であるが、容量に余裕ができたためか、長い曲が出始めている。
特に【のどかな熱気球のたび】は、変拍子に目が行きがちだが、その曲の長さもFC版DQでは異例なほどである。
エンディング曲【導かれし者たち―終曲―】に至っては、ゲーム中のアレンジでは各章主人公のテーマ曲などをメドレーにしている。
初アルバムは引き続き【NHK交響楽団】。今回のN響版も名盤である。
前作DQ3の大反響もあってか、CDの売り上げもかなり伸び、1990年3月26日のオリコン週間アルバムチャートで1位を取った。オーケストラ、かつゲーム音楽のCDが1位を取るのはなかなか珍しいことではないだろうか。
また、DQの中では唯一オーケストラの楽譜も発売されている。現在は廃盤であり、再販の予定も無い模様で、十万~数十万円で取引される超プレミアものとなっている。
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リメイク版 
DQ3と同様に城・町の夜の曲が追加されたほか、中ボス曲が導入され、【ピサロ】用の楽曲も新たに作られている。
DS版ではオープニングテーマのみオーケストラ演奏版が採用され、全面オーケストラのPS2版DQ5を除けば初の事例となった。これ以後「オープニングテーマは必ずオーケストラ」がナンバリング作で慣例となる。
DQ5 
今作は非常にドラマ性を重視しており、【哀愁物語】や【愛の旋律】など、イベント用の楽曲が大きく増えた。
他、初めて【ボス級モンスター】専用の戦闘曲が作られ、冒険中に度々聴くことができるようになった。その【不死身の敵に挑む】を含めた戦闘曲の評価が高い作品である。
ハードがSFCに移ったことで、サウンドが大きく様変わりした。容量の余裕も一気に増え、曲の長さもそれまでの1.5倍~2倍以上と、一気に長くなり、長時間のプレイでも飽きにくくなった。
ただし、他のSFC作品に比べると音質は良いとは言えないものであった。すぎやまこういち本人もDQ5のサウンドに大きな不満を持っていたらしく、次作DQ6に向けて専門のサウンドチームを結成する。
初アルバムは引き続き【NHK交響楽団】。もちろん今回のN響版も名盤と言われている。
ただし、『哀愁物語』【淋しい村】【はめつの予感】【さびれた村】はギリギリのタイミングで追加されたもので、N響版のCDに収録されなかった。
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リメイク版 
SFC版で既に一通りの曲が揃っている今回のリメイク版での追加曲は、城の夜とDS版のミニゲーム専用曲のみにとどまった。町の夜は追加されなかった。
すごろく場はDQ3と同じ曲である。
追加曲が少なかった反面、PS2版ではN響版の演奏がそのまま取り入れられ、生演奏の非常にダイナミックなBGMでDQ5をプレイできるようになった。
オーケストラの演奏がそのままゲームソフトに取り入れられたのは、PS2版DQ5が初めてである。
またこれにより、リメイクを含めたナンバリング初のストリーム再生方式採用ともなった(シリーズ全体ではトルネコ2が初)。
DQの交響組曲の中でも最も評価が高いN響版ということもあり、PS2版は非常に高い評価を得ており、サウンド面にこだわるプレイヤーにとっては、とても満足の行く贅沢なソフトとなっている。
前述のN響版未収録の曲については、『哀愁物語』【ローリング・ダイス】は他の楽団のものを、『淋しい村』『はめつの予感』『さびれた村』と城の夜の曲はシンセサイザー演奏で収録されたものを使用している。
DQ6 
今作でカギを握るのは「モチーフ」である。短い旋律のカケラをテーマとし、その旋律のカケラを楽曲中で様々に展開させていく。さらに、そのモチーフは複数の楽曲に跨って使われる。
中でも【悪のモチーフ】は【ダンジョン】や戦闘の曲において繰り返し使われ、非常に印象深いものになっている。この手法は、「ライトモチーフ」によく似ている。
すぎやまこういち曰く「ミュージカルのキャッツみたいに、1つのメロディで全ての曲を表現したかった」とのこと。さすがにそこまでは無理だったようで、断念したらしい。(『ファミコン通信』1995年12月22日号)
なお、モチーフを展開させていく手法は、直前に作られたトルネコ1で採用されていた。
広大な世界を舞台に様々な人間とドラマが描かれるドラクエ本編に対し、一人の男を主人公に一つのダンジョンに挑むトルネコ1。しかも主人公トルネコはDQ4の時点でテーマ曲を書いていたので、その一つのテーマから様々な曲を展開することで統一感と、本編とは違う外伝らしさを表現した。
本作でもこの手法が部分的に取り入れられ、町に関連する施設やイベントでは【木洩れ日の中で】のアレンジ曲が使われるし、2つの世界のフィールド曲のメロディも同一のものにした結果、広大な世界の中にも統一感を持たせている。
今作は音楽面では相当に力を入れており、特に町や村の曲、そして海の曲の人気が飛び抜けて高い。
空を飛ぶときの音楽が2種類に増え、コミカルな【空飛ぶベッド】と神秘的な【ペガサス】の対比は見事。確かに、この2つを同じ曲でまとめるのは無理があるだろう。
また、【ラストダンジョン】専用曲も初登場。現代音楽であり、この作品から「ラストダンジョンの曲は現代音楽」というのが定着した。
【教会】専用曲が初めて登場した一方、【ほこら】や【一軒家】の専用曲が無くなり、神聖な場所では教会系の曲、不気味さの漂うほこらでは洞窟曲、のどかな一軒家などでは村と共通の曲、などと使い分けられるようになった。
本作の楽曲を作るにあたり、DQ5でのサウンド面の不満を解消するため、専門のサウンドチームが結成された。
メンバーは、『タクティクスオウガ』の【崎元仁】、『イーハトーヴォ物語』の多和田吏という超豪華陣営。さらに、プログラマーの【山名学】には本作専用にサウンドドライバーを作ってもらったとのこと。
その結果、DQ5に比べてサウンド面で大きく飛躍し、SFCの作品としてトップクラスのサウンドクオリティを誇るまでになった。
多くの曲でメロディに使われる、しっとりと、かつフワフワした独特の音色(木管楽器の音色を模したシンセ音)一つを取っても、DQ5の頃からの大きな進化を感じさせる。
まるで本当に歌っているような【ハッピーハミング】のメロディ部分には、誰もが驚かされた。
他にも、唸るシンセ、音の太いベース、存在感抜群のパーカッションを駆使したアグレッシブな曲調は、他作品に比べると極めて異質であり、DQ6における大きな特色になっている。これが良い意味でユーザの意表を突き、評価が高い。
特に、パーカッションサウンドは派手な上に種類も豊富で、【迷いの塔】や【勇気ある戦い】など、ロックに近い曲調に一役買っている。これらは、編曲を担当した崎元仁による功績が大きい。
本作ではDQ4や5よりも前の時代を描いているので、一見するとDQ3のような古典的なアレンジの方が良いのではないかと思うかも知れないが、実際は【キラーマシン2】が登場したり、後の時代で失われた【ちからのたね】の量産や究極の呪文が開発されたりするなど、DQ4や5よりも文明が進んでいたと思われる要素があることを考えれば違和感はないだろう。
しかし、逆に言えばオーケストラに合わない楽曲も生まれ、上記のロックのような2曲は、オーケストラ版やDS版・外伝作品では全く雰囲気の違う曲になっている。
何でもかんでもオーケストラにすれば良い、というわけではないことの一つの例だろう。
今作の初CDは、SFC版『DQ1・2』に続いて【ロンドンフィルハーモニー管弦楽団】の演奏。
明らかに荒かった前作より演奏は整ってきたがまだ少し粗い。前述の通り、曲によってはロックテイストがオーケストラ版では損なわれてしまっており賛否は別れるだろう。
ただし、後に出た都響版と比べると【夢の世界】やペガサスなどの幻想的な曲に関しては、ロンドンフィル版のほうが夢うつつを感じさせるとろみのあるサウンドでDQ6の世界観にはあってるかもしれない。
またCDの発売元も『DQ1・2』に続いてソニーレコードとなり、ゲーム音源はゲーム・オリジナル・サウンド・ストーリーが廃止されて曲単位収録となった。
リメイク版はオーケストラ準拠の編曲・打ち込みであるため、やはり合わない曲がいくつかあり、今でもSFC版の音楽の方が良いという意見が多く言われている。
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DQ7 
ハードがPSに移ったことで、アレンジは一層豪華になった。
オーケストラにかなり近い編成で打ち込まれており、DQ6とはかなり趣が異なるが、こちらも評価が高い。
【プロローグ】のスタッフロール専用の曲(【エデンの朝】)が初登場。
また、海の曲が2曲存在するのは本作だけである。
2曲の海の曲は同一のメロディーラインであるが、一方の【小舟に揺られて】はDQ3以来となるワルツ調の曲であり、もう一方の【海原の王者】はこれまでに例のない勇壮な行進曲風の曲となっている。
過去の世界のストーリーは全体的にかなり暗く、封印されて人々が苦しんでいる世界であることから、廃墟用の曲が増えており、これが重苦しい雰囲気の演出に一役買っている。
DQ1以来久しぶりに、ダンジョンでの階層ごとのアレンジが復活。今回は塔で採用されている。DQ1の頃は、ただ単に音程とテンポをいじるだけだったが、今作では階層ごとにまったく違う曲調になり、より多彩になったと言えるだろう。
また、洞窟においては、階層によって曲が変わることはないが、一部のダンジョンではアレンジ版が使われている。ラストダンジョンも洞窟曲のアレンジであり、そのモチーフの使い方はDQ6を髣髴とさせる。
また、洞窟・塔以外にも謎の遺跡などの神秘的なダンジョン用の曲である【時の眠る園】や、砂漠地方の特定のダンジョン用の曲【スフィンクス】もあり、ダンジョンで流れる楽曲の種類はかなり豊富になっている。
オーケストラ版の初CDは、引き続き【ロンドンフィルハーモニー管弦楽団】が演奏。
一部の楽曲でドラムセットが使われている。
DQ6の頃とは打って変わって、こちらは名盤と評されている。
PSの時点でオーケストラにかなり近い打ち込みだったが、オーケストラ版ではゲームに比べてだいぶアレンジが異なる曲もある。
また、本作はオリジナルサウンドトラックと交響組曲版がセットで売られた最後の作品となっており、DQ8以降はそれぞれ独立して販売されている。
しかし、2枚組のアルバムとして販売された本作のサントラは、曲の量が肥大化したせいか交響組曲版がdisc1に収まりきらず、エンディングの【凱旋そしてエピローグ】だけがdisc2のトラック1に収録され、トラック2からゲーム音源版が始まるという珍事が起きてしまっている。
後続の【東京都交響楽団】版ではロンドンフィル版時には録音されなかった【トゥーラの舞】と【復活の祈り】が新たに加わっており、CDも交響組曲版だけで2枚組となった。これ以降のナンバリングの交響組曲のCDは全て2枚組になっており、シリーズを重ねるごとに曲のボリュームが増えていったことが分かりやすい形で表れている。
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3DS版 
東京都交響楽団が演奏した音源が使用されている。
また、塔の階層アレンジが消滅したほか、【プロローグ】の変更に伴い『エデンの朝』が削除された。
DQ8 
ハードがPS2に移り、サウンドも大幅に向上。
今作の特徴はイベントシーンの比重が大きくなったことに伴い、【そうだあの時は…】【つらい時を乗り越えて】【急げ!ピンチだ】など、イベント専用の楽曲がさらに大きく増えたことである。これにより、ストーリーに深みが出た。
町の曲が2曲になり、比較的穏やかな街と、活気溢れる都会の曲に分けられた。夜の曲や、静かな村の曲も健在である。
教会がストーリーに深く関わるようになっているため【修道僧の決意】【大聖堂のある街】など教会関連の曲も増え、【賛美歌に癒されて】は以降の作品での常連曲ともなった。
フィールド専用の曲【広い世界へ】は、ドラクエのフィールド曲としては珍しい、壮大さを感じさせつつ伸びやかで明るくゆったりとした曲調である。豊かな世界の広がりを感じさせ、DQ8のフィールドグラフィックとの相性も抜群である。
DQ7で久しぶりに取り入れられた階層ごとのアレンジは、洞窟で残っており、ボスの居る階層では【ひんやりと暗い道】のアレンジである【暗い道の奥で】が流れる。
エンディングの【空と海と大地】の中間部はDQでは初めての「ピアノ協奏曲」の形で編曲されており、こちらも特徴的である。同曲はシリーズナンバリング初発では初めてストリーム再生方式(録音済みの音声ファイルを再生する)が採用された曲となった。
今回からは過去作品の曲の再利用も行われるようになり、【酒場でブギウギ】【楽しいカジノ】のほか、【ラーミア】の再登場によりDQ3の名曲【おおぞらをとぶ】が再び使用された。
オーケストラ準拠の壮大なアレンジは非常に素晴らしく、古参ファンを大いに喜ばせたことだろう。
本作以降、オーケストラのCDは【東京都交響楽団】が演奏しており、ドラムセットが本格的に取り入れられた。
ボリュームが増した分、演奏時間にも影響し、CDの収録時間はそれまでの作品ではシリーズNo.1である。
ただし、録音の質にやや難があり、リバーブが強すぎて音が遠く聞こえてしまうという意見が多く聞かれている。
『空と海と大地』の編曲に注目されたが、CDにはピアノ協奏曲の形では収録されなかった。
海外版や3DS版ではこの東京都交響楽団のオーケストラ版がゲームで使用されている。
またDQ7の項にもあるとおり、本作からゲーム音源のCDは、オーケストラ版とは別に発売されるようになった(厳密に言えばSFC版DQ3が初)。
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DQ9 
ハードが携帯機のニンテンドーDSに移ったため、さすがに出力面では劣る。ナンバリング初発作品では最後の内蔵音源採用となった。
オープニングテーマのファンファーレがDQ4以来5作品・19年ぶりにリニューアル。DS天空シリーズと同じく、オープニングテーマのみ【東京都交響楽団】のオーケストラ版が収録された。
今作は主人公が天使であることから透明感のある曲が多く作られ、また音源の限られたDSでの開発ということで、メロディでの勝負を意識したという(【月刊Vジャンプ】2009年8月号より)。
過去作ではアレンジとして扱われていた町や村の夜の曲が、今作では初めてきちんと独立した曲として曲名が与えられた。ただし城の夜の曲は登場していない。
【マルチプレイ】の採用によりマルチプレイ専用のBGMも用意されている。
また【サンディ】という今までにない異色のキャラクターが登場するのに合わせ、彼女のテーマ曲【サンディのテーマ】もアイドルが歌っているようなポップス系の異色の曲となった。
過去作品の曲の再利用も前作に続いて行われている。歴代DQの魔王が隠し要素【大魔王の地図】として登場しており、そのために過去作のボス曲・ラスボス曲も再登場している。
ゲーム音源サントラにはDQ1以来となるシンセサイザー版の曲も収録された。
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DQ10オフライン・オンライン 
DQ10オンライン(Wii)より全面的にストリーム再生方式に移管。
当初はオープニングテーマ(当初は【序曲IX】、後に本作独自アレンジの入った【序曲X】に差し替え)を除いてシンセサイザー版であった。
この頃から、「演奏に使われているシンセサイザー音源の質がいまひとつよくなく安っぽく聞こえてしまう」「オーケストラ音源を使用して欲しかった」という意見があり、のちにVer.1の新曲の多くはオーケストラ版に差し替えられているが、交響組曲に採用されなかった楽曲、Ver.2以降の新曲などはシンセ版のまま。Ver.3からVer.5までの新曲は各Ver.ごとに3~4曲と少なめであった。
Ver.1での5つの【種族】それぞれをイメージした楽曲をはじめ、Ver.5までに9つのフィールド曲が作られた。
また、同作の【エルフ】のイメージから【風雅の都】など久々に和風の曲が作られた。
【勇者姫アンルシア】や【冥王ネルゲル】のモチーフを用いた曲群もある。
DQM2初出の【天空の世界】をはじめ、引き続き過去作の再利用もさかんに行われており、そちらは初期を除いてオーケストラ版が使われている。
DQ10オフラインでは基本的にDQ10オンラインと同じ楽曲がオーケストラで使われているが、【酒場のポルカ】などオンラインの後のバージョンで追加された一部楽曲は差し替えられている。
当辞典に記事のある楽曲の一覧はこちら
それ以外のDQ10オンライン初出楽曲や使用状況はDQ10大辞典を参照。
DQ11 
原点回帰を謳った本作は、オープニングテーマのファンファーレが初代を発展させた形のものに変更された。DS天空シリーズや前2作に引き続きオープニングテーマのみオーケストラ音源を収録(他曲はすべてシンセサイザーストリーム)。
今回作曲された音楽は、インタビュー記事によれば37曲以上にのぼるが、引き続き過去作品の曲も幅広く使用された。
DQ4以来続いていた冒険の書選択画面での【間奏曲】は廃止され、DQ1(リメイク版)と同じものが採用された。
DQ3を意識した【ホムラの里】、DQ4第二章を意識した【仮面武闘会】、DQ5とは違う形で親子のエピソードを出してくるユグノア王国、DQ6のエピソードにひねりを加えた【ロミア】といった場面ではそれぞれ各作品の曲が選ばれている。
【鎮魂歌】など【全滅】時の曲はエピソードによって3種類を使い分けるという徹底ぶり。
終盤はDQ3の楽曲が多くなり、過去のシリーズの総まとめ的な演出が行われる【エンディング】の曲【過ぎ去りし時を求めて】は【ロトシリーズ】のフィールドとエンディング曲のメドレーとなっている。
今作の新曲も決して少ないわけではないのだが、印象的なシーンで過去曲を使用していることが多いため「曲の使い回しが多く、新曲が少ない」という錯覚にもなりがちである。新曲の中ではイベント曲の一つ【愛のこもれび】や飛行中の曲【空飛ぶ鯨】は印象に残りやすい。
戦闘曲【ひるまぬ勇気】は通常戦闘時のショートバージョンの他に、イベント戦闘で使われるロングバージョンも存在する。
画面内でスライムが冒険するPS4版の【マジックスロット】では、スライムもりもりシリーズの曲が輸入された。
一方、過去作品の世界そのものを訪れるサブイベント【冒険の書の世界】がある3DS版では、過去の楽曲がPS4版よりもさらに多く使われている。中でもDQ1とDQ4の世界ではFC音源がそのまま使用されている。
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DQ11S 
【東京都交響楽団】によるオーケストラ音源が採用され、コンフィグでシンセサイザー版に切り替えることも可能になった。ただし、両者でテンポが大きく異なる【オーレ!シルビア!】は場面に応じて強制的にシンセサイザー版とオーケストラ版が使い分けられる。
また、仲間の個別シナリオ用に【愛の旋律】が追加され、従来は3DS版でのみ使われていた【恐怖の洞窟】がカミュのシナリオでも使われるようになった。他には海外で人気の高いDQ8より、【キラーパンサー(乗り物)】用に【大平原のマーチ】、DLC特典として【広い世界へ】が追加された。
冒険の書の世界ではDQ1~DQ4の曲(ME含む)が全てFC版と同じものになり、DQ5以降やリメイク版の曲は、動画サイトで流行っているようなFC風のアレンジがゲーム内では初めて使用された。
関連作品での扱い 
DQシリーズ関連の映像・音声作品に関しては、作品ごとにゲーム作品の曲を使用しているかどうかが異なる。